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第四章【monsters-化物-】

  1. 名前: 歯車の都香 2017/04/16(日) 13:23:00
    第四章【monsters-化物-

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    目的のために悪を利用することなかれ。

    常に純然たる純潔を忘れず純粋に真実を追及すべし。

    新雪の如く、穢れなき存在であれ。

    それこそが矜持となり、力となり、正義となる。

     

    理性を失った獣となることなかれ。

     

                                    ――ジュスティア警察 警察手帳より

     

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

     

                                        目的のためには手段を選ぶな。

                                   例えそれが悪行だろうと、偽善だろうと。

                                    正義などと言う大義名分は捨て置け。

                               平穏を護る者に、そのような物は不要なのだ。

     

                                           獣となることを誇りに思え。

     

    イルトリア治安維持軍 軍規より――

     

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

    ┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻

     

    朝日が水平線の彼方から昇る前に、獣の耳と尾を持つ少年の意識は夢から現実へと戻っていった。

    テントで一夜を明かした少年の名前はブーンといい、彼は今、寝袋の中で豪奢な金髪を持つ女性の腕に抱かれた状態で目を覚ました。

    朝森の漂う森の涼しげな香りに交じって女性特有の甘い香りが鼻孔をくすぐり、ブーンの胸は気恥かしさよりも安堵感でいっぱいになった。

    心から安心出来る目覚めに、ブーンの心は溶けるように安堵した。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「おはよう、ブーンちゃん」

     

    名を呼んで頭を撫でてくれたのは、美しい碧眼と波打つブロンドの持ち主であるデレシアだ。

    彼女の声は雪解け水のように澄み切り、淀みも歪みも濁りもない、楽器の奏でる音色の様だった。

    人間離れした聴力を持つブーンは、その声が大好きだった。

    いつまでも聞いていられる、心地のいい音であり、何よりも心安らぐ声だ。

     

    彼女が口にする言葉を真似して、一日も早くその発音を自らのものにしたかった。

    文章を作ることは出来るようになってきたが、早口で単語を並べる事や難しい語を滑らかに発音するのはまだ不得手な状態だ。

    今はたどたどしい発音でしか言葉を紡げず、褒められる発言が出来るのは人の名前と地名、そして“餃子”という単語だけ。

    そして、口癖は一向に治りそうになかった。

     

    (∪*´ω`)「おはようございますおー」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「早起きさんね」

     

    どうして早く目が覚めたのか、ブーンはその理由が分かっていた。

    不安と心配、そして期待と緊張によるものだ。

    デレシアの考えている計画に自分が組み込まれ、その役をしっかりと果たせるのかという危惧は一向に薄れない。

    現状を考えると、誰もブーンを責められないだろう。

     

    彼が例え、数多の死地を潜り抜けた歴戦の猛者であったとしても、不安を完全に拭い切る事は難しい。

    ティンカーベルと言う海に囲まれた島の中に潜む強力無比な敵に狙われ、その正体や規模が不明ともなれば、よほどの豪胆者でも不安を抱かずにはいられない。

    相手にする組織の規模などを正確に知るデレシアだけは、おそらくこの島で唯一不安を抱かずに敵対できる存在に違いないだろう。

    彼女は状況を分析した後、彼女を追っていた人間を一時的にとは言え味方に引き入れ、共闘体制を形成した。

     

    幼くともいくつもの修羅場を見てきたブーンは、やはり、デレシアがいれば何事もどうにかなってしまうのだろうと理解しつつあった。

    楽観的に見るのではなく、大局的に見ての判断だ。

    格が違う、と言う言葉の意味をブーンはデレシアを通じて学ぶことが出来た。

    金持ちでも、徒党を組む暴力者でも、巨大な組織の人間でさえも、デレシアには敵わなかった。

     

    その理由をブーンは、何手先を見据えているかの差だと考えている。

    だからこそ先んじて行動することも、後になって最適な対応を取る事も出来るのだ。

    相手の行動が分かっていれば、恐れることはない。

    必要なのは備える事なのだ。

     

    (∪´ω`)「あの、きょう……」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「大丈夫よ。 さ、まずは朝ごはんをしっかりと食べましょう。

           朝ご飯はその日の元気の源なんだから」

     

    (∪*´ω`)゛「はい!」

     

    肌寒い朝の中、二人は寝袋から静かに起き上がる。

    伸びをして体をほぐし、ひんやりとした空気の漂うテントの外に出て行く。

    森はまだ暗く、陽の光は届いていない。

    夜の気配がまだ残留した空気は新鮮そのものであり、ブーンの肺はすぐに冷えた空気と入れ替えられた。

     

    夏の匂い。

    生物の活気が色濃く滲み出たこの匂いが、ブーンは好きだった。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「今日の朝御飯は何かリクエストはあるかしら?」

     

    (∪´ω`)「おー」

     

    正直、ブーンは食事の種類というものをあまり知らない。

    主食となる物が米かパンなのか、添えられるのが肉か、魚か、それとも野菜か。

    特定の料理が好きという事はないが、好んで食べたいものはある。

     

    (∪´ω`)「デレシアさんのごはんなら、なんでもたべたいですお」

     

    そう。

    デレシアの作ってくれる料理であれば、何でもいい。

    勿論、ヒートの料理もそうだし、ロウガ・ウォルフスキンの料理もそうだ。

    彼女たちの料理は全てが美味しく、全てがブーンの好みだった。

     

    飲食店で提供される料理よりも、何よりも、ブーンは彼女達が作ってくれる料理が好きだ。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「あら、嬉しいこと言ってくれるわね。

          そしたら、そうねぇ……

          今日は忙しいから、私の好きなメニューにするわね」

     

    (∪*´ω`)「やたー」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「じゃあ、料理をするからブーンちゃんは顔を洗ってきなさいな」

     

    (∪´ω`)「はいですおー」

     

    ブーンはタオルを持って顔を洗いに河原に行き、冷たい水で顔を丁寧に洗う。

    その冷たさはまるで氷の様だ。

    氷のように冷たく、澄んだ川の水は平熱の高いブーンにとってはありがたいものだった。

    テントに戻ると、デレシアが朝食の準備をしていた。

     

    クッカーの上で焼かれているのは、ベーコンと卵。

    甘い香りの油がベーコンから染み出して、得も言われえぬ香ばしさを漂わせる。

    オレンジに近い濃厚な色の黄身を中心に、白身が放射状に広がってベーコンの半分を覆っている。

     

    (∪´ω`)「おー、おひさまやきですか?」

     

    サニーサイドアップ、という単語を口にしたブーンの頭をデレシアの手がそっと撫でた。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「えぇそうよ。 じゃあ、ここで問題。

           どうしてお日様焼き、って言うか分かるかしら?」

     

    (∪´ω`)「おー? おひさまで、やいたんですか?」

     

    その答えに、デレシアが笑みを浮かべる。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「昔そういう兵器を考えた人がいたけど、太陽光で卵を焼くのは結構大変だったの。

          ほら、こうして上から見ると太陽みたいでしょ?」

     

    確かにそう言われてみれば、黄身が太陽、白身が陽光に見えなくもない。

    となれば、ベーコンはさしずめ雲と言ったところだろうか。

    また一つ知識を獲得したブーンはデレシアの顔を見て頷いた。

     

    (∪´ω`)゛「おー」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「今日の朝御飯は、昔のイルトリアのメニューよ」

     

    (∪´ω`)「むかしの?」

     

    イルトリアと言えば、ロウガやロマネスク・O・スモークジャンパー、ギコ・カスケードレンジ、ミセリ・エクスプローラー、そしてペニサス・ノースフェイスの故郷だ。

    どのような街か、ブーンは全く知識がない。

    知っているとしたら、これまでに会ってきた人間の全員が桁違いの力を持っているという事ぐらい。

    そして、ブーンに大切なことを教えてくれた人間という事だ。

     

    いつかはイルトリアに行ってみたいと思っているが、それが叶うのはきっとずっと未来の話だろう。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「えぇ、本当に昔の話。

           今でこそご飯が美味しいって言われているんだけど、昔はとても個性的な料理ばかりでね。

           その個性的な料理の中でも、この朝食だけはどこの人にも美味しいって言われていたの。

           フル・ブレックファスト、って言うのよ。

     

           ただ、ちょっと食材が足りていないから本物はまた今度ご馳走してあげるわね」

     

    (∪*´ω`)「やたー」

     

    ζ(^^*ζ「うふふ、その時は皆で一緒に食べましょうね」

     

    そっと差し出されたマグカップを受け取り、その匂いにブーンの持つ犬の尾が反応した。

    まるで花の蜜のような香りがする、琥珀色の液体。

    一見すると紅茶だが、これまでにブーンが飲んできたどの紅茶とも違う。

    そして一口飲むと、ブーンはその豊かな香りに全身が総毛立った。

     

    鼻から突き抜ける香り高さは、まるで目の前に花束があるかのよう。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「気付いた?

          それはね、ロータスポンドっていう種類の紅茶なの。

          紅茶には沢山の種類があるから、それもまた一緒にお勉強していきましょうね」

     

    (∪*´ω`)「お!」

     

    手際よく調理を進めていくデレシアは、スライスしたトマトをソテーして、それをサニーサイドエッグの横に添える。

    軽くソテーされたトマトからは得も言われえぬ香りが漂い、その酸味と甘みの混合した香りがブーンの食欲をそそった。

    心配していたことは全て些事としか思えなくなり、早くも朝食が楽しみで仕方がない。

    ローブの下で揺れる尻尾を見て、デレシアがそっと微笑む。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「じゃあ、私も顔を洗ってくるからブーンちゃんはパンを焼おいてちょうだい」

     

    (∪´ω`)「わかりましたー」

     

    自分にも何かができることがブーンは嬉しかった。

    料理ができるようになっただけでも、かなりの進歩が実感できている。

    進歩の実感は彼にとって、自分が無力な存在でないことの証明と同じ意味を持っていた。

    デレシアに任されることが増えるたびに、ブーンは喜びを覚えた。

     

    彼女と出会ってから、ブーンは多くの“初めて”を学んだ。

    初めての事は、良くも悪くもいつでもブーンを興奮させた。

    知識が増えることもあれば、命の危機に瀕することもあった。

    確かに言えることは、デレシアと一緒にいればブーンの世界は際限なく広がるという事だ。

     

    道具として扱われていた日々の中では想像も、ましてや理解することも出来なかっただろう。

    他人を大切だと思える事。

    何かを教わる事の楽しさ。

    誰かの為に自分の意志で戦いを挑む事。

     

    そして、誰かに想われる喜びを。

     

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                    ..._,,.. --ー―ーイ.,

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           ,,.-/     ヤ: : : : : : : : : : : : : ... `ヽ.

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         /⌒` ̄ ̄| |~: : ' ' ' ' ' '‥…━━ August 11th AM04:35 ━━…‥

       /7,.- 、   .ゝヽ{'         ' : : : : : : /

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    ./   !     ^'''-  | /--    \   ノ

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

     

    ヒート・オロラ・レッドウィングは夏の朝市が開かれるよりも早く目を覚まし、湯気の立つコーヒーを飲みながら準備を進めていた。

    泥のような色をしたコーヒーの味は、やはり泥に似た味がした。

    砂糖をいくら足してもその苦みだけは消える様子がなかったため、角砂糖を八つ入れたところでヒートは諦めた。

    彼女の準備はいたって単純だったが、単純故に決して気を抜くことはない。

     

    武器を整え、体を整える。

    それこそが彼女の準備だ。

    戦いに挑み、殺しを遂行する準備。

    頼りになる道具は己の体と心、そして武器だ。

     

    調整の済んだ体は何よりも使い勝手のいい武器となる事を、ヒートは良く知っていた。

    彼女の四肢だけでなく、その指の一本に至るまで精巧な武器と化している。

    拳は鎚となり、抜き手は刃となる。

    準備が整えば、彼女は得物なしでも武器を持つこととなる。

     

    何年間も続けてきたこの準備は、習慣に近い行為として体に染みついていた。

    復讐を誓い、殺しを始めた頃から使い続けている二挺の拳銃の手入れは目隠しをしても出来る領域にある。

    連射機構を改造し、フルオート射撃が可能になったベレッタM93R

    その銃身下、トリガーガードの前には本来備わっているはずのグリップがあるのだが、ヒートの場合はそれがナイフになっている。

     

    ナイフは決して錆びることが無いよう、切れ味が落ちることの無いように研がれていた。

    拳銃ではカバーすることの出来ない超近距離戦闘を制することの出来るこのナイフは、これまでに何度も人の命を奪い、ヒートの命を守ってきた。

    そのナイフを取り外し、砥石を使ってその刃を更に研ぎ澄ました。

    鋭利な刃は必ず役に立つ。

     

    喉笛を切り裂く時にはそれを実感する。

     

    ノパ⊿゚)「……」

     

    部屋にはエアコンの駆動音とヒートが刃を研ぐ音だけが揺蕩っていた。

    ヒートは何度も反芻するようにして、一つの事を考えていた。

    母親である、クール・オロラ・レッドウィングの言動についてである。

    本気で自分を殺そうとしていたという現実を考えて、彼女の発言は殆どが真実だろう。

     

    即ち、自分を除く家族全員を爆殺するという計画を立てた張本人は母親であり、その目的は耳付き――獣の耳と尾を持つ人種――を根絶やしにする為。

    狂気だ。

    正に、狂気としか言いようがない。

    その血を引く人間が自分だと思うと、ヒートは憤りと共に吐き気を覚えた。

     

    確かに、耳付きは世間から疎まれている。

    それは紛れもない事実だ。

    奴隷として売られ、詳しい研究もされていない、正に家畜とほぼ同じ扱いを受けているのは誰もが知っている。

    というよりも、誰もがそう教育され、そう感化され、そう信じるようになっているのだ。

     

    弟が生まれるまでは、それはいささか疑念のある考え方だと思っていたが、ヒートは口には出さずにいた。

    耳付きと関わることはほとんどない人生だったし、街中で売られている子供を見たことがあるが、それを助けようとは思わなかった。

    それがヒートの世界だった。

    弟が生まれるまでは。

     

    弟を目にしたとき、ヒートは己の認識の全てが変わった。

    耳付きに興味を持ったのは、間違いなく弟の影響だった。

    彼が病気にかかった時にはどうすればいいのかなど、図書館で調べることが増えた。

    そこで分かったのは、耳付きに関して興味を持っている人間はほとんどおらず、誰も研究をしていないという事実だ。

     

    何故耳付きが生まれるのか。

    耳付きは何故人間離れした身体能力を有しているのか。

    ヒートはそういったことに興味が湧いたが、答えは終ぞ得られることはなかった。

    しかしながら、得られたものがあった。

     

    耳付きと呼ばれる人種は、人よりも優れている部分の方が圧倒的に多いという事だ。

    一度風邪をひけばもう二度と引くことはなかったし、体温の高さ故に寒さにも強かった。

    だが、それは耳付きという人種を知るだけであり、共に生活をしていれば誰でも気付く事だ。

    ヒートが得た最大の成果は、それではなかった。

     

    弟がいるというだけで、ヒートの世界は全てが輝きに満ち、新たな発見に溢れたものとなった事が、何よりも素晴らしい成果だった。

    弟はこの世界の宝物だった。

    世界を引き換えにしてでも守りたいと思う存在だった。

    仔犬のように可愛らしい弟は母よりもヒートに懐き、歳が離れていることもあってヒートが食事などの世話をした。

     

    おむつを替え、寝かしつけ、風呂にも入れた。

    愛情を注ぎ続け、弟は育っていった。

    言葉もままならない中、弟が初めて喋った言葉は「ねーね」だった。

    ヒートはその言葉を聞いた時、涙を流して喜んだ。

     

    だが思い返せば、母親は弟が生まれてからずっと彼に対して目を背け続けていた。

    世話全般をヒートに任せ、自分は仕事に専念していた事を思い出す。

    家計を支えるためとヒートは納得していたが、それは結局、弟の存在を疎ましく考えていたからだろう。

    首も座り、一人歩きを始めたのは生後七か月の頃だったが、それを目撃したのはやはりヒートだった。

     

    思い出が次々に浮かび上がり、ヒートは改めて母親に対して殺意が湧き上がって手に力が入った。

    思い出の何もかもを吹き飛ばし、弟の命と父の命を奪った女。

    血の繋がりがあろうとも、必ず復讐は果たす。

    これまでに積み上げてきた屍の中の頂上に、あの女を加えることは義務に近い物がある。

     

    肉親の不始末は肉親が付ける。

    研ぎ終わったナイフをM93Rし、次に弾倉に弾を装填する。

    この後、強化外骨格との戦闘は必ず起こる。

    通常の拳銃弾では棺桶の装甲を貫通することは出来ないため、強装弾を使用しなければならない。

     

    強装弾はその貫通力故に生身の人間には効果が薄い。

    デレシアから作戦を伝えられ、ヒートは感情の赴くまま徹底的に棺桶との戦闘を行う役割を担った。

    曰く、ヒートはまだ“レオン”を使い切れていないとの事で、それがヒートの弱点でもあるとの事だった。

    確かに、自分でも自覚していた。

     

    対強化外骨格用強化外骨格、つまり、棺桶との戦闘に徹底して特化して作られたレオンが他の棺桶に後れを取ることは設計者の意にそぐわない。

    デミタス・エドワードグリーンが使用している“インビジブル”は肉眼、カメラから完全に姿を隠すことに特化した棺桶だ。

    だが、レオンにはその姿が見えていた。

    負ける要素も、まして後塵を拝するなどあってはならないことだった。

     

    これもまたデレシアからの情報だが、レオンは製造されたほぼ全ての棺桶に対して対抗できる能力がある。

    例えば光学迷彩を用いてカメラを騙す棺桶や、猛毒を撒き散らす棺桶、強固な装甲を持つ棺桶などを圧倒できるそうだ。

    つまりは、ヒートの技量、知識、そして経験不足が問題でありそれが解消されれば、今後棺桶との戦闘は優位に立てる。

    今必要なのは、多くの棺桶との戦闘を経験して、ヒートの戦い方を確立することだ。

     

    クールが使っていた棺桶が何に特化しているのかを察することが出来れば、あのような醜態を晒さずに済んだ。

    遠隔操作に特化した棺桶など、これまでに見たことも聞いたこともなかった。

    経験と知識不足がもたらした致命的なまでの失態だった。

    例えるなら、ショットガンの特性を知らずに近接戦闘を挑んだ獣のような物だ。

     

    獣と人間との違いは理性の差である。

    即ち、戦いを挑む相手に対して理解があるか否かだ。

    その点で論じるならば、間違いなくヒートは獣と同じだった。

    闘争本能に従い、理性を欠いた哀れな獣。

     

    今後は無謀な戦いは避け、確実に勝ち、殺 せ る 戦 い をしなければならない。

    それが自分のためだ。

    未知の敵に対しての抵抗力を高めなければならない。

    人間と獣の最大の違いは、理性の有無だ。

     

    理性が働くならば、選ぶべきは効率に限る。

    取り急ぎ狙うべきは、戦闘慣れしていないながらも、持っている棺桶が厄介な人間。

    最優先で潰さなければならないのは、シュール・ディンケラッカー。

    “レ・ミゼラブル”は音を使って暴徒を鎮圧することに特化しており、生身の人間では対抗するのが難しいとの事だった。

     

    トラギコ・マウンテンライトもそれに殺されかけたとの事で、もしもあの女がブーンを狙ったとしたら、非常に不味いことになる。

    ブーンは人間離れした聴覚を持っており、音を使った兵器が相手の場合、影響力は計り知れない。

    潰さなければならない。

    ヒートの中にある優先事項の最上位に、ブーンの存在があった。

     

    仮初の復讐を果たした虚無感に支配されていたヒートを救ってくれたブーンを害する者は誰であれ、何であれ、叩き潰す。

    もう二度と失うものかと、ヒートは一発ずつ覚悟と殺意を込めて弾を弾倉に込めていく。

    Bクラスの代表格であるジョン・ドゥの装甲であれば、五発ほど正確に同じ場所に当てれば穴が開くだろう。

    装甲の薄い場所ならば一発で貫通できる。

     

    ヒートの戦い方は大きく二つある。

    一つはレオンを使った直接的かつ最接近した状況での戦い。

    そしてもう一つは、離れた位置から銃を使っての戦いだ。

    単一の目的に特化したレオンは強力な装備の代償として、近距離以外での戦闘が出来ない。

     

    それを補うのが拳銃である。

    勿論、拳銃以外の銃を使う選択肢もあるが、手持ちの銃にライフルはない。

    それに、ライフルを持ち歩く趣味はない。

    最善の武器とは、目立たず、そして効果的でなければならない。

     

    威力の点で言えば当然レオンに劣るが、拳銃は中距離での戦闘を有利に運ぶための貴重な道具だ。

    特に、予期せぬ状況で戦闘が発生した時には役に立つ。

    用意しておいた弾倉全てに弾を込め、ヒートは窓の外に目を向ける。

    空はまだ暗く、漂う雲の色は紫色をしている。

     

    ノパ⊿゚)「……夜明け、か」

     

    様々な思惑がうごめく夜明け前。

    これから訪れる夜明けはヒートが想像している以上の意味を持つだろう。

    この島に来てから二日。

    ショボン・パドローネ達は虎視眈々と、デレシアに一矢報いるその時を待っているに違いない。

     

    オアシズから逃げおおせ、死刑囚を脱獄させ、島にやって来るデレシアを待ち構えていたのだ。

    手痛い失敗からデレシアの実力を知った上で考えられた計画。

    ジュスティアまでも巻き込んでいることから、計画に対して自信があり、ジュスティアをあまり意に介していないという考えが現れている。

    自信があるという事は勝算があるという事。

     

    力技とも断じきれるこの計画を、デレシアは即座に打ち破ろうとしている。

    大それた計画を台無しにするためには、必ずそれ以上に大きな力が働く。

    人数と規模ではこちらが劣っているが、それを埋め合わせて覆すだけの戦略と戦術がデレシアにはある。

    相手がこちらを狙っているのならば、こちらから出迎えてやればいいと、デレシアは事もなげに言った。

     

    正面からの殴り合いに持ち込むつもりなのかとヒートは度肝を抜かれたが、無策のまま相手が仕掛けてくるのを待ち構えるよりも、準備が整う前に迎え撃った方が勝算は高い。

    綿密な作戦というものは、対象が予想外の動きをした途端に崩れるものだ。

    当然だが、作戦というものにはいくつもの可能性を考慮したものが用意されている。

    チェスの名手が最低でも20手先を読むように、計画者は相手の出方に合わせた計画を使い分けて対応する。

     

    だからデレシアは、考慮されていない可能性を選んで迎え撃つという。

    幾重にも張り巡らせた相手の策には必ず心理的な抜け道がある。

    デレシアはこれまで、襲い掛かる驚異の全てを己の手で蹴散らしてきた。

    その蹴散らすという行為は相手の中に強い印象を残し、デレシアの反応は即ち反撃という図式が出来上がっている事だろう。

     

    それこそが盲点となる。

    今回の目的は敵の排除ではなく、彼らの目的を阻止することだ。

    もしもデレシアが排除を目的として行動していれば、彼らの計画のどれか一つに該当してしまうかもしれない。

    だがその目的が異なった物であれば前提が覆り、彼らが頼みの綱としている計画を破綻させられる。

     

    まるで賭けのような動きだが、ヒートは仮にそうだとしても、デレシアの賭けから降りるつもりはなかった。

    彼女はヒートの知る限り、誰よりも物事を知り、誰よりも強い人物だ。

    その正体が気になるが、ヒートがこれまで自分の過去を語らなかったように、デレシアが語るのを待つしかない。

    こちらから訊くのは、どうしても出来なさそうだ。

     

    弾倉の準備を終え、コーヒーを飲む。

    溜息を吐いて、作業の手を止める。

    感情に身を任せた自分がやるべきことは分かっている。

    復讐を。

     

    復讐を果たすのだ。

    この感情に捉われた人間は、等しく醜い顔をしている事だろう。

    今、ヒートはこの顔をブーンに見られたくなかった。

    見られてしまえばきっと、ブーンに嫌われてしまうだろう。

     

    復讐に身を焦がす殺人者の顔など、見せるべきではないのだ。

     

    ノパ⊿゚)「……絶対に、殺してやる」

     

    復讐は何も生まないと言う人間がいるが、ヒートに言わせればその人間は真の意味で復讐を知らないのだ。

    生きる気力を奪われ、己の命すら無価値に思える中で生きる糧となったのは復讐心だ。

    その心がヒートを生かし、ヒートを動かした。

    殺された家族のために、それに関わった全ての人間を殺し尽くすという目的を手にした。

     

    手を血で染め上げる復讐の日々が終わり、達成感と喪失感に満たされた状態で故郷に帰り、ブーン達と出会った。

    そして故郷で起きた事件がきっかけでデレシアの旅に同行することになり、今日に至る。

    復讐によって失った物は喪失感と人間性。

    逆に、得たものは数多くある。

     

    復讐はヒートに多くを与えてくれた。

    故に、少なくともヒート・オロラ・レッドウィングの中で復讐は無意味ではない。

    暴力を行使されたのであれば、暴虐によって報復をすればいい。

    例えそれが肉親だろうとも。

     

    ――肉親を殺すことに躊躇するような心は、もう、ヒートには残っていないのだ。

     

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               ||           AmmoRe!!のようです

             /'i,ヽ          Ammo for Reknit!!

            / ..;;;i:::::;

            | ̄ ̄| ̄ ̄|      第四章【monsters-化物-

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            | |...::l | |;;;;;l |;;:ヽミゞ;;    ゞ;:;:

         ミゞ;;;|  ̄ |  ̄ |;:;__ヽミゞ,,_;;:_;:;;____.____ ミゞ;;ミゞ;;

       ヾ;:;:ヽミ;;| ll | ll |;;;i;;;;;;i;;;;;;i;;;;;;i;;;;;;i;;;;;;i;;;;;;i;;;;;;i;;;;;;i;;;;;;i;;;;;;i;;;;;;i;;;;;; ゞソミゝミゞ;;;:;;:

         ミゞ;;;| |....:l | |;;;;;l |;;;;;;i;;;;;;i;;;;;;i;;;;;;i;;;;;;i;;;;;;i;;;;;;i;;;;;;i;;;;;;i;;;;;;i;;;;;;i;;;;;;i;;;;;;:;;:ヽミゞ;;ソゝミゞ;;

        ヾ;:; | |;;;;;l | |;;;;;l |;;;i;;;;;;i;;;;;;i;;;;;;i;;;;;;i;;;;;;i;;;;;;i;;;;;;i;;;;;;i;;;;;;i;;;;;;i;;;;;;i;;;;;;i;;;:;ミヽミゞ;;;:;;:

        ヾゝソ | __ | __ |;;;;;;i;;;;;;i;;;;;;i;;;;;;i;;;;;;i;;;;;;i;;;;;;i;;;;;;i;;;;;;i;;;;;;i;;;;;;i;;;;;;i;;;;;;i;ゞゝヽミ;ソミゝミゞ;;

         ミゞ;;;| LL | LL;;;|    __    .__    __    .__    .__  |ミゞ;;;:;ソソミヾ;:;;:

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    ┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻

     

    ティンカーベルに堂々とした面持ちで聳え立つルルグベ教会には、信仰心とは異なる同一の志を持つ人間が一堂に会していた。

    神に祈りを捧げる教会に、この日、神を信じる人間は一人もいない。

    正確に言えば、生きている人間の中で神を信じている人間は皆無だった。

    ソファに深々と腰かけていた禿頭の男が、前屈みになって姿勢を整える。

     

    (´・ω・`)「状況の確認と行こうか」

     

    朝食後のコーヒーを飲んだ後、最初に口を開いたのは、その場で最年長のショボン・パドローネだった。

    一見すれば優雅な空間だが、境界の裏手にある納屋に積み上げられた死体を見れば、この教会が神に見放された空間であることが分かる。

    紅茶を飲むデミタス・エドワードグリーンが漂わせる空気は、決して好意的な物ではなかった。

    彼の生み出す空気の原因は、その向かい側に座る人間にあった。

     

    (e)「ん? 何かね、デミタス君。 僕は男に見つめられる趣味はないんだが」

     

    コーヒーを上品に飲みながらそう言ったのは、イーディン・S・ジョーンズだ。

    教科書に載るほどの有名人だが変わり者。

    棺桶研究の世界的権威であり、その魅力に生涯を捧げることを誓った碩学だ。

     

    (´・_ゝ・`)「お前のせいで、こっちは何回も殺されかけたんだ。

          おい、ショボン。

          状況の確認の前にするべきことがあるんじゃないのか?」

     

    (´・ω・`)「と、いうと?」

     

    (´・_ゝ・`)「相手のことだ。

          あれは女じゃない、化物だ。

          おまけに俺の“インビジブル”がまるで通じなかった。

          これはどういうことだ?」

     

    憤りを露わにするデミタスの質問に答えたのは、ショボンではなくジョーンズだった。

    彼は軽い口調で、さして重要でもない事のように話した。

     

    (e)「あー、そのことか。

        報告が遅いからどうしたのかと思って心配していたんだが、そうか、通じなかったか。

        これは興味深いデータを手に入れられた。

        協力に感謝だ」

     

    (´・_ゝ・`)「馬鹿にしているのか!!」

     

    勢いよく机を叩き、デミタスは体を乗り出しかねない勢いで怒声を浴びせる。

    だがジョーンズはそれに対して眉一つ動かすこともなく、覚えの悪い学生に対してそうするように、淡々と語り始める。

     

    (e)「まさか。 いいかね、君。

       “レオン”はその存在こそ知れていたが、ずっと発見されていなかったんだ。

       分かるかい? 名前とコンセプトだけの存在だったのだよ、今の今までね。

       研究者は魔法使いじゃないし、私は想像だけで棺桶を語りたくない主義でね。

     

       見つかった時にはどこだかの殺し屋が持っていて、研究資料も糞もない状態だったんだよ。

       大方、価値も知らない修理屋が直したんだろうさ。

       さて本題だ。 そんな代物の情報をどうやって知り得ろと?

       その不確定な情報を君に与えたところで、有効活用できるか?

     

       “全ての棺桶に対抗できるよう設計された”と曖昧な情報を言われても、信じられるか?

       知っての通り、インビジブルは光学迷彩で肉眼とカメラに錯覚させる棺桶だ。

       実験で使用した全ての棺桶の目を騙すことが出来た。

       だからエーデルワイスにも通用しただろう?

     

       いいかね、君の言っていることは――」

     

    見かねたショボンは、両者の間に割って入る形で会話を切った。

     

    (´・ω・`)「博士、落ち着いてください。

         デミタス君、君の意見も分かるが、博士の言い分も分かってほしい。

         誓って言うが、あの棺桶に関する情報はほとんどなかったんだ。

         君も初戦で相手にインビジブルが効果を持たないと分かった段階で、こちらに報告してほしかったな。

     

         とはいえ、今こうして互いを非難し合うのは生産的ではないだろう。

         さ、改めて状況を確認するよ。

         僕たちのターゲットを直接視認したのは?」

     

    挙手したのはショボンを含めて四人。

     

    川 ゚ -)

     

    無表情のクール・オロラ・レッドウィング。

     

    ''

     

    (´・_ゝ・`)

     

    ニヤニヤ笑いを浮かべるワタナベ・ビルケンシュトック、そして不満げな顔のデミタス。

    三人以外に誰も手を挙げないのを確認してから、ショボンは頷いた。

     

    (´・ω・`)「なるほど、僕を含めたこの四人だけか。

         相手はデレシアと名乗る女だ。

         あの馬鹿げた強さは、正直に言って脅威そのものだ。

         博士、アバターの修理は可能かな?」

     

    (e)「厳密に言うと、今すぐには無理だな。

       コンセプト・シリーズにはもともと予備のパーツが無いんだ。

       レオンに胸部を打ち抜かれて、腕を破壊されているからもう以前のような機敏な動きは無理だよ。

       解れた糸を結んだら結び目が出来るような物さ。

     

       それにここには設備がないから、満足いく修理は無理だね。

       ま、それまでの間は別の機体を代用するしかないが、同じ設計思想のものがある。

       本部に行けば、ちゃんとした後継機があるからそれを使おう」

     

    (´・ω・`)「それはありがたい。

          聞いての通り、デレシアは棺桶を何とも思わずに破壊する女だ。

          これで少しは危険な奴であることが分かってくれると助かる」

     

    lw´‐ _‐ノv「どんな棺桶を使うの?」

     

    (´・ω・`)「いや、奴は棺桶を使わない。

         対強化外骨格用の弾丸を使う生身の人間だ」

     

    lw´‐ _‐ノv「……は?」

     

    質問に対する答えに、シュール・ディンケラッカーは呆れた様な声を漏らした。

    彼女の反応は至極当たり前の物だ。

    軍用第三世代強化外骨格、棺桶と呼ばれるその兵器は人間程度では太刀打ちできるような物ではない。

    例え対抗できる弾丸があっても、棺桶を前にして戦える人間など、普通はいない。

     

    普通は恐怖に慄き、戦うという意欲を見せるはずはない。

    獣を前にナイフを持ったところで人間が臆するのが自然の反応であるように、戦車にさえ対抗し得る強化外骨格を恐れないのは馬鹿か気狂いだけだ。

    戦車に立ち向かう歩兵がいないのと同じように、棺桶に抵抗を試みる人間はいない。

    そう考えるのが普通であり、常識だ。

     

    (´・ω・`)「対峙すれば分かるさ。

         だが、あの女を殺すことが僕たちの任務だ。

         僕たちの夢を、あの女は何度も邪魔した。

         生かしておく理由はない。

     

         ところで、同志シナー」

     

    名を呼ばれたシナー・クラークスは視線をショボンに向けたが、組んだ腕は解かなかった。

    自分が何故名前を呼ばれたのか、彼は分かっている様子だった。

     

    (´・ω・`)「トラギコを殺し損ねた時、何があったのかをもう一度話してくれるかな?」

     

    ( `ハ´)「……“番犬”ダニー・エクストプラズマンが来たアル」

     

    細い目をより一層細め、シナーは忌々しげに語った。

    仔細にこそ語りはしなかったが、彼の口調から決して快い思いをしたわけではないことは確実だ。

    適度な沈黙と間こそが何よりも説得力を持つことを知るショボンは、あえて三秒間無言を保った。

    彼は視線を周囲に向け、シナーの言葉が浸透するのを待ったのだ。

     

    (´・ω・`)「そして僕は、“執行者”ショーン・コネリと戦う羽目になった。

         この二人はジュスティアの円卓十二騎士、つまり、ジュスティアの最高戦力の二名だ。

    分かるかい? ジュスティアがそれほどまでに危機感を覚えているんだよ。

         だが、あいつらには手出しはしないほうがいい」

     

    ジュスティアが世界に誇る十二名の最高戦力。

    彼らの間に階級はなく、あるのは騎士の称号を持つというジュスティア人としての誇りだ。

    同等の力を持つと認め合う彼らに上下の関係、即ち上官と部下の関係はない。

    全員が最高戦力であり、全員がいてこその円卓十二騎士なのだ。

     

    彼らと戦って生き延びることができただけで御の字だ。

    果たして、次も無事でいられるかどうかの保証はない。

     

    ( ・∀・)「ほぅ、それはいい案ですね。

          死人は少ない方がいいですから」

     

    マドラス・モララーは頷きつつ、湯気の立つ紅茶を一口飲んだ。

    キャソックに身を包む彼はいかにも聖職者らしい格好をしているが、それはあくまでも表向きの姿なだけであって、彼は信仰を捨てた人間だった。

    彼の言葉は優しげな人間のそれだが、彼は自ら手を下さないだけであって、死によって何かが救われるのであれば大賛成という考えを持っている。

    ニヤニヤ笑いを浮かべるモララーの隣りにいる男は、対象的な表情をしていた。

     

    隣で眉を顰めるのは、かつてショボンと同じ職場で正義のために働いていたジョルジュ・マグナーニだ。

      _

    ( ゚∀゚)「円卓十二騎士が出てきたのはいい傾向とは言えねぇな」

     

    ジュスティアのことをよく知る彼は、当然、円卓十二騎士のことを知っていた。

    かつてジュスティアで警察官としてその身を正義に捧げた男は、ジュスティアの深部に触れることが多々あり、円卓十二騎士が実在する実力集団であることを理解していた。

    イルトリアに対抗するために生み出されたとされる十二人の騎士。

    その実力は、間違いなくジュスティア内で最強と言っても過言ではない。

     

    ショボンも騎士たちの実力はよく知っているが、考え方はジョルジュとは逆だった。

     

    (´・ω・`)「いや、逆だよ。

          僕らでも最高戦力を相手に生き延びられることが証明されたんだ、喜ばしいことだ。

          僕が手出しをしないほうがいいと言ったのは、今は我々の存在を公にしたくないからさ。

          世界中にいる同志は来る日に備え、静かに歩みを進めなければならないからね。

     

          ここでジュスティアと本気でやり合うのは、理に適っているとは言えない」

     

    ( `ハ´)「あいつら、私達を狙っているアルよ。

         今のうちに潰しておいたほうがいい気がするアル」

     

    (´・ω・`)「そりゃあ潰した方がいいだろうけど、今はその時じゃない。

          撃退するならまだしも、潰すとなったらかなり面倒になる。

          ま、今は精々テロリストとしてでも誤解させておこうじゃないか。

          今はデレシアを殺して、ついでにトラギコとアサピー・ポストマンも殺すことだけを考えればいいさ」

     

    lw´‐ _‐ノv「気になってたんだけど、どうしてその二人を殺す必要があるの?

           今じゃなくてもいいでしょ」

     

    ただの刑事とただの新聞記者。

    肩書だけを見れば、いつでも殺せそうな存在だ。

    事実、ワタナベの邪魔さえなければ、シュールはトラギコ・マウンテンライトを殺せた。

    その報告を受けていたショボンだったが、今それを蒸し返すことが意味のないことはよく分かっていた。

     

    犯罪者たちを仲間に引き入れた時点で、このような醜い揉め事が起こることは時間の問題だったのだ。

    警察官をやっていたショボンは、そういったリスクを承知した上で彼らの脱獄を手助けし、同じ夢を見る同志として扱っている。

    彼女にも自制心があることは、今この場で改めてワタナベを批難することをしなかったことからも明らかである。

    全体の利益を考え、シュールは怒りを押さえ込んで質問をしたのだ。

     

    そしてその質問は、的を射ていた。

     

    (´・ω・`)「ところが、この二人はちょっと厄介な動きをしていてね。

         ひょっとしたら、僕達のことを嗅ぎ回っているんじゃないかと思ってね。

         それだと厄介だから、今のうちに死んでもらうんだ」

     

    早い話がリスクマネジメントだ。

    可能性は早めに摘んでおいたほうが、後に必ず役に立つ。

    もしそれがあり得なかったとしても、後の憂いになる可能性が微量でもあれば今潰すべきだ。

    後悔先に立たず、それがリスクマネジメントの基本である。

     

    トラギコがマスコミと手を組んで事件の真相究明に乗り出すということは、十分に考えられる。

    彼は事件をかき乱し、力で解決させる人間なのだ。

    彼のせいで多くの警官が翻弄され、当初とは異なる形で事件を収束させられたことに恨みを持つ人間は少なくない。

    ジュスティア人らしくない粗暴な男。

     

    だからこそ、動きが読めないのだ。

    不確定要素の塊は取り除くべきだ。

     

    (´・ω・`)「最小の死人で、最大の成果を。

          僕らはいつもそうしてきたんだ」

     

    何か言いたげなジョルジュに向けて、ショボンは垂れた持ち上げながら言った。

     

    (´・ω・`)「後輩を殺すことは気が咎めるかな?」

      _

    ( ゚∀゚)「黙れよ、眉毛野郎。

         俺がどうしてあの馬鹿を殺すことに躊躇う必要があるってんだ」

     

    (´・ω・`)「ほら、君は彼のことをかなり高く評価していたし、可愛がっていたからね」

     

    一睨し、ジョルジュはショボンの言葉に答えることはなかった。

    彼の言葉は事実だった。

    ジョルジュは己の後任としてトラギコを育て、自分の分身以上の存在を生み出そうとした。

    彼には見込みがあり、その力は警察という権力の中でも決して霞むことのない眩いばかりの輝きそのものだ。

     

    正義という言葉を捨てた時、トラギコはこれまで語り継がれてきた正義のなんたるかを理解したことだろう。

    CAL21号事件は、彼を変えた。

    甘い考えの全てを捨て去り、彼を一匹の虎へと駆り立てた。

    その変化の瞬間を、ショボンも目撃していた。

     

    あれは今思い出しても、彼という人間の核が表に出た瞬間だと断言できる。

    誰よりも正しく在ろうとし、誰よりも人々の幸せを願う警察官としての信念。

    彼は否定するだろうが、それは紛れもなく正義そのものだ。

    ショボンはできればトラギコを仲間に引き入れたい気持ちがあったが、彼はおそらく、ショボンたちの行為を理解できないだろう。

     

    彼はまだ若い。

    人生経験ではなく、生き方として真っ直ぐすぎるのだ。

     

    (´・ω・`)「さ、話を戻そう。

          円卓十二騎士が出てきて、僕らは少し動き方を考えなければならない状況にある。

          ここまではいいかな?」

     

    無言を同意と受け止め、ショボンは続ける。

     

    (´・ω・`)「今日、勝負を仕掛けようと思う。

          理由はいくつかあるが、一番大きいことがある。

          デレシアのグループが別れている、という確かな情報があるんだ」

      _

    ( ゚∀゚)「……続けろ」

     

    (´・ω・`)「デレシアは“レオン”と呼ばれた殺し屋――同志クールの娘――と、糞耳付きと行動を共にしている。

          ところが、だ。

          昨日同志クールたちが見た時、どうにも奇妙な様子だったらしい。

          説明をしてもらってもいいかな?」

     

    川 ゚ )「おそらくだが、あいつらは今何らかの理由で別行動をしている。

         デレシアの出てくるタイミングも、ヒートの行動もそれを裏付けている。

         私の勘でしかないだろうが、“目”の報告とも一致している」

     

    疑問を投げかける人間はいなかったが、ショボンとクールを除く全員が同じ疑問を頭に浮かべた。

    それを代表して口にしたのは、ニヤニヤ笑いを保ったままのモララーだった。

     

    ( ・∀・)「ちょっと待ちましょう。

          同志ショボン、今娘とか言いませんでしたか?」

     

    (´・ω・`)「あぁ、言ったよ。

          娘、だ」

     

    ''从「レオンって言ったら、かなりの有名人よぉ。

          特に私達の界隈ではねぇ」

      _

    ( ゚∀゚)「俺も知ってる。

        ヴィンスで大暴れした殺し屋だろ。

        あの辺りを根城にしていたマフィアをいくつも潰して、突然姿を消した奴だ。

        確かお前、娘は殺したとか言ってなかったか?」

     

    (e)「それは私も気になるね。

        どうやって“レオン”を手に入れたんだ?」

     

    片目を僅かに吊り下げ、クールは次々と並べ立てられた質問に対して不快さを露わにした。

     

    川 ゚ -)「あぁ、殺したはずだったんだが生きていたんだ。

         どうにも糞耳付きの遺伝子というのはしぶとく出来ているらしい」

     

    (e)「棺桶の入手経路は?」

     

    川 ゚ -)「知らん。 そんなことはどうでもいい。

         私が気に入らないのは、耳付きの遺伝子を持つ人間が生きているという事実だ。

         今すぐにでも縊り殺してやりたい気分なんだ。

         身から出た糞は自分で処理しなければならない」

     

    クールの声色は変わらなかったが、彼女が無意識の内に振り下ろした拳が木製の机を強打した瞬間、全員が無言になった。

    机上にあった物は軒並み2インチ以上飛翔し、再び机に叩きつけられることとなった。

     

    (´・ω・`)「はいはい、細かな自己紹介はいずれまたね。

          そんなことより、これから先の話をしてもいいかな?

          いいよね?

          じゃあ、続けよう」

     

    咳払いの代わりに、ショボンは全員の目を見た。

    これは彼の得意な手段で、他人の注意を惹く上で非常に効果があった。

    十分に効果が染み渡ったことを確認してから、続けて口を開いた。

     

    (´・ω・`)「兎にも角にも、デレシアを殺す。

         これが最優先だ。

         そのためには糞耳付きを殺すことも、レオンを手に入れる事も後回しにしてもいい。

         だが、せっかくあの二人が一緒にいないのであれば好都合だ。

     

         分断しているという事は、戦力が散っているという事。

         ここが狙い目だ。

         クール、ワタナベと組んでレオンを殺すんだ。

         モララー、君も彼女達に同行してもらおう」

     

    (;・∀・)「えぇっ…… 私が?

          私はあんまり人殺しは好きじゃないんですけどねぇ」

     

    ''从「殺すのは私達がやるからぁ、あんたは犯せばいいわぁ」

     

    ( ・∀・)「あ、それなら。

          ですが、娘さんを犯されてもいいんですか?」

     

    川 ゚ -)「好きにしろ。 穴の開いたただの肉だ」

     

    モララーはそれ以上言葉を紡がなかったが、彼の股間が反応したことをショボンは見逃さなかった。

    彼の悪癖は治し用がない病巣のような物で、組織ではそれを黙認することになっている。

    ジョルジュを除いて。

      _

    ( ゚∀゚)「殺すだけにしておけ。 でねぇと、俺がお前を去勢してやるぞ」

     

    (´・ω・`)「ま、ほどほどにするんだね。

         相手は名の知れた殺し屋、棺桶同士での戦闘は完全に実力勝負になる。

         上手い事立ち回ってくれよ」

     

    ( ・∀・)「まぁ、殺さなくていいのなら私はそれでいいんですがね」

     

    (´・ω・`)「じゃあ次だ。

          ジョルジュ、博士はデレシアを側面から叩いてほしい。

          いわば伏兵だ」

     

    (e)「君は馬鹿かね? 何で私が戦闘の人数にカウントされているんだ。

        頭髪が少ないと脳が過冷却されて思考がおかしくなるのか?」

     

    (´・ω・`)「だからこそ、ですよ。

         博士がいれば誰も戦闘をするとは思わない」

      _

    ( ゚∀゚)「……俺は構わねぇが、好きにさせてもらうぞ」

     

    (e)「はぁ、脳筋共はこれだから。

        ま、いいだろう。

        デレシアが何か棺桶を使っているのだとしたら、丁度いい研究材料になるだろう」

     

    ジョルジュはその言葉を鼻で嗤い、懐に下がった銃の重みを確かめるようにそこに手を伸ばした。

    スミスアンドウェッソン、ジョルジュの愛銃がそこに収められている。

     

    (´・ω・`)「シナー、君はトラギコかアサピーのどちらかを狙って消してくれ。

          “目”も君と同じ動きをすることになっている」

     

    ( `ハ´)「円卓十二騎士はどうするアル?」

     

    (´・ω・`)「放っておけばいい。

          遭遇したら、任務を優先してくれ。

          有り得ないとは思うが、デレシアを騎士たちが守ろうとしたら、騎士を排除すればいい。

          だが無理はせず、必要なら撤収してくれ。

     

          デレシア以外の相手は今回どうでもいいと考えていい。

          いいか、何度も言うがデレシアを殺せ。

          あの女は僕たちの敵だ。

          大敵は最優先で排除しなきゃいけない」

     

    改めて、その場の空気をショボンの一言が引き締めた。

    誰よりも先に殺すべきは碧眼の旅人デレシア。

    オアシズで対峙したショボンは、その危険性をよく分かっている。

    あれは残しておくべきではない。

     

    これまでに出会ってきたどの犯罪者よりも危険な存在であり、ショボン達の夢を阻む障害だ。

    西川・ツンディエレ・ホライゾンから報告を受け、改めてその危険性を理解した。

    刃の切っ先を恐れるように。

    獣の歯牙を恐れるように。

     

    世界の天敵。

    ショボンが最終的にデレシアに対して下した評価はそれだった。

     

    (´・ω・`)「そして残りのメンバー。

         デレシアを正面から殺しに行くのは僕、シュール、デミタスだ」

      _

    ( ゚∀゚)「選出の根拠は?」

     

    (´・ω・`)「“インビジブル”の能力は“レオン”には通じないが、生身の人間には通じる。

         そして同じく、“レ・ミゼラブル”の能力も人間には効果が大いにある。

         音と視界、この二つを支配できる棺桶があればデレシアにも対抗できるさ。

         それに、僕の“ダイ・ハード”も防御力は高い方だから、対強化外骨格の弾にもある程度は耐えられる。

     

         そこにジョルジュ、君が伏兵として構えていれば完璧だ」

      _

    ( ゚∀゚)「どうだかな」

     

    短くそう言い残して、ジョルジュはそれ以降発言をすることはなかった。

    まるで、やれるものならやってみろ、と言わんばかりの態度だ。

    彼のそのような態度は珍しく、彼を知る者は少しばかり驚いていた。

     

    (´・_ゝ・`)「ま、生身の人間相手なら大丈夫だろうな。

          博士、大丈夫だろうな?

          本 当 に 大 丈 夫 な ん だ ろ う な」

     

    (e)「無論だとも。 肉眼では捉えられない不可視の棺桶、それがインビジブルだ」

     

    lw´‐ _‐ノv「私のも平気でしょ?」

     

    (e)「当然だとも。 聴覚が生きている限り相手に影響を及ぼす棺桶、それがレ・ミゼラブルだ」

     

    強化外骨格研究の第一人者であるジョーンズの言葉は、この世界で棺桶に関わる人間であれば誰もが聞き入れるだけの説得力を持つ。

    彼が発掘・修復した棺桶の数を考えれば、それは当然。

    今の社会に流通しているほぼ全ての棺桶に精通する人間の言葉は、即ち、誰よりも知識のある人間の言葉なのだ。

     

    (´・ω・`)「他の人間と戦っている時にもしデレシアと遭遇したら、最優先で狙うんだ。

         いいね?」

     

    ( `ハ´)「……それで、デレシア達の居場所は分かっているアルか?」

     

    (´・ω・`)「僕たちの“目”に探させたんだけど、全然見つからなくてね。

         だけどレオンの居場所なら分かっている」

     

    ( `ハ´)「居場所が分からないのにどうやってデレシアと戦えと言うアルか。

         オアシズで頭おかしくなったか?」

     

    (´・ω・`)「おびき出せばいい。

          やり方はとてもシンプルだ。

          レオンを追えば自ずと出てくる。

          それはもう証明された。 あの女は情に厚いらしい。

     

          つまり、市街地のどこかに潜んでいるという事だ。

          レオンを襲う場所とタイミングを僕たちで合わせておけば、狙った場所にデレシアを呼び出すことが出来る。

          仮に失敗してもレオンを奪える」

     

    ''从「仔犬ちゃんはどうするのぉ?」

     

    その言葉を聞いた瞬間、ショボンの形相が一変した。

     

    (´・ω・`)「……寸刻みにして殺せ。

         炙って殺せ。

         糞尿の山で溺死させろ。

         生きていることを後悔させて殺せ。

     

         殺した後は晒せ。

         肉屋に並ぶくず肉のように晒せ。

         目玉と脳味噌をくりぬき、そこに糞を詰めて晒せ。

         生物であることを忘れさせろ」

     

    淡々と並べられた言葉の全てに、明白な殺意が籠っていた。

    慈悲などというものは当然ない。

     

    (´・ω・`)「さ、もうこんなもんでいいだろう。

         作戦開始は正午丁度。

         “目”が最初に動くことになっているから、それに合わせるように。

         いいね、それまでに所定の位置に着いておくんだ」

     

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    ‥…━━ August 11th AM11:44 ━━…‥

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    デレシアは潮風を楽しんでいた。

    海沿いに旅を続け、その香りは新鮮さを失いつつあるが、決して飽きることはない。

    かつては死の象徴と化していた海も、今では人類誕生前の青々しさを取り戻し、コバルトブルーの色が目に眩しい。

    母なる海とはよく言ったものだ。

     

    熱から逃れるために海に逃げた生き物の死骸で溢れ、腐臭に満ち、海岸線にはガスで膨れ上がった肉塊が打ち上げられていたあの光景。

    それは死その物の光景だった。

    やがて死骸は風化し、骨となり、骨は白い砂浜の一部となった。

    海を汚していた死体の山は豊かな海の養分となり、多くの生物を支える基盤となった。

     

    成長の過程を見守る母の心地で世界を眺めるデレシアは、街に溢れていたはずの活気が消えていることが気になっていた。

    ティンカーベルは他から孤立した形の集落に近い物があり、それ故に、内々で盛り上がる日常を何よりも重要視していた。

    本来朝市も島民だけで楽しんでいたものが観光客にも知れ渡っただけであり、その活気を本当に作り出しているのは島民だけだ。

    その在り方は昔から変わらないが、ジュスティアと協力し合うようになってからは少し変わってきたのかもしれない。

     

    街の治安が自分達だけでは守り切れないと理解した、デイジー紛争。

    この島を舞台にジュスティア軍とイルトリア軍が争ったとされる紛争の真実は、伝えられている物とはかなり異なる。

    実際はジュスティア軍と一人の狙撃手が争ったのであり、争うように仕向けられた戦いだった。

    その背景にいたのはブーンの恩師であり、デレシアの友人であるペニサス・ノースフェイス。

     

    彼女は単独でジュスティア軍に戦いを挑み、無事に生還を果たした。

    だが真実に気付いた人間がいた。

    その人間達はこれを決して表沙汰にせず、歴史を偽る事で平穏を作り出した。

    平穏の裏で調べ、そして分かったのはその争いを仕組んだ組織の巨大さだった。

     

    世界最大の生物が茸であるように、その組織は地中深く世界中に根を張り巡らせ、実態が分からない程のものだったのだ。

    それはティンバーランドと呼ばれる巨大な秘密結社であり、共同体であり、思念体だった。

    三度壊滅させ、そして、デレシアの前に四度目の姿を見せた。

    雑草の如き執念で立ちあがり、菌糸のように図太く育とうとする大樹。

     

    ζ(゚、゚*ζ「……」

     

    面白くもない話だ。

    何度も生まれてくる存在を踏み潰し、摘み取るのは面倒極まりない。

    とは言え、前回はやや早めに芽を摘み取った事がいけなかったのだろう。

    十分に成熟してから叩き潰し、その病巣を焼却処分しなければ意味がない。

     

    デレシアはこれから先の旅を円滑に進めるためには、この島での出来事をどう処理するべきかを決めていた。

    相手の目的はヒートの棺桶と、デレシアの命。

    ブーンはそれらを手に入れるための便利な道具でしかない。

    だが事態は一変し、彼らの目的は一時的に退けられた。

     

    それで引き下がるような性格であれば、ティンバーランドは今もあるはずはない。

    連中は必ず、今日中に行動を起こしてくる。

    それをより確実なものとするために必要なのは、デレシアやヒートがその姿を相手に見せる事だ。

    隠れていては仕方がないという判断を基に、デレシアはトラギコを使う事で作戦を成立させた。

     

    あの刑事には大樹の根深さを調べてもらう役割を担わせ、更にはジュスティアの動きをけん制してもらわなければならない。

    今頃はどうにかして狙撃手の写真を撮影しようと躍起になっている事だろう。

    珍しく骨のある報道者、アサピー・ポストマンと言う人間と協力し合えばそれも叶うに違いない。

    かつて世界を賑わせていたマスコミの力は大分衰えているが、その分、報道という行為に真剣に取り組む人間が増えた気がする。

     

    世界は今も変わりつつある。

    こうして、昔とほとんど変わらず閉鎖的な街を見下ろしていても、その変化は足の下から感じ取れる。

    少しずつ変わっている。

    オアシズの停泊地として島を提供し、セカンドロックを作り、ジュスティアと協力し合っている姿が正にそれを証明している。

     

    島民の意識も変わってくるだろう。

    変化を拒み続けることは不可能であると分かってきた人間が増えている。

    いずれこの島はジュスティアを中継地として、閉鎖的な考えを失っていくだろう。

    そうして、歴史が変わっていく。

     

    それが自然の流れ。

    変化を止めることなど、誰にも出来ない。

    人間は人間であるが故に、常に変動と進化を続けていく。

    その果てが世界に終焉を導いた第三次世界大戦の結果だとしても、それもまた、人間の在り方なのだろう。

     

    それら全てを含めて、デレシアは世界が愛おしかった。

    ティンバーランドは人間の進化を否定する存在であり、デレシアにとっては現存する唯一の仇敵だった。

     

    ζ(゚、゚*ζ「全く、しつこいのは嫌ね……」

     

    その独り言を聞く人間は、彼女の近くには誰もいない。

    デレシアは一人、状況が整うのを待っていた。

    傍観でも静観でもなく、自らが用意した手段と相手の手段がどのように動くのか、それを見守っているのだ。

     

    ζ(゚、゚*ζ「ふぅ……」

     

    珍しく溜息を吐き、デレシアは次の瞬間には笑顔を浮かべていた。

    決して悲観はしない。

    確かに旅を邪魔され、こちらが相手の欲する物を潰そうとした矢先に先手を打たれたのは腹立たしい話だ。

    しかしながら、そのおかげで見ることの出来る景色がある。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「……さぁて、見せてもらおうかしら、男の子。

          貴方の強さ、貴方の意地を」

     

    そして。

    正午を告げる鐘の音が鳴り響き、虎が奔走する――

     

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    ‥…━━ August 11th AM11:30 ━━…‥

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

     

    鐘が鳴る三十分前に仮眠を終え、武器の手入れと同じぐらい慎重に自らの体の手入れを行ったヒートは簡単な食事を済ませてから、服に袖を通した。

    殺し屋として生きていた時と同じ、黒のワイシャツに上下黒のスーツ。

    喪服を着る必要性を省き、常に自分の葬儀をあげるという気持ちで黒一色に統一した姿は、死神を思わせる。

    赤茶色の髪を後ろで束ね、重いコンテナを背負う。

     

    銃も持った。

    棺桶も持った。

    覚悟は済ませた。

    後は、見つけて殺すだけだ。

     

    黒いブーツの紐を締め上げ、ヒートは街へと出て行った。

    鋭い眼光はそれだけで人を殺せるほど鋭利で、殺意に燃えた蒼い炎を宿している。

    腕時計が示す時間は午前十一時四十分。

    ヒートは徐々に、だが確実に人の目が届きにくい場所を選んで歩いていく。

     

    しかし、厳戒態勢の続く状況下であるため、出歩く人はほとんどいない。

    市場を賑わせる売り子の声すら聞こえない程だ。

    これでいい。

    日中の殺しは目撃者が障害となるが、今はその心配をする必要がない。

     

    鐘楼の死角となる建物の傍で立ち止まり、ヒートは振り返った。

    時刻は間もなく午後十二時になろうとしている。

    鐘の音が全ての攻撃に関連していることから、相手がこの時間帯を狙ってくることをヒートは予想していた。

    そして何より、ねっとりと絡みつく視線は昨日からずっと感じていた。

     

    ノパ⊿゚)「……来いよ、いるんだろ?」

     

    影から生まれるようにして、一人の女が姿を現す。

    野に咲く花を思わせる華奢な姿をしているが、その実、猛毒を持つ狂気の女。

    ワタナベだ。

    手に持つのは小型のスーツケースのような物。

     

    棺桶のコンテナだろう。

    となると、以前に見たプレイグロードではない。

    Aクラスの棺桶ならば、力でねじ伏せられる。

    両者の距離は約三百フィート。

     

    ''从「うふふっ、やっぱりわかっちゃうんだぁ。

         流石ねぇ。

         一度、レオンがどんなものなのか、見たかったのよねぇ」

     

    ノパ⊿゚)「そうかよ!」

     

    問答の途中、ヒートが動いた。

    懐に右手を伸ばし、そこからM93Rを抜き放つ。

    すでに撃鉄は起こされ、魔法のように安全装置が解除されたそれは姿を見せた途端に人を殺し得る得物と化す。

    銃腔はワタナベを捉え、銃爪は当然のように引き絞られた。

     

    それをコンテナで防ぐ者が在った。

    ただのコンテナではなく、Bクラスの強化外骨格を収容、装着するためのコンテナだ。

    その堅牢さは装甲車に匹敵するものがあり、九ミリの弾では例え対強化外骨格用の物だとしても貫通は無理だ。

     

    川 ゚ -)「さて、どうやって殺したものかな。

         この粗暴な女は」

     

    現れたのはクール・オロラ・レッドウィング。

    ヒートにとっては世界中で今最も殺したい人間が目の前に現れ、願ってもない幸運に恵まれた形になる。

    ワタナベなど、どうでもいい。

    今は、母だった女を殺すことが最優先。

     

    冷静さを失うことなく殺意の純度を高め、ヒートは鋭く目を細めた。

    牽制の弾幕を張りつつ、ヒートは怒りを込めた声で起動コードを口にする。

     

    ノパ⊿゚)『あたしが欲しいのは愛か死か、それだけだ!』

     

    ''从『この手では最愛を抱く事さえ叶わない』

     

    ほぼ同時に、ワタナベもコードを入力した。

    装着速度はワタナベの方が早いだろう。

    小型であればあるほど、装着速度が短くなるのは常識だ。

    だが装着完了までの間、ヒートの体はコンテナという固い壁に守られることとなる。

     

    装着を終えたヒートの前に現れたのは、豹のように肉薄するワタナベだった。

     

    ノハ<:::|::,》『甘いんだよ!!』

     

    ''从「あなたもねぇ!!」

     

    十指に鋭利な刃を備えたワタナベが、その刃を滑空する燕のように空に向けて閃かせた。

    耳障りな甲高い音を聞いたヒートは、咄嗟に脚部のローラーを起動させて後退し、その一撃を避ける。

    紙一重のところでその攻撃はヒートの眼前を通り過ぎ、虚空を切り裂いただけで済んだ。

    ヒートは背中に冷たいものを感じた。

     

    レオンの装甲は薄い。

    銃弾にさえ気を遣うのに、高周波発生装置の備わった武器の攻撃など、受ける訳にはいかない。

    ましてや、左腕を破壊されれば防御と言う概念そのものを失うと言ってもいい。

    十分に距離を取り、二人を警戒する。

     

    ワタナベに守られるようにして位置を変えたクールが、無表情のまま口を開く。

     

    川 ゚ -)『……そして望むは、傷つき倒れたこの名も無き躰が、国家に繁栄をもたらさん事を』

     

    余裕を持った距離で、クールがジェーン・ドゥの起動コードを入力した。

    どうやら、あの遠隔操作の棺桶は使えないらしい。

    コンセプト・シリーズがあそこまでの痛手を受ければ、一日で修復をすることは無理だろう。

    コンテナに体が取り込まれ、自立したコンテナ内で装着が行われる。

     

    ''从「ちぇっ」

     

    ワタナベはクールのコンテナを楯にするようにして後ろに下がり、ヒートから距離を開けた。

    賢い選択だ。

    至近距離での戦闘は確かに彼女武器に分があるようが、機動力ではこちらが負けることはない。

    下手に距離を詰めれば自分からの有利性を殺しかねない事を理解している。

     

    ただの殺人狂ではない。

    快楽を知り、理性を持った殺人装置。

    冷静な殺人者は自分が死なないようにして、時間をかけてでも相手を殺す方法を考えるのが好きな生き物だ。

    味方であっても楯として使えると判断すれば迷わずに利用する姿勢は、彼女が場馴れしている証。

     

    むやみやたらに突っ込んでこないのは、知性が高いことを意味していた。

     

    ノハ<:::|::,》『厄介な女だ』

     

    幸いなのは、ワタナベとヒートのどちらも近距離でしか戦闘が出来ない物だという事だ。

    速度を生かした接近戦なら、ヒートに分がある。

    拮抗状態をいつまでも続けるわけにはいかない。

    浅く短く息を吐き、ヒートは腰を落とす。

     

    冷静に対処する。

    チェスの駒を動かすように、最善の一手を選ぶだけでいい。

    狙いは一人だけなのだ――

     

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        \     ∨ ////|: l      \≧i          `¨¨

          、   ∨.:∧″//|i |         ̄

    丶        、   ∨ ∧///リ イ

    ‥…━━ August 11th PM00:00 ━━…‥

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

     

    そして、鐘の音が鳴り響く。

    この瞬間を合図とし、ヒートが動く。

    眼前のコンテナが開き、中からジェーン・ドゥの姿が現れる。

     

    ノハ<:::|::,》『るぁっ!!』

     

    選んだ行動は疾駆。

    ヒートの体は弾丸のような速度で一気にジェーン・ドゥに接近し、悪魔じみた左手が装着を終えたばかりの頭を捕えた。

    青白く輝く高圧電流が一気に放たれ、何一つ出来ないままジェーン・ドゥは沈黙した。

    二対一という数字上の不利を真っ先に処理するためには、弱い方を消すのが一番だ。

     

    ジェーン・ドゥは全身を覆う強化外骨格用。

    つまり、レオンの電撃で動きを確実に奪い取れるのはクールの方。

    動きを止めさえすれば、後でいくらでも殺せる。

    右腕の杭打機でコンテナごと串刺しに出来るが、そうしたら致命的な隙が生まれ、ワタナベに殺される。

     

    生身の人間では、バッテリーを破壊された棺桶から逃げ出す術を持たない。

    一度こうなってしまえば、煮るなり焼くなり好きに出来る。

    安心して殺すためにも、まずはクールの動きを止めなければならなかった。

    廃莢されたバッテリーが宙を舞う間、次の標的にヒートの視線は向けられていた。

     

    これでジェーン・ドゥは無視していい。

    空のコンテナを蹴り飛ばし、視線を前に向ける。

     

    ノハ<:::|::,》『次っ!!』

     

    ''从「わぁお、はりきってるわねぇ」

     

    ワタナベの棺桶は両腕だけ。

    ならば移動速度は人間並み。

    警戒しなければならないのは、十本の凶器だけだ。

    あれがある限り、ヒートは至近距離での優位性を確実な物に出来ない。

     

    それでも、有利なのはこちらだ――

     

    ( ・∀・)「ほうほう、これはまた。

          勇ましい女性は好ましいですね。

          どうれ、ここは私も混ぜてもらいましょう」

     

    ――新たな敵戦力がヒートの背後から現れるまでは。

     

    ( ・∀・)『食えるときは無礼な奴を食うんだ。 野放しの無礼な奴を』

     

    聞いたことの無い起動コード。

    ワタナベのそれと同じく、コンセプト・シリーズに相違ない。

    両手、両足を覆う強化外骨格はいくつも見てきた。

    だが――

     

    ( ・曲・)

     

    ――口元だけを覆う強化外骨格など、見たことも聞いたこともない。

     

    ( ・曲・)『握り拳では握手は出来ない』

     

    そして、強化外骨格を同時に使う人間も見たことがなかった。

    腕に装着された強化外骨格はマハトマ。

    二つの棺桶を身につけた男は、よく見ればキャソックに身を包む神父の様にも見える。

    予想はしていたが、突如として現れた増援とその異様さに、ヒートは驚きを禁じ得なかった。

     

    どんな時でも油断はしたつもりはない。

    しかし、異様な物ほど警戒するのは生物として自然な反応だ。

    口元を覆う強化外骨格の狙いは、実際にその力を見ない限りは分からない。

     

    ノハ<:::|::,》『……だけどな、そんなもんが!!』

     

    驚愕は一瞬。

    決断も一瞬。

    ヒートはキャソックの男は無視し、ワタナベの撃退を続行した。

    男は脚部に装甲を纏わなかったことから、移動速度の変化はなく、ヒートの速さに追いつくことは不可能と判断したのだ。

     

    ワタナベは顔色一つ変えずに両手の爪を体の前で交差させ、少しでもヒートの速度を殺そうと接近してきた。

    大した度胸だ。

    逃げ出すことも出来ただろうに、それを刃向ってくるとは。

     

    ''从「甘いわねぇ」

     

    ノハ<:::|::,》『手前がっ!!』

     

    高周波振動に対抗できる唯一の左手で、ヒートはワタナベの両手を塞ぎにかかる。

    耳障りな金属音が周囲の家屋にはめられたガラスを震わせた。

    ヒートは鉤爪を押し込み、放電を行った。

     

    ''从「それはもう見たわぁ」

     

    雷に撃たれるより速く、ワタナベはしなやかな体を生かして窮地を脱した。

    青白い光が一瞬だけヒートの左手から放たれ、空バッテリーが廃莢された。

     

    ( ・曲・)『はいはい、油断大敵ってねー』

     

    マハトマは戦闘に特化した棺桶ではない。

    作業補助を目的として作られた物であるが、腕力の増強という点で言えば一般的な棺桶と遜色はない。

    その拳を右腕の杭打機で防御できたのは、相手が素人だったからだ。

    戦いの最中、不意打ちを仕掛けるのに声をかけてしまっては元も子もない上に、ヒートは必ずや邪魔が入ると考えていた。

     

    また、口を覆う棺桶が中長距離の戦闘を行わないことは分かっていた。

    もしもそれが出来るようであれば装着した時から攻撃を仕掛ければいいし、何より、ヒートの前に姿を晒さずに攻撃が出来た。

    それをしなかったのは慢心、あるいは攻撃が出来ないため、せめてヒートの意表を突こうと考えた浅はかな思考の産物だろう。

     

    ノハ<:::|::,》『邪魔するんじゃねぇ!!』

     

    ( ・曲・)『ちぇっ』

     

    得意の後ろ回し蹴りを放つも、男は絶妙な体捌きでそれを回避。

     

    ( ・曲・)『復讐なんて何も生みませんよ、お嬢さん』

     

    ノハ<:::|::,》『復讐を否定する奴にあたしは止められねぇ!!』

     

    一気に注意を二方向に注がなければならなくなったことに、ヒートは内心で毒づいた。

    厄介な女を処理しなければならないのに、面倒な男がもう一人現れたのは決して好ましくない状況だ。

    その場を脱し、ヒートは二人から十分な距離を取った。

     

    ( ・曲・)『ふぅむ』

     

    ''从「どうするの、神父さん?」

     

    ( ・曲・)『どうするかって? 予定に変更はありませんよ。

         むしろあの強気な性格、実にいい。

         死ぬまでそうでいてもらいたいものですね』

     

    ノハ<:::|::,》『……』

     

    出方を窺い、ヒートは考えた。

    ワタナベの棺桶は近距離での戦闘に特化しているが、高周波装置以外に特異な機能はなさそうだ。

    となれば、動き方は限られてくる。

    その一方で、戦闘方法がまるで読めない男は油断ならない動きをすることが分かり、排除の優先度が高い。

     

    ( ・曲・)『逃げるのも結構ですが、やはり抵抗してこそ犯し甲斐があるというもの。

         さ、せいぜいあがいてください』

     

    ノハ<:::|::,》『言われなくたってやってやるよ、変態野郎が』

     

    その時、ヒートの背後で起きるはずのない事態が起きていた。

    だが鐘の音が。

    島全体に鳴り響く鐘の音が、その事態を彼女に悟らせなかった。

     

    〔Ⅱ゚[::|::]゚〕

     

    まるで脱皮する昆虫の様に、その背中から女の手が生えた。

    装甲を内部から無理やり破って腕だけが現れるその姿を、ヒートが見ることはない。

    彼女の視線と注意は、“このために立ち回る”二人に注がれているのだから。

    静かに這い出たクールの手には高周波ナイフが握り締められ、それは音もなくバッテリーを破壊出来る必殺の得物だった。

     

    その高周波ナイフは彼女が事前に装備していたもので、それこそが装甲を内側から切り裂いた物の正体だった。

    だが、全身に密着している装甲内でそれを使うためには関節を外すだけでなく、人体構造を無視した動きをする必要がある。

    痛みを伴う所ではなく、文字通り肉を断ち、神経をいくつも引き千切る事でのみ実現できる動き。

    不可能と思われるその動きを、だがしかし、クールは声一つ漏らさずに実行することが出来た。

     

    狙いは無防備な背中のバッテリー。

    電源の供給を断つことでクールの動きを封じたように、レオンもまたバッテリーを破壊されることで動きを止める。

    そうなれば、Aクラスながらも全身を覆う彼女の棺桶は拘束具と化す。

    だがヒートは気付かない。

     

    ――そして、ナイフが音もなく投擲された。

     

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                        ハ  ト、__'__ イ  /

                   ∧ \ヽー - '/ / ∧

                   _/: ∧  \ ̄ ̄/  /: ∧_

              -'"´::::/ : : :∧   >‐く   /: : : ::::`丶、

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        /:::::::::::::::::::::::::::::: : : : : : : Ⅳ ゝイ Ⅵ: : : : : : :::::::::::::::::::::::::

    ‥…━━ August 11th PM00:16 ━━…‥

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    ショボン・パドローネは通信機から聞こえてくる会話に耳を傾け、デレシアが現れる瞬間を今か今かと待ち望んでいた。

    あの女が現れれば、こちらは戦力の全てを差し向けて潰すことが出来る。

    ワタナベもモララーもまだ戦いの最中だが、もう間もなく捨て駒に偽装したクールがヒートに引導を渡すことだろう。

    だがデレシアは友軍の窮地には必ず現れ、事態を力で収束させる。

     

    味方を大切にするというその性質を利用すれば、おびき出すことは容易だ。

    出てきたところで“目”が狙いをつけ、シュールとデミタスが人間の五感の欠陥を利用し、ジョルジュとショボンが直接叩く。

    デレシア一人のためにこの島で騒動を起こしたのだから、彼女一人のために大掛かりな餌場を作ることぐらい造作もない。

    全ては夢のため。

     

    世界が黄金の大樹となるために。

    そのためならば街や村がいくら消えようとも構わない。

    とうの昔にショボンは覚悟を決めていた。

     

    (;`ハ´)『……う、動きがあったアルよ』

     

    その一言が通信機から聞こえた時、ショボンは三つの事を考えた。

    どのような動きなのか。

    何故、前線にいないシナーがそれを報告したのか。

    何故、狼狽しているのか。

     

    (;`ハ´)『……ちょっとヤバいアル』

     

    (´・ω・`)「正確に報告してくれないかな?」

     

    (;`ハ´)『ジュスティアの連中アル……!!』

     

    (´・ω・`)「は? それがどうしたんだい。 君の役割は、トラギコかアサピーを……」

     

    (;`ハ´)『円卓十二騎士の二人と、トラギコがいっぺんに出てきたアル!!』

     

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           |- イ     !::'   ヽ!` ̄     ヽ! ' /!!::::::::::::::::

      ____.l!  |     く _              `!ノ人::::::::::- `

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        .|   |'从从「|:|i  !lL__`!L∠_____ / |l   >‐-'仝、!|

    ‥…━━ August 11th PM00:17 ━━…‥

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

     

    間一髪の偶然だった。

    指示された逃走ルートを走り抜け、路地を抜けた先で戦闘行為が行われているのを目撃したのが数十秒前。

    抜け殻から腕が生えるかのような、グロテスクな光景を見たのが数秒前。

    そして、ナイフの投擲を察知して急接近して切り払ったのが数瞬前。

     

    それと同時に、二つの影が建物の影と屋根から現れ、殺伐としていた路地裏の戦場に大きな変化が訪れた。

    一対三の状況に、更に四人が介入することになった。

    その面々は実に壮観で、思わず感心するほどだった。

    トラギコ・マウンテンライトはデレシアの策に踊らされている面々を見て、改めて、油断ならない存在であると痛感した。

     

    円卓十二騎士、第七騎士“番犬”ダニー・エクストプラズマン。

     

    'ト―-イ、

    `゚益゚似『……ショボンはいないのか』

     

    同じく円卓十二騎士、第四騎士“執行者”ショーン・コネリ。

     

    <::[-::::,|,:::]『奴がいなくとも、情報は合っていた。

          なるほど、これは確かに悪の巣窟、悪の会合だ。

          報告のあった殺人鬼もいるな』

     

    警察長官ツー・カレンスキーの専属秘書、ライダル・ヅー。

     

    ::[ Y])『……なるほど』

     

    いずれもジュスティア内においてかなりの地位にいる人間であり、ジュスティアに対する忠誠心は本物だ。

    このうちの一人ならばまだいいが、三人揃った状態で会いたいと思う人間は正義の化身をその目で見たいと願う破滅志願者か馬鹿の二択だ。

    方法は不明だが、そんな三人をデレシアはまんまと手玉に取って動かして見せた。

    恐ろしいのは、その策がしっかりと効果を発揮しているという事だ。

     

    ヅーの腕から降り、既に起動されたブリッツの切っ先をワタナベに向けた。

     

    (=゚д゚)「よぅ、ワタナベ」

     

    ''从「はぁい、刑事さん。

         体はもういいのかしらぁ?」

     

    (=゚д゚)「俺よりも手前の心配をするんだな」

     

    労せず明確な犯罪者たちを逮捕できる。

    だがデレシアがこの道を選ぶように言ったのには、別の理由がある気がしてならない。

     

    ノハ<:::|::,》『トラギコか……』

     

    (=゚д゚)「悪いが、お前も逮捕ラギ」

     

    負傷した身ではあるが、高周波刀の威力は萎えない。

    まずは自分のやるべきこととして、ここにいる犯罪者を刑務所に放り込む、もしくは殺さなければならない。

     

    'ト―-イ、

    `゚益゚似『トラギコ、後は我々が処理する。

          お前はジュスティアに行け』

     

    (=゚д゚)「あぁ?」

     

    その一言を予想していなかったわけではない。

    元々、トラギコはジュスティアに連れ戻されるのを避けるためにオアシズから逃げ、結果として足を撃たれ、入院することとなった。

    ヅーが珍しく理解を示したために連行されていないが、それ以外の人間からしたらトラギコは確保するべき対象だ。

    しかし、今このタイミングで言ってくるとは思わなかった。

     

    流石は法の“番犬”だ。

     

    'ト―-イ、

    `゚益゚似『帰還命令が出ている。

          それとも、また力尽くで戻されたいのか?

          ヅー、トラギコを連れて行け』

     

    (=゚д゚)「……俺を連れて行くんなら、そこにいる犯罪者共も一緒ラギ」

     

    トラギコは高周波振動を続ける刃で目の前にいる犯罪者四人を指す。

    それに対して、高周波振動発生装置の備わった腕で、エクストは犯罪者四人を指した。

    全身高周波振動発生装置のダニー・ザ・ドッグはある意味で、高周波振動装備の化身そのものだ。

    同じ高周波振動装置を備えている武器でも、この棺桶には効果を発揮できない。

     

    どれだけ強力な砲弾でも粉と化してその威力を発揮する前に無力化できる。

    いざこの男が本気を出せば、トラギコの体を木っ端みじんにすることも可能だ。

     

    'ト―-イ、

    `゚益゚似『聞きわけろ、トラギコ。

          これは我々の任務だ。

          た か が 刑 事 の 出 る 幕 じ ゃ な い』

     

    (=゚д゚)「言ってくれるじゃねぇか。

        た か が 騎 士 の く せ に 、この俺に喧嘩を売るってか。

        売る相手を間違えるんじゃねぇラギ」

     

    勿論、この喧嘩を買う気は毛頭ない。

    買っても無駄になるだけだ。

    ならば見せかけの撤退劇を演じるだけだ。

     

    'ト―-イ、

    `゚益゚似『……ヅー、行け』

     

    ::[ Y])『言われずとも』

     

    (=゚д゚)「ちっ、馬鹿が」

     

    この言葉は本心だ。

    戦力を一気に半分にする行為は、己の実力を過信しているからに他ならない。

    自分達の装備や経験が豊かなのは事実だろうが、それが通じる相手と通じない相手が世の中にはいる。

    ひょっとしたらデレシアはこれも想定していたのかもしれない。

     

    あの女は、おそらく数十手先を読んで行動している。

    ならば一度ぐらいは、流されてみるのもいいかもしれない。

    そしてヅーはエクストの命令に従い、トラギコを抱きかかえてその場から離脱しようとした。

    音もなく表れたそれが道を塞がなければ、トラギコはそのまま目抜き通りを走り抜け、ジュスティアまで運ばれていた事だろう。

     

    (:::○山○)『……』

     

    漆黒の強化外骨格。

    黒檀の様な装甲を纏い、その足だけは上半身と対照的に異様に細い姿。

    トラギコはその姿をよく知っている。

     

    (=゚д゚)「……野郎」

     

    'ト―-イ、

    `゚益゚似『……貴様か。

          同じ手は食わんぞ!!』

     

    そして、エクストが駆けだした。

    颶風と化した彼の突進に対して、現れたばかりの黒い棺桶は両腕を天に着き上げるだけ。

    だがそれで十分な行動であることを、トラギコは知っていた。

     

    (;=゚д゚)「馬鹿!! 火炎放射兵装ラギ!!」

     

    言った時にはすでに彼の言葉を肯定するかのように、黒い棺桶の両腕から炎が吐き出された。

    降り注ぐ炎が周囲一帯を包み込み、壁を、地面を、窓を、屋上を、暗雲の立ち込めはじめた空を紅蓮に染め上げる――

     

    'ト―-イ、

    `゚益゚似『食わんと言った!!』

     

    (:::○山○)『?!』

     

    ――はずだった。

    エクストの狙いは黒い棺桶ではなく、それが炎を使用すること。

    両腕から炎が噴射された時にはエクストはすでに黒い棺桶の頭上に高々と飛翔し、炎の全てをその体で受け止めていた。

    当然、その全身は高周波振動によって守られ、燃料もろとも炎を打ち消す。

     

    (:::○山○)『……流石アルね』

     

    <::[-::::,|,:::]『感心している暇があるのか?』

     

    背後。

    それも、最も対応が困難な下方からの声だった。

    深く腰を落としたショーンが幻の様にそこに現れ、すでに抜刀の姿勢に入っていた。

     

    (:::○山○)『っ!?』

     

    間を開けない連撃。

    一瞬の内に成立した連携に、誰もが驚いたことだろう。

    だが彼らは円卓十二騎士。

    十二人の最高戦力は、いついかなる時でもその力を発揮できるからこその存在。

     

    <::[-::::,|,:::]『せぁっ!!』

     

    巨大な高周波刀が黒い強化外骨格を捉える。

    その刃が黒い棺桶を両断するかに思えたが、思わぬ事態がその手を止めさせた。

    背中から入った刀が最初に切り裂いたのは、特殊な液体が詰まっていたタンクだった。

    どこの装甲よりも堅牢に設計されていたタンクだったが、高周波刀の前には意味をなさなかった。

     

    それが命運を分けた。

    その液体は空気と触れることで爆発的に燃え広がり、その粘度は微量であれば高周波振動によってふるい落とされるが、大量に付着した場合はその逆の現象が起こる。

    即ち、刃が燃えるのだ。

    流石に得物が燃えたことに驚き、ショーンは咄嗟に刀を引いた。

     

    もしもそのまま刀を前に振っていれば、黒い棺桶は上半身と下半身で泣き別れていた事だろう。

    だが逆に、液体が散ることによって己の装甲を焼く危険性が大いにあった。

    それを回避するために一瞬で判断を下したのは、流石の一言に尽きる。

    半ば傍観者となっていた人間に動きがあったのは、着火した液体が地面に落ちるほんの少し前。

     

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

                                       rァヒコ_...  -───ァ冖、

                                         rv    rrf|    / frl

                                        しーrrn─┴ ┴   ̄| 、-h

                                      /  川 |  ____________」    !|

                                      ∠二二Ti「 じ       | {}

                            _厶==_____レ┴─‐--L_    }   __!___j

       y'´  /       `ー─个'´        / j  /          V´ ̄/

       〈   /                /        /  /  ヽ   ー─、─j }ニ7

        い/ イ  /                    |   ′   }         ̄丁´

       ∨   |            ;′        |   |      ‐──一ァ′

        ヽ                    |   |    ヽ       ノ

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

     

    先手はトラギコ。

    ブリッツではなくM8000を抜き、姿勢を崩した黒い棺桶の膝裏の関節を狙って発砲した。

    膝さえ破壊出来れば、逃げることを阻止できるとの見立てだった。

    当然、阻止する者が現れた。

     

    五発の銃弾を悉く邪魔したのは、二人の人間。

    両者とも脚部の強化を行ってはいないが、腕の力を使って地面を駆け抜けたのだ。

    椀部のみを強化する棺桶の戦い方としてはよくある手段で、トラギコも応用したことのある方法だった。

    それ故に迅速な動きに驚きはなかったが、緊急時の連携力を失っていないことに驚いた。

     

    ( ・曲・)『黙って見ている訳ないでしょう』

     

    ''从「ま、お仕事だからぁ」

     

    いつの間に彼らが距離を詰めてこの場に接近してきたのかを考える間もなく、トラギコはその場から高速で後退していた。

    トラギコを抱えるヅーの仕業だった。

     

    ::[ Y])『……』

     

    (=゚д゚)「引き上げるつもりラギか?」

     

    素早く後ろに下がりつつ、ヅーはトラギコの言葉に頷いた。

     

    ::[ Y])『後は彼らに任せておきます。

         我々のやるべきことは、別にあるのですよね?』

     

    (=゚д゚)「……さぁな」

     

    急制動をかけ、ヅーが動きを止めた。

    それは驚きなのか呆れによるものなのか。

    恐らくはその両者だろう。

     

    ::[ Y])『さぁな、ではないでしょう。

        何を考えているのか話してください』

     

    (=゚д゚)「時が来れば分かるラギ。

        まぁ見てろ」

     

    何か確証があるわけではない。

    作戦など、あってないような物だ。

    全てはデレシアの掌の上。

    彼女がどのような采配をして、この先どうなっていくのか。

     

    今はただ、それを見届ける他ないのだ。

     

    (=゚д゚)「損はさせねぇラギ」

     

    ショーンとエクストは眼前にいる二人の敵、そして彼らと敵対する一人の人間に視線を油断なく向け、次の行動を考えている事だろう。

    敵が三人と味方が三人になるか、それとも敵が四人になるのか。

    それは、黒い装甲とスカイブルーのシールドを持つ棺桶持ちが何者なのかによるところが大きかった。

    敵の敵は味方とは言うが、果たして、この人間がそのような考えを持っているのかはまるで分からない。

     

    ノハ<:::|::,》『……』

     

    その姿は初めて見る。

    小柄な姿はAクラスか、それともBクラスかという微妙なライン。

     

    ''从「どうするぅ?」

     

    ( ・曲・)『どうするもこうするもないでしょう』

     

    (:::○山○)『予定通り潰すだけアル』

     

    態勢を整え、距離を十分に取った三人を前にした騎士二人はさぞかし喜んでいるに違いない。

    骨のある悪を前に、ようやく己の力を存分に振るうことが出来る。

    正義が成立する上で必要不可欠な悪を前にして喜ばない騎士はいない。

    そして、それを滅ぼそうと決意しない騎士もまた存在しない。

     

    天敵を得た騎士は何よりも強い。

    彼らを動かすのは誇りと義務感、そして信念。

     

    <::[-::::,|,:::]『三対二対一、三対三、四対二。

          さぁ、どれだ?』

     

    その問いかけは第三の勢力である、デレシアの仲間に向けられていた。

    シールドの向こうに見える強気な瞳は、間違いなくあのスナオと名乗った赤毛の女だ。

     

    ノハ<:::|::,》『……』

     

    返答はない。

    声を聞かれまいとしているのだろう。

    だが代わりに、反応があった。

    奇妙なオブジェと化しているジェーン・ドゥへと近づき、右腕に備わった巨大な杭打機で背中から胸を一撃で貫いた。

     

    あれでは中にいる棺桶持ちもひとたまりもないだろう。

    背中から生えていた腕がその一撃に合わせて大きく痙攣し、二度と動かなくなった。

     

    (=゚д゚)「……?」

     

    ノハ<:::|::,》『……やっぱりな』

     

    流れ出てきたのは血ではなく、強化外骨格でよく使用される潤滑油と冷却水だった。

     

    ノハ<:::|::,》『後はあんたらで好きにしな』

     

    <::[-::::,|,:::]『そうか、と黙って聞くと思うか』

     

    (=゚д゚)「よせよ、ショーン。

        そいつはショボン達とは無関係だ、俺が保証するラギ」

     

    この騎士は、どこまで馬鹿なのだろうか。

    狙うべき獲物が増える事を嘆くのではなく、歓迎するなど正気の沙汰ではない。

     

    'ト―-イ、

    `゚益゚似『それを判断するのは我々だ。

          ヅー、いつまでそこにいる。

          さっさと正義を果たせ』

     

    ::[ Y])『……』

     

    こんな時でさえ、騎士は騎士の心を持っていることにトラギコは心底呆れた。

    せめて赤毛の女は関係ないのだから、構わなければいいのに。

    人の忠告を聞かず、目の前に転がる物事を悪と正義の二極化するのが彼らの悪癖だ。

    再度の命令に対して、ヅーは静かに答えた。

     

    ::[ Y])『それを判断するのは私です。

         正義は、私がこの目で見極めます』

     

    それは、トラギコがこれまでに聞いたことの無いヅーの反抗的な言葉で、彼女が口にした中で最も刺激的な言葉だった。

     

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       ′ _「゙ム!ヘヽ /_=ィ `ヾくヾ彡ノ=-_

        |/|!| jy},x√ゞ'_  `i!\、ミ、ニ

         l! |! `Y}" `´  _ォ′ { i! /≧く

         ! !   マ__ , .ィ´y/   ノ/-==

          ヽ └トく,. ´/  /-==>’.:.

             ゞムY   , -=ニ>’.::::::::.

                 `L_/-=.::::::

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                                         第四章【monsters-化物-】 了

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