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第五章【Frozen road-凍てついた道-】

  1. 名前: 歯車の都香 2019/08/05(月) 07:25:34
    第五章【Frozen road-凍てついた道-】

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    スーフリはシャルラの自然がもたらす最も優しく、恐ろしい死の芸術だ。
    一生の間に一度は見るべき光景であり、体験したくないものでもある。

                                           ――ビリー・バリアフリード

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    August 17th PM11:25

    その瞬間は静かに呆気なく訪れたが、関わっていた人間は全員感極まり、静かに喜びの声を上げた。
    スノー・ピアサーはヒラリー・キャンプを問題なく通過し、更にはクラフト山脈の下山をも成功させたのだ。
    ジャック・ジュノは運転室で深いため息を吐き、無事にクラフト山脈を通り抜けたことを密かに喜んだ。
    これまで多くの列車を動かし、時間通りに乗客を目的地に運んできた。

    列車強盗にも遭遇し、それらを撃退して時間に遅れることなく運行してきた。
    逆境や緊急事態は社内でも一、二を争うほど経験している自負があった。
    だがこの瞬間ほど喜びを噛み締めたことはない。
    そして、こんなに仕事中に酒が飲みたくなる瞬間は久しぶりだった。

    仕事中は勿論だが運転中に判断力を落とすことになる酒を飲むことは、間違ってもすることはない。
    代わりにジュノは砂糖をたっぷりと入れたデカフェのコーヒーを飲み、再び溜息を吐いた。
    完全ではないにしろ、彼らは無事にやり遂げたのだ。
    糖分を追加したコーヒーを飲んで自らを労うことを、誰が咎められようか。

    (^ム^)「ふぅ……」

    息を吐いて瞼を降ろし、その上を指でそっと押す。
    ストレスで常に神経が高ぶっていたことも有り、眠気はないものの、疲労感が体の内側から染み出すように現れてきた。
    どこかのタイミングで仮眠を取らなければ、運転に支障が出てしまう。
    壁に掛けてある無線機から空電が聞こえ、続いて聞こえてきたハスキーな声で意識を取り戻した。

    豸゚ ヮ゚)『お疲れ様、ジュノ。
         どうにかなりそうだな』

    (^ム^)「君もお疲れ様、ジュノ。
        おかげでどうにかなりそうだ、感謝するよ」

    それは、後部運転室にいるジャック・ジュノからの通信だった。
    二人はエライジャクレイグが誇る最高の運転手であり、そして二人ともが“定刻のジュノ”と呼ばれる運転手だった。
    彼らは双子としてこの世に生を受け、同じ名を与えられ、奇しくも同じ道を歩み、得るべくして同じ評価を得たという稀有な存在だ。
    世間では“定刻のジュノ”とは銀色の腕時計を付け、時間に正確な運転をする人間として知られているが、双子の兄妹であることは意外にも知られていない。

    乗客が興味を持つのは正確な運行であって、運転手の性別や容姿ではないことの何よりの表れであると、二人はそのことを大いに喜んだ。
    男だから、女だから、という変な先入観を持つことなく“定刻のジュノ”は時間を守る存在である、ということだけが知れ渡っているのは彼らの喜びだった。
    当然だが、双子だからと言って二人の特性が同じであるわけではない。
    兄のジャック・ジュノは妹のジャック・ジュノよりも優れた運転技術を持つが、妹は兄よりも優れた時間管理能力を持っている。

    どちらの能力も定時運行には欠かせないものであり、また、天性の才能であった。
    その二人が同じ列車に乗り合わせることはこれまでに一度もなかったが、スノー・ピアサーの運行にあたって初めてそれが実現した。
    優秀な運転手を二人も同じ列車に乗るほどの力の入れようは、彼ら運転手にとってこの上ない栄誉であると同時にプレッシャーだった。
    それぞれの長所を生かすために運転を兄が行い、妹は細かなスケジュール管理を行いつつ、運行に支障をきたす問題への対応と兄への指示を担当した。

    クラフト山脈で起きた雪崩の際、電力の調整や細かな対応の指示は彼女が行っていた。
    乗り合わせている従業員たちにとってみれば、同じ指針の指示を出す人間が二人いるため、極めて心強い存在になっていた。
    たった一人に頼るのではなく、強力な指揮者が二人いるという状況は緊急時において最良の判断を導き出す支えとなった。
    定刻のジュノを二人同席させたのは、きっと、困難な状況が生じた時の事を想定していたのかもしれない。

    兄ではなく妹だけがマスコミへ顔を出したのは、エライジャクレイグの宣伝効果として最も効果的であると判断されたからだ。
    現実問題として、女の割合が少ない職業の場合、男が表に出てくるよりもよほどの宣伝効果があるのだ。
    そして車内放送は全て兄が行っていたが、客は誰も二人の性別について気にすることはなかった。
    定刻通り、そして安心を得られる運行技術こそが客の求めているものであり、見ているものなのだ。

    それはつまり、彼らの目指すものと乗客の望むものが一致していることに他ならなかった。

    豸゚ ヮ゚)『これなら定刻通りシャルラに到着できそうだな』

    (^ム^)「あぁ、そうだといいな」

    すでに後方に遠ざかるクラフト山脈の巨大な姿をカメラで見て、兄は心からの言葉を口にした。
    前人未到、世界初の方法で世界最高峰の山を通り抜けたことは間違いなく歴史的な成果であり快挙だ。
    無線通信でエライジャクレイグの市長であるトリスタン・トッド・トレインには連絡を済ませ、すでにラジオや新聞でこの偉業が報道されていることだろう。
    世界的な挑戦をやり遂げ、凱旋する気分でこの後の旅を続けることになるのは間違いない。

    そうなると危惧しなければならないのが、この列車本体を狙った強盗への対処だ。
    この狭い空間でトレインジャックをされようものなら、極めて不都合なことになる。
    そうならないためにも、次のシャルラでは不穏な人間が乗り込まないように細心の注意を払わなければならない。
    ふと気になることがあり、兄は妹に質問をすることにした。

    (^ム^)「次の駅、行ったことは?」

    豸゚ ヮ゚)『ないね。 どんな駅?』

    兄と妹の違いは、配属された地域にもあった。
    不毛で危険な地域には戦闘員として働ける兄が向かい、細かな気遣いを必要とする路線には妹が配属される。
    シャルラ方面への配属は一年半だったが、彼にとっての一年半は想像を絶するものだった。
    嵐や雪に悩まされる路線は、シャルラ方面以上の物は他にはない。

    (^ム^)「何もない、がある駅だ。
        シャルラの港も近いが、荒野の真っただ中にある駅さ。
        不思議なことに、日中は路上生活者が日光浴なんかしてるんだが、夜になると皆どこかに消えるんだ」

    コーヒーを飲み、兄はシャルラの荒野を思い出していた。
    小さく寂れた駅がぽつんと佇み、寂れた街並みが続く光景。
    食べ物も酒も、彼の記憶にはあまり残っていない。
    残っているのは風景だけで、今の街がどう変化しているのかは分からない。

    最大の関門を突破したことで安心した兄は、久しぶりに妹と多くを語り合った。
    普段彼らが交わすのは仕事の話だけであり、家族としての会話は十数年ぶりになる。
    大きな安堵感が彼らに家族の会話を取り戻させ、束の間の団欒を作り出したのだ。
    荒野を駆けるスノー・ピアサーの車内は次の停車駅に関しての話題で静かに時間が過ぎ、そして、夜が更ける。

    彼らの波乱に満ちた旅も、ようやくひと段落する。
    乗客が寝入る中、二人のジュノも心地のいい会話を中断し、僅かな時間の仮眠を取ることにした。
    静かな時間が過ぎ、星明りさえ失われた優しい闇の世界をスノー・ピアサーは走り続ける。
    荒野の道は長く、そして時間はたくさんある。

    豸゚ ヮ゚)『後の運転は引き継ぐから、寝てていいよ』

    (^ム^)「すまん、そうさせてもらうよ」

    ――その日、車内から一本の電話が遠く離れたある街に向けてかけられたが、それは誰にも気づかれることはなかった。

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         (' :: :: /::::   August 18th AM07:25
          ::`::  }
       ,,、-‐──‐- ,,    スノー・ピアサー
        l`''ー----一''|__
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    ヒート・オロラ・レッドウィングは朝食にコールスローとロールパン、そしてスクランブルエッグを選んだ。
    怪我とは別に体の調子が万全でない日が重なってしまったこともあり、あまり食事を摂る気持ちになれなかった。
    とにかくあっさりとした物が食べたかった。
    その気分を察してくれたデレシアがフルーツをいくつか皿に盛り、ジャスミン茶と共にヒートの前に持ってきてくれた。

    ノハ;゚⊿゚)「わりぃ、助かる」

    ζ(゚ー゚*ζ「気にしないでいいから、肩の力を抜いてね」

    山を下りてから安定した動力の供給が可能となったようで、周囲の景色が車内の壁や天井に映し出されている。
    クラフト山脈の景色はすでに地平線に浮かぶ白い雲のようになり、灰色の空との境目にその輪郭が浮かんで見える。
    列車旅は無事に再開され、明日にはシャルラの駅に到着することだろう。
    三日前の夜以降、彼女たちが警戒していた人間が接触してくることはなかった。

    その甲斐もあってブーンの勉強はだいぶ捗り、拙かった言葉もかなり成長が見られるようになった。

    ノパー゚)「美味いか?」

    (∪*´ω`)゛「美味しいですおー」

    キャベツとレタスを使ったコールスローには人参が彩りとして加えられており、ブーンはその歯ごたえを楽しんでいる様子だった。
    ヒートの不調についてはまだ気づいていないだろうが、鼻のいい彼ならいつかその意味を理解することだろう。
    しかし、彼の旺盛な食欲は見ていて気分がいい。
    食べたもの、学んだものがすぐに結果となって表れるのは極めて嬉しい物だ。

    実に教え甲斐のある反応であった。

    ノパー゚)「それはよかったな」

    (∪*´ω`)゛「おー」

    ζ(゚ー゚*ζ「ふふ、落ち着いて食べなさい」

    (∪*´ω`)「おっ」

    ブーンの好物の一つに人参が増えたことは間違いない。
    千切りの人参に喜ぶということは、丸々一本を食べたらさぞや喜ぶに違いない。
    採ったばかりの物はそのままでも十分に美味いが、マヨネーズを付けて食べる人参は癖になる美味さがある。
    コールスローを頬張っていたブーンはそれを飲み込んでから、空を見上げた。

    その仕草は雪崩が起きる直前にも見せたもので、デレシアとヒートは食事を一旦止め、ブーンを見た。

    (∪´ω`)「……」

    ζ(゚、゚*ζ「あら、どうしたの?」

    小首を傾げるも、ブーンの視線は空に向けられたままだった。
    ヒートもそれに合わせて空を見つめるが、そこには薄い灰色の空があるだけだ。
    雲の流れも特別変わった様子はない。

    (∪´ω`)「空が変……ですお」

    ノパ⊿゚)「天気でも崩れるのか?」

    シャルラ方面は天候が変わりやすく、夏でも雪が降ることが稀にある。
    今は車内だから感じないが、外の気温は一桁になっているそうだ。
    これでもシャルラの人間にとっては比較的まだ暖かいほうで、夏らしい気温と言うのだから地域差は面白い物がある。
    しかし、ブーンはやはり不思議そうに空を見つめたまま言った。

    (∪´ω`)「何か、ぐるぐるーって」

    ブーンの言葉の真意を二人は理解できなかったが、断言できることがある。
    再び何かが起こるということ、それだけは間違いない。

    ζ(゚ー゚*ζ「……シャルラと言えば、雪や氷にまつわる昔話が結構あるの。
          ブーンちゃん、聞きたい?」

    (∪*´ω`)゛「おー、聞きたいですお!」

    ノパ⊿゚)「あたしも聞きたいな」

    それは度重なるトラブルで気が滅入らないための気遣いであり、無論、ブーンの勉強も含めての気晴らしなのだとヒートは察した。

    ζ(゚ー゚*ζ「白い魔女、っていうお話があってね。
          面白いのが、この魔女を題材にしたお話がいくつもあるの。
          一番有名なのは――」

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              白い魔女は灰色の空から生まれた。
                ゚      ゜。                ◯
       。   白い魔女は空に空いた穴から生まれた。       。°。
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             。°                    。 ゜           ゚゜ o
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             姿は見えず、産声もなく。    O     。
                 ただ静かに、無垢なる魔女は生まれ落ちた。  ◯   ゚°
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    ゚   。     ゜ ゜  。   。       ゜  ゚   。        ゜ ゚   。
    魔女の産道は空から大地に根を下ろすように、ゆっくりと銀色の道となって現れた。
     。   。きらめく道に木々は怯えの声を上げ、鳥たちはさえずるのを止めた。
      。       ゜    ゜     ゚ ゜  。   。
     ゜   。   。   ゜  。 。魔女はほどなくして白いドレスを大地に広げ、散歩を始めた。
        ヘ l ノ r  ゝYイソ。       ゜  ゚   。
       ゜ ゜ヽYソ   ヾvノ/ ゜  。   。       ゜゜  ゚   。
          |i|     ||i。 やがて、魔女はどこかへと立ち去り、凍てついた大地が残された。
    ''"""'''''"""''""''''""''"''''"""''"""'''、.''"""'゙゙''''''''"""'、.""''"''''"""''"""'''''"""''""
    . ..:.:.:.。.. . .. .:.o:.. . .. . ..:.:. .゚.O.:.:..。..゙゙゙゙''''''''''‐-- 、,,,,,_  .~゙"'ー-. . ..:.:.:.。.. ..:.:. .゚.O.:.:..。.. .. .
    ..:.:. . 。   。   そして、魔女のいた場所に街が出来た。
     ゜  。   。   ゚ こうして生まれた街が集まり、シャルラが生まれた。
      :..。. . .. . :.  .゚.O       .:.:..。.. .. ._,,.--ー''''''"魔女は今でも、シャルラに帰ってくる。
    。       ゜  。   。       ゜  . .:.o:.. . .. . ..:.:. .  ゜     ゚ ゜
      。   。 . .:.o:.. . .. . ..:.:. .。
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    (∪*´ω`)「シャルラって、そうやってできたんですかお?」

    目を輝かせるブーンを前に、デレシアは少し困ったような笑顔を浮かべた。
    子供の純粋な好奇心を否定するのは、誰だって気が引ける。

    ζ(゚ー゚*ζ「残念ながら、そうじゃないんだけどね。
          でもね、昔からあるお話っていうのは何かしらの題材があるの。
          このお話の場合は“スーフリ”が題材になっているわね」

    ノパ⊿゚)「スーフリ? なんだ、そりゃ」

    ζ(゚ー゚*ζ「正式には“スーパーフリーズ”って言う自然現象なんだけど、今は略したスーフリだけが残っているの。
          まぁ、“ニュークリア”が“ニューソク”になっているようなものね。
          いくつかの条件が重なると、上空の極低温の空気が地上に降りてくるの。
          木々の怯えの声、は木の中にある水分が凍結して幹が裂ける音。

          鳥は言わずもがな、凍り付いたのね。
          そう考えれば木が倒れて土地が開けて、そこに街が作られて集まったものがシャルラになったと解釈が出来るわね」

    (∪´ω`)「おー。 今もスーフリはあるんですかお?」

    ζ(゚ー゚*ζ「えぇ、しっかりあるわよ。 数年に一回ぐらい起こる現象ね。
          燃料だって凍り付くレベルだから、屋外に居たらまず間違いなく凍り付くわね」

    生きたまま氷漬けになることなど想像したくもないが、この土地に足を踏み入れるということは、そういった事態に遭遇し得るということ。
    未知の場所で起こる危機に関する情報とその対処方法だけは、知っておいても損にはならない。
    彼女の振る舞いや知識量から、つい学生だった時の癖で手を小さく挙げそうになるのを堪えつつ、ヒートは質問をすることにした。

    ノハ;゚⊿゚)「そいつは遭遇したくねぇ話だな。
         まぁ、もしもの話だけどよ。
         これに乗ってる時にスーフリが来たらどうなるんだ?」

    クラフト山脈での雪崩を走り抜けた列車であることを踏まえて、そのことを計算に入れて設計されているはずだ。
    しかし何事にも絶対はない。
    そのことはこの列車自身がいい例だ。

    ζ(゚ー゚*ζ「列車内は大丈夫よ。
          色々と見聞きしたら、ちゃんと対策していたわ。
          電気で冷暖房をコントロールしているから、後はその計器が凍り付かない限りは平気よ。
          断熱のための外装でもあるみたいね」

    空気の層をあえて作ることで、気温による影響を極力受けないように設計されているのだと、デレシアは付け加えた。
    原理としては真空の魔法瓶と同じとのことだ。

    (∪´ω`)「シャルラの人たちはどうやってえっと……平気なんですか?」

    表現する言葉を知らない時は、自分の知る言葉で説明するということを実践するようになったブーンにデレシアは微笑んだ。
    そして彼が言いたかった言葉を彼女が口にすることで、学習へとつなげた。

    ζ(゚ー゚*ζ「やり過ごす方法、ね。
          シャルラは嵐に襲われることも多くて、どんな建物にも必ず地下シェルターがあるの。
          そこに非常食や暖房器具をしまっておいてやり過ごす、というのが一般的ね。
          海洋発電が充実しているから、電熱ストーブなんかがあるわ」

    ノパ⊿゚)「へぇ、基本はハリケーンの時なんかと同じなんだな」

    建物の堅牢さは技術の進歩によって向上しているが、大地のそれには遠く及ばない。
    強烈な風や飛来物で壊れる可能性のある建物よりも、風の影響を受けない地下の方が避難する場所としては向いている。
    雪害の場合は雪の重さによる倒壊や、出入り口の凍結を想定して除雪や雪が積もりにくい設計で対応することが多い。

    ノパ⊿゚)「でもよ、建物が倒れたり雪が積もった時に逃げられないんじゃねぇのか?」

    雪の重みと強度は人間が想像している以上であり、雪の降る街では毎年圧死者や落雪による事故が後を絶たない。
    シェルターの出入り口を何か重量のあるものが覆ったり、凍り付かせてしまった場合はそこに閉じ込められることになるのではないだろうか。
    当然、その対策はあるのだろうが、ヒートはあえてその答えを聞くために疑問をデレシアに投げかけたのであった。

    ζ(゚ー゚*ζ「出入口は屋内と屋外の最低二か所に設置しているから、運が悪くなければ大丈夫。
          後は扉も工夫がしてあって、レバーの切り替えで引いても押しても開けられるようになっているの。
          凍って張り付いた場合はよく電熱の工具で溶かしているわね」

    一概にシェルターと言っても、その土地によって若干作りが異なっている。
    ヒートのいたオセアンの家は防水と排水に強みがあり、暑さの厳しい地域であれば熱がこもらないように工夫がされていた。

    ノパ⊿゚)「なるほどね。
        昔の家にもシェルターがあったけど、結局まともに使ったことはなかったな」

    海に近いオセアンでは毎年のように大嵐に襲われることがある。
    風だけでなく飛来物も脅威の一つであり、稀に電線が切断されて停電になることもあった。
    だがそれは遠い昔の記憶であり、ヒートの人生の多くを埋めているのは復讐に明け暮れた殺伐とした記憶だ。
    弟と父が生きていた日々は遠く、そして、最悪の形で終わりを告げたことだけが思い出される。

    実の母に爆殺された家族を思い出すたび、ヒートは再び復讐に手を染める覚悟と己の力不足を痛感しなければならない。
    感情に流され冷静さを失ったために負傷し、棺桶まで損傷させてしまった。
    替えの利かない一点ものである上に、デレシアの言葉によれば“レオン”はほぼ全ての棺桶の頂点に立つことが可能な存在だと言う。
    それが出来ていないのはヒートの技量不足が原因であり、そして知識の不足が問題だった。

    棺桶をただの兵器としてみなして復讐の道具としてしか使っていない人間に、その真価を見出す機会はあってもそれに気づくことはできなかったのだ。
    苦い記憶に心を痛めていると、ブーンがヒートの顔を心配そうに覗き込んでいるのに気付いた。

    (∪´ω`)「シェルター……って何ですかお?」

    咄嗟に答えられなかったヒートに代わり、デレシアがその問いに答えた。

    ζ(゚ー゚*ζ「避難する場所よ。
          大抵は地下に作られていて、一時的に身を隠す場所ね。
          ただ、シャルラの地下にあるシェルターはちょっと変わっているのがあってね。
          凄い大昔の話だけど、街の地下に巨大なシェルターを作ったところがいくつもあるの。

          土地柄的なものが大きな理由ね」

    ノパ⊿゚)「それは今も機能してんのか?」

    ζ(゚、゚*ζ「確か、避難場所程度には機能していたはずよ。
          誰も整備が出来ないから荒れ放題になっていると思うけど」

    ノパ⊿゚)「整備できないぐらいでかいのか……」

    ζ(゚ー゚*ζ「そのシェルターはスーフリ対策目的で作られたわけじゃないから、本来の用途を知らないと整備も出来ないのよ。
          昔は“プレッパー”があっちこっちにいたものだけど、今はもうそんなことをする人はほとんどいないし。
          ほとんど浮浪者のたまり場になっているけど、作りはしっかりしているから今も残っているのね」

    歴史は引き継ぐ人間がいなければ潰え、忘れ去られるものだ。
    少しはデレシアのように歴史に興味を持つようにすれば、何かに役立つことだろう。
    プレッパーが何を意味するのかヒートはまるで分らなかったが、それについてもこれから知って行けばいい。

    ζ(゚ー゚*ζ「お部屋に戻ったらシャルラについてお勉強しましょうか」

    ノパー゚)「そいつは助かるよ」

    (∪´ω`)「おー」

    ブーンの視線が再び空に向けられたが、やはり、小首を傾げるだけであった。
    だが、その答えが分かるのにはそう時間はかからなかった。

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                    囗 ロ   。
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                       囗ロ []  []        ロ
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                        □ □ []   ロ
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                          □ []   ロ     。
                           囗ロ  。
                            ロ ロAugust 18th AM09:11
                            ┌┐  。
                            └┘ロ シャルラ/プストゥイーニ区周辺
                            囗ロ

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    上空から複数の光の筋がゆらゆらと、まるで風と戯れるようにして地上を目指して降りてきた。
    何の前触れもなく灰色の空から現れたその幻想的な光景は、列車内からでも十分に観測することが出来た。
    ラウンジ車からもその様子は十分に目視でき、その正体を知らない人間が口々に動揺の声を上げた。
    目の前で起きている現象がこの世の終わりであるかのように感じる者もいれば、自然の生み出した光景に感嘆する者もいた。

    『乗客の皆様にお知らせいたします。
    現在、シャルラ上空で極低温の空気が地上に流れ落ちる“スーフリ”が発生しております。
    本車輌は安全のため低速運行に切り替えさせていただきます。
    この自然現象による皆様への危険はございませんので、ご安心ください』

    デレシアは窓の外を一瞥して、それからブーンとヒートを見た。

    ζ(゚ー゚*ζ「あれがスーフリよ」

    (∪´ω`)「お…… きれーですお……!」

    絵を描いていたブーンはその手を止め、壁に映る圧倒的な光景に息を呑んだ。
    光の筋はまだ近くに降りてきていないが、すでに遠方に見える光は大地に根を張るように広がり、着地している。
    その下で何が起きているのか、ここからでは観測することが出来ない。
    天候がもたらす気まぐれのような現象であるため、そこに規則性はなく、現代の技術では予測も難しい。

    ノパ⊿゚)「遠目で見る分には奇麗だけど、近寄りたくねぇな」

    ブーンの隣でシャルラについてのガイドブックを読んでいたヒートは、素直な感想を述べた。
    確かにあの光は幻想的だが、真下にいる人間にとっては触れるだけで凍り付く悪魔的現象でしかない。

    ζ(゚ー゚*ζ「まぁ、あれは一過性のものだから明日になれば溶けているはずよ。
          ふふふ、これもまた旅の醍醐味ね」

    実際、デレシアがスーフリを見るのはしばらくぶりのことだった。
    旅をする中で彼女は多くの土地に足を運んできたが、スーフリが発生するのは世界でもこの周囲だけだ。
    シャルラにはあまり立ち寄ることがなかったために、その自然現象を見る機会がなかった。

    ζ(゚ー゚*ζ「さ、絵とシャルラのお勉強を続けましょうか」

    そして三人が白い紙の上に走らせていた鉛筆を再び動かし始めた時、空から雪が静かに、そしてまるで花吹雪のように降り始めた。

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                  Ammo→Re!!のようです
          Ammo for Rerail!!編 第五章【Frozen road-凍てついた道-】
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    ∃  |   |  | l l ゜           ゜    。 l l |  |   |○田 田
        |田 | 。| | l      ゜     ゜    。  ゜   l | |  | 田|    o
    ∃○|   |  | |。  ゜ . .. ... .. ... . ... ...゜ . .. .. ..    l |。|  |   | 田 田
        |田 |  | l‐    .....   ....     .....     -| |  | 田|
    ∃  |   |○― ....    o      ....   ○ ..... ―  |   | 田 田
       o.... 一      ....     ○    ...  o   ....  ー- | 。
    三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三二二二
    二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二ニニニ::::::::::::::::::::::::::::::::::
    ニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニ===::::::::::::::::::::::::::::::::::
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    ::::::::::::::::::::::::::::::::::August 18th AM09:23::::::::::::::::::::::::::::::::::
    ::::::::::::::::::::::::::::::::::シャルラ/ウモーリャ区 地下::::::::::::::::::::::::::::::::::
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    天井全体が仄かに白く発光し、朽ち果てて埃を被ってくすんだ色合いの街並みを照らしている。
    地上にある家屋よりも近代的な作りをしていたであろう街は、降り積もった埃とひび割れた壁や窓のない窓枠だけが残る廃墟と化し、人が住んでいる気配はまるでなかった。
    トラギコ・マウンテンライトは眼下に広がる異様な光景に目を奪われたが、すぐに正気を取り戻した。
    梯子を下りた先にいた男たちがトラギコに襲い掛かってこないよう、これ見よがしに拳銃の入ったホルスターを見せつける。

    苦虫を噛み潰したような顔をして、男たちが数歩後退った。
    砂埃の溜まったアスファルトの上に足が触れると同時に、トラギコは撃鉄の起きた状態の拳銃を抜いた。

    (=゚д゚)「俺は観光客なんかじゃねぇラギ。
        分かるよな?」

    |゚レ_゚;州「分かった、分かったから銃を向けるな!!」

    トラギコが最初に目を付けた男に銃口を向けると、それ以外の男たちは一目散に消えていった。
    だがトラギコは逃げて行った彼らには目もくれず、目の前の男だけを睨みつける。
    情報を引き出すべき相手を見定め、欲を張らずに一点に絞らなければ全てを失ってしまうことがあるということを、トラギコはよく知っていた。

    (=゚д゚)「でもな、俺はこの街に詳しくねぇラギ。
        となると、親切な奴が街に一人や二人はいるはずだから、そいつに道案内を頼むのが道理ってもんだろ?
        ましてやそいつが漁師となれば、快く案内をしてくれるに決まっているラギ。
        お前は親切な漁師だよな?」

    安全装置を解除し、いつでもM8000が発砲できるようにする。
    銃爪に指をそっと添えると、男は慌てた様子で口を開いた。

    |゚レ_゚;州「クッソ、分かったって!!」

    (=゚д゚)「まず、ここは何ラギ?」

    銃口を下ろすと、男は安心した風に溜息を吐いた。
    トラギコが狂人ではなく、話の通じる人間だと分かったのだろう。

    |゚レ_゚*州「ここはシェルターだよ、大昔からある緊急避難用のな」

    (=゚д゚)「にしちゃ、でかすぎるラギな」

    大きさだけではない。
    シェルターの中に一つの街並みの巨大な空間と建物が存在すること自体が異質なのだ。
    本来の用途である避難場所としてではなく、もっと別の使い方がされていたようにしか見えない。
    地下の街を作り出そうとしていたかのような意図が強く感じられる。

    |゚レ_゚*州「この区全体の人間が入り切れる規模だからな。
         普通の家は皆地下にシェルターを持ってるが、ここはそれとは別なんだ。
         昔っからある場所だから浮浪者なんかも住み着いてるぐらいだ」

    (=゚д゚)「なるほどな。 ところで、スーフリってのは何なんだ?」

    |゚レ_゚*州「えらく冷たい空気が降りてくるんだ。
         生き物だって生きたまま凍り付く程の冷気だから、屋内にいるよりも地下にいた方が賢い」

    (=゚д゚)「万が一屋内に居たら?」

    |゚レ_゚*州「ガンガン暖房を使ってればまだ違うだろうが、そんな酔狂な奴はいねぇよ。
         漁に出てるときにあれが海上で発生したら、みんな逃げるしかない。
         最悪の場合は船がそのまま氷漬けになって港に流れ着く」

    話を聞く限り、男たちを追ったトラギコの判断は正しかったようだ。

    (=゚д゚)「どれくらいでここから外に出られるラギ?
        俺はスリエヴァ・ウモーリャ区に行きたいラギ」

    |゚レ_゚*州「それならこのまま地下を進めばいい。
         地上を行くよりかは安全だ」

    (=゚д゚)「地下を?」

    男は廃墟の奥を指さした。
    そこには確かに、小さなトンネルが見える。

    |゚レ_゚*州「シャルラの地下シェルターはつながってるんだ」

    (=゚д゚)「そいつは良い話を聞いたラギ。
        で、徒歩だとどれくらいかかるラギ?」

    |゚レ_゚*州「徒歩なら一日もあれば着くはずだ。
         ただ……」

    (=゚д゚)「ただ、何だよ?」

    |゚レ_゚*州「さっきも言ったけど、浮浪者が住み着いてるんだ。
        あんたなら大丈夫かもしれないけど、あいつら追剥みたいなもんだからな。
        トンネルはあいつらの縄張りだから俺たちだって近寄らねぇ」

    (=゚д゚)「心配してくれるのかよ、わりぃな」

    |゚レ_゚*州「別に心配してるわけじゃねぇよ。
         ドンパチ起こして警察が来たら面倒なことになるからな。
         ここは一応警察も知らない場所になってるんだ」

    (=゚д゚)「そいつは残念だったラギね。
        俺は警官ラギ」

    ほんの僅かな間、沈黙が流れた。
    先ほどまで怯えていた男の顔が一転、破顔した。

    |゚レ_゚*州「はははっ! あんたみたいな警官がいるかよ!!」

    (=゚д゚)「はははっ!」

    トラギコの発言を冗談と受け取った男はまるで警戒する様子もなく、むしろ、先ほどまで怯えていた様子さえ見えなくなっていた。
    この場所の存在を警察が知らないというのは、つまり、この地域を担当している警官たちが怠慢だということを意味している。
    これだけの規模のシェルターと他の地区への路を見逃すということは、街に逃げ込んだ犯罪者たちを取り逃すだけでなく違法な行為全てを見逃すことにつながる。
    少し考え、トラギコは今この場で犯罪者予備軍をどうこうするのはやはり得策ではないと結論付けた。

    狭く、逃げ道の少ない場所での戦闘には今の装備では数十分もすれば抵抗も出来なくなってしまう。
    普段は九ミリの弾を使っているが、昨今の戦闘事情から装弾数よりも威力を重視した準備をしていた。
    船に乗り込む前の時間を利用して警察の装備品を使い、使用する弾を四十五口径のものに変更している。
    念のために九ミリのバレルも用意しているが、当面は人間を一発で大人しくさせる銃弾の方が安心できそうだ。

    人間は時に予想外の根性を発揮し、襲い掛かってくることがある。
    十発近く九ミリ弾を撃ち込まれても警官を襲った犯人の例など、いくらでもある。

    (=゚д゚)「一日中歩き続けるのはごめん被るんだが、どうすればいい?」

    |゚レ_゚*州「んなもん、自分で考え――」

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          r=L. ___              || f´ ハ|
        ゞィ √/ √ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|| 入__ン j
         厶 厶厶 L _______ヽ、 ,r‐、rf
       | 「ニ  |_r┘            | | ゝ-'||
        |__ノ  | /   r'r───── | |  _jj
        ,ゝ - ┴ァ‐- 、LL. _√ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
        / /   i     | |ニト、
    . _/ /}    ,-─ 、| |ニ| \
     / r'   ┴─ ⊥l_ 」、__ン
    .| {          `ヽ
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    (=゚д゚)「わりぃな、良く聞こえなかった」

    銃口が向けられると、男は一度口を閉じた。

    (=゚д゚)「浮浪者がここを根城にしていたとしても、外部との接触は必須ラギ。
        この土地以外への接触をするために歩き続けるなんて、正気の沙汰じゃねぇラギ。
        となると、奴らは何かしらの移動手段を使って他の自治区に移動してるんだろ?
        言えよ、もったいぶらずに」

    |゚レ_゚;州「と、トロッコだよ。
         移動用の小型トロッコとレールがあるんだ」

    (=゚д゚)「最初からそう言えよ」

    |゚レ_゚;州「悪いことは言わねぇから、止めておきな。
         あそこの連中は浮浪者って言っても、昔はヴォルコスグラードで暴れてた荒くれどもだ。
         実際、あそこを通るのは奴らの仲間ぐらいなもんだ」

    ヴォルコスグラードはトラギコもよく知っている区画だ。
    かつてはシャルラの中心的な役割を果たしていた区画であり、そして、約七年前に“戦争王”の怒りを買って一夜にして壊滅した場所だ。
    当時の資料を見たことがあるが、建物のほとんどが焼け落ち、瓦礫の山と化していた。
    今地下に広がっている廃墟の方がまだ上品さがあると思えるほどの破壊の痕跡は、鮮明に記憶に残っている。

    (=゚д゚)「カツアゲしようとした相手にアドバイスったぁ、随分といい子になったラギな。
        だけどな、俺はここじゃない場所に用があるラギ。
        あの場所まで俺を連れていけラギ」

    |゚レ_゚;州「そ、そんな!! マジで勘弁してくれって!!」

    (=゚д゚)「嫌ラギ。
        どうしてもって言うんなら、お前の上着を貸してくれラギ」

    |゚レ_゚;州「上着を? どうして?」

    (=゚д゚)「俺はもともと服を買いに行ったんだよ。
        服の代金なら、後であのバーテンを絞めておけラギ」

    |゚レ_゚;州「ほ、ほら、やるよ、やるから」

    男は着ていた防寒性の高い上着を脱ぎ、トラギコに手渡した。
    使用感はだいぶあるが、長い間使用されてきたために、新品にありがちな動きにくさはない。
    少々タバコと潮の匂いがすること以外、不満はない。

    (=゚д゚)「わりぃな、運が良ければ返すラギ」

    トラギコがもう用はないとジェスチャーすると、男はゆっくりと後退し、そして駆け足で廃墟の中へと消えていった。

    (=゚д゚)「あいつらは列車で、俺はトロッコかよ」

    トロッコに乗ることが出来れば御の字だが、それも出来ずに徒歩で移動することになると厄介だ。
    徒歩で長距離の移動をするだけでなく、閉鎖的かつ馴染みのない治安の悪い場所での一人歩きは犯罪に巻き込まれたい人間のすることと決まっている。
    可能な限り素早く、そして安全な移動が望ましいが、地上が猛烈な冷気に襲われている以上はこうして移動できるだけでも重畳なのだろう。
    ベレッタをホルスターに戻してからトンネルへと近づくと、ツンとした匂いが強烈に鼻についた。

    (;=゚д゚)「くせぇな、おい」

    トラギコが呟くと、どこからともなく、鞘走る音が聞こえた。
    溜息交じりに振り返ると、防寒着を着込んだ男が一人、ナイフを手に立っていた。
    顔中に生えた髭と汚れた肌のために、年齢は分からないが、その立ち姿からまだ比較的若いであろうと推測した。

    (=゚д゚)「んだよ。
        男のストーカーは気持ち悪いだけラギよ」

    (-゚ぺ-)「どこの誰だか知らねぇが、ここの利用料を払いな」

    (=゚д゚)「無料キャンペーン中だろ?
        さっきそこの壁に書いてあったのを見たラギ。
        それより、トロッコ貸すラギ」

    (-゚ぺ-)「ジョークなんかいらねぇから、金出せって言ってんだよ」

    (=゚д゚)「仕方ねぇな」

    トラギコは懐に手を入れ、そこにあった小銭を指で動かして音を鳴らした。

    (=゚д゚)「ほら、ここにあるから取りに来るラギ」

    (-゚ぺ-)「お前が持ってこい」

    (=゚д゚)「俺が持っていくんなら、手数料取るラギよ」

    挑発的な笑みを浮かべ、トラギコはそう言った。
    男は激昂し、唾を飛ばしながら睨みつけた。

    (-゚ぺ-)「殺されてぇのか、お前!!」

    (=゚д゚)「あんまり怖いこと言うなよ、足が動かなくなっちまうラギ」

    ナイフを持った手を振り上げ、男が突進してくる。
    こうなると相手にするのは比較的楽だ。
    猪突猛進な素人は直線的な動きになりがちであり、その攻撃を予測することが出来る。
    これまでに何百人と犯罪者を相手に戦ってきた彼にしてみれば、赤子の手をひねるようなもの。

    振り上げられたナイフが刺突に切り替わることがないため、トラギコが選んだのは男との距離を意図的に縮めることだった。
    刃による刺突がない以上、相手の懐に入り込めば一撃目を回避することが出来る。
    一切の恐れを体に出すことなく、トラギコは最適な速度で距離を詰め、男の攻撃のタイミングを完全に狂わせた。

    (-゚ぺ-)「おっ?!」

    (=゚д゚)「息がくせぇんだよ」

    双方の接近する速度を乗せた膝蹴りが、容赦なく男の股間を直撃した。
    睾丸は内蔵であり、覚悟なしに受けたその一撃は、あらゆる男を例外なく悶絶させ得るものだ。
    ナイフを取り落とし、男はその場で股間を抑えてうずくまった。
    額から滝のように汗を流し、言葉にならない苦悶の声を上げる。

    (;-゚ぺ-)「あが……ががががっ……
         ぎぎっ……」

    (=゚д゚)「わりぃ、多分一個潰れたラギね。
        竿だけになる前に俺の要求を聞くか、選ばせてやるラギ。
        俺はこう見えて優しいから、潰す前にちゃんと教えてやるラギよ」

    (;-゚ぺ-)「ふざ……っけ……!!」

    (=゚д゚)「俺は真面目ラギ。
        お前が案内出来ねぇんなら、とりあえず竿もいっておくラギか」

    (;-゚ぺ-)「クソっ、分かった……!! 分かったからやめろ!!」

    (=゚д゚)「最初からそう言えばいいラギ。
        素直になれない奴は嫌いラギ」

    そう言いながら、トラギコは男の右手を踏みつけた。
    指の骨が数本折れる音が足の下から聞こえたが、すぐに男の悲鳴で上書きされた。

    (=゚д゚)「分かったんなら、今すぐに動けよ」

    飛び上がるほどの勢いで男は立ち上がり、逃げるようにしてトンネルの方に向かって走り出した。
    男が取り落としたナイフを拾い上げ、トラギコは無造作にそれをつまみ上げた。
    手入れのよく行き届いたそのナイフは、男の身なりとは対照的で、それがトラギコに疑念を抱かせた。

    (=゚д゚)「……取り仕切ってるやつがいるのか」

    道具を大切に使う人間は、ほぼ総じて腕の立つ人間だ。
    少なくとも腕の立つ人間は道具にこだわりを持ち、その道具の手入れを怠ることはない。
    しかし先ほどのやり取りを通じて、トラギコはあの男から練度というものを微塵も感じることが出来なかった。
    つまり、優れた道具を支給し、屑達の統率を取る人間がいると考えるのが自然だ。

    ただの浮浪者集団ではないとなると、最初から銃を構えておいた方がいい。
    トラギコはナイフをアタッシェケースと共に左手で持ち、ベレッタをホルスターから取り出した。
    装弾数は薬室内の一発を含めて九発。
    浮浪者の人数が片手に収まる規模であればいいが、そうそう都合のいい展開は起こり得ないことを彼はよく知っていた。

    その考えと彼の危惧を肯定するかのように、AK47を持った男の集団がトラギコを待ち伏せていたかのように、廃墟の中から姿を現した。
    トラギコに痛めつけられた男を筆頭に武装した男の数は優に十人を越えており、四方を取り囲まれるのは時間の問題だった。
    長引けばそれだけトラギコは包囲される可能性が高くなり、逃げる道が限られてくる。

    (=゚д゚)「こんなに出迎えを寄越すとは、随分と律儀な奴ラギね」

    (;-゚ぺ-)「終わりだよ、おめぇはよぉ!!」

    先ほどまで泣き喚いていたのに、現金なものである。

    (=゚д゚)「それは困るラギ。
        こんな肥溜めみたいなところで終わると、色んな奴らから怒られちまうラギ」

    (;-゚ぺ-)「武器を捨てて、金を置いていけ!!」

    その言葉で、トラギコは彼らの練度が低く、人を殺すことではなく痛めつけることの経験値が多いと推測した。
    問答無用で銃を撃てばいいのにそうしないのは、その経験が少ない、もしくは極力そうしないように命令を受けているのだ。
    こちらがその指示に従うと思っているのであれば、それは好都合だ。
    初弾を撃たせる前に動けば、状況の変化をもたらすことが出来る。

    指示によって動き、なおかつ戦闘の素人となれば先手を取れば逆転は可能だ。
    トンネルまでの距離はそう遠くない。
    五分も全力疾走すれば到着するが、それは妨害がない場合に限る。

    (=゚д゚)「じゃあまずこのナイフを返すラギよ」

    アタッシェケースを足元に落とし、左手のナイフを男たちの頭上めがけて高々と放り投げた。
    回転しながら落ちていくナイフの軌跡を、誰もが目で追った。
    運悪く自分に振ってきたら避けられるようにという、人間らしい行動だ。
    そしてトラギコはアタッシェケースを拾い上げると、最も近く、最も壁が残っている廃屋に向かって疾走した。

    ナイフの切っ先が地面に落ちる時には、彼の体は男たちの前からなくなり、発砲を迷っていた男たちの怒号が響いた。
    先ほどの男が言っていた通り、この場所での大々的な争いを避けたいという意向が染みついているようだ。
    トラギコの勘では、警察の介入を恐れているのではなく外部の組織がこの街に干渉することそのものを恐れているのだろう。
    ヴォルコスグラードでの一件で、そこに住んでいた人間達が心に深い傷と教訓を刻むことになったのは間違いない。

    万が一また“何か”が起きてしまえば、シャルラは街の半分を失いかねないという恐怖心。
    そういった恐怖心が発砲を躊躇させ、トラギコの行動を許してしまったのだ。
    迂闊な集団で助かったが、もしも彼らが殺しに長けていたらトラギコは今頃鉛弾で体重を増やすか、それとも血肉を失って倒れるかしていたに違いない。
    予備の弾倉二つでは足りない。

    彼らが持っていたカラシニコフを奪い、それを使うべきだ。
    最大の問題は、ここの地理についてトラギコが何一つ知らないということだ。
    こちらが隠れ潜む場所は彼らにとって簡単に予測できるだろうし、追い詰めるべき場所も分かっていることだろう。
    地の利は相手にあり、経験不足を補うのには十分な要素だ。

    人数と武装の種類から言っても、トラギコの方が不利なのは間違いない。
    ここで警察の身分証を掲げたところで、大した効果は得られないだろう。

    (=゚д゚)「ちっ、面倒ラギね」

    トロッコのある場所へと辿り着いて目的地に無事到着できればトラギコの勝ち。
    それ以外はトラギコの敗北である。
    条件があまりにも厳しすぎるが、不可能ではない。
    少しばかり予定が変わるが、トラギコは改めて覚悟を決めた。

    (=゚д゚)『これが俺の天職だ』

    アタッシェケースに入っている強化外骨格“ブリッツ”を起動し、両腕に機械仕掛けの籠手を装着させ、山刀のような大振りの高周波刀を左手で握った。
    酷使に次ぐ酷使を経ても、ブリッツはその動作に微塵の不調も見せない。
    発掘される多くの棺桶が極めて精密な機械の塊であるのに対して、ブリッツの仕組みは極めて単純だ。
    それ故に修理も取り扱いも容易く、故障もほぼありえない。

    戦闘を避け、なおかつ敵に先回りされない道の確保にはその堅牢さと確実な動作性が必要だった。

    (=゚д゚)「……賠償請求だけは気を付けねぇとな」

    高周波刀のスイッチを入れ、トラギコは建物の壁にそれを突き立てた。
    風化していながらも建物の壁はしっかりとした状態を保っており、使用されている素材が良質なものであることが分かる。
    銃弾を防ぐにはいいが、トラギコにとっては無理矢理道を作り出す上では邪魔でしかない。
    円を描くようにして、トラギコが通り抜けられる大きさの穴を切り出すのに要したのは約八秒。

    直線距離で進み続ければトロッコの場所へと辿り着けるだろうが、少々時間がかかりすぎてしまう。
    壁を突き抜け続けるのではなく、必要に応じて使い分けるしかない。
    次の方法として考えていたのは、建物の屋上から屋上へと移動する手だ。
    これならば壁に穴をあける手間を省けるが、屋上伝いに渡れるとは限らないという可能性がどこかで生じる問題がある。

    初体験の土地で集団に襲われることは初めてではないが、慣れきっているわけでもない。
    当然、警察本部もトラギコの捜査で生じた賠償金を支払うということも初めてではなく、慣れているわけでもない。
    トラギコにとって憂鬱の種は、その後に控えている嫌味と始末書の提出だ。
    そろそろ彼が書いた始末書の中身が過去の使いまわしであることが発覚してもよさそうなものだが、上層部は紙を受け取るだけで満足するらしい。

    それなのに始末書に割く時間が極めて愚かしい。
    いっそサインだけにすればいいのにと意見したことがあったが、当然、却下された。
    せいぜいこの地下の住人たちが警察に対して訴えを起こし、賠償請求をしないことを願うばかりだ。

    (=゚д゚)「……っしゃ」

    短く息を吐いて、そして、トラギコは走り出したのであった。

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    :|   :     August 19th AM10:07
    シャルラ/スリエヴァ・ウモーリャ区 駅周辺
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    定刻通りスノー・ピアサーは凍り付いたシャルラの街に停車し、乗客を降ろした。
    すでにスーフリは収まり、現地の人間達がスノー・ピアサーを歓迎する準備まで整えていた。
    僻地、あるいは不毛の大地として外部からの客が少ない彼らにとって、スノー・ピアサーは街にとっての救世主なのだ。
    目的地に到着した乗客たちはこれまでの旅を経て自分たちが生きていることを実感するために、続々と笑顔で下車した。

    想定されていたよりも多くの客が街に流れ込んだことにより、街にある小さな店は軒並み込み合うことになった。
    飲食店は勿論、服屋、酒屋までもが客でにぎわいを見せている。
    店が繁盛する最大の要因は、客が想像していた以上に厳しい気温と気候だった。
    灰色の雲が薄らと空を覆う天候であることに加え、海から吹いてくる冷たい風が客たちに温かい食事と風から逃れられる場所を求めさせたのである。

    その気温はシャルラでは少し肌寒い程度の物だが、この土地以外で育った人間にとっては極寒のそれに感じるものだった。
    木造の内装の店内では客たちが湯気の立ち上る食事に舌鼓を打ち、窓の外に広がる荒涼とした景色と食事を比較して安堵を覚えた。
    僅かな水分の一切合切が凍り付き、きらめく光景はどこか長閑な様子にも見える。
    納屋の前に置かれていた家畜用の水樽が真っ白に凍り付いていることから、スーフリの寒さがどれだけ常識を逸したものなのかが分かる。

    乗客の中にはその光景を見学するために、あえて極寒の街を歩いている変わり者たちもいた。
    この土地に来なければスーフリの影響を見ることなどできないため、確かにこれを見逃せば次に見る機会はないかもしれない。
    デレシア一行は、その光景を見学するのは後にして、まずは食事を優先していた。
    食べられるときに食事を摂り、影響と体力を備えておくこともまた、この土地では次がいつになるか分からないことなのだ。

    (∪´ω`)「ふー、ふーっ」

    ブーンは赤いスープの入ったカップを両手で持ち上げ、湯気の立つ液体に向け、冷ますようにして息を吹きかけた。
    スープを少量啜り、スプーンで具を掬い上げて口に運び、それを嚥下して満足げに息を吐いた。

    (∪*´ω`)=3「ほっ」

    ヒート・オロラ・レッドウィングはスープと具をスプーンですくい、それを口にした。

    ノパ⊿゚)「見た目とは全然違うな。
        甘酸っぱくて食いやすいな」

    (∪*´ω`)「ほっとしますお」

    ボルシチと呼ばれる郷土料理はその色味こそ赤いが、辛みを生み出す食材は入っていない。
    トマトやビーツの色がスープとして溶けだし、それらと他の野菜や肉の味が混ざった優しい味のする料理だ。

    ζ(゚ー゚*ζ「この辺りではよく食べられる料理で、作る家ごとに中身も変わってくるのよ。
          これは基本的な形のものね」

    デレシアもスープを啜り、その素朴な味を確かめるように頷く。
    以前にこの店を訪れた時と変わらない味だった。
    特別美味というものでもないが、寒い日に食べると落ち着く味だ。

    (∪´ω`)「お」

    食事の途中で、ブーンがスプーンを咥えながら窓の外を見た。
    つられてデレシアも目を向けると、そこに見知った顔の男がいた。
    険しい表情を浮かべる顔には煤がついており、少しの疲労感が漂っている。
    だが、目に宿る獣じみた鋭い眼光は健在だった。

    ζ(゚ー゚*ζ「あら?」

    (=゚д゚)

    トラギコ・マウンテンライトは使い古されたと一目で分かる漁師用の防寒具を着て、まっすぐに前を向いて店の前を通り過ぎて行った。
    その一瞬、デレシアは肩かけの紐の先にあるAK47に気づいた。
    彼の得物はM8000であり、ジュスティア警察が支給するとしたらコルト・カービンのはずである。
    それにジュスティアがトラギコにわざわざ餞別代りのライフルを託すとは思えないため、恐らく現地調達をしたのだろう。

    しかし、彼はデレシアたちに気づいていない様子だった。
    彼は人探しのために歩いていたのではなく、どこか目的地があって歩いているのだろう。
    そうでなければ彼が気づかないはずがない。
    この土地にある目的地など、今の状況では一つしか考えられない。

    ノパ⊿゚)「どした?」

    ζ(゚ー゚*ζ「トラギコが来てたわ。
          無事にジュスティアから出られたのね」

    予想では彼をジュスティアにとどめておくと思ったが、案外、警察の上層部も柔軟な考えが出来るようになったらしい。
    それとも、ティンバーランドの脅威についてジュスティア警察も無視が出来なくなったのだろうか。
    最も可能性の高い話であれば、デレシアを追う人選の問題があったのかもしれない。

    ノハ;゚⊿゚)「あいつもタフだな……
        というか、どうやって追いついたんだよ」

    ζ(゚ー゚*ζ「多分海を使ったのね。
          高速艇で行けば不可能じゃないけど、相当揺られたはずよ。
          ウモーリャ区に着いて、後は陸路で移動ね」

    ノパ⊿゚)「だとしてもよ、スーフリの間は動けないだろ?
        終わったのが昨夜だから、それまではどうしてたんだろうな」

    ζ(゚、゚*ζ「うーん……」

    手は二つある。
    一つは、全天候対応の車輌を使うこと。
    そしてもう一つは、地下を使うことだ。
    プレッパー達が作り上げた“遺跡”には、地下に張り巡らせた通路がある。

    現実的なことを考えると前者はありえないため、必然的に後者を選んだことになる。
    それならば彼の顔に着いた煤もカラシニコフにも説明がつく。
    何らかのきっかけで彼は地下に行き、そこからこの場所まで辿り着いたのだ。
    トラギコはデレシアの思った通り、優秀な警官だった。

    ζ(゚ー゚*ζ「多分、リハビリでもしながら来たんじゃないかしら」

    彼の目的地がスノー・ピアサーであるならば、その目的を想像するのは難くない。
    スノー・ピアサーにはモスカウの統率者が乗車しており、モスカウに所属する人間がモスカウの統率者と合流するのは自然な流れだ。
    デレシアの観察が目的であると語った彼の言葉が真実であれば、トラギコはその補助として呼ばれたのかもしれない。
    すでにデレシアはワカッテマス・ロンウルフに対して直接的な牽制を行い、その身に思い知らせている。

    トラギコが合流したところで、気を大きくしてデレシアの逮捕などと言う世迷言を口にすることはないだろう。
    トラギコ自体がデレシアの逮捕を目論んでいるのは知っているが、彼の中にある優先事項の最上位はティンバーランドのはず。
    ここで無駄な時間や争いを選ぶような馬鹿ではない。
    デレシアの静かな脅しとトラギコの制止があれば、ワカッテマスが聡明である限り動かないだろう。

    彼らの目的地がどこであれ、デレシアたちはラヴニカでこの列車旅を終える予定になっている。
    “レオン”の修理が終われば後はディを使ってラヴニカを後にするだけだ。
    ラヴニカの後はせっかくなので街をいくつか挟み、イルトリアに向かおうと考えていた。

    ノパ⊿゚)「ま、今更あたしたちに突っかかって来ることはねぇだろうからいいけどさ。
        統率者さんはどうなんだろうな」

    デレシアはヒートたちにワカッテマスのことについて話を済ませていた。
    今後の旅の障害になり得る彼の正体、所属している組織についての話は重要なものだ。
    特にヒートについては名高い殺し屋の過去を考えれば、モスカウにマークされている可能性が高く、近寄らない方がいい。
    トラギコが気づいていなかったことを思い起こせば、別の人間が担当している可能性が高そうだ。

    ζ(゚ー゚*ζ「狙いは私だけだったみたいだから、あまり気にしなくていいと思うわよ」

    ノパ⊿゚)「デレシアがそう言うんなら、大丈夫だろうな。
        ……明日の夜にはラヴニカか。
        レオンがすぐに修理できりゃあいいんだがな」

    モスカウもそうだが、ティンバーランドの危険性についてヒートは心配しているようだ。
    確かに、彼女の心配するように、どこかへの滞在が長引けばそれだけ危険が増えることになる。
    なりふり構わず動き出しつつあるティンバーランドの細胞がどこに潜んでいるのか分からない以上、長居は避けるべきだ。

    ζ(゚ー゚*ζ「滞在場所とかは安全なところだから安心して。
          ただ、ラジオで流れていた情報が気になるのよね」

    ノパ⊿゚)「どんな話だ?」

    ζ(゚、゚*ζ「ギルド内で揉めてる、って話。
          “キサラギ”ってギルドが協定を変えようとしているのよ。
          あの街を支えるための協定なんだけど、それを今になって、っていうのが気になるのよね」

    昔からあるものが急激な変化を迎えることは往々にしてあるが、そんな時には必ず外的な要因が関係している。
    最古参の一つであるキサラギがその扇動を行うということは、彼らを焚きつけた存在があるはずだ。
    世界の動きを考えて、あまりにもタイミングが良すぎる。
    ティンバーランドが隠れ蓑にしている内藤財団が動いているのであれば、ラヴニカは再び血で血を洗う抗争の火に包まれることになる。

    ギルドパクト成立にあたって流した血と死者を忘れた世代が今再び争いを起こすのであれば、これほど嘆かわしい話はないだろう。

    ノパ⊿゚)「観光客には関係なさそう……ってわけじゃないんだな」

    ζ(゚、゚*ζ「キサラギが交通や観光を束ねるギルドなのよ。
          だからスノー・ピアサーが到着した時にその争いに巻き込まれないとも限らないのよね」

    スノー・ピアサーはエライジャクレイグの一部であり、その車両に手を出すということは街同士の争いということになる。
    地上を素早く安全に移動する唯一の手段である列車を取り仕切るエライジャクレイグは、絶対にして不可侵なのだ。
    陸運最大の手段を失えば、街が被る被害は本人たちが想像している以上の物になる。
    最悪の場合、街が滅びてもおかしくない。

    ζ(゚ー゚*ζ「ま、一応備えておきましょう」

    (∪´ω`)「おっ」

    ブーンは硬めのパンを使って皿に残ったスープを拭うようにして取り、ボルシチが染みたパンを美味しそうに頬張った。
    彼にはまだ、今の状況はよく分かっていないだろう。
    デレシアたちが心配しているのは水面下の動きであり、子供にはまだまだ分からない世界だ。
    しかし、ブーンも無関係のままではいられない。

    彼がデレシアたちと旅を続ける以上争いごとからは決して逃げられない。
    そろそろ彼にも武器を手渡し、己の身を守るだけの技術を教えていかなければならない。
    勉学も身を守るための物だが、この世界を知識だけで乗り切ることはできない。

    ζ(゚ー゚*ζ「美味しい?」

    (∪*´ω`)「美味しいですお」

    ζ(^ー^*ζ「それは良かった」

    彼がその必要に迫られる日が来るのは、そう遠いことではない。
    だがデレシアもヒートも、ブーンに人殺しをさせたいわけではなかった。
    可能であれば誰も殺さない人生を歩んでもらいとさえ思っているが、この時代、そして彼の進む道は決して奇麗なままではいられない。
    一体いつ、そして何故彼がその手を汚すのか。

    一抹の不安を抱きつつも、デレシアはそれも含めて彼の成長を見守っていこうと改めて思ったのであった。

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    __乂爻爻爻ソリ::: : : : : ::::|   ||      | : ::| |i:i:i:i:|
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    :::l|i:|从}i:}メ'^ : : : : : : : :::|   ||      | : ::|‐‐ァ{ / ̄7ーr/^ヽ_
    :::l|i:|弋ニニフ_ 「|  「|_,,| _ ||      |_,||/_ゝ_/ r<>''" ̄|
    :::l|i:| {   }YYf⌒Y´ `YY__ヽ__,.二ニ=ミ ||トミs。.,    ̄| :|:::::::::::::: |
    /l|i:| ',  Y´  `Y_フ─(__)|\::\   `ヽ≧s。;';';';';` ーL_,|,.。s≦「:|≧s。
    :::l|i:|¨ゝ‐‐ゝ--イ-=ニ''¨ ̄|::::::\_\-''"_}__}:::|;';';';';';';';';';';';'|_|s。: : : :┘:
    /l|l|l      |i;';';';';';';';';';';';'\  |:::::|ニフフノ _」;';';';';';';';';';';';';';';';';'>
    i:il|l       |i;';';';';';';';';';';';';';'\|_,.。o≦⌒;';';';';';';';';';';';';';';'>''" August 19th PM00:12
    スノー・ピアサー内 / 一般寝台車
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    熱いシャワーと熱い湯船で体を清め、トラギコ・マウンテンライトはようやく一息つくことが出来た。
    湯船に浸かりながら、トラギコは生きてスノー・ピアサーに到着できたことを痛感していた。
    銃を奪い、トロッコを奪い、狭苦しいトンネル内での銃撃戦を経て、生きて風呂に入る喜びを噛み締めるのは人として当然だ。
    一時間近い入浴を終え、トラギコは買ったばかりの服に身を包み、リビング兼寝室に戻る。

    (=゚д゚)「まさかあんたと仕事するとは、思ってもみなかったラギよ」

    ( <●><●>)「そうか、私は遅かれ早かれ一緒になると思っていましたよ」

    新聞を読みながらサンドイッチを食べるワカッテマス・“ロールシャッハ”・ロンウルフを見て、トラギコは溜息を吐いた。

    (=゚д゚)「はぁ…… で、あんたは本部に何て命令受けたラギ?」

    ( <●><●>)「トラギコ君と同じですよ。
            デレシアを見定め、逮捕する、です」

    (=゚д゚)「ログーランビルの生き残りはどうしてるラギ?」

    ( <●><●>)「ちゃんとこちらの監視下にあるから安心してください。
            それより、君の報告を私は聞いていないんです。
            ラヴニカに着くまでは時間があるから、話をしましょう」

    新聞を畳み、ワカッテマスはサンドイッチの残りを口に放り込み、コーヒーで流し込んだ。
    その目はまっすぐにトラギコを見据え、決して逃さないという明確な意思を表している。

    (=゚д゚)「本部でいやって程話したから、遠慮しておくラギ。
        それに、この際だから言っておくけど俺はあんたが苦手ラギ」

    トラギコにとって、ワカッテマスは天敵のようなものだ。
    モスカウを統率する彼の行動はトラギコでさえ理解しきれないものがあり、情報を利用した脅しは彼の十八番だ。
    対象の家族構成は勿論だが、その過去にまで切り込み、弱みを見つけ出すことに関しては警察で最高の腕を持っていると断言できる。
    それでいて飄々とした言動は真意を悟らせず、こちらが彼をどう見るのかによって、その存在感が変化する。

    その様から“ロールシャッハ”と渾名をつけられ、敵味方問わずに恐れられている人間である。
    デレシアも分かりにくいが、この男も分かりにくい。
    同僚として共に働くのがここまでやりにくい男は、トラギコの中では今までにいなかった。

    ( <●><●>)「はははっ、酷い言い草ですね。
            しばらくの間一緒に行動するんですから、親睦を深めるのはお互いにとって利益があると思いませんか?」

    (=゚д゚)「親睦を深めなくても、仕事はちゃんとするラギ」

    親睦を深めたつもりになっているだけ、ということも十分にあり得る。
    緊急時に背中を預けられない人間とは、正直、一緒の現場で仕事をしたいとは思えない。

    ( <●><●>)「そうですね、じゃあまずはショボンとジョルジュについて私から話をしましょう」

    (=゚д゚)「……」

    ( <●><●>)「ショボンとジョルジュの二人に共通しているのは、早期退職者ということです。
            退職理由なんて言うのは、君も知っているでしょうが自己都合の一言で済んでしまいます。
            まぁ私はその辺が気になっていたので、調べてみました。
            ……どうですか、一緒に話をする気にはなりましたかな?」

    (=゚д゚)「……続けてくれ」

    ( <●><●>)「あの二人は、警察の体制に対して不満を抱いているという共通点がありました。
           ジョルジュ君については君がよく知っているだろうから説明を省きますが、ショボン君は初耳でしょう。
           彼が警察を引退後、ある地方で隠居生活を送っていました。
           その町で妻と子供を暴徒に殺されてしまいましたが、警察が介入できない事情がありましてね。

           その一件から数年後、彼は探偵になったわけです。
           何かがその間に起きた、と考えるのが自然でしょう」

    彼と共に事件を追ったのは僅か三か月だけだったが、確かに、彼に妻子がいるのは聞いたことがあった。
    流石はワカッテマスだ。
    しかし、知りたいのはそんなことではない。

    (=゚д゚)「ジョルジュとの共通点っていうのは何ラギ?」

    ( <●><●>)「これはあくまでも私の推測ですが、二人は正義感の強い人間でした。
            それがある一定のレベルを越えてしまったんでしょうね。
            で、私が聞きたいのは主に彼らが所属しているという組織についてです。
            聞いたでしょうが、ティンカーベルからの移送団が襲撃されてショボンが奪われました。

            円卓十二騎士の戦闘記録を見ると、名持ちの棺桶が複数機確認されています。
            しかも潜水艦まで持ち出してきました。
            これだけの財力と武力、人員を確保している存在を知りたいんです」

    (=゚д゚)「あんたと俺の仕事はその組織調べじゃないだろ。
        デレシアとその組織がどう関係あるラギ?」

    ( <●><●>)「デレシアとその組織は無関係でないにしろ、少なくとも、彼女がその指揮を執っていないのは分かります。
            私の得た情報とベルベット・オールスターの報告したものに盛大な違いがあった上に、彼自身の信用が今はできません。
            きっと今頃、彼も含めて尋問が始まっているでしょうね」

    (=゚д゚)「よくあいつを尋問しようと思ったな。
        誰の判断ラギ?」

    報道担当官は言わば警察のマスコミ向けの顔。
    そう簡単に表舞台から引きずり下ろすことのできない存在のはずだ。
    特に、外聞を気にする上層部がここまで素早く対応できるとはにわかに信じがたい。

    ( <●><●>)「あぁ、それは私の判断ですよ。
           もちろん表向きには尋問とはしませんが、どうにも昔から胡散臭いと思っていましてね。
           彼の出自が奇麗すぎるのもそうですが、今回のティンカーベルの一件の動きが不自然です。
           で、私は組織について知りたいのです。

           こうしてデレシアを追うのは悪くないが、如何せん、あの女性はまだこちらの手に余ります。
           それに、あれだけの事件の陰に彼女がいるのと同じように組織の存在もある。
           なら、優先事項は明白でしょう」

    (=゚д゚)「接触したのか、デレシアに」

    ( <●><●>)「そりゃあ仕事ですからね。
           参りましたよ、私の正体を見破るなんて完全に想像していませんでした」

    内心でトラギコはワカッテマスに同情した。
    あのデレシアに善意以外の感情を持って接触し、無事で済むことなどまず有り得ない。
    それは彼女に対する信頼だ。
    例えモスカウの統率者であったとしても、あの女を出し抜くことは不可能だ。

    聡いデレシアのことだ、ワカッテマスが監視していることに気づき、色々と手を打ったのだろう。
    それにしてもワカッテマスの正体を当てるとは、つくづく恐ろしい女だ。
    トラギコの獲物に手を出そうとした男には、丁度いい薬になっただろう。

    (;=゚д゚)「あんたがしくじるなんて、道理でスーフリなんて変な天気になるわけラギ」

    ( <●><●>)「誰にでも失敗はあります。
           さぁ、話をしましょう。
           組織について、知っている限りを私にも話してください」

    (=゚д゚)「……俺の知ってることなんて一部だけラギよ。
        それに、あんたも察している通り警察内にも組織の人間がいるラギ。
        あんたがベルベットを保護する名目で連れ出していないなんて保証、どこにもないラギよ」

    ( <●><●>)「だったら今頃私は君を殺していますよ。
           ま、疑い深くなる気持ちも分かります。
           かつての先輩二人が裏切り、あちらこちらに組織の細胞が入り込んでいるとなれば迂闊な行動や発言は出来ませんからね。
           私が知り得ている限りの情報を並べると、組織は内藤財団とつながりがある可能性が高いのですが、合っていますか?」

    (=゚д゚)「オープン・ウォーターの一件で、俺もそれは思ったラギ。
        西川・ツンディエレ・ホライゾンがデレシアが主犯だと言っていたらしいが、事実は逆ラギ。
        あんたも知ってるかもしれないが、ワタナベ・ビルケンシュトックが入り込んでいたラギ。
        ってぇことは、警備体制に意図的な穴があったとしか思えないラギ」

    ( <●><●>)「ほぅ、あのワタナベ……ですか。
            ……会ったのですか、彼女と。
            いかがでしたか?」

    (=゚д゚)「ん? あぁ、そりゃあ会ったし、ろくでもない奴だったラギ。
        何か問題でもあるラギ?」

    ( <●><●>)「いえ、気にしないでください。
            よく生きていられたな、と感心しているのです。
            他のメンバーで知っている人間はいましたか?」

    (=゚д゚)「イーディン・S・ジョーンズだ。
        あいつが棺桶を流してるはずだ」

    (;<●><●>)「博士もあちら側だったとは……
           でも、名持ちの棺桶を多数持っているのは説明が付きますね。
           組織自体の目的と言うのは……分かりませんよね」

    (=゚д゚)「あぁ、まるで見えてこねえラギ。
        ろくでもないってのは間違いなさそうだけどな」

    ( <●><●>)「デレシアなら知っているんでしょうか」

    トラギコは一瞬その質問に答えそうになったが、これが罠であることに気づき、無難な返答を口にした。

    (=゚д゚)「本人に聞いてみるのが一番ラギ」

    本部への報告でもそうしている通り、トラギコはデレシアとの接触をしていないことになっている。
    接触どころか、彼女と協力してティンカーベルやオアシズの事件に挑んだとは口が裂けても言えない。
    この男の実績や実力は信頼しているが、その背景等については信頼していないのだ。

    ( <●><●>)「また今度機会があればそうしてみましょう。
           デレシアについて君が知っていることはありますか?」

    (=゚д゚)「女でおっかねぇってことぐらいラギ。
        なぁ、ツーが言ってたんだが、ジュスティアの歴史に出てくる名前だってのは本当なのか?」

    ( <●><●>)「えぇ、本当ですよ。
            今回の仕事はそういった諸々の背景を含めて彼女を観察しなければなりませんからね。
            ただの偶然か、それとも関係者なのか。
            時間がかかりそうですから、しばらくは旅行を楽しみましょう」

    (=゚д゚)「デレシアが次にどこで降りるのか分かってないとそうもいかねぇだろ」

    ( <●><●>)「目的地は分かっていますよ。
           彼女が買ったのはラヴニカ行きのチケットです。
           我々もそこで降ります。
           二人っきりで旅行も悪くはないですが、サイレントマンも行動を共にしてもらいましょう」

    (;=゚д゚)「野郎三人の旅行かよ……」

    ( <●><●>)「んっふっふ」

    トラギコの嘆きを聞き、ワカッテマスは意味ありげな笑みを浮かべたのであった。

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      」| |‐|..| ̄| |_    _|口|__   August 20th PM07:15      /:|`| ||_|_|」「¨ |口口
    ∩_i||_i⌒i|⌒| | |   7匝匝匝マ                      |斗r≦_,,|_、┴====
    」」「j||_l_l|_|_|_|    //||ハ|∧爻爻Xxx、               n.|丁「 | l__,| |'⌒'| |
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    三| || | | ||  | | |二二二二二|二二二|兀兀兀兀兀_」       |_L_丁 ̄ | |  | |
    兀兀兀兀兀兀[| ̄ ゙̄|⌒| |⌒||^|⌒|⌒|⌒|_⊥-_|^|{      x<^\| |⌒iTTT乢L_|_|_|_
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    _,|_|_l_|_,||_,|_|_,|i| ̄ ̄ ̄ ̄/    /_| |⌒| |二|二ア: : : : :ヽ=「 | |i  | | | | | |\_弋ニニ
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    ニニニ|=ニア´//|'、 `ヽ  |  | |´||了||'^|_,|⌒|  イ淵ハ~~|'´ \∧|^|i|`'| ̄| 圦||  | :|
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    : | |: : | | || [| |'^| |'^| |^|_|// | ̄¨7                   ¨| ::|`'|^||^|ヘ 寸Z
    _,|_|: : | | ||/| | | | | | リxi     ギルドの都 ラヴニカ        |¨||、||_|ヘ| i^| |^|::|
    /:}‐⊥/;';'ミh、|_|_,,|xi(㌻                            |    ΤL|乂_|_|
    | | | ̄¨| ̄ |二二ニ=-ィi|'^| | |:||::| | || |/::: : | |/羽/|_|ノ     : : :|::|   |     |_|'^|T冖
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    スノー・ピアサーが巨大な門を潜り抜け、巨大な尖塔の数々に見下ろされた時、ブーンとヒートは月光に照らされる頭上の光景に圧倒されていた。
    近代的なビル群ではなく、趣のある古い建物がまるで一つの生物であるかのように重なり、絡み合い、繋がり、山のように聳え立っている。
    建物と建物の間には橋が渡され、大地を歩く人と同じかそれ以上の人間がヒートたちの頭上を歩いている。
    街の中を流れる川には小舟が浮かび、小さな明かりを頼りに何かをしているのが見えた。

    遥か昔から建物の増改築を繰り返し続け、街全体が建物のような様相を呈し、今日に至ってもその増改築は止まることを知らない。
    これがギルドの都、ラヴニカである。

    ノハ;゚⊿゚)「すっげぇ……」

    ζ(゚ー゚*ζ「地上だけじゃなくて、地下にも同じように街が広がっているわ。
          街の規模はジュスティアにもイルトリアにも負けないぐらい立派なんだけど、建物が少し古いのが最大の違いね。
          道幅が狭いから移動は基本的に徒歩、バイクや自転車、馬、そして運河になってくるの。
          交通の便があまりよくないといえばそうね」

    大都市と呼ばれるオセアンにも多くのビルがあったが、この街は建物と建物の間隔が非常に狭く、凝縮したような形になっている。
    それが生み出す圧迫感と存在感は、比類なきものだ。

    ノハ;゚⊿゚)「迷子になったら一発だな、これは」

    ζ(゚ー゚*ζ「自警団――“ゲートウォッチ”――が街中にいるから、万が一の時には案内してもらえるわ。
          運よくキサラギの担当者だったら観光案内もできるわ」

    ノパ⊿゚)「どういうこっちゃ?
        キサラギが自警団の担当、ってわけでもないのか」

    ζ(゚ー゚*ζ「最古参のギルドからそれぞれ推薦した人間で構成されているの。
           だからどこのギルドのゲートウォッチなのか、それはもう運次第ね。
           逆にリマータならいい飲食店を教えてくれるし、ヌルポガなら身を守るいい護衛になるわ」

    デレシアはペンの蓋を取り、白紙にサラサラとギルドの名前を書き綴った。
    そこに矢印を付け加え、更に、それぞれが取り扱う物についても書き加えた。

    ζ(゚ー゚*ζ「細かいのは把握しきれないぐらいあるから、最古参のこれだけ覚えておけば大丈夫よ」

    法律や規律を取り締まる“キュヒロ”と協力し、護衛や逮捕、処罰の実行をする“フォクシー”。
    賭博、風俗などの取り仕切りを行う“スネッグ”は勿論、この街に店を構えようとする者に場所の提供をする不動産担当の“ビットピア”。
    金融関係の“ビーマル”と蜜月の関係にある、揺篭から墓場に至るまでに関わるあらゆる保険、福祉を担当する“アゲサーゲ”。
    棺桶の修復から銃弾の製造、果てはその販売まで武器全般を取り仕切る“ヌルポガ”と同様に、嗜好品を始めとした商品の取り扱いと輸出入に強い影響力を持つ“バボンハウス”。

    飲食店関係の新規参入や食品の仕入れなどを指揮する“リマータ”に加入している店は、その特徴の一切合切を観光や交通を一手に担う“キサラギ”に捕捉され、ガイドの対象にされる。
    これらはあくまでも最古参のギルドであり、それ以外の商品や権利を取り扱うギルドは多数存在する。

    (∪´ω`)「おー」

    デレシアの書いた文字を食い入るようにブーンが見つめる。
    ギルドの構造は相互補助を基本としており、どれか一つだけでは独立できないようになっている。
    それらをまとめる不可侵の戒律が“ギルドパクト”であり、キサラギが崩そうとしているルールである。

    (∪´ω`)「数が多いですお……」

    ζ(゚ー゚*ζ「そうね、でもあまりギルドの名前を覚える必要はないわよ。
          あくまでも街を動かすときに便利な形態ってだけだから、観光客には無縁に近いわ」

    ノパ⊿゚)「これだけ厄介な仕組みをまとめる市長はどんな人間なんだ?」

    ζ(゚ー゚*ζ「それぞれのギルドの代表者、ギルドマスターと呼ばれる人が集まって政をするの。
          だから正確なことを言えば市長は十人いる、ってことになるわね。
          これもギルドパクトの一つね」

    (∪´ω`)「ギルドパクトって、すごいんですおね」

    ノパ⊿゚)「確かに、拘束力が凄いよな。
        破ろうとしたギルドってのは、今回が初めてなのか?」

    ζ(゚ー゚*ζ「締結してから落ち着くまでの間に小規模なのは何度かあったけど、私の知る限り、今回みたいに古参のギルドが大々的に動いたのは一回だけあったわね。
           ただ喧嘩の売り方と相手が悪くて、そのギルドは解体されてフォクシーに吸収されたはずよ」

    反旗を翻そうとしたのは、処罰専門のギルドに属する一部の人間達だった。
    彼らは超法規的な存在であることをラヴニカ全体に認めさせることで、より幅広い処罰を実行できる権限を求めた。
    それが私的な罰にまで発展することが明らかであったため、他のギルドマスター達はそれを否決した。
    否決されたその場で当時のギルドマスターは脅しの言葉を口にし、そして、ギルドは解体が決定された。

    あくまでもギルドの解体であり、それに属していた企業などが潰れることはなかったが、ラヴニカの中でギルドに所属していないことによる不利益の大きさは看過できない。
    そのため、属していた団体や企業はフォクシーへとギルドを変更することになった。
    不利益を被った存在がいるとしたら、その時に災いの言葉を口にしたギルドマスターとその取り巻きだけだった。

    ζ(゚ー゚*ζ「街としては今回の一件は寝耳に水だったでしょうね。
          なーんか作為を感じるのよね、部外者の」

    ノパ⊿゚)「まぁ、武器屋が言い出すんならまだしも観光業の連中が言い出すってのはなぁ。
        何かそれだけでかい儲け話があったのかもしれねぇな」

    『まもなく、ラヴニカ駅。 ラヴニカ駅に到着いたします。
    ラヴニカ駅でお降りの方は、お忘れ物などございませんよう、お気を付けください』

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    ..{二二二二|二二二二二 |ニニニ|ニ|::::::::|二二二二二二|:|::::          ラヴニカ駅
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    放送が入り、デレシアたちの正面に白いドーム状の駅が見えてきた。
    街の中央に位置する評議会堂の足元に作られたラヴニカ駅は、エライジャクレイグの車輌だけでなく、ラヴニカ内を移動するための鉄道のために作られたものだ。
    故にその駅は巨大で、上下に入り組んだ構造をしている。
    豪雪地帯や悪天候に見舞われやすい街での採用が広まっている地下鉄をいち早く取り入れ、蜘蛛の巣のように街の中に短距離鉄道が張り巡らされている。

    ドーム内はオレンジ色の明かりに薄らと照らされ、濃い影が落ちていた。
    線路を跨ぐように設置された足場やそこを歩く人影が、不気味なシルエットとなって映っている。
    姿は見えてもその詳細が見えない状態は、まるで黄昏時のそれだ。
    漂う空気に、ヒートは眉を顰めた。

    ノパ⊿゚)「暗いな…… 節電中ってわけじゃなさそうだな」

    ラヴニカの街の明かりを見る限り、節電をしている雰囲気ではなかった。
    つまり、これはドームを管理する人間が意図的に行っていること。
    サプライズを用意しているにしては、やることが雑だ。

    ζ(゚、゚*ζ「……」

    (∪;´ω`)「……ぉ。
          なんか、きらいな感じがしますお」

    ブーンはデレシアとは異なる観点から異常を察知したようだ。

    ノパ⊿゚)「嫌いな感じってぇと、あんまり穏やかな空気じゃないな」

    ζ(゚、゚*ζ「間違いなく、歓迎ムードじゃないわね」

    スノー・ピアサーが停車すると同時に、車内放送が入った。

    『お客様にお伝えいたします。
    現在ラヴニカ駅に到着いたしましたが、トラブルが発生したため――』

    放送の途中で、外から機械によって拡大された男の野太い声が響いた。

    『遠路はるばるようこそ、ラヴニカへ。
    ただし、この街に足を踏み入れることはできない。
    この駅はキサラギギルドの管理下にあり、今現在、我々の方針として諸君らを受け入れることは出来ない。
    列車から一歩でも踏み出せば、即拘束させてもらう。

    規定により、諸君らは明朝この場を立ち去ってもらう。
    こちらから諸君らに危害を加えるつもりは一切ない。
    これは街の問題であり、諸君らを巻き込むことは有りえないと断言しておく。
    ラヴニカに用のある人間には申し訳ないが、街の問題が解決するまでは訪問を延期してもらう』

    その高圧的な声は車輛全体に向けて降り注ぐように告げられ、その言葉の真意を全員が理解するよりも早く防弾チョッキを着た男たちが列車を囲むようにして小走りに現れた。
    手にはMP7短機関銃を持ち、眼はスノー・ピアサーに向けられている。
    外装の外側から内側は一切目視することが出来ないため、彼らが乗客を見ることはない。
    そして、ほぼ一瞬の内にその映像は車掌の判断によって強制的に遮断された。

    ζ(゚、゚*ζ「あら」

    ギルド同士の揉め事が外部にまで波及したのは、恐らくこれが初めてのことだろう。
    何せ、巻き込む利点が何もないからだ。
    となると、この暴挙は何かしらの目的があって行っているものであり、こうして言いなりになっているのは彼らの思惑に沿うことになる。

    ノパー゚)「着いて早々これかよ。
         一応聞いておくけど、どうする?」

    ヒートが答えを知ったうえであえてその質問をしたことは、彼女の笑顔が物語っている。
    勿論、デレシアたちの目的地はこの街であるため、ここで降りる以外の選択はない。
    自然災害ではなく人の手によって道が凍てつくというのなら、デレシアが躊躇うことはない。

    ζ(゚ー゚*ζ「無論、降りるわよ」

    ――道が凍り付いたのであれば、踏み砕いて進めばいいのだ。

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    Ammo for Rerail!!編
    第五章【Frozen road-凍てついた道-】 了
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ページのおしまいだよ。。と