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第一章【rider-騎手-】

  1. 名前: 歯車の都香 2017/04/16(日) 13:21:00
    第一章【rider-騎手-

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    貴方が走る道。

    貴方と走る道。

    貴方と過ごした全ての時間を、覚えている。

     

                          I d e a l

    ――こ れ が 、 バ イ ク の “ 理 想 形 ”

     

     

                                     ――“アイディール”のキャッチコピー

     

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    橋の上は風が強く、東から西に抜ける横殴りの風が吹いていた。

    長い橋は小さな波止場から島に続く唯一の道で、そこを走るのはたった一台のバイクだった。

    蒼いハーフカウルを纏うそのバイクは、車高がやや高めで、ちょっとした悪路でも問題なく走れる姿をしていた。

    楯のように備え付けられたウィンドスクリーンは、搭乗者の上半身を風から守るために、高く設計されている。

     

    三つのライツを眼のように光らせ、風に押し流されることなくゆったりとし走る姿は、架空の獣の様でさえある。

    アイディールと呼ばれるそのバイクを運転するのは、癖の強く豪奢な金髪を持つ碧眼の女性だった。

    空を閉じ込めた様な美しい瞳は、まっすぐ正面に向けられている。

    そこにあるのは豊かな自然の象徴である山であり、白い鐘楼が聳え立つ“鐘の音街”、ティンカーベル。

     

    ζ(゚ー゚*ζ

     

    どこか愁い影が見え隠れする笑みを浮かべ、バイクを駆る女性の名前はデレシア。

    二十代の若々しく、そして整った顔立ちとは裏腹に彼女のカーキ色のローブの下には大型自動拳銃と水平二連式ショットガンがそれぞれ二挺隠されていた。

    力が全てを変え得る現代に於いて、銃は老若男女、身体的な障害を除けば全ての力を拮抗させる最高の道具だ。

    銃爪を引き絞る力と狙える力さえあれば、赤子でも人を殺せる。

     

    デレシアの後ろには、もう一人、若い女性が座っていた。

    こちらは赤い茶色の髪が外側に向けて跳ね、大きな瞳は深い青色をしている。

    海原を連想させる青い瞳は、島ではなく、海の方に向けられていた。

    ティンカーベルの澄んだ海は陽光を浴び、キラキラと輝いている。

     

    こちらの女性も、デレシアと同じローブを身につけ、その下に銃を隠し持っていた。

    彼女の銃は二挺の自動拳銃だが、デレシアのそれと比べて口径は小さく、連射速度と装弾数で勝っていた。

    雑兵を相手にするのであれば、こちらの装備の方が理に適っているが、状況によってはデレシアの装備が力を発揮する時もある。

    それは、赤毛の女性の背負うコンテナが答えだった。

     

    軍用第三世代強化外骨格、通称、“棺桶”と呼ばれる兵器が関係していた。

    棺桶は使用者を強化し、人間離れした力を与える軍事発明品の究極系だった。

    堅牢な装甲と強力な武装で、対人は言うまでもなく、対戦車戦闘までも可能にする

    デレシアの持つ自動拳銃と専用の弾であれば、大抵の装甲を撃ち抜き、使用者――棺桶持ち――を殺傷せしめる。

     

    ノパ⊿゚)

     

    勿論、赤毛の女性、ヒート・オロラ・レッドウィングも強化外骨格と戦う術を持っている。

    彼女の背負う棺桶こそが、正にそのための道具だ。

    “レオン”という開発名を持つ彼女の棺桶は、コンセプト・シリーズと呼ばれる単一の目的に特化して設計された物で、非常に希少な物だった。

    ヒートの使用する棺桶は、対強化外骨格用強化外骨格。

     

    つまり、棺桶を破壊するための棺桶なのだ。

    対人でも、対空でもなく、棺桶同士の戦闘でその真価を発揮する。

    AからCの記号で大きさを分類する棺桶の中で、レオンは最小・軽量に該当するAクラスの棺桶だが、その力は大きさでは測れない。

    巨躯を誇る人間が小さな銃弾で殺されるのと同じように、大きさは単純な力を示しはしない。

     

    デレシアの存在が、それを何よりも雄弁に物語っている。

    彼女はその身一つで棺桶相手に大立ち回りを披露し、圧倒する力を持っている。

    謎の多いデレシアがどのように生きて来たのか、ヒートは知らない。

    デレシアもまた、ヒートがどのように生きて来たのかを知らない。

     

    デレシアの前に座り、タンクに両手を乗せる少年がいた。

    過ぎ去る景色に目を細め、喜びを露わにする少年。

    その少年もまた、二人と同じローブを着ていた。

    違うのは、少年は銃器だけでなく、一切の武器を身につけていない事だった。

     

    幼さの固まりとも言える少年だが、その深海色の瞳の奥には、深い悲しみの色が見え隠れしている。

    かつて奴隷として売られ、奴隷として生き、物のように扱われてきた過去を持つ少年は、同年代の子供たちよりも多くの事を経験してきていた。

    あらゆる理不尽、暴力、差別を経験した少年の体には沢山の傷が刻まれている。

    彼がそのような境遇になったのは、彼の容姿が原因だった。

     

    (∪*´ω`)

     

    ヘルメットの下に隠れている犬の耳と、服の下にある犬の尾。

    普通の人間とは明らかに異なる、獣と人間が融合した姿はこの世界では嫌悪と差別の対象だった。

    耳付き、と呼ばれる人種である少年は生まれながらにして理不尽な世界で生きざるを得なかった。

    だが、その日々は終わりを告げた。

     

    デレシアが彼に救いの手を差し伸べ、共に旅をすることで彼は世界を見知る事となる。

    人と出会い、人と別れ、少年は少しずつ成長していった。

    少年の名は、ブーン。

    名も無き少年にデレシアが与えた、彼の名前だった。

     

    三人を乗せたアイディールの人工知能は、デレシアの運転の癖を学習し、同乗者の体重移動を記憶容量に保存した。

    人工知能は三人の名前を記録し、その身長・体重も覚えた。

    これで、誰が乗ってもすぐに搭乗者の好みに合わせた走行が出来る。

    だがアイディールは己の能力をひけらかすことも、言葉を発することもない。

     

    空を飛ぶ海鳥の鳴き声。

    蝉の合唱。

    潮の香り。

    そして、風を切る音。

     

    多くの情報が人工知能に蓄積され、更新され、自己学習機能の向上に役立てられた。

    やがて人工知能は、今走っている場所がティンカーベルであることを結論付けた。

    この地は前の所有者が何度も訪れ場所であるため、その時のデータを呼び出し、地形ごとに最適な走行情報を用意した。

    だがアイディールは何も語らない。

     

    八月九日、三人の旅人と一台のバイクはティンカーベルのグルーバー島に上陸した。

     

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    AmmoRe!!のようです

    Ammo for Reknit!!

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                                              第一章【rider-騎手-

     

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    バンブー島、グルーバー島、オバドラ島と小さな島々で構成されるティンカーベルの歴史は古く、島に残る多くの建造物が築一世紀以上の物ばかりだ。

    長年風雨に晒され続けてきた家屋は、薄汚れているというよりも、経年変化によってその魅力を高めた革製品の様な上品な佇まいをしている。

    デレシア一行を乗せたバイクは、その街並みを横目に、山に向けて疾走していた。

    傾斜に合わせ、デレシアはギアを一速落とし、アクセルを捻る。

     

    トルクのあるアイディールは、急斜面であろうとも、最低限のギア操作だけでも十分に登り切れるだけの力を持っていた。

    道中、すれ違う車輌はごく少数だった。

    バイクに乗る人間がすれ違う際、どちらともなく左手を挙げ、軽い挨拶を交わした。

    起源については諸説あるが、互いの安全と旅の無事を願うこの行為は“ヤエー”と呼ばれているバイク乗り特有の挨拶だった。

     

    (∪´ω`)「いまのひと、しっているひとなんですか?」

     

    ヘルメットに内蔵された骨伝導スピーカーから、ブーンの声が聞こえてきた。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「いいえ、全く知らない人よ。

          だけどバイクに乗っている人同士の挨拶はそういうものなのよ」

     

    始まりはデレシアが生まれるよりも昔にあった習慣だ。

    当時は廃れつつあったこの挨拶も、今では大分定着している。

    方法については特に形が定まっているわけではなく、自由の効く左手で思い思いに挨拶をする。

    例えばデレシアが行った様に手を挙げるだけの挨拶もあれば、ピースサインで挨拶をする場合もある。

     

    事故を起こせば大怪我をする可能性のあるバイクに乗る人間同士、互いの無事を願うのは同じ危険を承知でいる人間だと分かるからだ。

     

    (∪´ω`)゛「なるほどー」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「次はブーンちゃんもやってみる?」

     

    (∪´ω`)「おー、やってみますお」

     

    車道を覆うようにしてその手を伸ばす木々が作り出す緑のトンネルに差し掛かる。

    夏の日差しを忘れさせる木陰が万華鏡のように輝き、三人と一台はその中に入っていった。

    自然のトンネルの中は夏とは思えない程涼しく、肌寒さすら覚える程だった。

    この時期、ティンカーベルの気候は避暑地に相応しく、夏を忘れさせるほどの気温の低さだった。

     

    一世紀ほど前は今ほどの涼しさはなかったが、ある時期から急激に気温が下がった事でティンカーベルは避暑地として有名を馳せている。

    普段であれば観光客の運転する車やバイクで賑わいを見せる時期だが、今は非常事態という事もあり、外出をする人間は少なくなっている。

    セカンドロックを破られ、脱獄を許した分かれば、更に外出者は減るはずだ。

    こうして平和に挨拶を交わせるということは、島の人間に島が封鎖されている本当の理由は告げられていないだろう。

     

    ジュスティアが持つティンカーベルへの影響力は、他のどの組織よりも強い。

    島を束ねる人間よりもジュスティアの影響力が強い理由は、言わずもがな、軍や警察の派遣が迅速に行えることにある。

    言い換えれば、ティンカーベルはジュスティアに決して逆らえない。

    迂闊にジュスティアの機嫌を損ねれば軍が島を占拠し、ジュスティアの一部として吸収されないとも言い切れない。

     

    現に、今こうして島全体を封鎖しているのはジュスティアなのだ。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「ほら、来たわよ」

     

    デレシアが言った通り、対向車線にヘッドライトの明かりが見えてきた。

    丸いライトが複数連なって現れ、集団でツーリングをしている人間だと分かった。

    距離が縮まり、デレシアが左手でピースサインを出す。

    その後ろでは、ヒートが右手を振る。

     

    そして、やや躊躇いがちにブーンも手を振った。

    返ってきたのは、壮観な光景だった。

    先頭を走る人間は手を振り、その後ろでは両手を挙げ、更に後続車は立ち上がって手を振り、終盤は立ち上がりつつ両手を挙げるライダー達の返礼。

    十数台のバイク集団からの挨拶を受け、ブーンはやや興奮気味に――本人の意思とは無関係に――その尾を振った。

     

    (∪*´ω`)゛「おー!」

     

    振り返り、ブーンは喜びを露わにする。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「気に入った?」

     

    (∪*´ω`)゛「おっ!」

     

    これまで、一般人からまともな扱いを受けたことがほとんどなかったブーンにとって、差別とは別次元のこの行為はいい刺激になりそうだった。

    人という生き物は、外見から判断するものだ。

    ブーンが差別を受けるのも、その耳と尾を見て判断をした結果だが、それが隠れていれば、誰も彼を差別しない。

    差別の材料が視界に入らない限り、彼はただの少年でしかないのだ。

     

    特に同族意識の強いバイク乗りにとって、子供と女性は貴重な存在であり、その両方から挨拶をされれば答えないはずがない。

    そしてデレシアの目論見通り、ブーンは自分を忌避していた人間との交流を果たせた。

    これで彼はデレシア達以外の人間にも心を開きやすくなり、これから先の旅で彼の成長の機会を得やすくなる。

     

    ノパー゚)「やっぱりいいな、この挨拶ってのは」

     

    ヘルメットから聞こえてきたヒートの声に、デレシアは同意した。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「えぇ、本当にそうね」

     

    挨拶と言う行為は人間と動物を隔てる一つの要素でもある。

    相手に敵意がない事の表現としての挨拶を、人間は幾種類も持ち、使い分ける。

    それは言語を介して、時には非言語で行われる行為で、ここまで高度に発達したコミュニケーション手段を持つのは人間だけだ。

     

    ノパ⊿゚)「それで、まず何をどうするんだ?」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「まずは拠点の確保ね。

           島がどうなっているのか、それを探るのはそれからにしましょう」

     

    ノパ⊿゚)「拠点、ねぇ」

     

    ヒートはあまりその提案に納得していない様子だった。

    それもそうだ。

    この島はもともと部外者に対して排他的で、今は神経も尖っている状態。

    いつにもましてデレシア達は歓迎されないだろう。

     

    拠点を手に入れるとしても、宿泊施設を探さなければならない。

    歓迎されない状態で借りる宿泊設備となると、あまりいい気分で泊まることは出来ない。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「今日は、キャンプをしましょう」

     

    (∪´ω`)「きゃんぷ?」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「そう、キャンプ。

          建物じゃなくて、自然の中で寝泊まりするの」

     

    (∪*´ω`)「……たのしそうですお」

     

    そのための道具はすでに用意してある。

    足りないのは食糧ぐらいだった。

     

    ノパー゚)「そりゃあいい。

        飯はどうする?」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「後で買いに行きましょう。

          まずはキャンプサイトに行って、そこでテントを張りましょう」

     

    脇道を曲がり、細い坂道を登って行く。

    舗装されていた道が途中から砂利道になるが、アイディールのセンサーが変化を感知し、サスペンションの調整を行った。

    そのため、砂利が立てる音さえなければ路面が変わったことに気付けない程の快適な走行に、ヒートが感嘆の声を上げた。

     

    ノパ⊿゚)「すげぇな、このアイディールってのは。

        電子制御サスか?」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「そうよ。 この子は路面変化を感知してサスペンションを自動で最適化してくれるのよ。

           それ以外にも自動で切り替えてくれるから、あまり細かい操作はしないでいいの」

     

    ノパ⊿゚)「ほほう」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「それに、一度走った道は記録されるから二度目、三度目の時はもっと快適になるわ。

          この子は何度もこの島に来たことがあるみたいだから、もう結構最適化されているわね」

     

    アイディールの優れているのは、自己学習機能を備えた人工知能が搭載されている点だ。

    路面情報、走行情報、運転情報などを考慮してすぐにサスペンションなどを最適化させるのだが、常に学習を続けるため乗り手とその土地に合わせた設定を導き出し、細かな不満点をも解消してくれる。

    長く乗り続けることによってアイディールは学び続け、乗り手に合った唯一無二の存在と化すのだ。

     

    (∪*´ω`)「すごいおー」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「えぇ、そう。 この子は凄いのよ。

          そうだ、せっかくだし、名前を付けてあげましょうか」

     

    物に名前を付けるという行為は、愛着を強めることになる。

    物であれ人間であれ、名前を与えられたものは特別な存在として名付けた人間に認識される。

     

    (∪´ω`)「お?」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「そうね、ブーンちゃん。

          このバイク、何て名前がいいかしら?」

     

    (∪;´ω`)「ぼくが、かんがえるんですか?」

     

    困惑するのも無理のない話だ。

    名前と言う概念は、ブーンにとってはまだ新しい物。

    彼はデレシアに名前を与えられた存在であり、それまで名前は別次元の存在だった。

    つい最近与えられたものを、別の物に与えるというのは、ブーンにとっては未体験のこと。

     

    デレシアが彼に経験させたいのは、正にその“未体験”そのものなのだ。

    彼が名付けることを経験すれば、彼は更に別の事を経験することになる。

    得る事と、失う事。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「そうよ。これから一緒に旅をするんですもの。

          この子はきっと、私達と仲良くなれるわ」

     

    (∪´ω`)「おー…… えっと……

          あいでぃーる、だから……」

     

    アイディールは悪路による速度低下を懸念し、自動的に両輪走行モードに切り替えた。

    タイヤが力強く地面を蹴り、速度が落ちることはない。

    キャンプ場まで残り500ヤードと表記された看板を通り過ぎ、ようやく、ブーンが答えを出した。

     

    (∪´ω`)「……ディ?」

     

    出てきた名前は、非常にシンプルだった。

    それ故に呼びやすく、ブーンなりに考えたものだとよく分かる名前だった。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「いい名前ね。

          じゃあ、この子は今日からディちゃんね」

     

    ノパー゚)「あぁ、呼びやすくていい名前だ」

     

    (∪*´ω`)「ディ……!」

     

    心なしかエンジン音が嬉しそうに高く響いた気がしたが、デレシアは何も言わなかった。

    ほどなくして三人と一台はキャンプ場に到着した。

    開けた場所には背の低い草原が広がり、小さな炊事小屋が一つと少し離れた場所に仮設トイレがあるだけの、非常にシンプルなキャンプ場だった。

    利用者は少なく、設営されているテントは五張りだけ。

     

    ディでテントサイトに乗り込み、他所のテントから離れた場所に停めた。

    エンジンを切り、ヒート、デレシア、そして最後にブーンが下りた。

    キーを抜いたデレシアがタンクを撫で、ディに労いの言葉を小さくかける。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「お疲れ様、ディ」

     

    それを見ていたブーンも、真似をしてタンクを撫でた。

     

    (∪´ω`)「おつかれさま……」

     

    ノパー゚)「いやしかし、ほんといいバイクだな」

     

    ヒートも同じように、ディのシートを撫でる。

    三人はヘルメットを外し、それをシートの上に乗せた。

    デレシアは手櫛でブーンの髪の乱れを直し、ニット帽を被せた。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「さ、テントを張りましょう」

     

    パニアからテントと野営道具一式を取り出し、準備に取り掛かる。

    四人用のドームテントはヒートとデレシアが広げ、ブーンは折りたたみ椅子を開いてディの傍に置いた。

    他に自分が何をすればいいのかデレシア達に訊こうとした時、ブーンは足を止めてディを見た。

     

    (∪´ω`)「……」

     

    「……」

     

    エンジンを切ったバイクが話すはずもなく、当然、何らかの反応を示すこともない。

    だがブーンは、ディのエンジンから何かが聞こえているかのように、そこに視線を注いでいた。

     

    (∪´ω`)「……お」

     

    無意識の内に、ブーンの手がタンクに伸ばされる。

    蒼い光沢を放つ金属製のタンクは滑らかな触り心地で、生物とは明らかに異なる質感をしていた。

    明らかに無機物。

    しかし、ブーンが注ぐ視線は無機物に対してではなく、生物に対して向けられるものだった。

     

    デレシアはそれに気付き、内心で少し驚いた。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「どうしたの?」

     

    テントを組み立てながら、デレシアがブーンに声をかける。

     

    (∪´ω`)「ディは、おんなのこなんですか?」

     

    その発言は、デレシアにとって意外そのものだった。

    船乗りはやバイク乗りは船やバイクの事を彼女、と呼ぶことがある。

    愛着を持つために乗り物に性別を与える行為は乗り物を愛する人間の間ではよくある行為だが、ブーンがそれを知っているはずがない。

    思わず作業の手を止め、ブーンの言葉の真意を聞き出そうとした。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「どうしてそう思うの?」

     

    (∪´ω`)「なんとなく……です……」

     

    エンジンが入っている状態ならばまだしも、エンジンを切っている状態で人工知能と接触出来るはずがない。

    ならば、乗車中に人工知能と何らかの接触をしたのだろうか。

    そうだとすれば、このアイディールの人工知能の性別が女性に設定されていることを知る事が出来る。

    彼は、本当に“なんとなく”でそれを当てたのか。

     

    ノパ⊿゚)「おーい、タープ張るのを手伝ってくれよ」

     

    テントのペグを地面に打ち込んでいたヒートが、二人に声をかけた。

    彼女の足元にはタープの入ったバッグが置かれている。

    ドームテントと違って、タープは人数がいた方がすぐに出来上がる。

     

    (∪´ω`)「お!」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「そうね、ちゃちゃっと建てちゃいましょう」

     

    タープをバッグから取り出し、ブーンは説明を受けながら三人でそれを組み立てて行く。

    ほどなくしてテントの前にタープが建ち、気持ちのいい日影が出来た。

    ブーンは椅子をそこに運び込み、デレシアはディを移動させた。

    テントの中に調理器具などを入れていくと、パニアケースの中に空きスペースが出来た。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「はい、完成。

          これが私達の拠点よ」

     

    どちらも森林迷彩柄をしているのは、オアシズでテントとタープを取り扱っていた店で最も丈夫で信頼性のある品が、これしかなかったからだ。

    その分実用性は高く、どちらの素材もそう簡単に破れそうにない。

     

    ノパ⊿゚)「いい感じだ。

        で、この後はどうする?」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「そうねぇ…… 温泉でも行きましょうか」

     

    (∪´ω`)「おんせん?」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「大きなお風呂よ」

     

    夏の温泉はいいものだ。

    ティンカーベルは涼しいが、それでもジワリと汗をかいている。

    ブーンは子供であるため、体温が高く、やはり汗もかきやすい。

     

    ノハ;゚⊿゚)「まぁそうだけどさ……

         でも、大丈夫なのか? その、よ」

     

    ヒートが危惧していることは分かっている。

    彼女は、ブーンの事を心配しているのだ。

    温泉となれば、ブーンはニット帽を取らざるを得ないし、ローブも脱がなければならない。

    そうなれば、獣の耳と尾が露見し、それを目撃した人間から心無い言葉や暴力を受けかねない。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「大丈夫よ。地元の人も知らない場所だもの」

     

    ノパ⊿゚)「そんな場所よく知ってるな」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「ペニが随分昔に見つけて教えてくれたの。

          何度か使ったけど、誰も来ないわよ」

     

    ティンカーベルには多くの温泉施設があるが、地元客と観光客で賑わう場所ばかりだ。

    人が来ない施設は、ブーンにとっては非常にありがたい。

     

    ノパ⊿゚)「へぇ…… ん?

        誰も来ないって、そこは温泉施設じゃないのか?」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「露天風呂よ。 ある意味天然で、ある意味人工のね」

     

    (∪´ω`)「ろてん、ぶろ?」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「そうよ。自然の中にあるお風呂の事よ」

     

    ノハ;゚⊿゚)「いろいろと難易度高けぇなおい……」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「でも気持ちいいわよ」

     

    装備を整え、三人は再びディに跨った。

    エンジンキーを回すと、五連メーターに淡いピンク色の明かりが灯った。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「あら……」

     

    オアシズで乗った時、メーターを照らす明かりは青白いはずだった。

    設定を変更した記憶はなかったが、おそらく、デレシア達の言動が人工知能に影響を与えたようだ。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「ブーンちゃん、ディが喜んでるわよ」

     

    (∪´ω`)「お?」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「名前を貰って、嬉しいみたいね」

     

    (∪*´ω`)「おっ……」

     

    両脚の下にあるタンクを見て、ブーンは両手でそれを撫でた。

     

    (∪*´ω`)「おー」

     

    デレシアの記憶が正しければ、このアイディールは自らの状態を色で表示することが出来るはずだった。

    色鮮やかな光で警告や報告を行う機能があり、ピンク色は車両が最高の状態である事を示す色だった。

    気候などが関係しているのかもしれないが、おそらくは、別の要因が大きいだろう。

    エンジンを始動し、デレシアはキャンプサイトを後にした。

     

    再び林道へと戻り、そのまま山の北西の方に向かう。

    山道を下り、道なき道を進んでゆく。

    腐葉土の上を駆け、林の間をすり抜け、小川を走り抜ける。

     

    ノハ;゚⊿゚)「確かにこりゃ、人が来るにはきついな」

     

    ディの車高は最大となり、サスペンションもその効力を最大限に発揮しているため、快適な走行は保たれたままだ。

    オフローダーでもこうはいかないだろう。

    デレシアの腰にしっかりと両手を回し、ヒートは落ちないようにそこに力を込めた。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「そろそろ着くわよ」

     

    その言葉通り、三人の耳に水音が聞こえてきた。

    川の音に似ているが、しかし、微妙に異なる。

    林の間から見えてきたのは、青みを帯びた水で満ちた瓢箪型の池だった。

    否、池のようにも見えるが、それは地下から湧き出る湯が作り出した天然温泉だった。

     

    陽の光は生い茂る木々の枝葉によって遮られ、光の筋となって降り注いでいる。

    光の筋が照らすのは、温泉から立ち上る湯気だ。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「はい、到着」

     

    ノハ*゚⊿゚)「おぉー!」

     

    (∪*´ω`)「おー」

     

    その温泉は林に囲まれる形で存在し、人の手が加えられた様子は微塵もなかった。

    正に天然温泉。

    人の気配など、全くない。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「ね? 人は来ないでしょ?」

     

    ノパ⊿゚)「あぁ、こりゃあいい温泉だ。

        だけど、どうしてここに来ないんだろうな」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「存在そのものが新しいからね。

          それに、ティンカーベルには漁師はいても猟師はほとんどいないの。

          ここまで来る人間は自殺志願者か遭難者ぐらいね」

     

    バイクから降り、三人は温泉へと近寄る。

    澄んだ色をした湯を眺めて、ブーンが尾を振る。

     

    (∪*´ω`)「いいにおいですおー」

     

    ノパー゚)「硫黄っぽくないのはありがたいな」

     

    湯の下には簀子が敷かれていた。

    温泉を見つけた人間が手を加えた唯一の物だった。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「気に入ってもらえればなにより。

          さ、体を洗って入りましょう」

     

    デレシアの提案に二人は同意し、すぐに一糸纏わぬ姿となった。

    ブーンは以前に二人と風呂に入ったこともあり、特に抵抗なく服を脱いだ。

    ヒートは僅かだが上着を脱ぐ際に躊躇しかけたが、それはほんの一瞬の事だった。

    裸になったデレシアの体を見て、ヒートが目を丸くする。

     

    ノハ;゚⊿゚)「……すげぇ」

     

    主にその視線はデレシアの胸に注がれ、次いで均整の取れたシミや傷の無い全身に向けられる。

    自然の中に溶け込みつつも、異常なまでの美しさは明らかに浮き出ている。

    悠久の時間を経て形成された究極的な美は同性ですら魅了し、自然と調和をすることを、ヒートは改めて理解した。

    衣類を手ごろな岩に乗せ、ブーンの背中を押した。

     

    ノパ⊿゚)「じゃあ体を洗うぞ、ブーン」

     

    (∪´ω`)「おっ」

     

    ヒートはその背中に大きな火傷の跡を残していた。

    一生消えることも、消すこともない傷。

    その傷は彼女の人生を変えた傷。

    彼女が“レオン”として生きることになった理由は、その傷が無くても一日たりとも忘れたことはない。

     

    湯で体を濡らしてから、タオルで汚れを落とす。

    すでに一度朝方に体を洗っているため、そこまで神経質にならなくてもいいだろう。

    ヒートはブーンの体温が高く、汗をよくかく事を知っていたため、彼が体を洗う様子を注意深く見ていた。

     

    ノパ⊿゚)「どうだ、背中に手は届くか?」

     

    (∪´ω`)「はい、とどきますお」

     

    ノパ⊿゚)「……洗い方がぬるいぞ。

        あたしが洗ってやるから、こっちに背中を向けろ」

     

    (∪´ω`)「おっ」

     

    小さなブーンの体には無数の傷がついており、その全てが彼を痛めつけるためだけに付いた物であることは、簡単に推測が出来る。

    彼は耳付き。

    奴隷として売買された人間は、道具以下の存在でしかない。

    道具に八つ当たりをしようとも、誰も咎めないし、良心も痛まないのだ。

     

    傷だらけの背中を、ヒートはタオルで擦る前にそっと触れた。

    酷い物だった。

    彼の背中は、誰かを守るために傷ついたのではなく、ましてや、自分を守るために付いたのでもない。

    ある種の欲望を一方的に吐き出され続けた結果の傷だった。

     

    この歳の子供が背負うべき傷ではない。

    獣の耳と尾が何だというのだ。

    そんなものは、人間の本質を隔てる要素には成り得ない。

    心の奥にしまい込んでいた古傷から、憤りが染み出してきたことに気づき、ヒートはそれを紛らわせるためにブーンの背中を洗った。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「……」

     

    その様子を、デレシアは微笑ましく見守っていた。

    ヒートが過去を押し隠し、ブーンに接しているのは初めて会った時から分かっていた。

    彼女がブーンを見る目は、姉が弟を見る慈愛に満ちた目であり、深い悲しみを癒すために何かに縋る者の目をしている。

    理由はどうあれ、彼女がブーンの味方である事実に変わりはない。

     

    それでいい。

    それで十分だ。

    ブーンには手本となる味方が必要なのだ。

    体を洗い終えた三人は、湯気の立つ温泉に静かに身を沈めた。

     

    爪先から伝わる湯の温度は四十度弱と、他の温泉と比べると低めだ。

    肩まで浸かり、たまらず溜息が漏れ出た。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「ふぅ……」

     

    ノハ*゚⊿゚)=3「ほっ……」

     

    (∪*´ω`)=3「おー……」

     

    涼しい風が吹く中で熱い湯に身を浸す感覚に、三人は揃って目を細めた。

    表現し難い気持ちよさが爪先から頭に走り、体の緊張が一気に解けだす。

    並んで空を見上げ、ゆったりとする。

     

    (∪*´ω`)「きもちいいですおー」

     

    ノパー゚)「あぁ、いいなぁ……」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「夏の温泉もいいものよね。

           こういうのをね、風流っていうのよ」

     

    (∪*´ω`)「ふーりゅー?」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「そう。風流。

          冬の満月を背に飛ぶ渡り鳥、朝焼けを背にする桜の木、水平線の向こうに浮かぶ入道雲、黄昏時の銀杏並木。

          いいな、と思ったものが風流なのよ」

     

    ブーンにはまだ少し早い言葉だったが、覚えておいても損はないだろう。

     

    ノパ⊿゚)「しっかし、この温泉を他の人間が知らないってのは不思議な話だな。

        噂にもならないのか?」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「デイジー紛争で出来たばかりの温泉だし、狼も多いからね。

           誰もこっちの方まで来ないし、調べないのよ」

     

    ヒートがぎょっとした表情でデレシアを見た。

     

    ノハ;゚⊿゚)「……おい、狼って言ったのか?」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「そうよ、狼。

          何か問題でもあるの?」

     

    ノハ;゚⊿゚)「いや、問題も何も、大丈夫なのか?」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「大丈夫よ。 ここの狼は人に慣れていないから」

     

    人に慣れた獣は厄介だ。

    人を恐れず、人を危険な生き物と認識しないで攻撃してくる。

    しかし、野生に生きる生き物であれば相手の力が分からないのに攻撃をすることはない。

    じっくりと出方を窺い、必要最小限の動きで相手の戦力を分析し、それから判断を下す。

     

    狼は群れを成す生き物で、その群れの統率者が優れた判断力を持っていれば、決してデレシア達には手出しをしない。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「狼が来たら、私が追い払ってあげるから」

     

    獣が相手であれば、双方の力量の差を理解して無意味な争いを回避するだろう。

    目の前にある木の隙間から、潮風が吹きつけてくる。

    葉擦れの音に混じって潮騒の音も聞こえてくる。

    平穏そのものの光景に、三人は静かにその身を委ねた。

     

    鳥の鳴き声。

    虫の声。

    静かな風の音。

    言葉は、もう必要なかった。

     

    (∪*´ω`)

     

    ノハ*´⊿`)

     

    ζ(´、`*ζ

     

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    August 9th

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                     _,,-i=ー─-L_Y_,─、

                     Oo='' _,,-──-ri>`l l   |

                       _,,-':::::::::::::::::i:: :|=\ ノ __

          r──-_      /:::::::::::::::::::::,-:|_二i::ll_

        /ニヽ::::://::::::`-、__/:::::::::_,,-──'l l' l.l :トーフ :|

     >::::::::::::: ̄\:::::::::::::::_,,-┴─< r, `l_))フ/ l :||| l :|___

     ll_ノ7 ̄ ̄`-_>''-=<_,-l_/_/`-、 //;;/ .l :| ||_,-'::::::::::::::::::-

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     /:::::/_,,-'_,l |=、l、_/- l彡三Vミミ/-/ /;;;/   > L,-'V |//7-:::::::`-

    r-i-'`_,-'-<l:::::-'_,-',─、__|ミミ/ ////;;;;/   |::::l ::| | //|/,-::::::::::l

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    AM09:45

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    三台のネイキッドバイクがグルーバー島の山中深くにある車道で停まっていた。

    バイクに乗る三人は同じデザインの黒い皮製のジャケットを着込み、ヘルメットは被っていない。

     

    ( ''づ)「くっそ、見失った……!」

     

    先頭の一台に跨る男が忌々しげに声を荒げた。

    その後ろにいる男は首を横に振り、サングラスを外した。

     

    ,,'゚ω'゚)「この先はオフローダーしか行けないぞ」

     

    三人の前で舗装路は終わり、狭い砂利道が暗い森の中に続いている。

     

    从´_ゝ从「くそ……」

     

    彼らの乗るネイキッドタイプのバイクでは、悪戯に車体を傷つけるだけだ。

    タイヤも舗装路を走るのに最適な物であり、砂利道や泥道でのグリップ力は期待できない。

    転倒すれば彼らの愛車が傷つく上に、そうまでした結果、追跡対象の居場所を把握できるとは限らない。

     

    ( ''づ)「どうする?」

     

    ,,'゚ω'゚)「ドジェならまだしも、俺らのじゃ無理だ。

         キャンプ場所は分かってるんだ、装備を整えて夜にやればいい」

     

    ( ''づ)「そうするか。他の連中も呼んでやっちまおう」

     

    三人はUターンし、山から街へと向かった。

     

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    August 9th

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    ノソ:;";;';:;";;;:;ヾ ゞゞ;:;;ゞゞ;ゞ ヾ;ゞゞ;ゞ                 ノヽ人从ハヘ ノミゝ人

    ;;;;;(;li/::;;;;ゞゞ:;y:;ゞゞ;i/:;";;ゞゞ:; ミゞ;;ミゞ             彡::ソ:ヽミゞヾゞ:;ノミヾ::

    ;;;";ゞゞ;ゞ ヾ:::::"`";;';"";;';"” ”";;';"”              ノノキ;;ilノミ彡个ヽミ爻ゞ

    ;;;;;ヾノソ";;';"”/ :,;;ヾノソ";;'ミゞ;;ソゝミゞ;;   ' "''' .':'''' " " '"' "'''. '::: "' "'':::'"''::'':::':'''':::'"''::':'"''

    ノ:、\ゞ;ゞ ヾ;li":; / " `;:;";;';:;":; ..:i;i;!;!;!i;;..i;i;...;!;i;i;.i;i;,, ..i;ii ,,..'.;'":;. :..''"'"    "''' '''.'

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    "::::::'':::'.''.''."'''AM10:30

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

     

    温泉から上がった三人は服を着て、温まった体を潮風で冷やしていた。

    流石にローブを纏う事はせず、ヒートは薄手のジャケットを羽織り、ブーンはローブを腰に巻いた。

    上気した体が風で冷やされ、今の季節を忘れさせる。

     

    ノパ⊿゚)「いやー、いいもんだな、夏の温泉」

     

    (∪´ω`)「おー、きもちよかったですお」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「それは何より。

           さて、実はまだ続きがあるの。

           はい、どうぞ」

     

    デレシアはパニアから瓶に入ったコーヒー牛乳を取り出し、ブーンとヒートに渡した。

    まだ冷えた状態を保つそれは、オアシズでマニーに用意させた一級品だ。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「これがなくっちゃね」

     

    ノパ⊿゚)「おいおい、キンキンに冷えてるじゃないか!」

     つ凵

     

    (∪´ω`)「きんきん!」

      っ凵

     

    ヒートは腰に手を当て、喉を鳴らしながら瓶の中身を一気に飲み干した。

     

    ノパー゚)「美味い!」

     

    それを見たブーンも、両手で瓶を持ってコーヒー牛乳を飲んだ。

    ヒートのように一気に飲むことは出来なかったが、時間をかけて一瓶を飲み切った。

     

    (∪´ω`)「ぷふぁー」

     

    口の周りに付いたコーヒー牛乳をデレシアが指で拭ってやる。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「温泉とこれはセットの様なものね。

          どう? 気に入った?」

     

    (∪*´ω`)「おっ!」

     

    尻尾を振りながら、ブーンは嬉しそうに頷いた。

    頭を撫で、デレシアは微笑む。

    二人から空き瓶を受け取ってパニアに戻し、ディに跨った。

    小さく嘶くようにしてディのエンジンがかかる。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「さ、次は街に行きましょう。

          お昼ご飯を食べてからお買い物ね」

     

    そのついでに、街の様子を観察する、という言葉は言う必要がなかった。

    再度三人を乗せたディは、少しも力を衰えさせることなく山道を登り始めた。

    来た時とは違う道を使って舗装路に戻り、島の北側から時計回りに進んで南にある街に向かうことにした。

    道中、左手の視界が開け、大海原と青空が現れた。

     

    白い雲が夏の真っ青な空に気持ちよさそうに浮かび、空よりもずっと深い青色をした海が宝石のように煌めく。

    自然豊かな街の景色は、絵葉書としても人気のある風景だ。

    長い緩やかな坂道を走り、再び、自然の作り出した緑のトンネルを通過する。

    風呂上がりの体を撫でる風は三人の体を優しく冷やした。

     

    やがて島の北へと戻った三人だが、エラルテ記念病院の前を通りかかった時、デレシアは病棟を見上げた。

    そこには今頃、緊急手術を終えたトラギコ・マウンテンライトが入院しているはずだった。

    彼の体力がその渾名通り“虎”並ならば、今日にでも退院したいと暴れるに違いない。

    優秀な警察官である彼ならば、デレシアの期待を裏切らずにこの島に逃げ込んだ逃亡犯を追いつつ、デレシア達を探すことだろう。

     

    いや、彼がどこまでの警察官なのかは予想でしかない。

    ひょっとしたら、最初から逃亡犯に興味はなく、デレシア達を追い続けるかもしれない。

    それだとしても、この島に潜む愚か者共の思惑を邪魔する嵐として動いてくれるのは間違いなさそうだ。

    時々いるのだ。

     

    生きているだけで周囲に多大な影響を及ぼす人間が。

    多くの場合、そういった人間――今回の逃亡犯の様な人間――は犯罪者として世の中に災厄と混乱を撒き散らした末に死に絶えるのだが、警察官として働く場合も稀にある。

    トラギコは間違いなくそういう人間だ。

    犯罪者にとっては災厄の象徴であり、嵐を伴って現れる獣。

     

    彼は出来るだけ近くにいた方がよさそうだった。

    追いつかれず、見失わない絶妙な距離。

    その距離を保てば、トラギコはデレシア達に近づく虫を払いのけてくれるはずだ。

    彼が望むと望まざるとに関わらず、トラギコは自分の獲物として認識しているデレシア達を横取りされるのを黙って見ていられる人間ではない。

     

    グレート・ベルが見えてくると、ブーンは興奮した様子だった。

    周囲の建物と比べてあの鐘楼は背が高く、どこからでも見上げることが出来る。

    どこからでも見上げられるという事は、どこからでも見下ろされるという事でもある。

    鐘の音街と呼ばれる所以として、相応しい姿だ。

     

    昔ながらの姿を保ったままの市街地には多くの飲食店がある。

    地元の魚を使った店などが観光客には人気だが、デレシアはそういった店を今回選ばなかった。

    彼女が探したのは世界各地に店を構えるレストランだった。

    そういった系列店は内外の人間の区別を付けないし、何より、過干渉ではない。

     

    マニュアル通りに対応する人間はある意味で貴重だ。

    マニュアル外の行動をする人間は緊急時には敵にさえなり得る。

    特に、今は非常時。

    デレシア達を追う人間の中には身分を偽ることに長けている者が数名おり、民間人に扮して彼女達を襲ってこないとも限らない。

     

    むしろ、それが相手の狙いだろう。

    この島に逃げ込んだ脱獄犯がデレシア達を襲うには、この混乱に乗じるのが定石。

    人目に付く場所は彼らにとって絶好の狩場となる。

    彼らがそこに現れると分かれば、デレシアも対応がしやすくなる。

     

    こうして選ばれたのは、全国に店舗を構える大型のファミリーレストランだった。

    駐車場にはほとんど車がなかった。

    バイクを降り、三人は店の中に入っていった。

    案内されるまでもなく、空いた席に進んでいく。

     

    選んだのは、非常口に最も近く、窓から離れ、尚且つ店全体を見渡すことの出来る奥の席だ。

    万が一強盗に扮した人間が店に押し入って来ても、余裕を持った対処が出来る。

    銃だけでなく、ヒートは強化外骨格という頼もしい兵器を持ち歩いている。

    小型・軽量の部類になるAクラスの棺桶を納める運搬用コンテナは、見方によっては楽器ケースに見えないこともない。

     

    ローブで覆い、その全貌を見えないようにして壁際に立てかけているヒートは、流石に手馴れているようだ。

    一般人の前でコンテナを見せびらかすことの危険性と、それを携帯しないことによる危険性の両方を理解している。

    棺桶には棺桶を持ち出すのが最も理に適った行動だ。

    ヒートの持つ“レオン”は強化外骨格との戦闘にのみ特化したもので、それさえあれば、ほぼ全ての強化外骨格との戦闘を制することが出来る。

     

    それを傍らに置き、ヒートは濡れた手拭きで両手を拭いながら、ラミネート加工されたメニューを眺めている。

    通路側に座るデレシアの隣ではブーンがヒートの真似をして手を拭い、コップの水を飲んだ。

     

    ノパ⊿゚)「何食うよ?」

     

    腕時計で時間を確認し、ヒートは今の時間が昼食には少し早いことを暗に指摘した。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「お茶でも飲みましょうか。

          ご飯はその後でも頼めるわ」

     

    ノパ⊿゚)「そうだな。

        なら、あたしはハーブディーでももらおうか」

     

    デレシアもメニューを開き、リンゴジュースとアイスティーを注文した。

    運ばれてきた物を手にしたとき、デレシアは店に一人の顔見知りが入ってくるのをガラスのコップに反射した像で見咎めた。

    最後に会ったのは何年前だったか、よく思い出せないが、その顔はよく覚えている。

    特徴的な太い眉毛の下に垂れた鳶色の瞳、白髪交じりの茶髪は手入れがされておらず、まるで鳥の巣だ。

     

    初めて会った時から大分老けこんでいるが、放つ雰囲気は熟成され、そこに刺々しさも付加されている。

      _

    ( ゚∀゚)

     

    ジョルジュ・マグナーニ。

    ジュスティア警察でその腕を振るい、多くの事件を解決してきた凄腕の刑事だ。

    今のトラギコと似た部分が多々あり、特に似ているのがデレシアを追ってくる点だ。

    かつてジョルジュも、デレシアを追ってどこにでも現れた。

     

    理由は分からないが、彼が警察を去ったと風の噂で聞いてからは、それも止んだのだが。

    それが今こうして現れたのは、決して偶然の類ではないだろう。

    用心深く対処しなければならない。

    彼は今世紀でも五指に入る程の優秀な警察官だったのだ。

     

    運よく入り口に背を向ける位置に座っていた事と、背の高いソファだったことが幸いした。

    デレシアに気付いていれば、すぐにでも行動を起こしてくるはずだ。

    デレシアは卓上に置かれていた紙ナプキンとボールペンを取り、ナプキンに指示を書いた。

    ヒートにそれを見せると、彼女は無言で頷いた。

     

    指示は単純に、注文の類を全てヒートが行い、デレシア、という名前を出さない事だった。

     

    ノパー゚)「……ブーン、あたしとゲームをしよう」

     

    (∪´ω`)「おっ?」

     

    ノパ⊿゚)「マルバツゲームだ」

     

    ボールペンと紙ナプキンを使い、ヒートは上下左右に二本ずつの線を引いた。

     

    ノパ⊿゚)「で、この枠のところに三つ揃えれば勝ちだ」

     

    丸とバツを交互に書き、三つ揃った個所に直線を引く。

    陣取りゲームの一種で、幼い子供も簡単に出来る。

    しかし、その本質は戦略を考え出すことにあり、短い勝負の中でいかに効率よく勝利を手に出来るかが重要だ。

    この三目並べは人の性格がよく反映するゲーム。

     

    ブーンの性格がどのようなものか、ヒートは少し試したい気持ちになった。

     

    (∪´ω`)「おー?」

     

    ノパ⊿゚)「まずはやってみようか」

     

    そう言って、二人はゲームを始めた。

    三度目でブーンは容量を掴み、どうすれば勝てるのかを考えられるようになってきた。

    次第に勝敗が付かないようになり、線の数が増え、ルールの一部が変更された。

    それに伴って勝負が決するまでの時間が長くなり、思考する時間が増えた。

     

    ブーンはヒートに一勝も出来ていないが、応用が出来るようになってきていた。

    横でその様子を見ながら、デレシアはグラスに反射させたジョルジュの姿が店から出て行くのを確認した。

     

    (∪*´ω`)「おー、おもしろいですお」

     

    ノパー゚)「そりゃよかった。

        頭の体操にちょうどいいから、今度また時間がある時にやろうな」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「ねぇ、ヒート。

          あたしとやってみない?」

     

    ノパ⊿゚)「その言葉を待ってたよ、デレシア」

     

    引かれた線は八本。

    通常の二倍。

    勝利条件は印を六つ揃える事。

    戦闘は、ヒートの第一手から始まった。

     

    ヒートが選んだのは定石と言える、図の中央。

    要を押さえたヒートに対し、デレシアはそれを楽しむかのように図上の端に印をつけた。

    それに応じてヒートが印をつけ、静かに勝負が続く。

    その攻防をブーンは黙って見続け、三分後の決着後も、紙上の印を見ていた。

     

    ノハ;゚⊿゚)「やっぱり強いなぁ……」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「偶然よ。ブーンちゃん、どう? 何か分かった事はあるかしら?」

     

    (∪´ω`)「おー……」

     

    少し考え込み、ブーンは首を横に振った。

     

    (∪´ω`)「よく、わかりません……お。

          どうして、デレシアさん、さいしょにここにかいたんですか?」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「それはね、ここに書いておけば相手の狙いが分かるからよ」

     

    (∪´ω`)「お?」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「様子を探るために、こうしたの。

           相手が深く考えてくれるおかげで、相手の狙いがよく見えるのよ」

     

    ノハ;゚⊿゚)「……やっぱりか。

         おかしいとは思ったんだよ、そんなところに書くなんて。

         深読みしすぎちまったか……」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「悪くはないわよ。

           ヒートの性格がよく出た勝負だったわね」

     

    (∪´ω`)「……デレシアさん、ぼくと、やってくれませんか?」

     

    その申し出を待っていたデレシアは、喜びを隠すことなく、満面の笑みを浮かべた。

    新たな紙を取り、線を引く。

    先手はブーンに譲った。

     

    (∪´ω`)φ″

     

    ブーンが最初に選んだのは、ヒートと同じく、図の中央。

    その初手に、ヒートとデレシアは揃って軽く驚いた。

    前の勝負で使われた手を選ぶのは、何故なのか。

    デレシアはヒートの時とは異なり、ブーンの印の斜め隣に印を置いた。

     

    やがて、そこから攻防が始まった。

    奇妙な攻防だった。

    一進一退の攻防ではなく、すぐに決着をつけようとしない戦いだった。

    最初、ヒートはデレシアが手加減しているのだと思ったが、すぐにそれが誤りだと気付いた。

     

    ブーンの印のつけ方はヒートのそれに酷似しているが、デレシアの手法にも似ている。

    デレシアが行っているのは、ブーンがどのような手を選んでくるか、その見極めだった。

    例えば、Aの場所に書くのが定石だとしたら、ブーンはCを選ぶ。

    Cに対してDが有効な対処であれば、デレシアはKの場所を選んだ。

     

    こうして勝負が決した時には、ほぼ全ての場所に印が書かれていた。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「惜しかったわね」

     

    (∪´ω`)「おー、ざんねんですお……」

     

    ブーンは気付いていないだろうが、彼はこの短時間でヒートの攻めとデレシアの搦め手を取り入れてそれを使っていた。

    やはり、ブーンには優れた才能がある。

    1を知れば10を理解するのではなく、1を知れば10を吸収する才能。

    その正体を理解できないため、彼自身は気付くことが出来ないが、実践の場では大いに力が発揮される種類の才能だ。

     

    (∪´ω`)「……お」

     

    ブーンがおずおずと、遠慮がちにヒートを見上げた。

     

    ノパー゚)「あたしともう一回やってみるか?」

     

    (∪*´ω`)「おっ!」

     

    こうして、ヒートとブーンは第二戦を始めた。

    ヒートの思った通り、ブーンは人の技を吸収しているというのがよく分かった。

    最初の頃とは違い、ヒートと同じ様に好戦的な位置に印を書いていた。

    彼女の考えでは、このゲームは防戦した者は負けるか、勝機を逃すかの二択だった。

     

    攻撃こそ最大の防御であり、最善の策だ。

    炎には炎を。

    ブーンもその考え方を己の一つとして吸収してくれるのであれば、この上なく喜ばしいことだ。

    彼の中に自分の考えが根付き、彼を形成していくのは子を育てる喜びに近い。

     

    もっとも、ヒートにとってブーンは子と言うよりも弟としての認識が強かった。

    それでも喜びは同じだ。

    それはデレシアも同じだった。

    彼女もまた、ブーンが多くを吸収する姿を見て喜び、感心していた。

     

    ノパー゚)「残念、あたしの勝ちだ」

     

    そして二人の勝敗を決したのは、年季の差だった。

    ヒートは戦いながら、いくつもの道を用意していた。

    それに対してブーンは、ヒートの攻める姿勢を学んだがために、その道に気付けなかった。

    デレシアの搦め手を用いても、ヒートは一方的に攻め続け、ブーンの策略を打破した。

     

    彼はまだ、策略を策略として使いこなせていない。

    だがそれは経験の問題だ。

    この紙上で行ったゲームで分かったのは、ブーンにはもっと多くの経験を積ませる必要があり、それが彼の力になる事だ。

    吸収した物を理解し、それを応用できれば、間違いなく今以上の速度で成長できるはずだ。

     

    全ての勝負で負けたが、ブーンは満足そうだった。

     

    (∪*´ω`)「おー、ありがとうございました……」

     

    敗北を引きずるのではなく、そこから学ぶ姿勢がブーンにはある。

    それがある限り、彼は全ての事象から学び続ける事だろう。

    すっかり時間も過ぎ、昼時となったのを機に、三人は昼食を摂ることにした。

    メニューを開き、デレシアはピザを、ヒートとブーンはローストビーフサンド、そしてアイスカフェオレを三つ注文した。

     

    注文した品は驚くような速さで提供された。

    回転率を重視する店ではよくあるように、この店でも冷凍食品を解凍し、淡々と盛り付けて調理するだけの料理が出される。

    それで栄養価が下がるという者もいるが、そのような些細な問題を気にしていたら、この世の中で生きることは出来ない。

     

    ζ(゚ー゚*ζ

    ノパー゚)  『いただきます』

    (∪*´ω`)

     

    三人は声をそろえてそう言ってから、目の前の食事を食べ始めた。

    デレシアの注文したピザはトマトソースの上にモッツアレラチーズ、そしてバジルの葉を乗せただけのものだった。

    しかし、デレシアは複雑さが料理の上手さに直結しない事を知っていた。

    このピザはある意味で完成系の一つであり、これ以上余計な物を乗せる必要もないのだ。

     

    八分の一に切り分けられた内の一切れを食べ、期待を一切裏切らない味に、満足そうに笑みをこぼした。

    モッツアレラチーズとトマトの組み合わせが至高の一つに数え上げられるように、それの添え物として最適なのはバジルだ。

    甘みの中に溢れ出る旨みを堪能し、瞬く間に一切れが胃袋に消えた。

     

    (∪´ω`)「んあー」

      つ□⊂

     

    ブーンは、その口には大きすぎるローストビーフサンドに齧り付いているところだった。

    見るところ、三枚の白いパンに挟まっているのはクレソンとローストビーフ、それとサニーレタスの様だ。

    一口食べる度、レタスが千切れる子気味の良い音が鳴る。

    頬張り、咀嚼し、飲み下す。

     

    その一連の動作が年相応の子供らしくあり、デレシアは食事を忘れてその姿を見ていた。

    向かいのヒートもまた、ブーンと同じようにして齧り付いている。

    それが彼女の配慮なのだと、デレシアは気付いていた。

    ブーンには食事のマナーを教えるよりも、食事を楽しい物だと認識させなければならない。

     

    彼はこれまで、今では想像も出来ない程の環境にいたのだ。

    生ごみの食事を与えられ、暴力の挨拶で一日が始まり、罵倒の言葉を浴びせられて過ごしてきたのだ。

    今では人の目を見て話が出来るようになり、言葉にも最初の頃の様なたどたどしさはなくなっている。

    道中に出会った人間の影響というのは大きく、ブーンは日に日に多くの言葉を学んでいる。

     

    未だに発音はぎこちないが、完璧に発音できる単語が一語だけあることに、デレシアは気付いていた。

    “餃子”である。

    オアシズ内の露店で販売されていたそれを食べたブーンは、本来発音の難しいとされるその言葉を素直に覚えた。

    それ以外の言葉についても同じようにして吸収できるかと思われたが、今のところ、餃子の一語だけである。

     

    ノパー゚)「うん、美味いな」

     

    (∪´ω`)「おー」

     

    こうして見ていると、ブーンはヒートによく懐いているのが分かる。

    彼女と同じメニューを頼んだのもそうだが、ヒートが無意識の内にする仕草を、ブーンも真似る時がある。

    例えば美味だと感じたものを食べた後、小さく唸るところ。

    例えば、紙ナプキンで口を拭う仕草。

     

    ブーンはヒートを手本に、多くを学んでいた。

    それが嬉しかった。

    デレシアだけに頼るのではなく、ブーンは他の人間を信頼し、その動きを取り入れる事が出来ている。

    徐々に人間らしさを取り戻す彼の姿に、デレシアの胸が温かくなった。

     

    食事を終えた三人はレストランを後に、腹ごなしも兼ねてスーパーマーケットへと徒歩で移動した。

    輸入品の全てが停止した状態とはいえ、まだその初日だけに打撃は少なそうだった。

    店頭に並ぶ生鮮食料品の数が減ってくるのも時間の問題だろう。

    この緊急時に漁が許されるとは思えないため、まず真っ先に店頭から消えるのは魚だ。

     

    ティンカーベル近海の魚は豊かな自然に育まれ、実にいい味をしている。

    カツオのたたきを食べたかったのだが、デレシアは別の機会にすることにした。

    別の場所でもそれを食べることは可能だ。

    夕食に必要な食材の前に、まずは献立を考えなければならない。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「何か食べたいものはある?」

     

    買い物かごを押すブーンとヒートに、ブーンは後ろからそう尋ねた。

     

    ノパ⊿゚)「使える調理器具を考えると、そうさな……」

     

    (∪´ω`)「……」

     

    ノパ⊿゚)「ん? どうした、ブーン?」

     

    (∪´ω`)「あの、えっと……」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「遠慮しなくていいのよ、ブーンちゃん」

     

    (∪´ω`)「……ヒートさんのおりょうり、たべたい……です……お」

     

    ノパ⊿゚)「……あたしの?」

     

    全く予想していなかった言葉に面食らったヒートは、カートを押す手を止めてブーンを見下ろした。

    以前にブーンが食べたヒートの食事は、ペペロンチーノだけだった。

    それは二人が最初に会った日の夜の食事。

    思い出のメニューだ。

     

    (∪´ω`)「だめ……ですか?」

     

    ノパ⊿゚)「いいけどよ、何であたしなんだ?」

     

    (∪´ω`)「えっと……その……」

     

    助けを求めるような目でデレシアを見るが、デレシアは微笑んだまま、ブーンに自力で想いを口にするよう促した。

    しばらくそうして葛藤し、ブーンは頬を赤らめながら、勇気を出して言った。

     

    (∪*´ω`)「ぼく……ヒートさんとおりょうり……すきで……

           それで……いっしょに、つくってみたくて……」

     

    間があった。

    そして、感情の爆発があった。

    カートから手を離し、ヒートはブーンを抱き上げた。

     

    ノハ*^^)「嬉しい事言ってくれるじゃないか、えぇ、ブーン!!

          よし、あたしと一緒に料理しよう!」

     

    (∪*´ω`)「やたー」

     

    ローブの腰の辺りが揺れているのは、ブーンの尾が喜びで反応している証だった。

    左手でブーンを抱き上げたまま、ヒートは右手でカートを押し始めた。

    その背中に背負う棺桶の重量を考えれば、彼女の膂力は大したものだ。

    並の男よりも鍛え上げられた筋肉と無駄をそぎ落とした体は、彼女がその体を手に入れるために血の滲むような努力を費やしたことを如実に物語る。

     

    仲のいい姉弟のように、二人は売り場を見て食品を手に取ってはヒートがブーンにそれについて教えた。

     

    ζ(゚、゚*ζ

     

    デレシアは慈母の目で二人を見ていた視線を店の片隅に転じさせると、途端に冷酷なそれに代わった。

    科学者が実験動物を見るように、化学反応を見守るようにしてそこに立つ買い物客を睨む。

    腰を曲げた老人。

    熟練の探偵が注意深く観察してみても、老人の挙動にしか見えないだろう。

     

    だがデレシアは、その老人がこちらに注意を払っていることに気付いていた。

    恐らくは、ティンバーランドに属する人間だろう。

    今すぐに撃ち殺すことは勿論の事、誰にも気づかれずに縊り殺すことも出来る。

    その選択は後でも選べるし、今は、相手に情報を与えておいても問題はない。

     

    むしろ、こちらが与えた情報を基に動いた方がこちらも予想がしやすい。

    さて、これで相手はこちらがこの島に上陸したことを把握したことだろう。

    これによって、相手がとる行動を制限する事が出来る。

    実に不便で哀れな連中だ。

     

    こ ち ら の 位 置 が 分 か る た め に 、 行 動 が 制 限 さ れ る と い う 事 は 。

     

    ノパー゚)

     

    ヒートもその視線に気づいており、デレシアに視線を向けた。

    彼女も同じように、相手の監視をそのままにしておく方が得策だと判断したようだ。

     

    (∪´ω`)「ヒートさん、これはなんですか?」

     

    ノパー゚)「それは鮪っていうんだ」

     

    (∪´ω`)「まぐろ」

     

    ノパー゚)「そう、鮪だ」

     

    ブーンはその視線に気づいた様子がなく、買い物と語学学習に夢中だった。

    海鮮コーナーを見終えた二人は、すでにいくつかの食品をかごに入れていた。

    今日の献立はヒートが考える流れになっている。

    ならばデレシアは、二人が無事に買い物を済ませ、料理を作れるように見守る役割を担えばいい。

     

    次々と買い物かごに入れられる食品から、デレシアは献立がゴーヤーを使ったチャンプルーと呼ばれる料理であることを見抜いた。

    必要なのは豆腐、ゴーヤー、そして豚肉。

    細かな調味料の類を除けば、全て揃っている。

    バラ肉が用意できなかったため、ヒートはベーコンを代用するようだ。

     

    デレシアは米を炊くのは時間と手間がかかることから、ロールパンを一袋手に取った。

    パニアにはすでにいくつもの道具が詰まっており、そこまで広い空きスペースはない。

    買い溜めは野営に向かない。

    カゴにロールパンを入れ、デレシアは周囲にさりげなく視線を巡らせた。

     

    会計を済ませてからも、三人を監視する視線は消える気配がなかった。

    買い物袋をブーンと一緒に持つヒートは、デレシアに目配せした。

    その目はこの後どう動くのかを訊いている目だった。

    デレシアはそれに、何も気にする必要はないと微笑み返した。

     

    恐らく、彼らは夜に騒ぎを起こすはずだ。

    ジュスティアが駐屯している今、この昼間に事を起こすはずがない。

    そこまでの下地を整える余裕はなかっただろう。

    仮にあったとしても、彼らの性格を熟知しているデレシアは、昼間の襲撃はまだ先の事だと分かっていた。

     

    荷物をバイクに詰め込みつつ、デレシアは一計を案じることにした。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「ちょっと、どこかの宿に行きましょうか」

     

    そう言って、デレシアは二人を乗せてグレート・ベルの傍らにある宿を目指してディを走らせた。

    石畳の道を通り、グレート・ベルの姿が大きくなってくる。

    やがてある建物の看板を見つけたデレシアは速度を落とし、他の二人に声をかけた。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「……あそこにしましょう」

     

    それは古びた石造りの三階建ての建物で、看板が無ければ民宿とは分からない。

    申し訳なさ程度の看板も木で作られ、遥か昔にその塗装がはげ落ち、朽ちたものだ。

    営業しているのかどうかも危うい。

    トタンの屋根が付いた駐車場にディを停めて、木製の扉を前にした。

     

    ノハ;゚⊿゚)「えらく味のある宿だな、おい」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「ここは基本的に無人だからね」

     

    ノパ⊿゚)「無人の宿?」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「ずーっと昔にあったシステムなんだけどね。

           最低限の人間だけでやりくりするために、掃除担当の人間ぐらいしかいないのよ」

     

    ノパ⊿゚)「それでやってけるのか?」

     

    無人宿泊施設。

    その仕組みが確立されたのは遥か昔で、費用をかけずに観光客を大勢招き入れるために生み出されたのが始まりだ。

    ここでは無人のフロントで部屋の鍵を販売機で購入すれば、誰でも部屋を使うことが出来る。

    料理は一切なく、ただの宿泊施設としての機能を備えたそれは、効率を徹底して求めた末に辿り着いた一つの到達点。

     

    扉を押し開くと、そこには販売機だけが佇むだけで、人の気配はまるでない。

    埃っぽい建物の床は木で作られ、歩くたびに軋む音がした。

    ブーンの体重でも床は軋んだが、それは警報にもなる事を意味している。

    滞在日数に応じた銅貨を販売機に入れ、空き部屋の鍵を手に入れる。

     

    デレシアは鍵を持って三階まで上がり、殺風景な部屋に入るとすぐにカーテンを閉めた。

    ヒートは部屋の鍵とチェーンをかけた。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「さて、今の状態について確認しましょう」

     

    ノパ⊿゚)「スーパーからここに来るまでに一人、つけてたな」

     

    ブーンをベッドの上に乗せて、ヒートは言った。

    デレシアもヒートと同じ意見だったが、別の点で言えば、その数字は異なる。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「尾行は一人、でも、観察者は複数いたわ」

     

    ノパ⊿゚)「っていうと?」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「一人はグレート・ベルの上から。

          もう一人は建物の上から見ていたわ」

     

    カーテンを引いた窓の外に目を向け、デレシアはそう言った。

    向けられていた視線は二種類。

    一つは狙撃手のそれ、そしてもう一つは、捕食者のそれだ。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「さ、これから忙しくなってくるわよ」

     

    そして、デレシアとヒートはこれからの動きについて話を始めた。

    ブーンもその話を聞きながら、自分がこれからどう動いていくべきなのかを理解しようと努めた。

    計画は単純だった。

    そもそもの目的はニューソクの無力化にあり、ショボン一行の排除ではない。

     

    彼らが襲ってくるのであればそれを叩き落とすだけで、攻め入るような真似は必要ないのだ。

    備え付けのキッチンで湯を沸かして、デレシアは紅茶を三人分用意した。

    ブーンのそれには、砂糖をたっぷりと入れた。

    それは、このホテルに置かれている唯一の飲食物と言ってもいい。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「まずは私達を狙ってる人間がいる事を前提に、ニューソクを無力化しないとね」

     

    ノパ⊿゚)「で、どこにあるんだ、そのニューソクは」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「ティンカーベルに幾つも島があるのは知っているわね?」

     

    ノパ⊿゚)「あぁ、詳しい数は知らないけどな」

     

    (∪´ω`)スズッ……

      つ凵

     

    ζ(゚ー゚*ζ「その島の一つに、グリグリ島っていうのがあるの。

           島の地下にニューソクがあるわ。

           と言っても、一度も稼働したことがないから、動くかどうかは元から分からないけどね」

     

    ティンカーベルを代表するのはバンブー島、グルーバー島、オバドラ島だが、それ以外にもジェイル島などの小さな島が多く存在する。

    グリグリ島もまた、そう言った小さな島の一つ。

    特長と呼べる特徴もなく、住んでいる人間もいない。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「そこに行くには、グルーバー島から船を出さないといけないの。

          周囲は人工と天然の岩礁で木製の船からあっという間に沈んじゃうわ」

     

    ノパ⊿゚)「なら、どうするんだ?」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「海が駄目なら地下を使えばいいのよ」

     

    ノパ⊿゚)「……連絡用トンネルでもあるってのか?」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「その通り。 作業員用のトンネルがあるの。

          ただ、そのトンネルの入り口がちょっと面倒なのよ」

     

    小さなメモ帳に、デレシアは島の地図を描いた。

    島の南側。

    そこに、とある施設がある。

    正確には、施設の跡地が。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「元イルトリアの駐屯基地があるの。

           そこに入り口があるの」

     

    ノパ⊿゚)「元、ってことは、今はどうなってんだ?」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「ジュスティアの駐屯基地よ」

     

    そう。

    島の有事に備えてジュスティアは駐屯用の基地をティンカーベルに用意しており、今はその有事の時だった。

    基地には武器を持った兵隊たちが屯し、派遣された警察官たちも大勢いる事だろう。

     

    ζ(゚、゚*ζ「ね、面倒でしょ?」

     

    ノパ⊿゚)「確かに、面倒だな。

        だがよ、そこを使わないといけないんだろ?」

     

    ζ(゚、゚*ζ「行こうと思えばやれるんだけど、あんまり好きじゃないのよね。

          円卓十二騎士も来てるし、面倒を増やしたくないの」

     

    ノパ⊿゚)「円卓十二騎士って、そこまで厄介な相手なのか?」

     

    ζ(゚、゚*ζ「そうねぇ…… 厄介と言えば厄介ね。

          ジュスティアの最高戦力で、おまけに所属に関係なく独立して動けるのよ。

          だからある意味、トラギコと同じぐらい厄介ね」

     

    ジュスティアの最高戦力ともなればトラギコとは違って多くの組織を自由に動かせる権限を持ち、一度恨みを買って追いかけまわされれば、旅自体に支障が出てしまう。

     

    ノパ⊿゚)「そりゃヤだな」

     

    ζ(゚、゚*ζ「もう一つあるわ」

     

    他にも円卓十二騎士が厄介な点がある。

    彼らの大好きな言葉は正義であり、不正を決して許さない。

    犯罪者を前にすれば、警察官以上の正義感で仕事を果たそうとしてくる。

    ヒートが殺し屋の“レオン”だと分かれば、例え緊急時だとしても見逃すことはない。

     

    その点に注意をするようデレシアが伝えると、彼女は返事をする代わりに紅茶を啜った。

     

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    August 9th

                                厶 --====

         /三三三三三ミト、      __,. -===   ̄ ̄ ̄ ̄/

         .∨         `ヾヽ  ,. 彡 ´           /

          :∨            \Y/             /

          : r∨          | |              /

          入∨             | |           ,.  ´ ̄}

         :〈  ) )           | |          (_,..  ´ ̄}

    PM07:21

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    それに最初に気付いたのは、ブーンだった。

    夕食の時間を過ぎてからも文句一つ言わず、オアシズでもらったスウドクの本を黙々と解いていた手を止め、窓の外に目を向けた。

     

    (∪´ω`)「お?」

     

    次に気付いたのは、デレシアだった。

    僅かに遅れて、ヒートも気付いた。

    何やら、街が騒がしい。

     

    ζ(゚、゚*ζ「……何かしら」

     

    (∪´ω`)「かじ……?」

     

    答えを出したのはまたもやブーンだった。

    彼の耳は人間のそれよりも遥かに発達しており、外の声を聞き取ることなど造作もない。

     

    ζ(゚、゚*ζ「ブーンちゃん、ヒート! 耳を塞ぎなさい!」

     

    (∩´ω`)「お」

     

    ノ∩゚⊿゚)「ん?」

     

    その判断の正しさが、窓を震わせる大音量の鐘の音によって証明された。

    デレシアはこのタイミングで起きた二つの動きを関連付け、それがティンバーランドの人間が仕掛けた物だと結論付けた。

    この鐘の音は何かを隠すための物で、火事は鐘の音を鳴らすための物だ。

    なりふり構っていられないという事なのだろう。

     

    ティンバーランドの人間は、よほどデレシアに強い恨みを抱いたのだろう。

    それでこそ、潰し甲斐があるというものだ。

     

    ζ(゚、゚*ζ「建物を出るわよ!」

     

    相手の次の動きを読み、デレシアは建物から出ることを選んだ。

    二人に窓から離れるように指示を出す。

    鐘の音が声による意思疎通を完全に遮断していた。

    しかし、ヒートにならばデレシアの意図は伝えられるはずだ。

     

    身振りでこれからカーテンを開くが、そのタイミングで部屋の明かりを消すように伝える。

    ヒートはそれを理解し、デレシアが動くのを待った。

    デレシアの見立てではグレート・ベルに狙撃手が一人いるが、大した脅威にはならない。

    こちらが窓から飛び出しでもしない限り、角度と言う最大の問題がある。

     

    高所から遠距離を狙う狙撃手は、その性質上、足元が死角となってしまう。

    今回デレシアが鐘の音を我慢してでもこの宿を選んだのは、狙撃の目を摘むためでもあった。

    本気でこちらを殺そうと思っているのならば、狙撃手だけでなく、別の部隊も来ているだろう。

    しかし、グレート・ベルに狙撃手がいるというのも、別働隊も全てはデレシアの推測にすぎない。

     

    そこで、狙撃手に一発撃たせることで、その位置と存在を確かめようと誘うことにした。

    デレシアは窓の前に立ち、カーテンに手をかける。

    合図をして、一気にカーテンを引いた。

    部屋の電気が消え、デレシアがその身を軽やかに翻した瞬間、窓ガラスが割れた。

     

    だが銃声は鐘の音のせいで一切聞こえず、床に開いた小さな穴だけが銃撃が確かにあった事を物語っている。

    角度を見て取っていたデレシアは、それが間違いなくグレート・ベルから放たれた物だと察した。

    となると、当初の予定ではやはり狙撃によってデレシア達を亡き者にしようとしていたのだろう。

    この宿にデレシア達がやって来た時点で計画は破たんしたと判断するべきだろうが、おそらく、別の目的もあって火事を起こしたのだろう。

     

    ならば別の人間達がデレシア達を追うべく配置されているはずだ。

    手を空けるため、二人にヘルメットを被るよう指示をする。

    これで多少の音は防げる。

    また、顔も隠せるため、万一の襲撃者がいたとしても時間を稼げるだろう。

     

    デレシアは左手でデザートイーグルを抜き、それを構えて部屋の扉を蹴り破った。

    蝶番ごと吹き飛んだ扉は向かいの壁にぶつかって砕け、細かな木片が散った。

    鐘が鳴るたび、床板も床に散った木片も振動していた。

    デレシアが先行し、その後にブーン、そしてヒートが続く。

     

    彼女の手にはすでに銃が握られていた。

    難なく一階まで降りて来たデレシアは、胸のどこかにあった違和感の正体に気付いた。

    これはテストなのだ。

    デレシア達がどう動くのか、どのような人間なのかをシュール・ディンケラッカーとデミタス・エドワードグリーンに見せるための試験。

     

    出方を窺うためのから騒ぎなのだ。

    本気ならば、部屋の前にクレイモアを仕掛けたり、建物を爆破したりすればいい。

    成程。

    前回の反省を生かすという点で言えば、相手も少しは成長したようだ。

     

    デレシアは駐車場に向かい、ディに跨る。

    視線が、夜空をオレンジ色に染め上げる方角に向けられた。

    間違いなく、エラルテ記念病院の方角だった。

    そこはトラギコが入院しているはずの病院で、そこが燃やされている可能性は高かった。

     

    ζ(゚、゚*ζ「……」

     

    憤りを抑え、デレシアはバイクを山に向けて走らせた。

    最初の予定通り、キャンプサイトを拠点として使えばいい。

    もっとも、そのキャンプ場さえ特定されている可能性の方が高いだろうが。

    夕食を摂る時間ぐらいは得たいものだ。

     

    尾行者がいない事を確認しながら、デレシアはアクセルを捻った。

    すっかり日の暮れた山道は、当然だが、午前とは違う表情を見せていた。

    迷い込む者を歓迎する、夜の口腔。

    獣の潜む魔城。

     

    街灯などと言う気の利いた物はなく、月と星だけが頭上から彼女達を照らしていた。

    ディはすでに記憶された道を走っていることを理解しており、デレシアの運転と路面に合わせて最適な走行状態を選んでいる。

    悪路はただの路として三人の前に広がり、ディは難なくそれを走破した。

    宿を出てから三十分後、三人はキャンプサイトに到着した。

     

    タープの下にディを停め――キーは差したまま――、パニアから食材を取り出した。

    ヒートはテントからランタンを取り出し、そのスイッチを入れてタープから吊るした。

    鐘の音はまだ響き続け、消火活動のために走る消防車のサイレンも合わさった。

    山から見下ろすと、やはり、燃えているのはエラルテ記念病院の様だった。

     

    だが森に住む生物たちは何事もなかったかのように、各々の歌を歌い、蠢いている。

     

    ノパ⊿゚)「やっぱり来やがったな」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「そうね、でもあれは様子見のための動きね。

          本命は別のタイミングにあるはずよ」

     

    ノパ⊿゚)「様子見だったら、あれはあたし達がどう反応するかっていうのを見るのが目的だったってことか?」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「その通り。そしておそらく次は、戦闘方法を盗み見ようとするはずよ。

           それでデータは揃うはずだから」

     

    襲撃の際に知っておきたいのは、相手の行動パターンだ。

    攻撃と逃走。

    この二種類の行動さえ見ることが出来れば、襲撃方法を考案することが出来る。

     

    ノパ⊿゚)「なら、その前に飯を食わなきゃな。

        ブーン、腹減ったろ?」

     

    (∪´ω`)「……お」

     

    ノパー゚)「遠慮すんなって。

        今からちゃっちゃと作るから、手伝ってくれるんだろ?」

     

    ナイフとアウトドア用のまな板――把手が付いている――を手に、ヒートが緊張や苛立ちを感じさせない優しげな声でブーンに話しかけた。

    その笑顔と声に感化されたのか、ブーンは不安そうだった表情を綻ばせた。

    早速調理を始め、ブーンは野菜の下ごしらえをすることになった。

    デレシアはナイフの使い方をブーンに教え、手本としてゴーヤーを切った。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「中の種は綺麗に取ってあげるのよ」

     

    (∪´ω`)「お!」

     

    街で起きている喧騒をものともせず、三人は和気藹々と食事を作り始めた。

    バーナーに火を灯し、クッカーを乗せてそこでベーコンを焼く。

    ベーコンから染み出した油を利用し、切り分けたゴーヤーと豆腐を混ぜ、塩コショウで味を調える。

    炒め終えたチャンプルーを皿に取り分け、主食となるロールパンと共に食べる事となった。

     

    ブーンは調理中、ヒートが手際よく食材を切り、それを炒める様子をじっと見ていた。

    その目は好奇で嬉々として輝き、ヒートの動きは魔法のように見えたことだろう。

    瞬く間に調理を終えた料理を前にして、ブーンの尻尾は終始揺れ続けていた。

     

    ノパー゚)「さ、何はともあれ飯だ、飯!」

     

    (∪*´ω`)゛「おー!」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「美味しそうね」

     

    ノパー゚)「ちょっと薄味だが、口に合えばいいんだけどな」

     

    ヒートが何故薄味にしたのか、考えるまでもない。

    ブーンのためを思っての事だ。

    彼は聴覚や視覚、嗅覚だけでなく味覚も人間よりも発達している。

    濃い味付けの物は彼にとって毒に成り得る。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「いただきます」

     

    ノパー゚)「いただきます」

     

    (∪´ω`)「いただきますお」

     

    三人は口を揃えてそう言ってから、皿に盛られた食事を食べ始めた。

    ブーンが幸せそうにチャンプルーを口に運ぶ姿を見て、ヒートは嬉しそうに微笑んでいた。

     

    ノパー゚)「どうだ? 美味いか?」

     

    (∪*´ω`)「はい!」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「お世辞抜きに美味しいわ」

     

    デレシアもこの味付けが気に入った。

    ゴーヤーの苦みと塩味が絶妙に合わさり、夏の味を感じさせる。

    豆腐とベーコンもいい仕事をしており、味に物足りなさを感じるという事もない。

    練り込まれたバターの味がするロールパンとの相性も良く、この夕食は先ほどまでの緊張状態を和らげてくれた。

     

    ノハ*^^)「そりゃ良かった」

     

    ヒートの笑みはデレシアとブーンの言葉に向けての反応だったが、本当は、ブーンの言葉と反応が彼女を笑顔にしたのだと分かる。

    日に日にブーンとヒートの距離は近いものになり、歳の離れた姉弟そのものへと変わっている。

    実に喜ばしく、良い事だ。

    調理したチャンプルーを全て平らげたブーンは、パンをちぎってそれで皿を拭った。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「あら、偉いじゃない!」

     

    (∪´ω`)「お?」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「パンでお皿を拭うの、偉いわ」

     

    (∪´ω`)「えっと…… ししょーが、こうしたほうがいいって……」

     

    ブーンにとっての師匠とは、ロウガ・ウォルフスキンの事である。

    イルトリアの軍人であり、前市長の護衛。

    狼の耳と尾を持つ耳付きの彼女の実力はヒートをも凌駕し、棺桶を使っての戦闘でも引けを取らない事だろう。

    “レオン”の能力が如何に優れていても、使い手の経験値が低ければ意味がない。

     

    ロウガの経験値は、殺し屋として生きてきたヒートを遥かに凌ぐ。

    彼女は生粋の戦闘家。

    キャリアが違う。

    オアシズで訓練がてら手合わせをしてヒートが負けたのは、必然としか言えない。

     

    それでも、ヒートはまだ強くなるだけの余地がある。

    ロマネスク・O・スモークジャンパーとロウガの意見と同じように、彼女のこれからに期待できる。

    食事を終えた三人はそれぞれの食器を持って炊事場に向かい、それを丹念に洗った。

    洗い終えた食器を持ってテントに戻る途中、デレシアは二人に提案をした。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「この後、せっかくだからテントでゆっくりと寝ましょうか」

     

    ノハ;゚⊿゚)「……マジか?」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「休める時に休むものよ、人間はね」

     

    確かに、この非常時に眠るのは敵に無防備な姿を晒すことになりかねない。

    だが、休まないのも相手の思惑にはまることになる。

    休息を怠った人間が普段では決してはまることのない罠にはまり、取り返しのつかない事態に発展するのは珍しい話ではない。

    デレシアは休息の重要性を理解していた。

     

    相手がこちらの力量、反応を調べる段階にあるのだとすれば、本命を投入してくることは考えられない。

    使うとしたら、雑兵だ。

    雑兵で計測を終えた後、本命として手元に置いているシュールとデミタスを動かすだろう。

    ならば今は休む時だ。

     

    この島で動くには、ジュスティアとティンバーランドの二つの勢力の目を掻い潜らなければならない。

    一人ならば造作もないが、二人も同行者がいれば、そう容易に事は運べない。

    だからこそ、休むのだ。

    休息し、これからに備える。

     

    それが最も理想的なこちらの対抗策だ。

    攻め入る者と、それを受ける者。

    有利に働くのは数で勝る方だ。

    相手の戦力が読めない以上デレシアにとっての立場は後者、つまり、攻撃を受ける側という事になる。

     

    こちらにとって生命線になるのは言わずもがな、相手の情報だ。

    知る限りではショボンが関わり、それ以外の人間については現地で雇った雑兵ぐらい。

    正確な数を知らないこちらが不利なのは言うまでもない。

    ショボンと言う男は、それを知った上で、二人の人間を脱獄させたのだろう。

     

    脱獄犯であれば情報は少なく、かつ、即戦力になるからだ。

    彼らへの情報提供を兼ねて、今回の計画を練ったと考えれば、次もまた、有象無象の捨て駒を使ってくるはずだ。

    それも、時間を空けて。

     

    (∪´ω`)「あの……」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「ん? どうしたの?」

     

    (∪´ω`)「ディは、何も食べなくていいんですか?」

     

    補給、という単語を知らなかったのか、ブーンは食べるという単語を使った。

    それがある意味で的確なため、デレシアは訂正することはしなかった。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「そうね、せっかくだからここのお水をあげましょうか」

     

    ディはバッテリー、そして水を動力源として動く。

    バッテリーも水もまだ十分にあるが、ブーンは自ら名付けたバイクに何かをしたくて仕方がないのだ。

     

    (∪*´ω`)゛「おっ」

     

    自分にも何かが出来ると分かったブーンは、その日で一番の笑顔を浮かべた。

     

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    August 10th

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    AM00:58

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    それは、火事の騒ぎも静まり、キャンプサイト全体も虫の鳴き声しかしなくなった深夜の事だった。

    川の字になって寝ていたデレシア一行は、静まり返っていた山に響いたエンジン音で目を覚ました。

    高いエンジン音が複数。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「お客さんよ」

     

    ノパ⊿゚)「……リハビリがてらだ、あたしがやるよ。

         運転を頼む」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「よろしく、ヒート」

     

    二人はヘルメットを被る。

    すでに戦闘準備は整っていた。

     

    (∪うω`)「お……」

     

    まだ寝ぼけているブーンを抱えて、デレシアはディに乗った。

    起きている状態ならまだしも、眠っている状態でバイクにそのまま乗せるのは危険だ。

    ブーンを後ろに座らせ、ローブを使って彼とデレシアをしっかりと結び付けた。

    その後ろにヒートが乗り、同じようにしてデレシアと自分をローブで固定させ、それからブーンにヘルメットを被せた。

     

    ノパ⊿゚)「よっしゃ、いいぞ!」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「ちょっと激しいドライブになるけど、しっかりね」

     

    ノパ⊿゚)「任せな」

     

    キャンプサイトの入り口に、一つ目のライトが浮かんだ。

    そして、続々と現れたのはバイクのヘッドライト。

    総勢で十台以上はいるだろう。

    深夜という事を完全に無視した爆音を響かせて現れたバイクは、友好的な人間が乗っているとは思い難い。

     

    各々が掲げるのは銃身の短いショットガンやアサルトライフル。

    モーターサイクル・ギャングの特徴とも言える黒い皮のジャケットを着た彼らは、ライトに照らし出された蒼いバイクを見た時、反応が追いつかなかった。

    ヒートが右手に持つベレッタM93Rの瞬きは、半数以上の男達の命を一瞬の内に奪い去った。

    彼女のM93Rはフルオート射撃が可能なように改造されており、律儀にも自らの頭部の位置を示す格好で現れたのが仇となった。

     

    デレシアはディを一気に加速させ、山道に入り込んだ。

    遅れて銃声が数発響くが、すでにその射線上にデレシア達の姿はない。

    慌てて後に続くオフローダータイプのバイクは三台のみ。

    最後尾に4WDのランドクルーザーが続く。

     

    ノパ⊿゚)「……っ!」

     

    山道を登る四台のバイク。

    性能の差は、瞬く間に現れた。

    銃を構えるヒートはその照準が思った以上に揺れないことに驚いていたが、後続の三台はヘッドライトが上下に激しく動いている。

    狙い撃つのは難しそうだが、やってやれないことはない。

     

    狙いをヘッドライトよりわずかに上に向ける。

    そこに胴体が必ずあるからだ。

    そして銃爪を引き、一台が転倒した。

    続く二台目は、それを踏みつけて追跡を続行する。

     

    大した努力だが、とヒートは嘲笑した。

    三発を連続で発砲し、二台目のバイクに乗っていた人間がバイクから落ち、しばらくの間オフローダーは無人のまま走ってから倒れた。

    残りはオフローダーが一台と、車輌が一台だけ。

     

    ノパ⊿゚)「しつこい連中だ!」

     

    ζ(゚、゚*ζ「下り道になるから気を付けて」

     

    ノパ⊿゚)「あいよ!」

     

    デレシアの宣言通り、バイクは峠を越えたかのように急な下り道を走り始めた。

    ブーンに背中を預け、ヒートはバイクが現れるのを待った。

    飛ぶように現れたバイクに向けて、ヒートは弾倉を使い切るまで銃爪を引き続けた。

    銃弾の当たり所が良かったのか、そのバイクは爆発を起こし、花火のようにばらばらになった。

     

    残るは車輌。

    だが、今ヒート達が走っている道には入ってこれないことは分かっていた。

    となると、先回りされている可能性が考えられる。

    弾倉を交換し、ヒートはデレシアの腰に手を回した。

     

    ζ(゚、゚*ζ「飛ぶわよ!」

     

    ノハ;゚⊿゚)「おっ!!」

     

    反射的に、ヒートはデレシアの腰に回した腕に力を込め、ブーンが万が一にも落ちないように気を付けた。

    そして、浮遊感。

    舗装された車道に飛び降りた衝撃のほとんどはディのサスペンションが吸収し、無効化した。

    速度と路面の変化を感じ取ったディはすぐに走行スタイルを変更させ、デレシアはそれに応じてギアを上げて速度も上げた。

     

    すぐ後ろにはセダンが走っており、更にその後ろには追跡者であるランドクルーザーがいた。

    バックミラーに映る二台の車両の内、敵勢力はランドクルーザーだけと判断したデレシアは、更に速度を上げて二台をミラーの点に変えた。

     

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    August 10th

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    AM01:23

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    それに気付いたのはヒートだった。

     

    ノパ⊿゚)「……何か来るぞ」

     

    音が接近してくるのもそうだったが、小さな明かりが近付いてきていた。

    車でも、バイクでも有り得ない程の速度。

    カーブをものともせずにやって来るそれは、こちらを追っているのだと分かる。

    そうでなければ、あれほどの速度で走る必要がないからだ。

     

    デレシアはミラーに一瞬だけ目を向け、答えを出した。

     

    ζ(゚、゚*ζ「……あぁ、やっぱり。

          さっきのセダンに乗ってたの、ライダル・ヅーだったのね」

     

    ノハ;゚⊿゚)「……あの、ライダル・ヅーか?」

     

    ジュスティア市長の秘書である彼女の事を、ヒートは聞いたことがある。

    幾度も死刑判決を言い渡し、死神とさえ呼ばれる彼女は、ジュスティアの体現者の一人だ。

    一度掴まり、彼女が事件を担当した時には死を覚悟しなければならないと言われるほどの冷酷さ。

    その女性がこの島にいるのは、ジュスティアがよほど事態を深刻に見ているからに他ならない。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「ま、イージー・ライダーだから大丈夫よ。

          顔を向けないように気を付けてね」

     

    ノハ;゚⊿゚)「何がどう大丈夫なのか分からないんだが……」

     

    鬼火の様な光が接近してくるのを見て、ヒートはそれが人型である事に気づき、驚愕した。

    コンセプト・シリーズの棺桶だ。

    高速で走るディに追いつけるほどの速度で迫るそれに、ヒートは銃を向けようとしたが、諦めた。

    この弾丸では、装甲を破ることは出来ない。

     

    ::[ ])『そこのバイク、止まりなさい!』

     

    バイクを転倒させられたら、こちらは間違いなく死ぬ。

    追いつかせるわけにもいかないため、ヒートは背負っている棺桶を使おうか逡巡した。

    だがそれは必要なかった。

     

    ζ(^^*ζ「ディの方が優秀ってことよ」

     

    その言葉の意味を理解したのは、デレシアが突如として進路を山中に向けた時だった。

    未知の変化を察知したディはオフロードタイプに切り替わり、悪路をものともせずに走るが、後ろにいた棺桶は車道からついて来ようとしなかった。

    否、ついてこれないのだ。

    急斜面と悪路を前に恐れをなして、その足を止めたのだ。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「舗装路でしかあの速さを発揮できないのよ、あの棺桶は」

     

    その一言は、ヒートの中にある疑問を更に増長させた。

    強化外骨格は非常に多くの種類があるが、コンセプト・シリーズの棺桶はそれ一種類しか存在しない。

    量産機ではないのだ。

    だから、その名前と能力を一致させるためには古い文献――イルトリアに保管されているとされる書物―――か、実際に戦闘をしなければならない。

     

    デレシアは先ほどの棺桶の名前だけでなく、弱点まで知っていた。

    果たして、彼女はこの世界の何を知っているというのだろうか。

    いや、逆だ。

     

    彼 女 の 知 ら な い 物 は 、 こ の 世 界 に あ る の だ ろ う か。

     

    AmmoRe!!のようです Ammo for Reknit!!

    第一章【rider-騎手-】 了

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