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第四章【Snowpiercer part2-雪を貫く者part2-】

  1. 名前: 歯車の都香 2019/06/24(月) 19:49:23
    第四章【Snowpiercer part2-雪を貫く者part2-】

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    あの山は確かに悪魔のいる山だ。

    だが、それでも俺はまたあの山に挑む。

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    __,ィ´ ̄ :::::::::::::::::::::__理由?

                   お前も一度登れば分かる。

     

                    ――クラフト山脈登頂挑戦者、“三本指”のビリー・バリアフリード

                                    登頂成功一ケ月前のインタビューにて

     

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    August 15th PM00:12

     

    ラジオから聞こえていた興奮した様子の声はようやく落ち着きはじめ、現場の状況を細かに説明し始めた。

    橋の一部が切り落とされたように海に沈み、そこにいた護送車の一団は海中に消えてしまったこと。

    ジュスティアの護送車を襲った人間たちが逃走し、それ以上の情報が何もないということ。

    凶悪犯が果たしてどれだけ野に放たれ、どれだけの人間が死傷したのかが心配であること。

     

    今の状況では何も分からず、詳しい情報は全てジュスティア経由で発表されるということだけが伝えられたということ。

    情報が更新され次第改めてリポートするという言葉を残して、ラジオは元の番組に戻った。

    多少のぎこちなさはあったが、すぐにそれもなくなり、プロらしい落ち着いた会話が紡がれていく。

    スノー・ピアサーの車輌にも落ち着きが戻り、人々はその事件についての考察を語ったり、別の話題に戻ったりした。

     

    食事を続けることにした者もいれば、部屋に戻る者もいた。

     

    ( <><>)「大変なことになりましたね」

     

    同意を求めるようなワカッテマス・ロンウルフの言葉に、デレシアは興味なさそうに返答した。

     

    ζ(゚、゚*ζ「そうね。後で始末書が大変そうね」

     

    彼女にとって考えなければならない問題は、ラジオの向こう側だけではない。

    目の前にいるワカッテマス、そしてサムという名を得た“葬儀屋”という殺し屋。

    更には同じ列車内にいるティングル・ポーツマス・ポールスミスも憂慮すべき相手であり、取り急ぎその正体を見定めなければならなかった。

    ティンカーベルで一団を襲ったティンバーランドと無関係か否か、更にはデレシアにとって有害な存在か否かが分からない今は、彼ら二人からは情報を引き出すことが大切である。

     

    少なくともこの男はジュスティアの出身者で、更には訓練を受けた経験のある人間だというのが分かっている。

    その身のこなしと言動が、この男の素性が堅気の人間ではないことをよく物語っているが所属までは分からない。

    デレシアへの接触を目的としていることがまず間違いないという点から、ある程度はその所属を絞ることが出来る。

    ジュスティアかティンバーランドか、そのいずれかに雇われたフリーランサーの探偵という可能性もあるが、“葬儀屋”と一緒に行動していると言う点がカギになりそうだ。

     

    ( <><>)「はははっ、確かにそうですね。

           皆無事だといいですが」

     

    ζ(゚、゚*ζ「流石に橋が落ちたんじゃ、無事では済まないわね。

         知り合いでもいるのかしら?」

     

    ( <><>)「多分いないと思いますが、どうでしょうね」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「まぁ、橋はきっと内藤財団がすぐに直してくれるでしょうね」

     

    ( <><>)「あぁ、確かに。

           橋のことを考えたら、彼らが手を貸すのが道理ですね」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「……そうね」

     

    デレシアは一つ、大きな情報を得ることが出来たことに内心で微笑んだ。

    多くを知る人間は時として、知りすぎていることを隠し通すことが出来ないことがある。

    ティンカーベルはデイジー紛争後、ジュスティアと内藤財団の助力で立ち直ることが出来た。

    従って街の公共事業の中には今でも内藤財団の力が根強く残っており、多くの事業が財団傘下にある企業によって行われているという現実がある。

     

    それは公表されていない事実であり、橋の所有権と保険の問題というのはまずもって知られることのない話だ。

    ジュスティアとティンカーベルをつなぐその橋の老朽化に伴う再建築工事の話が出た時、問題が起きた。

    問題となったのはその工事担当会社、所有権と管理責任、そしてそれを保証する保険会社をどう選定するかだった。

    ティンカーベルはそれまでイルトリアに実質的な統治をされており、次の統治者としてジュスティアを迎え入れたが、資金面やインフラ整備には内藤財団の助力が大きかった。

     

    存続自体を二つの巨大な存在に頼っているため、ティンカーベルはどちらにもいい顔をしなければならない。

    政治的な判断が難しく、下された折衷案は橋の建設と保険は内藤財団に、そしてその所有権はティンカーベルとジュスティアの両方に移行することで決定した。

    金銭的な問題は内藤財団、実務的な部分はジュスティアとティンカーベルが担当するという構図に辿り着くのに、予定の三倍の日数がかかった。

    名目上ティンカーベルはすでにジュスティアの庇護から抜けており、独立したことになっているが、本質的な部分ではまだ根強く関係が残っていることをこの構図が示している。

     

    新聞やラジオでは橋に関する情報は言及されることはなく、公式文書ではティンカーベルとジュスティアの両方に所有権があるとだけ記載され、保険のことについては触れられていない。

    この根深い歴史的背景を知っている人間でない限り、今のデレシアの言葉に対して違和感を抱くはずだ。

    公文書になっていない情報をこの男は知っており、ティンカーベルとジュスティアの歴史をよく知っている知識人以上の存在であることが明らかになった。

    ワカッテマスの正体に目星をつけたデレシアは、この場をどう切り抜けるかを考えることにした。

     

    この車輌で出会った時からの問題である部屋の場所を教えるような真似は避けなければならないが、それをどう行うか。

    少しの間考え、デレシアは唯一の手段を取ることにした。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「じゃあ、私たちは部屋に帰るわ」

     

    ヒート・オロラ・レッドウィングとブーンを連れ、デレシアは自分たちの寝台車とは真逆の方に向かって歩き出した。

    方向が逆であることを、ブーンもヒートも口にはしなかった。

    食堂車の隣にある特別寝台車へと来たところで立ち止まり、後ろから誰もついてきていないこと、扉が閉まって目撃者がいないことを確かめた。

     

    ノパ⊿゚)「どうやって向こうに行くつもりなんだ?」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「この列車に何かが起きた時、例えばラウンジ車の扉が故障したとしたら、列車の人間はどうやって車輌間を移動すると思う?

          緊急ブレーキが作動した後、たくさんの客がこうして特定の場所に集まったらどう移動すればいいのか。

          ましてや、何かの作業をするための道具を持ち運ばないといけない状況ならどうするか。

          周囲を雪に覆われていたらそれも出来ないとなると、考えられる設計は一つだけ」

     

    ノパ⊿゚)「……別の通路があるのか?」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「正解。私たちが乗降した方とは別の方にあるはずよ」

     

    ノパ⊿゚)「乗降した方とは逆、ってことか。

         どういうこった?」

     

    このスノー・ピアサーの優秀なところは、車両本来の大きさを感じさせない設計にあった。

    もともと広い作りをしていることと、車窓がないということから乗客はこの車輌本来の大きさを知ることが出来ない。

    両側にある乗降用の扉の厚みなど誰も気にしないし、その扉が同じ方向だけしか開いていないということは、まずもって気づかれないことだ。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「窓がないから、壁の厚さが分かりづらいっていうのがいいカモフラージュになっているの。

          つまり……」

     

    これまで乗降していた側とは逆の方に向かって歩き、デレシアはそこにある壁をそっと撫でた。

    壁が静かに横にずれ、外装と車輌本体の間に作られた狭い通路が現れた。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「ね?」

     

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    August 15th PM04:00

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    : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : クラフト山脈仮設トンネル内

     

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    陽が傾き、燃えるような夕日が空を染め始める頃。

    クラフト山脈に作られた仮設トンネル内で停車していたスノー・ピアサーが、ゆっくりと、そして静かに動き始めた。

    金属が軋むような音を立て、車輪が回転する。

    レールを噛み締めるようにして進むため、速度は極めて遅く、人の徒歩と大差なかった。

     

    列車に付き添って歩く六機の強化外骨格――通称“棺桶”――は極めて注意深く、その車輪が動く様子を見つめている。

    彼らが目指す先には道が続いているが、その先にスノー・ピアサーが通るのに十分な空間はなかった。

    暗闇の中で唯一の光源である瓦礫に空いた僅かな隙間から差し込む赤い光が、その空間の狭さを何よりも物語る。

    通れるのはBクラス――中型――の棺桶ぐらいだ。

     

    トンネルの出口を塞いでいる瓦礫の前に来た時、スノー・ピアサーの車体全体が低い音を発し始めた。

    巨大な獣が身震いをするような衝撃の後、強化外骨格の歩みと同じだけの速さで瓦礫に向かって進み続ける。

    強化外骨格は瓦礫から僅かに離れた場所で立ち止まるが、スノー・ピアサーは単独で進んだ。

    瓦礫に車輛の表面が触れた瞬間、まるで粉雪で作られているかのように岩が砕け散り、初めからそこに何もなかったかのように道が開けた。

     

    暗闇の世界から姿を現した車輛もまた、オレンジ色に染まる世界の一部としてクラフト山脈と同じ色に染まった。

    スノー・ピアサーが開いた道から、続々と強化外骨格が先頭車輛を守るような陣形を取って駆けだした。

    非情にゆっくりと進むスノー・ピアサーよりも一歩先を歩く男が、無線機を使って作業を担当している人間全員に状況の報告を行った。

     

    〔Ⅲ゚[::|::]゚〕『一号車、通過よし。

          二号車、通過よし。

          減速開始』

     

    その言葉とほぼ同時に、運転席のジャック・ジュノはスノー・ピアサーを減速させた。

    金属同士を擦り付けるブレーキの音は風にかき消えるほど小さく、そして、予定されていた停車位置で完全にその動きを止めた。

    男は前方に続くレールを目視し、それからスノー・ピアサーの足元を見る。

     

    〔Ⅲ゚[::|::]゚〕『定位置にて停止を確認。

          誤差修正なし。

          溶接個所問題なし。

          三分後、予定通りそちらに向かいます。

     

          ティムさん、お願いします』

     

    僅かな空電の後、ティングル・ポーツマス・ポールスミスが応えた。

     

    (*‘ω‘ *)『任せるっぽ!!

          車輛が全て通過した後、最後尾の機関室から乗り込むっぽ!!』

     

    彼女の声はいつもと同じように明るく、快活そのものだったが、実際に感じているプレッシャーは相当なものに違いない。

    雪崩によってレールの乗っていた足場が失われた問題に対して、彼女が自ら提案し、申し出た対処方法は正気のままでいられる方が稀有なものだ。

    恐らく、多くの死線を潜ってきた者でさえその役割を担いたいと自主的に思う者はいないだろう。

    ジュスティア出身の人間ということを考慮しても、彼女の行動は常軌を逸していた。

     

    献身的と言えばそうだが、度が過ぎている。

    英雄願望と言うのがジュスティアの人間にはあると聞いていたが、ここまでとは誰も思わないだろう。

    物語に登場する自己犠牲の塊、狂信的なまでの献身性。

    即ち、人でありながら人であることを止め、今際の際までそれを貫き通す人間がここにいることに、彼女以外の関係者は畏敬の念を抱かざるを得なかった。

     

    山肌を削って作り出された桟道のような足場は万が一の場合に備えて一部を鋼鉄の柱で補強していたが、今回の雪崩でその鉄骨もろとも地面がえぐり取られた形となった。

    幸いにしてレールはそのまま使える状態で残っていたが、宙に浮いたレールはそのままでは使い物にならない。

    そこでティム自らが足場を作り、そこからレールを支えるという無謀な計画が立案された。

    自ら不安定な足場でレールを支えるという役割は、一歩間違えれば滑落死、最悪は列車が転落する責任を負うものであるため、思っても提案することはまずない。

     

    強化外骨格を用いて支えると言っても、その足場が通常時よりも遥かに脆くなっている事実は変えようがない。

    どれだけ力のある人間がいたとしても、足場が不安定であれば本来の力を発揮することは不可能。

    それでも彼女は間違いなく出来ると言い切り、誰かに任せるのではなく自らが行動に移すことで周囲を納得させた。

    ティムの行動力もそうだが、その発想に対して最終的に同意をしたジュノの英断も作戦成功に必要不可欠な連携力を強化させたことは言うまでもない。

     

    彼女の発案をより完璧なものとするため、決定が下ってからワイヤーなどの器具を使い、土台を失ったレールの補強が早急に行われた。

    土台のあった場所に急ごしらえの足場を作り、ティムの使用する強化外骨格は山肌に打ち込んだ鉄塊――切断された二本のレール――の上に立つことになった。

    足場として山肌に深々と打ち込まれ、強度のあるワイヤーで補強されてはいるが長時間の負荷には耐えられない。

    そこで、スノー・ピアサーが通過し終わるまで、という時間を可能な限り短くするため、ジュノは限界まで加速した状態でそこを走り抜ける算段を立てた。

     

    加速のためにはまず、瓦礫を除去し、道の確保を行い、溶接したレールの強度の確認を行うところから始める。

    そして次に、一度後退して加速のための距離を確保し、最大速度で駆け抜ける。

    実にシンプルな作戦で、極めて乱暴な作戦だった。

    だがそれ以外にこの状況を打破できる作戦を思いつける人間もおらず、時間が限られていることもあって、この作戦は誰にも否決されなかった。

     

    鍵となるのはティムとジュノの二人だ。

    耐えきれなければ全員が死の危機にさらされ、速度が適切でなければ脱線、あるいは足場の限界が訪れる。

    やり直しのできない作業を前に、無線機の向こうから聞こえてきたティムの声には緊張している様な気配はなかった。

     

             Motherfuckers

    (*‘ω‘ *)『さぁ、野郎ども!! ビシバシ仕事するっぽよ!!』

     

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    August 15th PM04:03

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    無線を切り、ティムは短く、そして深く息を吐いた。

    足場にするためのレールを見下ろし、改めて今回の作戦の難しさを認識する。

    強化外骨格と彼女の体重に耐えられても、このレールが突き立っている山肌がどこまで耐えられるのかは、完全に運否天賦の問題だ。

    棺桶を使って深く刺しはしたが、ろくなテストもしていないため、彼女にも結果は分からない。

     

    本来のレールは山を削って作られた足場に設けられ、鉄骨で補強がされているものだ。

    しかし、雪崩の威力は人間が作り上げたそれら全てを根こそぎ消し飛ばした。

    不幸中の幸い探しをするならば、レールを残して鉄骨ごと奇麗に足場だけが持っていかれたことだけだろう。

    おかげでこうして足場を作り出し、支えることで対処が出来る程度で済んだ。

     

    落石や雪崩だけの影響ではなく、山そのものに何かが起きたからこそこの被害状況になったのは間違いない。

    これが単なる雪崩であれば、山肌からの衝撃であり、表面上の物に被害が出るはずだ。

    だが足場にだけ影響が出ているのは、山が振動したからに他ならない。

    原因については後日エライジャクレイグの調査隊が調べ上げ、再発防止に努めるだろう。

     

    我知らず、彼女の口元は微笑みから嘲笑の形に変わり、それは自嘲へと推移した。

    ここで命が終わるかもしれない。

    ここから見る景色が人生の見納めかもしれない。

    そう思うだけで、彼女は興奮した。

     

    これまでに経験してきた人生は常にスリルと隣り合わせであり、それが生甲斐になっていた。

    この瞬間はその中でも極上の部類であり、生きてこの興奮を再認識したかった。

     

    (*‘ω‘ *)「ひゅー……

          プレッシャーがたまらねぇっぽねぇ」

     

    彼女が背負うのはブルーハーツから支給されたBクラスの棺桶。

    スノー・ピアサーで唯一戦闘のために積載されていたものであり、今は彼女たちにとっての希望だった。

    積まれている他の棺桶とは違い、起動コードは彼女の音声にのみ反応するよう設定されており、存在も秘匿されてきた。

    しかし今、少しでも性能のいい棺桶を使いたい状況下で出し惜しむ余裕はなかった。

     

    (*‘ω‘ *)『さぁ、扉を開いて。心を開くの。心を明るく照らしましょう』

     

    コードを口にしたティムはコンテナの中に収容され、機械仕掛けの鎧を身に纏い、姿を現した。

     

    〔 ゚[::|::]゚〕『仕事ってのは、どうにも上手くいかないっぽねぇ』

     

    その白塗りの機体は、一見するとジェーン・ドゥだが、細部を観察すれば多くの違いに気づくはずだ。

    顔を覆うマスクだけが血のように赤く、他は全て光沢のない白で塗られた異質なカラーリング。

    各部位で彼女の動きを補助するのは、滑らかな装甲に覆われた高性能な駆動補助装置。

    腹部周辺の装甲はジェーン・ドゥよりも少なく、女性的なくびれにさえも見える。

     

    ジョン・ドゥを軽量化したモデルがジェーン・ドゥなのだが、その棺桶はジェーン・ドゥよりも更に洗練された姿をしていた。

    無駄を削り、強みを尖らせたて既存の物をより高みへと昇華させようと苦心したような姿は、見る者にただならぬ存在感を覚えさせる。

    事実、この棺桶は外見的に似ているジョン・ドゥやジェーン・ドゥよりも優れた性能を有し、それらを圧倒的に凌駕していた。

    量産機には決して使われることのない複合装甲や大容量バッテリー周囲の堅牢な装甲、そして内蔵された高性能な演算装置。

     

    そして何より、単一の目的のために設計されたコンセプト・シリーズであるが故の尖った性能は量産機を凌駕するには十分すぎる要素だ。

    “オートプシー・オブ・ジェーン・ドゥ”はその名の通り、ジェーン・ドゥを基本として開発された棺桶である。

    膂力を始めとする全ての性能はオリジナルを圧倒しており、その完全な上位互換としての位置にある。

    ジェーン・ドゥやジョン・ドゥが持つ拡張性の高さはそのままであるため、エライジャクレイグではこの機体にジョン・ドゥの両腕を追加で取り付けていた。

     

    四本の腕は実際、見掛け倒しではなく、複雑な作業を同時にこなせるだけの能力を持っている。

    この装備が今回の作業にどこまで役立つかは未知数だが、それでも、ないよりはいい。

    自重で足場のレールがたわまないよう、ティムはレールの上にそれぞれ足を慎重に乗せた。

    この状態で滑れば終わりだが、体重の分散をすることで得られる安定感の方が今は重要だった。

     

    〔 ゚[::|::]゚〕『準備は整ってるっぽ!!』

     

    威勢のいい声は仲間を鼓舞するため、あるいは、自分のために出したのだと彼女は自覚していた。

    これから経験することは彼女の予定表には記載がなく、そして予想の範囲外の出来事になる。

    レールが振動し、その振動が遠のいていく。

    スノー・ピアサーが後退しているのだ。

     

    (^^)『今から汽笛を鳴らし、二十秒後にそこを可能な限りの速度で通過する。

        推定で十三秒、耐えられるか?』

     

    〔 ゚[::|::]゚〕『任せてもらうっぽ!!』

     

    彼女に出来る答えは、それ以外に持ち合わせがなかった。

     

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    汽笛が山に響くと同時に、それは唐突に訪れた。

    ティムの背中に、これまでに感じたことのない強烈な寒気が走ったのである。

    それは断じて実態のある冷気ではなく、未体験の領域にある緊張感がそうさせたのだ。

    果たしてこれほどまでに緊張したことがあっただろうかと、ティムは冷静に思考を巡らせた。

     

    いくら巡らせても、答えはなかった。

    思考はすぐにレールから伝わってくる振動に上塗りされ、考えるという行為を中断させ続ける。

    数百の戦場、数千の窮地、数万の死線を潜った経験者でさえ、この緊張感を完全に制御化に置くのは不可能だ。

    頭上を巨大な質量と速度を持った物体が通過するだけでなく、それを支え、無事に通過させ切らなければならない。

     

    失敗はない。

    やり直しもない。

    あるのは一度だけ訪れる、永劫にも思える刹那の時間。

    そして、絶対の成功だけである。

     

    ティムは肺にある息を全て吐き出すかのように、深々と息を吐いた。

    マスクから漏れ出た息は白い蒸気となって漂い、山に吹く風がそれをどこかへと運ぶ。

    幾度となく彼女は逆境に挑み、その度に不可能を可能にしてきた過去と自信がある。

    何を臆する必要があろうか。

     

    過酷な訓練を積んだジュスティアの人間が、こんなことで諦めることも挫けることもない。

    逆境こそが力になり、窮地に瀕した人々の期待こそが活力となる。

    肉薄してくる車輛の存在を肌で感じ取り、ティムは四本の腕と二本の脚、そして丹田に力を入れた。

    そして――

     

    〔 ゚[::|::]゚〕『ぬっぐ!!』

     

    ――想像通りに想像以上の衝撃が彼女を襲った。

    不動の覚悟で支えていた四本の腕は僅かに下がり、早くも左第二腕が過剰負荷によって警告を発していた。

    間もなく腕の一本が緊急停止をすることだろうが、それなら三本の腕で支えればいい。

    足場が軋みを上げ、車輪が上を通るたびにティムの体ごと揺れた。

     

    車輪の音から通過していく車輛の数を把握し、残りを考える。

    生命の危機を感じ取った彼女の本能が最大級の警告を発するが、その横では機械的に数字を数える思考が存在していた。

    残り五両。

    後付けされた左腕が異音と共についに力を失い、レールを支える形のままで機能を停止した。

     

    僥倖だと思ったが、すぐにその考えは消える。

    足場に違和感を覚え、ティムは咄嗟に右足の足場に左足を移動させた。

    その直後、先ほどまで左足が乗っていたレールが力を失ったように山肌から抜け、眼下の森に消えていった。

    足場一つ、しかも綱渡りをするかのように足が前後の位置にある不安定な態勢。

     

    残りは四両。

    彼女は今の状況から、最悪の場合を嫌でも考えざるを得なかった。

    支え切ることが出来なくなる前に、ティムはその最悪の状況をジュノに伝え、彼はその報告を受けて即座に難しい判断を下さなければならない。

    ジュノは優秀な人間であるため、最悪の事態に備えて最善の決断を下せる人間だということは分かっている。

     

    脱線した車輛を素早く切り離し、全ての車輛が落下することを防ぐという決断。

    大を生かすために小を切り捨てるという、極めて当たり前の考えを実行に移せるかどうかは、実行者の精神力に依存することになる。

    脱線が確実なものになるよりも先に情報を受け取ってすぐに切り離しを行えば、スノー・ピアサーは後部車輛の一部を失うだけで被害を食い止められる。

    当然、この手段は彼が誰にも打ち明けていない、最後の手段であることをティムは知っていた。

     

    彼は責任感が強く、そしてあまりにも優しすぎる。

    部下の失敗は全て彼が受け止め、あらゆるクレームを処理した。

    時には頭を下げ、平謝りをすることも有った。

    それでも彼は部下を切り捨てず、辛抱強く成長を見守り続け、一人前の車掌に育て上げ続けた。

     

    非情になることが出来れば彼は上層部の椅子に座ることもできたが、それを良しとしなかった。

    そうすることで失うものを知っており、そしてそれが彼の信条に合致しないのだと彼は冗談めいた口調でティムに語った。

    昇進や自らの地位ではなく、乗客のことを考えて仕事をし続けてきたからこそ、彼はそれが評価されてスノー・ピアサーの車掌を任せられた。

    世界初を掲げ、街の威信を背負った最新車輛の椅子は彼にとってどんな出世よりも嬉しいことだったに違いない。

     

    苦渋の決断が出来るかはティムには分からないが、彼は間違いなく最善の選択をするだろうと信頼していた。

    それがどれだけ彼を苦しめる決断になろうとも、彼はそうするはずだ。

    腕に感じる軋みが大きくなるにつれ、彼女の命がより強い悲鳴を上げる。

    その悲鳴を殺し、恐怖を黙殺し、耐え続ける。

     

    〔 ゚[::|::]゚〕『ジュノ!! そろそろこっちヤバイっぽ!!』

     

    追加された右腕が根元から折れ、力なく垂れ下がった。

    一気に彼女の両腕と両足に負荷がかかり、山肌から大きな土の塊が零れ落ちていく。

    残り二両を耐えきれば、彼女の勝ちだ。

    だが、これはあまりにも長い。

     

    『三秒!!』

     

    ティムの言葉に対しての返答はなかったが、ジュノの声が聞こえた。

    それは、もう間もなく彼女の努力が実を結ぶ何よりの知らせだった。

    しかし、しかし――

     

    〔 ゚[::|::]゚〕『っ……!!』

     

    ――最後の足場が、無情にも落下し、浮遊感が全身を優しく包んだ。

    その優しい感覚は稚児があやされるそれに似ていたが、すぐにそれが死神の手によるものであると気づく。

    錯覚に陥っていた感覚はコンマ数秒もなかったが、彼女の意識が死を明確に認識するには十分すぎるほどの時間だった。

    遠ざかっていく頭上をスノー・ピアサーの最後尾が通過するのを見て、己の役目が無事に果たされたことを安堵の気持ちと共に確認した。

     

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    無意識の内に手を伸ばす。

    その手は遥か離れたスノー・ピアサーには届かない。

    だが。

    伸ばした手は決して何かを掴もうとしたのではなかった。

     

    彼女の行動に無駄はなく、彼女の信念に諦めの文字はない。

     

    〔 ゚[::|::]゚〕『カバー頼むっぽ!!』

     

    それはワイヤーフックを射出し、それを届かせるための動作。

    当初の予定ではスノー・ピアサーが頭上を通過した後、満を持してそれを車輛連結部に射出する算段となっていた。

    フックはスノー・ピアサーの後部機関室に向かって勢いよく進むが、タイミングがずれて予定よりも距離が離れたために、連結部には届かない。

    当然このままでは滑らかな外部装甲にその刃が突き立つことはない。

     

    装甲の上に立つ一機のジョン・ドゥが、そのフックを掴んでいた。

     

    〔Ⅲ゚[::|::]゚〕『相変わらず無茶をする人ですね、貴女は』

     

    ワイヤーの射出は車輛の上に立つジョン・ドゥを目視してからでは当然、間に合うものではなかった。

    更に彼女が落下した場所からは死角になっているため、それを見ることも出来なかった。

    絶大な信頼を寄せている相手がそこに待っていると、彼女は信じていたからこそ腕を伸ばしてワイヤーを打ち込んだのだ。

    彼であれば万が一に備えてそこに立ち、そして彼女を助けてくれると全幅の信頼を寄せていたのである。

     

    ワイヤーを高速で巻き取り、ティムは崖下から釣り上げられるような形でスノー・ピアサーへの帰還を果たした。

    見ればジョン・ドゥの足はアンカーでその場に固定されており、外装の一部に大きな損傷を負わせている。

    これが事前に承認を得ていない行動であることは間違いなかったが、それをジュノが許すことは分かり切っていた。

     

    〔 ゚[::|::]゚〕『絶対にそこにいると信じてたっぽよ』

     

    信じられる仲間がいることの大切さを、ティムはつくづく痛感したのであった。

     

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    嗚呼。

    とても素晴らしい景色だ。

    とても素晴らしい空気だ。

    とても素晴らしい人生だ。

     

    ……さぁ、帰ろう。

     

                    ――クラフト山脈登頂成功者、“三本指”のビリー・バリアフリード

                                                 登頂直後の言葉

     

     

    第四章【Snowpiercer part2-雪を貫く者part2-

     

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    難所を通過したスノー・ピアサーの車内は喝采に溢れ、人々は旅の再開を喜んだ。

    相変わらず外部の映像は何一つ映らない状態だが、車内に流れたアナウンスは乗客たちを安心させるには十分すぎた。

    問題の個所を通過する際に多少の振動はあったが、スノー・ピアサーは問題なく旅を再開した。

    列車が停止してから九時間近くが経過し、外には夕方の空が広がっていることだろう。

     

    特別寝台車でくつろぐデレシアとヒート・オロラ・レッドウィングは、ひとまずの山を越えたことに安堵した。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「良かった、無事に越えたみたいね」

     

    安定した車輪の音を聞きながら、デレシアは感想を口にした。

    列車は安全な速度に減速し、何事もなかったかのように走っていく。

    文字通りレールの上を走る旅が再開したのである。

     

    ノパ⊿゚)「あぁ、一時はどうなるかと思ったけど案外あの女もやるもんだな」

     

    確かに、ティムが意地を見せた甲斐もあって作戦は成功を収めた。

    それは素直に称賛して然るべき功績だが、デレシアが気にしていたのは彼女が使用した棺桶の起動コードだった。

    ブーンが聞き取った起動コードに間違いがなければ、極めて珍しい棺桶が使われたことになる。

    オートプシー・オブ・ジェーン・ドゥ。

     

    量産機であるジェーン・ドゥをコンセプト・シリーズに昇華させるという開発理念のもと作られた、いわゆる実験機だ。

    この試みが上手くいけば配備されていたジェーン・ドゥを全て同様の物にアップデートし、戦力の底上げを目的とした機体だった。

    開発当時の主流となっていた、相手の棺桶の操作系統をクラッキングする機能が追加されたが、あまりにも没個性的過ぎたために一機だけの製造に終わった。

    復元の段階でジェーン・ドゥのカスタム機ではないことに気づかれなければ、誰にも知られることなく部品取り用として分解されていたことだろう。

     

    それを見極めて修復したのがどこの人間なのか、興味が尽きない。

    棺桶の復元が出来る人間は一定数いるが、その詳細に精通している人間は限られている。

    ティンバーランドにいるイーディン・S・ジョーンズはその筆頭であり、世界最高の知識と技術を持っていることでも有名だ。

    修復した人間があの汎用性と拡張性の高さを知らないとは思えないため、間違いなく腕の立つ知識人が手掛けたのだろう。

     

    確かな技術を持つ人間の協力を得たエライジャクレイグの発展が楽しみだった。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「シャルラまで到着すればまずは一安心、ってところね」

     

    先ほどの作戦が実行されるまでの間、デレシアはスノー・ピアサーがどのようなルートでクラフト山脈を突破するのかについて情報を聞き出し、残った道のりの困難を考えていた。

    線路を敷くにあたって特に困難を極めたのは先ほどの道ではなく、その後に控えている道だ。

    この後、この場所から約一キロの位置にあるその難所に差し掛かることだろう。

    クラフト山脈を横断する唯一の道。

     

    雪深く積もり、両脇を山に挟まれた一種の渓谷。

    夏でも雪解けせず、万年雪として山に残り続ける氷じみた雪の道を走り抜ける道が。

    しかしそれこそ、スノー・ピアサーの本領が発揮される場所に違いなかった。

    そしてクラフト山脈を走破した時、この列車は人間の進歩の一つの証として歴史に名を残すことだろう。

     

    登山家に名付けられた渓谷の名前は、ヒラリー・キャンプ。

    荒々しく容赦のないクラフト山脈において数少ない登頂ルートの一つとして知られ、その難易度は数あるルートの中で最も容易であると言われている。

    その理由として挙げられるのが開けた場所であり、尚且つなだらかな斜面が広がっているためにキャンプを設営しやすいからだ。

    この名所に到達するまでの間に登山者の一割が死亡するが、今もあるキャンプによって救われた命は数知れない。

     

    (∪´ω`)「シャルラのまちは、なにがゆうめいなんですか?」

     

    本を読みながら単語の勉強をしていたブーンは、デレシアを見てそう尋ねた。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「有名なのは街の在り方ね。

          いくつもの自治区に分けて統括しているから、シャルラって言っても凄い広い範囲に点在しているの。

          だから単純な大きさで言うのなら、世界最大の街よ」

     

    世界の中でも分割統治を行っている街は極めて稀で、シャルラはその最も有名な例だ。

    不毛で広大な土地に住む人間たちが独自の街で生きていくにはあまりにもその大地は厳しく、そして荒れ果てていた。

    互いに持つものを分け合い、協力する形をとる為にシャルラと言う一つの街が生まれたのだ。

    いくつもの自治区に分けることで、実際には複数の街が点在している形態を取っているが、最終的にはシャルラという街に帰結するようになっている。

     

    (∪´ω`)「じちく、とうかつ、てんざい……」

     

    ブーンはすぐに辞書を使って言葉の意味を調べ始めた。

    言葉の意味を教えるのは簡単だが、それよりも自分で調べるという苦労を踏まえることで、より一層強く記憶に残る。

    そうして調べた言葉をメモ帳に残し、自分だけの辞書を作っていく。

    最後に残るのは、彼が学んだ足跡というわけだ。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「食べ物ならカニだけど、それよりもお酒の方が有名ね。

          ウォッカっていう、とても度数の強いお酒の生産地ね」

     

    ノパ⊿゚)「そういやそうか。

        確か流通してるウォッカの七割ぐらいがシャルラ産って聞いたことがあるな」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「そうね、今はそれぐらいの数を輸出しているはずよ。

          寒い土地ならではね」

     

    広大な土地を所有するシャルラだが、その土地は非常に貧相で荒涼としたものだ。

    その土地を使って作ることのできるのはイモのような、厳しい環境下でも育つ野菜だけになる。

    結果としてシャルラはイモを作り、それを酒にして世界中に輸出をしている。

    一定の時期にだけ収穫のできる玉ねぎなどの野菜は冷凍保存され、冬になるとそれを使ったスープがよく食べられる。

     

    肉も燻製にして保存が出来るように工夫され、加工食品が街の中では多く流通している。

    陸路を使った輸出入に頼ることが多いが、海辺の自治区では魚やカニが多く取れるため、内陸の自治区との交易で食料品の流通が上手く行われている。

    ベルリナー海のカニ漁は毎年そのシーズンになると世界中から船が集まり、まるで祭りのような漁が行われることで知られている。

    同時に、海に転落して死ぬ人間や船の上で起きた不慮の事故の死者の数は、盛り上がりに比例して増えていることも知られていた。

     

    (∪´ω`)「どうしてさむいところだと、おさけが……えと、どすうがたかいんですか?」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「お酒を飲むと体の内側から暖かくなる、っていうのと度数が高いと凍らずに済むからよ。

          後は作物の兼ね合いもあって、ウォッカが多いの。

          ブーンちゃんにはまだ早い話だけど、覚えておいて損はないわよ」

     

    (∪´ω`)「おー」

     

    ノパ⊿゚)「冬になればカニがたくさん出回ってるだろうけど、今は時期じゃねぇからな。

        あそこのカニは確かに美味かった」

     

    (∪´ω`)「そんなにおいしいんですか?」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「時期になるとね、とっても美味しいの。

          基本的に色んな街に出荷してるし、漁船が来ているからシャルラでなくても食べられるわ。

          冬のお楽しみね」

     

    出来ればブーンにはカニ漁の様子を見せてやりたかった。

    彼がオアシズから放り出された海と同じか、それ以上に荒れた海で一攫千金を目指して船を出す男たちの姿。

    愚かしくも雄々しいその姿は、滅びの美学に通じるものがある。

    並みの女では耐えられない程の疲労の果てに得る栄光と挫折の一連の流れは、いい社会勉強になるはずだ。

     

    『車掌のジャック・ジュノより、乗客の皆様にお知らせいたします。

    先ほど、無事に問題の個所を通過し、予定通りの道を進んでおります。

    今回の遅延に伴い、速度を上げて運行することで対応することとなりました。

    クラフト山脈を抜け、平地に到着後、スノー・ピアサーは最高速度で運行を開始いたします。

     

    予定ではシャルラへの到着に関する遅れは相殺されることとなりますが、お客様にご不便、ご心配をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。

    また、今夜五時にクラフト山脈を横断するルートへと差し掛かります。

    多少の揺れが予想されますので、お気を付けください。

    到着五分前に再度アナウンスを行います』

     

    車内放送が終わり、デレシアは溜息を吐いた。

    列車への心配が軽減されて浮上されてきたのは、昼間に起きたジュスティアの失態と事件についてだった。

    島からジュスティアに移送する時に襲撃があることは誰の眼にも明らかだったが、フォックス・ジャラン・スリウァヤはそれを強行した。

    何か考えがあったのか、それともただの馬鹿だったのか。

     

    今の段階ではあまりにも情報が少なすぎるため、推測でしか考えられない。

    詳しい話や展開については、いつかトラギコ・マウンテンライトと会った時にでも訊けばいい。

    ティンバーランドの動きがだいぶ大きく、目立つようになってきているのには必ず理由がある。

    秘匿することがそれほど重要ではないと判断してのことだとしたら、彼らが事を起こすのにそう時間はないだろう。

     

    彼らにとってデレシアは天敵だ。

    彼女がいる限り、彼らは執拗にその命を狙ってくるに違いない。

    スノー・ピアサー内にその細胞がいなければいいが、万が一いれば、オアシズの厄日の再現となるだろう。

    特に注意しなければならないのが、サムと呼ばれていた男だ。

     

    記憶を取り戻し、デレシアを襲ってくることになれば、列車内での殺し合いになる。

    そうなる前に排除するのも一つの手だが、傍にいるワカッテマス・ロンウルフがそうさせないだろう。

    また、ティングル・ポーツマス・ポールスミスも車内で警戒に当たるとなれば、暗殺者の真似ごとをするのは乱暴な策だ。

    ジュスティア出身の人間が二人乗り合わせている現状は、デレシアにとっては頭痛の種でしかなかった。

     

    ティンバーランドに転向した人間の割合で最も多いのが、ジュスティア出身の人間なのだ。

    正義という言葉を徹底的に、それこそ偏執的なまでに教え込まれた人間の一部からすれば、ティンバーランドの考え方はまさに理想。

    むしろ、先祖返り、と言ったほうが適切なのかもしれない。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「さぁ、夕飯にしましょう。

          難所に差し掛かったら落ち着いていられないでしょうから、今の内に楽しみましょう、

          きっとご馳走が並んでいるわよ」

     

    三人はそれから食堂車へと移り、デレシアの予言通りに並んでいた豪勢な夕食を堪能することになった。

    肉料理と魚料理の二つから選べるようになっていて、デレシアは魚を、ヒートとブーンは肉料理を頼んだ。

    食後にリンゴのシャーベットを食べ、ブーンは目を輝かせながら最後の一口までそれを味わった。

    そして食後の紅茶を飲み、くつろいでいると、ティムが満面の笑みを浮かべながらやってきた。

     

    (*‘ω‘ *)「おねーさん、ご機嫌いかがですっぽ!!」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「上々ね。 それにしても大活躍ね、ティム」

     

    (*‘ω‘ *)「おっ、分かりますかっぽ?!」

     

    ティムはわざとらしく胸を張り、得意げな表情を浮かべた。

    デレシアの言葉は仮にティムが棺桶を使わなかったとしても意味の通じるものを選び、そして使われていた。

    真実がどちらであったとしても意味の通じる言葉を選んだのは、言わずもがな、ティムに対しての牽制だ。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「えぇ。棺桶持ちは気配が違うもの。

          それこそ、実力のある人は特にね」

     

    (*‘ω‘ *)「あはは!! いやぁ、おねーさんには勝てなさそうっぽね!!」

     

    その言葉は本心だろうが、まだデレシアを値踏みするような気配と視線は健在だ。

    あれだけデレシアが牽制をしたというのに、まるで怯んでいない。

    豪胆と言うべきか、それとも図々しいと言うべきか。

    そしてデレシアはティムの眼を見て、古い記憶の扉が開くのを感じた。

     

    ティムの顔を見た記憶のある瞬間を思い出し、デレシアは笑みを浮かべたままの状態で彼女を見た。

    僅かに、ティムが身を強張らせる。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「そういえば、今思い出したんだけど」

     

    (*‘ω‘ *)「なんですかっぽ?」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「どこかで見たことがあるかと思ったら、貴女、イルトリアで働いていたことがあるでしょ」

     

    (*‘ω‘ *)「……っ」

     

    その瞬間、間違いなくティムは表情を凍らせた。

    それは紛れもない動揺。

    そして目の奥に浮かぶのは、恐怖。

    表情に一瞬だけ浮かべてすぐにひきつった笑いを浮かべるが、先ほどまでの余裕はまるで感じられない。

     

    ジュスティア出身でイルトリアにいたことのある人間。

    その人物にデレシアは心当たりがあった。

    イルトリアでは紛れもない有名人であり、同時に、歴史に名を刻んだ人物。

    それらの情報とデレシアが彼女に抱いた疑念が一致し、一つの答えを導き出した。

     

    その答えをここで口にするのも面白いが、牙を剥かれては元も子もない。

    この女は蛇だ。

    猛毒を持ち、擬態を好む毒蛇。

    相手の体内に侵入し、内部から蝕む病魔の類。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「あら、当たってた?」

     

    (*‘ω‘ *)「ず、随分昔の話っぽね!!」

     

    否定しなかったのは実に立派だった。

    ここまで動揺が表に出てしまった以上、誤魔化すのは不可能。

    悪戯に否定して余計な探りを入れられる前に相手の疑念を解決する手法。

    潔さは多くの場合がいい方向に事態を収束させるが、この場合、相手が悪かった。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「うふふ、間違いだったら恥ずかしい思いをするところだったわ。

          それじゃあ、お仕事頑張ってね」

     

    満面の笑みを浮かべ、デレシアはそう告げた。

    それはティムにとって、いくつもの意味を含んだ言葉と笑みに感じられることだろう。

    時に最良の脅しは多くを語りすぎないこと。

    真意は相手が勝手に想像し、勝手に怯えるだけ。

     

    デレシアの言葉が単なる脅しではないと気づいたティムは、それでも笑顔を崩さなかった。

    変装のように施した化粧の下には、今にも噴き出しそうな冷や汗たちが待機していることだろう。

     

    (*‘ω‘ *)「それでは失礼しますっぽね!!」

     

    半ば逃げるようにして、ティムは来た道を戻った。

    その姿はこれまでとは違い、完全に虚を突かれた人間の反応のそれだった。

    車輛を隔てる扉の向こうに消えたのを確認してから、ヒートが口を開いた。

     

    ノパ⊿゚)「……ほんとの話なのか?」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「えぇ、やっと思い出したの。

          結構昔の話だったから忘れてたけど、えぇ、確かにイルトリアにいたわ。

          その話は後でしましょう」

     

    ジュスティアの歴史に名を刻むだけではなく、イルトリアの歴史にも名を遺した人間の話をするには時間と場所が必要だ。

    同時にデレシアは、別の人物の正体についての目星をつけることが出来た。

     

    (∪´ω`)「おー?」

     

    そして三人は食事を再開し、その見事な料理に舌鼓を打ったのであった。

    ブーンはリンゴシャーベットに角切りにしたリンゴを乗せてもらい、最後はアップルティーで締めた。

    デレシアとヒートは紅茶を飲み、席を立った。

    食事を終えた三人は帰り道にハーブティーの入った魔法瓶をラウンジ車輛で受け取り、部屋に戻る。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「美味しい料理だったわね」

     

    ノパ⊿゚)「あぁ、ちゃんと日付に合わせてメニューを組んでるんだな」

     

    前日は生魚だったものが、翌日はムニエルに。

    サラダは炒め物などに利用され、無駄なく一連の旅を経てようやく廃棄されるメニュー設定になっている。

    どこかの駅に停車した際に新たな食材を仕入れ、廃棄する食材を街に引き取らせる。

    そうして経済が回るようにすることで駅を持つ地域の活性化が促され、結果として街の利益へとつながるのだ。

     

    ノパ⊿゚)「ま、茶でも飲んでゆっくりしてるか。

        さぁて、ブーン。

        あたしの出したなぞなぞ、答えは分かったか?」

     

    (∪´ω`)「おー、ずっとかんがえてるんですけど、わからないですお……」

     

    ヒートが出題したなぞなぞは、七人の容疑者が浮上した事件の犯人を当てる物だ。

    山小屋の管理人、訓練中の軍人、登山者、医者、探偵、教師、そして写真屋。

    秀逸なのは出題の際、彼女が使った言葉だ。

    事件を起こした人間、という問いかけ。

     

    視点を変えてみることで初めて見えるヒント。

    そこに気づくことが出来るのは、既定の枠に捉われない柔軟な思考の持ち主だ。

     

    ノパー゚)「事件を起こす人間を犯罪者っていう。

        じゃあ、犯罪をゆっくり言ってみな」

     

    (∪´ω`)「はんざいー(クライム)」

     

    ヒートの口にした単語を、ブーンは素直に繰り返す。

    その発音を聞いてヒートは頷き、悪戯っぽく笑みを浮かべる。

     

    ノパー゚)「登山者をゆっくり言ってみると?」

     

    (∪´ω`)「とざんしゃー(クライマー)……

         おっ!!」

     

    これがなぞなぞの醍醐味。

    通常の視点とは異なる場所から問題を見つめることで得られる答えと、その過程における高揚感。

    勉学に飢えているブーンにとって、これほど面白い物はそうないだろう。

     

    ノパー゚)「思考は常に柔らかく、意地は固くってね」

     

    (∪*´ω`)゛

     

    ヒートに頭を撫でられ、ブーンは文字通り尻尾を振って喜んだ。

    目を細め、手のひらから感じ取る体温でヒートの無事を確かめるようにして、自らその手に頭を押し付ける。

    愛情を注ぐ人間が増えることでブーンは着実に、そして大きく成長していく。

    姉のようにして接してくれる彼女の存在は、間違いなくブーンの人生を大きく変え得る資質を持っている。

     

    彼女の怪我が癒えるまでの間は、デレシアが前に立って厄介ごとを潰していくしかない。

    今の状況であれば、手負いのヒートに出来ることはブーンの傍にいてもらうことが一番だ。

    列車内の問題はデレシア一人でどうにかなる話であるため、心配させたくはなかった。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「後でちょっとラウンジ車に行ってくるわね」

     

    ノパ⊿゚)「おう、気をつけてな」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「大丈夫よ。

          その間、二人でお留守番、よろしくね」

     

    ティムの正体に察しがついたように、デレシアはもう一人の正体にも思い当たる節があった。

    後は答え合わせをするだけだ。

     

    (∪´ω`)「わかりましたお」

     

    ζ(^^*ζ「ふふっ、いい子ね」

     

    デレシアはブーンの頬に手を添え、彼の額にそっと口付けをした。

     

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                    }    八__ l l| }   -‐…tー‐___ュ

           }      ∧   イ´ ヽ{//: : : : : : : : : ̄ゝ‐tー‐ミ、

    .      l|     '/∧   l|  =彡乂: : : |l: : : : :Y: : : : :`ヽ}|l!

          八     {(/}   l|  ::::::::  /: ト、八: : : : : !: : : : : : :

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        ) |  }  l|  八   イ  ( 从) J_っИ: : :/): : : : : :: :-}

           l|  从{/ニニヽ  人  ヽ イ       j : /: : : : : : ノノノ_

    August 15th PM04:55

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    夕暮れの中、スノー・ピアサーは大きく左に曲がり、ついにその場所に到達した。

    前方、そして左右に聳え立つ圧倒的な高さの壁。

    世界を隔てる壁に出来た、唯一の抜け道。

    ヒラリー・キャンプの足元。

     

    車内放送はすでに済み、後は走り抜けるだけだ。

    この道を通り抜けるためにこそ、スノー・ピアサーは作り出された。

    最新鋭の運転席に座るジャック・ジュノは落ち着き払った様子を見せながらも、その実は興奮していた。

    走破するのだ。

     

    世界で最初に、彼が運転するスノー・ピアサーがこの壁を突き破る。

    長い時間が作り出した雪と氷の分厚い壁。

    鋼鉄以上の硬度があると言わしめ、多くの登山客のキャンプ地としてその背を貸し続けてきた土地。

    スノー・ピアサーが通ったところで、その土地が崩壊することはない。

     

    (^^)「ふぅ……」

     

    しかし当然、これは前人未到の地であり、人類初挑戦の出来事だ。

    その成功は彼の双肩とスノー・ピアサーにかかっている。

    万全の状態ではないスノー・ピアサーで果たして成功できるのか、それだけが心配だった。

    不安になるのは無理もない話だが、ここで尻込みして事態が好転することはない。

     

    夜の内にこの場所を通り抜けることが今は最も安全性が高い。

    ジュノはゆっくりと、段階的に速度を上げた。

    高周波振動の発生装置に指を乗せ、短く息を吐いてスイッチを入れる。

    上り坂を迎えると同時に、線路の途切れ目が近づいていることをセンサーが通知した。

     

    そう。

    この道はまだ誰にも傷つけられたことのない場所であり、線路は敷かれていないのだ。

    これは極秘の情報で、車掌にしか知らされていない事柄だった。

    レールを敷けない道をどう通り抜けるか、それがスノー・ピアサーを設計し、この道のりを考えた人間たちにとって最大の問題だった。

     

    そこに彼も同席していたために、原理も理屈も分かってはいた。

    試験的な運用はすでに済んでいるが、実地試験は行われていない。

    この過酷な環境で試すことが出来ることは限られており、それだけの余裕もなかった。

    スノー・ピアサーが使用する多くの部品は強化外骨格に使われていたものを複製、もしくはそのまま使用しており、雪道に対しての親和性は極めて高い。

     

    そこで考え出されたのが、雪を突破する際に天然のレールを形成しながら進むという考えだった。

    この土地の雪は圧縮され、高密度な氷と化している。

    高周波振動で雪を細かく破壊する際、外装の形状を生かして足場の雪を任意の形に削り出してレールを生み出す案が提案された。

    その実験は幾度となく行われ、スノー・ピアサーの車輪に滑り止めの加工を施すことで問題が解決することが分かった。

     

    氷のトンネルを抜け出たら本来のレールに合流し、何事もなかったかのように旅が再開される。

    要となるのは先頭部に備えられた外装。

    本来のスノー・ピアサーの胸部にあたる部品で、その頑強さと性能は万が一にも揺らがない。

    そして、彼の決意もまた同様に揺らぐことはない。

     

    (^^)私は厳格な規律を守り、無秩序な混沌を忌む。

        定められた場所で、定められた者が、定められたことを成す。

        これ即ち、人間の理なり

     

    起動コードを入力し、彼が行ったのは車輌を覆う全ての外装の高周波振動発生装置の起動である。

    この外装は全て、この瞬間のためにある。

    スノー・ピアサーが本来持つ、雪に対する偏執的な設計思想。

    雪に対抗するコンセプト・シリーズとして生み出され、そして、その力は今こそ最も輝く。

     

    雪には複数の種類があり、ひとえに雪に対抗するといってもその方法は必然的に分かれてしまう。

    硬度、量そして降雪地の変化によって雪は全く異なる表情を見せる雪を一括して相手にするための機能がスノー・ピアサーには備わっていた。

    その機能とは、高周波振動装置だけではなく、破砕した雪を冷却に使用し更にそこで生まれたエネルギーを高周波振動に転用することで、長時間の稼働を可能にする事。

    雪のある限り、スノー・ピアサーはどこまでも貫き、進むことが出来る。

     

    (^^)「……行くぞ」

     

    白い壁が目前に迫り、ジュノは更に速度を上げ――

     

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

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              ∠´                           ヽ /ニ´- ´  ___.

              |-、                           _ イー--=ニノ   \

              |  `丶──--______--── ̄    ノ'、  ` ̄`ヽj___  `丶..___

              ヽ                             | (ゝ-──'   ‐')

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              ,.,,ヽ                         |   /ゝ-r- ..___.,,/─--'"

          ,,, ,,--''´r'ヽ                          ノ //   ヽ---'

       , .'´  -:'"゛  \                     /// `''-

      r'    r' . : ::.     ヽ               , <二/''-、    ヽ、

    August 15th PM05:00

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

     

    大きな衝撃が一度だけあったが、それは机上のカップに注がれた紅茶をこぼすほどの物ではなく、さざ波を立てる程度だった。

    ラウンジ車輌にいる乗客たちは一瞬だけ悲鳴を上げたが、すぐに収まった。

    この列車に乗り合わせている人間で、今彼らが氷の中を走っていることを理解している人間はほんの一握りだけだろう。

    例えば、優雅に紅茶を飲みながらチェスに興じる一人の男。

     

    万物を見通すかのように見開かれた大きな瞳で盤上を見て、最適な答えを導き出さんと思案するこの男。

     

    ( <><>)「おぉ、ついに来ましたね」

     

    そう言ったワカッテマス・ロンウルフはチェスの駒を動かし、目の前に座る人間に言葉をかけた。

    その人物は胸元が大きく開けた青いロングドレスに身を包み、長い髪を頭頂部で巻き、ルージュの口紅を口に引いた女だった。

    剃刀のように鋭い眼差しを向ける女は、同意の印に駒をつまみ、置いた。

    優雅な仕草でありつつ、考えられた一手だった。

     

    ワカッテマスは応じて駒を動かすが、女はそれに即応した。

    それは頭中ですでに手筈が完了している人間の動きだ。

    彼は彼女の眼を見て、それから口を開いた。

     

    ( <><>)「無事に抜けられるといいですね」

     

    女性は微笑み、手元に置いていたカクテルを口にした。

    カクテルグラスの中身は一口でなくなり、最後に残ったオリーブを口に含んだ。

    もごもごと口を動かし、オリーブの種をグラスに吐き捨てる。

    そして席を立ち、女はウィンクをして言った。

     

    (*‘ω^ *)「チェックメイトっぽ」

     

    ティングル・ポーツマス・ポールスミスは悠々とした歩みで車輌から出て行った。

    残ったワカッテマスは紅茶を飲み、盤上を見る。

    なるほど、一見すれば確かにチェックメイトのようにも思える。

    だが実際は、まだ手がないわけではない。

     

    正確な一手を打つことが出来れば、確かにティムの勝ちだろう。

    それが出来れば、の話だ。

     

    ( <><>)「……さぁて、どう動きましょうかね」

     

    彼にとって、不利な状況など日常茶飯事であり、特に気にする必要はない。

    正攻法が駄目なら搦め手で挑むまで。

    自分の駒を一つ動かすついでにもう一駒動かし、形勢は逆転した。

    明らかな反則行為だが、相手が見ていなければ問題はない。

     

    正々堂々とした勝負など、彼の流儀ではない。

    無論、彼女もそのつもりだろう。

    だからこそ彼女は今しがた彼がしたのと“同じイカサマ”を何度も繰り返し行っていたのだ。

    相手の目を盗んで出し抜こうとするのはお互い様である。

     

    現場を押さえなければイカサマはイカサマではない。

    極めて真っ当な技術の一つだ。

     

    ( ゙゚_ゞ゚)「すみません、お待たせしました」

     

    ( <><>)「いえいえ、今来たところです」

     

    五時に待ち合わせをしていたサムがグラスを手にやってきた。

    ティムが使っていたカクテルグラスは机上から消え、ワカッテマスが一人でチェスをしていたかのような状態になっている。

    サムは向かいに座り、ソーダ水を一口飲んでから口を開いた。

     

    ( ゙゚_ゞ゚)「それで、僕に話というのは?」

     

    ( <><>)「あの女性について、ですよ」

     

    彼にとって、記憶に残る唯一の手掛かり。

    人違いや記憶違いと言われても、諦められるはずがない。

     

    (;゙゚_ゞ゚)「え、えぇ」

     

    ( <><>)「私の予想では、彼女、サムのことを知っていますよ」

     

    経験から言って、あれだけ表情にも仕草にも声にも変化の出ない人間は堅気ではない。

    彼はこれまでに多くの人間を見てきたが、あの女のような人間は初めてだった。

    あれは間違いなく、危険な人間だ。

    悪人と善人との判断もつかないぐらい、まるで何も分からない人間。

     

    見誤れば命を奪われかねない相手なのは、彼の本能が告げている。

    一切の油断も出来ない相手であるため、慎重な接触が必要だ。

    そのためには誰かが積極的な接触を行い、本質を導き出してくれることが望ましい。

    都合のいい誰か、接触に対して躊躇わないような誰かが。

     

    (;゙゚_ゞ゚)「ならどうして、そのことを隠すんだろう……」

     

    ( <><>)「さぁ、そればかりは……」

     

    無論、ワカッテマスにはその理由の検討がついていた。

    女はサムとの接触を望んでおらず、また、ワカッテマスとの接触も極力避けたいと考えているのだ。

    何かに追われている、もしくは素性を隠したい事情があるのだろう。

    真っ当な人間がする対応ではない。

     

    ( <><>)「……少し、席を外しますね」

     

    ( ゙゚_ゞ゚)「あ、はい」

     

    ワカッテマスは席を立ち、ラウンジ車から食堂車へと移った。

    夕食を楽しむ客たちの中に、その人物は悠然とした佇まいで座り、琥珀色の液体が入ったグラスを傾けていた。

    息を呑むほどの美しい女性だが、その微笑は彼の心臓が鷲掴みされたかと錯覚するほどに危険さを感じさせた。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「こんばんは」

     

    ( <><>)「……こんばんは。

            奇遇ですね、また会うなんて」

     

    声を震わせることなく言葉を紡ぐことが出来ていることに、ワカッテマスは久方ぶりの安堵感と自己肯定感を覚えた。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「向こうの彼を呼ばないなんて、不思議な話ね」

     

    ( <><>)「たまたまこっちに用があって来ただけですので」

     

    一刻も早くこの場を立ち去り、体制を整えたいという気持ちが先行している。

    この女は、“デレシア”は無策で相手にするにはあまりにも厄介な人間だと彼の本能がようやく理解できたのだ。

    あまりにも巨大すぎる存在は時としてその存在そのものを認識できなくさせる。

    クラフト山脈の麓に立つことでその大きさを認識できないのと同じように、彼は今、デレシアの存在に恐怖にも似た感情を抱いているのだと認識したのだ。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「嘘が上手ね。

          流石、“ロールシャッハ”というところかしら」

     

    ワカッテマスは全身が総毛立つのを感じ、眼下に座る、明らかに自分よりも年下の女に紛れもない恐怖心を抱いた。

    長い間、感じる機会がなかった感情に感動すら覚える。

    未だかつて彼の正体を言い当てた者はおろか、推測し得た人間はいなかった。

    この女以外は。

     

    流石は“デレシア”。

    その名を名乗るだけのことはあり、嘘やハッタリではない実力者であることがよく分かった。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「まぁ、座りなさいな」

     

    聞き慣れた金属音がテーブルの下から聞こえ、ワカッテマスは素直にその言葉に従った。

    撃鉄を起こす、重い音。

    大口径の銃。

    その威力は木製のテーブルを容易に貫通し、彼の頭蓋を粉砕することだろう。

     

    ( <><>)「……では、失礼して」

     

                        Can be anything

    ζ(゚ー゚*ζ「モスカウの統率者、“何にでもなれる者”、ねぇ。

          聞いていた通りの人間ね。

          見る人によっては別の人間に見える存在、っていうのは噂通りね」

     

    全てを見抜かれている。

    紛れもなく、この女はワカッテマスの正体に気づいた上で接触してきたのだ。

    どこで自分が間違えたのかを、ただひたすらに頭の中で繰り返すが、答えが出てこない。

    こんな状況は初めてだった。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「ジュスティアからずっと私たちを観察しているけど、その理由は何かしら?」

     

    その声量は極めて小さく、静かなものだったが、ワカッテマスの耳には嫌と言うほど聞こえていた。

    列車が発する音などすでに耳には届いておらず、全ての感覚はその女に集中している。

    こちらが彼女の名を知っていることを隠す必要はないと判断し、ワカッテマスはせめてもの抵抗としてその名を口にすることにした。

     

    ( <><>)「その前にいくつか質問をしても、ミス・デレシア?」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「えぇ、どうぞ」

     

    気のせいか、ミス、と呼んだ時に彼女が笑ったように見えた。

     

    ( <><>)「月並みな質問ですが、いつからですか、私の正体に気づいたのは」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「ティンカーベルの橋の保険契約先を答えた時ね。

          あれを知っているのはジュスティアの中でも一部の人間ぐらいなものよ。

          後は演技力ね。

          見事なものね、真人間をここまで演じきれる人間は私の知る限り、ジュスティアでは二人だけよ」

     

    ワカッテマスは瞼を降ろし、静かに息を整えた。

    迂闊に質問に答えてしまったことを悔やむよりも、今はやるべきことがある。

    溜息と共に瞼を上げ、デレシアを見つめた。

     

    ( <><>)「もう一つだけ、いいですか」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「内容によるけどね」

     

    ( <><>)「貴女が、デレシアで間違いないのですか」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「えぇ、そうよ。

          どうするつもりかしら、騎士様」

     

    その返答はワカッテマスを十分に満足させ、そして納得させた。

    これがデレシアを名乗る女。

    ジュスティアの歴史に名を遺す人物と同じ名を持つ、謎多き旅人。

    豪奢な金髪、透き通る碧眼、慈愛に満ちた表情を浮かべる美女。

     

    全て、情報通りだった。

    嘘偽りも、偽装も、演技も通じない。

    ジュスティア出身の人間であることもモスカウの人間であることも、更には円卓十二騎士の人間であることまでも知られている。

    モスカウの中にいる人間でさえ彼の素性を知らない者がいるのに、恐るべき情報把握能力だと言わざるを得ない。

     

    ( <><>)「……ははっ、なるほど。

           トラギコ君が相手に出来ないわけだ。

           一度ちゃんと話してみたかったと思っていたので、これでその願いが叶いましたよ」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「こうして円卓十二騎士の人間と話す日が来るなんて、私も思ってもみなかったわ」

     

    ( <><>)「目的は何でしょうか、と私が問うよりも先にこちらの要件を伝えた方が賢明ですね。

           単刀直入に言うと、貴女の監視、可能であれば逮捕を考えていました。

           誤解の無いように言っておきますが、お連れの二人には特に用はありません」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「素直なのはいい事ね。

          罪状は何かしら」

     

    ( <><>)「まぁトラギコ君が言っているとは思いますが、ログーランビルでの一件を皮切りにした各地での事件。

           最低でもすでに百名以上の死者が出ている事件に関係していると思っています。

           ニクラメンでの大事故に関係しているという証言もありますが、真偽のほどはまだ確かめ切れていません」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「なら、逮捕する材料は何もないのと同じね。

          それなのに監視するっていうことは、市長の命令ね。

          で、あの男を連れてきたのは大方ログーランビルの生き残りで、私と会わせることで記憶が戻るかも、と考えたのでしょうね」

     

    やはり手の内は読まれていたが、サム――オサム・ブッテロ――について知っているということは、あの事件にデレシアが関わっているのは間違いない。

    恐らくトラギコ・マウンテンライトもある程度のことを知っているが、逮捕に踏み切れないと判断したのだろう。

    賢明な判断だ。

    あの“虎”が噛み付かないという相手は、それだけ厄介な相手ということ。

     

    彼が出してきた報告書に彼女の名前が出ていないのは、意図的に隠していたのだろう。

    所々にあった情報の穴は、デレシアが当てはまると考えていい。

    ならばやはり、ベルベット・オールスターの報告にも正しいことがあったと言うわけだ。

     

    ( <><>)「……そこまで見通されるとは、正直残念です。

            貴方がモスカウにいれば、解決できる事件が山のようにあるというのに」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「言うべきことはそれで全部かしら?」

     

    ( <><>)「ここで私を殺しますか?」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「必要があればね。

          ところで、椅子の上に無痛針を仕掛けておいたの、気づいたかしら?」

     

    (;<><>)「なっ?!」

     

    その言葉を聞き、ワカッテマスは反射的に席を立って椅子を見た。

    だがそこには何もなく、慌てて目の前を見るが、そこにデレシアはいなかった。

    彼女が後ろに立っているのだと、囁く声がして初めて分かった。

     

    ζ( *ζ「ふふっ、さようなら」

     

    一瞬、ワカッテマスは己の首にナイフが押し当てられ、喉元を切り裂かれる幻覚に襲われた。

    しかし彼の首は切れておらず、振り返った先にデレシアはいない。

    袖口に隠し持っていたデリンジャーを使う隙も無かった。

    冷や汗が今になって額から溢れ出してきた。

     

    (;<><>)「あっは……

           想像していたよりも凄いな」

     

    トラギコが彼女に目を付けた理由が理解できた。

    そして、ワカッテマスは彼を羨ましく思った。

    誰よりも先に彼女に目を付け、彼女を追い続ける彼は今が警察官である間で最も幸せな瞬間に違いない。

    平和を望みながらもそれを脅かす存在がいなければ警官は目的を失い、やがては老いるか堕落してしまう。

     

    ショボン・パドローネとジョルジュ・マグナーニがそのいい例だ。

    彼らは優れた警官でありながらも、あのような凶行に走った。

    挙句、凶悪犯と手を組んで島を恐怖の底に叩き落すまでに至った。

    やり方というものが極めて煩雑で、考え方があまりにも短絡的すぎる。

     

    果たしてデレシアがどの事件にどこまで関係しているのか、まだこれから調べる必要がある。

    調べる過程で殺されないようにだけ気を付け、来る日までは敵対視されないように擬態しなければならない。

    あれは、これまでに見てきたどんな犯罪者よりも危険で、どんな謎よりも底が知れない。

    まるで深淵に潜む魔物のようなものだ。

     

    ワカッテマスは久しぶりに血が滾るのを感じ、彼の“本当の目的”を達成するのは今しばらく時間がかかると考えを改めることにした。

     

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    August 18th AM08:23

    シャルラ/ウモーリャ区

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    予定よりもかなり早いが長い船旅を終え、トラギコ・マウンテンライトは久しぶりの陸地の感触を足の裏で堪能した。

    船長が極めてせっかちな性格をしており、船が跳ねるような速度で進んだのが幸いして早い到着となり、災いして大勢の船酔い客が生まれた。

    酷い揺れの船内で出された食事は肉か魚しかなく、時々海藻のサラダが申し訳なさ程度に出るだけだった。

    いい加減、海鮮には飽きていた。

     

    (;=゚д゚)「さ……さみぃ……」

     

    そして、彼が用意してきた防寒具はあまり意味をなしていなかった。

    氷でできたような風が容赦なく襲い掛かり、白い息が凍り付くのではないかと危惧するほどだった。

    トラギコは船から降りて真っ先にパブに入り、風から逃れることにした。

    朝からパブには大勢の客が肩を並べて座り、赤い顔をさせて酒を飲んで大声で談笑している。

     

    焼けた肌と体つきから、彼らが漁師であることは間違いない。

    皿の上には野菜やフルーツ、勿論魚料理も並んでいる。

    食事の種類には期待してもよさそうだった。

    唯一空いているカウンター席に座り、メニューを見てトラギコは大声で注文をした。

     

    (=゚д゚)「スコッチ・ウィスキーをダブルとピクルス山盛り、それとフライドポテトとコールスロー」

     

    一息つき、トラギコは店で流れているラジオに耳を傾けた。

    先日起きたティンカーベルでの襲撃事件はジュスティアに対する信用問題よりも、世界の正義を名乗るジュスティア相手にあそこまでやる組織の存在の認知が大きな衝撃だった。

    逮捕された人間の素性は世間に公にされておらず、偽名と偽りの職業が用意されていたことがジュスティアの信用を守ったのだ。

    これまで水面下で動いていたティンバーランドが大々的に動き始め、世界にその存在を知られることを恐れなくなっている。

     

    それはつまり、今知られたところで彼らには何の被害もないという自信がある表れだ。

    護送途中だった人間は全員ジュスティアへと引き渡され、即座に尋問が始まっているはずだ。

    だが彼らが情報を喋るとは思えない。

    警察の内部にいる裏切り者が彼らを再び逃がす算段を立て、行動する時に誰が動くのかがトラギコにとっての心配事だ。

     

    一般の警官では止められないだろうから、ツー・カレンスキーは軍の人間を使うかもしれない。

    一応トラギコの情報を彼女が信じていれば、軍人や警察官という枠組みで考えるのではなく、信頼できる人間を配置するはずだ。

    警告を受けて今回の事件が起きたことを踏まえれば、当然、彼女はトラギコの話を信じるだろう。

    円卓十二騎士を隠すことなく大々的に投入したのは、ジュスティアがこの一件に関して本気で取り組むという意思をティンカーベルに示したのかもしれない。

     

    (・´з`)「……ん」

     

    カウンター越しに、乱暴に酒とピクルスが置かれた。

    トラギコの横に座っていた男はそれを見て鼻で笑い、挑発的な視線を向けている。

    鼻と頬が赤く染まるその顔は、シャルラの土地に住まう人間によくいる彫りの深い顔立ちをしていた。

     

    (=゚д゚)「なんだよ?」

     

    ,,,_ア゚)「いいやぁ、別に。

         この街に来てウィスキーったぁ、随分と女々しいと思ってな」

     

    そう言って男は、自分のグラスを見せつけるようにして傾けて飲んだ。

    色は無色透明。

    グラスの中身がウォッカなのは香りで明らかで、男は間違いなく酔っぱらっていた。

     

    (=゚д゚)「俺は俺の好きな酒を飲むだけラギ。

        いちいち突っかかって来るんじゃねぇ」

     

    ウィスキーのグラスに手を伸ばしたところで、再び男が口を開いた。

     

    ,,,_ア゚)「おかま野郎め」

     

    (=゚д゚)「……もう一度は言わねぇラギよ」

     

    長い船旅でトラギコは今、あまり寛大な気持ちで男の言動を受け止めてやれる自信がなかった。

    酒を飲んで陸地の料理を胃袋に収めて、スノー・ピアサーが到着する自治区に移動しなければならないのだ。

    時間に余裕があるとは言っても、不毛なことに使う時間はない。

     

    ,,,_ア゚)「へぇ、おかま野郎でもそんなセリフが――」

     

    トラギコはただ一撃。

    喉ぼとけに向け、外科医のように正確無比な腕前をもって、抜き手を放った。

    男は喉を潰され、そのままカウンターに悶絶して倒れこんだ。

    暴れないよう、男の首を押さえ込みながらトラギコは一言述べた。

     

    (=゚д゚)「酒は静かに楽しめ、分かったラギな?」

     

    (・´з`)「何の騒ぎだ」

     

    (=゚д゚)「酒が回って伸びちまっただけラギ。

       そうだよな」

     

    カウンターに顔を突っ伏したまま、男は頷いた。

    トラギコの手は男の首にさりげなく置かれ、いつでも首を折れるということを伝えている。

    ここで余計なことを口走れば、その指に力が込められ、男はより一層苦しむことだろう。

     

    (=゚д゚)「な?」

     

    (・´з`)「面倒ごとは止めてくれよ」

     

    男の首から手を放し、差し出されたフライドポテトとコールスローの皿を受け取る。

     

    (=゚д゚)「あぁ、任せてくれラギ」

     

    ウィスキーを口に含み、その強烈な香りに唸った。

    山盛りになったピクルスをフォークで刺し、次々と口に運び、酸味に体を震わせる。

    キュウリと人参、そしてセロリのピクルスはどれも歯ごたえがあってトラギコの好みだった。

    湯気の立つフライドポテトはケチャップをたっぷりと付けてから食べ、カリッとした食感と甘い風味を味わった。

     

    (=゚д゚)「この辺に服屋ってあるラギか?」

     

    (・´з`)「すぐ向かいの店に服は売ってるけど、漁師の店だから観光客には向かねぇな」

     

    (=゚д゚)「それで十分ラギ」

     

    手早く食事を終えたトラギコは支払いを終え、店を出てからまずバス停を探した。

    広大な街を安全かつ素早く移動するためには、徒歩か車を使うしかない。

    陽が出ていてもこの寒さは徒歩で移動する人間の体力を容赦なく奪うだろう。

     

    (=゚д゚)「三十分後か」

     

    寂れたバス停にあった時刻表には、一時間に一台の運行しかないことが書かれている。

    次は九時にバスが来ることを確認し、腕時計を見てから、トラギコは向かい側の建物に足を運んだ。

    札も何も出ていない店の扉を開くと、そこには明らかに漁師とは思えない顔つきの男たちが並んでいた。

    海の荒くれもの、という表現がしっくりくる。

     

    そしてその建物には商品らしきものは何もなく、壁や床には投網や綱などの漁師道具が雑然と並んでいる。

    店と言うよりかは作業場に近い。

    壁や床は打ちっぱなしのコンクリートで、まるで飾りっ気がない。

    あの店主に一杯食わされたのだと一目で分かったが、出て行くには時間が足りなかった。

     

    从´_ゝ从「……なんだぁ、てめぇ」

     

    (=゚д゚)「服を買いに来たんだが、ここは違うラギか?」

     

    -゚ぺ-)「んなわけあるかよ、馬鹿が」

     

    (=゚д゚)「そこの店の男に言われて来たんだが、なるほど、騙されたみたいラギね。

        邪魔して悪かったな」

     

    +゚べ゚+)「まぁ待てよ。

         迷惑料を払ってもらうぜ」

     

    (=゚д゚)「そこの店に領収書渡しておいてくれラギ。

        額はいくらでもいいラギ」

     

    男たちの要求を無視して出て行こうとするトラギコの肩を後ろから掴み、男の一人がタバコの煙をトラギコの顔に吹きかけた。

     

    |゚レ_*州「そりゃあ駄目だ。

         お前が面倒を起こした、だからお前が払え」

     

    (=゚д゚)「くせぇ息をこれ以上俺に嗅がせるな。

        俺は今機嫌が悪いラギ」

     

    |゚レ_*州「怪我してから金を出すか、それとも無傷で金を出すか選ばせてやる」

     

    (=゚д゚)「……この街は手前みたいな喧嘩好きしかいねぇのかよ。

        シャルラも少しはまともになったかと思ったが、やっぱりこんなもんラギか」

     

    広大な土地を持ちながらも、その永久凍土と厳しい環境のためにシャルラはまだ発展途上の街なのだ。

    海沿いの自治区もあれば荒野の中にある場合もある。

    そのため、発展している場所とそうでない場所が浮き彫りとなっており、同じシャルラ内での貧富の差は極めて大きなものとなっている。

    カニ漁のシーズンでない今、シャルラの港町は輸入品の中継点としてだけ使われているため、あまり活気がない。

     

    取れる魚は街に巡り、彼らの手元にはわずかな金だけが残る。

    大金を得られるカニ漁の時期までの間、ウモーリャ区は寂れた状態が続く。

    観光客がこの自治区によることはほとんどないため、夏の間、漁師たちの機嫌と街の治安は燕のように低空飛行を続けるのである。

     

    |゚レ_*州「そのアタッシェケースを置いていきな。

         命までは取らねぇからよ」

     

    (=゚д゚)「こいつが欲しいのか?

       やめときな、お前にゃ無理ラギ」

     

    トラギコはアタッシェケースを掲げて見せ、そちらに視線が向いている間に右手を腰の後ろに伸ばした。

    そこにあるベレッタM8000の銃把に指先が触れる。

     

    |゚レ_*州「あぁ?

         なめた口きいてるんじゃね――」

     

    ――男の言葉が途中で途切れ、トラギコはその理由を考え、そしてその視線の先を見た。

    いつの間にか、外の景色が白く変わり果てていた。

    否、窓が白くなっているのだ。

     

    (=゚д゚)「どうしたラギ?」

     

    |゚レ_゚;州「や、やべぇっ!!

         “スーフリ”だ!!」

     

    男たちは顔色を変え、建物の奥へと走り出した。

    それを追うようにして、トラギコも走った。

     

    (=゚д゚)「なぁ、スーフリって何ラギ?」

     

    |゚レ_゚;州「んなもん話してる時間ねぇよ!!」

     

    床についていた扉を開き、男たちはそこに逃げ込んでいく。

    どうやらそれに続いた方が賢いと、トラギコは本能で悟った。

    背後でガラスの割れる音が聞こえ、建物全体が軋むような音を上げている。

    梯子を使って建物の下に降り、扉を閉めたところで下にいる男が声を荒げた。

     

    |゚レ_゚;州「何でこっちに来てるんだよ!!」

     

    (=゚д゚)「まぁそう言うなよ。

        俺がここで手を放して面白いことをしてやるからよ」

     

    下から見える明かりまではまだ距離がある。

    ここでトラギコが手を離せばどうなるのか、狭い空間で起こることはたった一つだけである。

     

    |゚レ_゚;州「よせ、馬鹿!!」

     

    (=゚д゚)「まぁ他にも訊きたいことはあるから、それまでいい子にしててくれや」

     

    徐々に明るさが増し、そして、トラギコは眼下に現れた光景に目を丸くした。

    地下シェルターの類があるのだと勝手に想像していたが、実際にそこにあったのは――

     

    (;=゚д゚)「……街か、これは」

     

    ――朽ち果てた建物が広がる、街の残骸だった。

     

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    :|::::|: : :L|___|二二ニ:||| i||_|_|_::|_|_|_||__||_|_|_||_::|_|:: l‐ーヽ|_|_|_|_| |i⌒\|: : /

    :: : : 込‐___|二二ニ:||| i||──|┼‐‐|─‐ー|i┼|┼─レ''|ーー| | | | |√ ̄ヘ_|_|

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    : : : : __]__|_|::|||i|=||┴、| |::|| :|| |: : | |:|:|::|::|::::::::|:::||:::l-| | | |/ / / |_

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    `  .,^⌒ヽ‐__|_|⊥‐⌒                . : : : : :  ̄/ / xく⌒'<⌒\|_|

      _><⌒ヽ|_-⌒         ,: : :,            ..../ /xく⌒>く⌒\::::::|_||

    、< >、、´     ̄⌒ __            . . : : ;:;:;:;:\x<_/: : : :::: ::::::|_||:::

    ,><_s≦⌒ : : : : : : : -=        . : : : : _ ‐___ 厶斗-┴─__─\_/:|_||:

     

    第四章【Snowpiercer part2-雪を貫く者part2-】 了

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