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序章【concentration-集結-】

  1. 名前: 歯車の都香 2017/04/16(日) 13:18:00
    序章【concentration-集結-

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    金で解決出来る事があれば金を使えばいい。

    ただし、忘れるな。

    その時、お前は努力と困難を失うのだ。

     

    本物の努力と困難は、金では決して買えない物だというのに。

     

                                              ――リッチー家家訓

     

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    八月七日は、静かな夏の空気が漂う穏やかな夜明けだった。

    空は黒から紫へ、紫から瑠璃色へ、瑠璃色から群青へ、そして徐々に白に近づくグラデーションで彩られている。

    千切れた黒い雲はやがて夜の名残である星と共に消え、それが存在したことを微塵も感じさせないだろう。

    その海域では、見事な夏の夜明けをどこからでも見ることが出来た。

     

    吸い込まれそうな瑠璃色の空には紫色の雲が浮かび、海鳥が羽を広げて風に漂っている。

    夜の色がまだ残る水平線の彼方には夏らしく、純白の入道雲が浮かんでいる。

    そして背後に消え失せる夜の名残。

    涼しげな風の中に香る夏の匂いに、耳を澄ませば蝉の声も聞こえてきそうだった。

     

    波浪は穏やかだった。

    白波もなく、微風の吹く中を巨大な船が優雅に航行している。

    船の名はオアシズ。

    世界最大の豪華客船であり、世界最大の船上都市だった。

     

    その船を束ねる市長、リッチー・マニーは生きて朝日を眺めたことでようやく窮地を脱したことを実感し、心底安心した。

    昨夜の“答え合わせ”は、彼の人生での中でも最も疲れた長い夜だった。

     

    ¥・∀・¥「ふぅ……」

     

    久しぶりにまともな食事を食べる気になったのは、これまで船を操っていた部下達が大勢死に、船の指揮系統の復旧に体力が必要だからだった。

    マニーは無理をするタイミングを心得ており、それは正に昨夜であり、今であった。

    今無理をしなければ、後にどれだけの犠牲を払っても取り返しのつかないことになるだろう。

    彼が無理をすることで、部下達に安心して仕事をさせなければならない。

     

    それが上司の仕事であると、彼は父から教わっていたし、その通りだと思っていた。

    部下が欲するのはとどのつまり、安心なのだ。

    安心を手に入れるためには上司がその背中で多くの危険を受け止め、部下達に被害が及ばないようにしなければならない。

    彼が無理をすることで部下が安心して仕事をすることが、やがてはこの街全体の治安と信頼の回復に至るのだ。

     

    船内にあるフードコートに秘書を向かわせ、巨大なハンバーガーと並々とタンブラーに注いだコーヒーを持って来るよう指示を出してから十五分が経過していた。

    それが到着するまでの間、マニーは昔、両親に言われた言葉を噛みしめていた。

    何度も言い聞かされたその言葉は、リッチー家の家訓だった。

    “金で解決できない問題に直面し、努力する機会と困難を得られたことは大金に勝る”とは、親子何世代にも渡って語られてきた言葉だ。

     

    成程確かに、これほどの困難は大金を積んででも迎え入れたくはない。

    それを解決出来たなら、彼は大金に勝る経験を得たことになる。

    だがそれは、自力で解決出来た場合の話だ。

    彼は、他者の力を借りてようやく解決することが出来た。

     

    もしも偶然、この船に彼の知人が乗り合わせていなければ、この船は最悪の事態を迎えていた事だろう。

    彼は、自分の非力さを嘆いていた。

    “オアシズの厄日”と呼ばれる一連の殺人事件は、彼ではなく、偶然乗り合わせた彼の知り合いが全て解決したと言っても過言ではない。

    彼は、それが悔しくて仕方がなかった。

     

    彼は規格外の金持ちの家に生まれたが故に、常に誰よりも努力をしてきた。

    そうしなければ、彼の努力も何もかもが、金で作られたものになってしまうからだ。

    これだけは、金では買えない物なのに。

    なのに、今回は何も出来なかった。

     

    自分で成し得たものが金のおかげと誤解されるのは、この上なく悲しいことだ。

    幼少期に何度も経験してきたそれは、決して、心地いいものではなかった。

    己の努力が金に持っていかれるのだ。

    それはまるで、神に縋る無能共が己の力で得た結果を神の手柄にするような、胸糞の悪い話だ。

     

    失った物を数えても仕方がないと彼の祖父が口癖のように口にしていたが、その言葉が真に意味するのは損失を無視するという事ではない。

    損失に対して途方に暮れる暇があるのならば、その失った物を整理し、如何に取り戻すかが大切という事を意味していた。

    だから彼の祖父は経営に成功し、オアシズを発展させ続けて来られたのだ。

    船上都市という極めて特異な街が反映し続けているのも、そうした考えが脈々と受け継がれているからに他ならない。

     

    それは何故か。

    何故、祖父は成功し得たのか。

    秀でた能力があったのか。

    全てを自力で解決できるほど、才能豊かな人間だったのか。

     

    では父はどうだ。

    知る限り、父はそこまで才能に恵まれていなかったはずだ。

    それでも父はオアシズを統治し、皆に惜しまれながら死んだ。

    祖父と父にあって、マニーにない物。

     

    それは、驚くほど簡単なものだった。

    優れた才能でもなく、能力でもない。

    捨て去る力だった。

    無意味な矜持を捨て、自分にはない力を持つ人間を頼り、その人間の力を正しく行使する力だ。

     

    頼るという才能。

    頼るという努力。

    頼るという力。

    己の無力を受け入れ、それを他力で補うという選択。

     

    今のマニーには、優秀な部下と友人がいる。

    彼らの力を借り、この街を再興するのだ。

     

    ¥・∀・¥「……よし」

     

    今度はマニーの番が己の力を用い、この街を取り戻す順番だった。

    彼が失った中で最も価値が高いのは人員だった。

    経験値を積み、信頼を築いてきた人間を補充するのは容易ではない。

    これまでの雇用形態を見直すことも視野に入れつつ求人し、大切に育てるしか方法はなかった。

     

    そして次に信頼だった。

    金で買える信頼は希薄な物であり、実質的には意味がない物だ。

    信頼は時間と対応でのみ回復が出来る。

    焦ったところで、こればかりはどうしようもない。

     

    家宝の一つとしてリッチー家に受け継がれてきた強化外骨格を失ったことは、特に気にしなくてもよかった。

    あんなものは、それこそ金で解決できるものなのだから。

    ノックの音が、マニーの意識を現実に戻した。

     

    -゚ぺ-)「お待たせしました、お食事をお持ちいたしました」

     

    ¥・∀・¥「あぁ、ご苦労。

          君も後で朝食を摂るといい、今日は忙しくなるぞ」

     

    -゚ぺ-)「はい、そうさせていただきます」

     

    一礼して秘書は部屋を出て行った。

    彼との付き合いも長い物で、何年になるのか忘れてしまうほどだ。

    いつか、彼の努力に報いる何かをしなければと思い、何年が過ぎただろうか。

     

    ¥・∀・¥「……すまないな」

     

    秘書が持ってきた食事を受け取り、マニーは一人で早目の朝食を始めた。

    紙に包まれたハンバーガーを取り出し、豪快にかぶりつく。

    瑞々しいレタス、肉汁が滴る肉、カリカリに焼いたベーコン、ピクルス――マニーの好みで大量に入れてある――、甘い玉ねぎ、そして蕩けたチェダーチーズ。

    シンプルな材料だが、ケチャップとマヨネーズがそれらを丁寧に包み込み、有無を言わせぬ美味さを演出している。

     

    マニーの持論として、ハンバーガーの味は単純であることに限る。

    複雑な味を堪能したいのならハンバーガー以外の何かで補えばいい。

    口の周りにケチャップをつけながら、それを胃袋に入れていく。

    肉と野菜、そして炭水化物が摂取できるからハンバーガーは好きだった。

     

    食べ終えてから口元を拭い、程よい温かさのコーヒーを飲む。

    温かい飲み物は精神的に人を落ち着けさせる効果がある。

    胃に沁み渡るコーヒーの温かさがありがたい。

    一時間で何度目になるか分からない溜息を吐き、マニーは自分に言い聞かせる。

     

    今の自分に出来る事は何でもする。

    何が出来るのか。

    何をするべきなのか。

    それを考えるべきなのだと、自分に何度も言って聞かせた。

     

    ¥・∀・¥「頑張れよ、俺……」

     

    まずは各ブロック長の才能を引き出せる仕事を見つけ出し、それを解決させる。

    彼らブロック長は優秀な人間であり、オアシズのために全力を出してくれることだろう。

    勿論、ブロック長だけではない。

    このオアシズで商いをする人間達の力も借りなければならない。

     

    その力を借り、適切なところで最大限に発揮させるのがマニーの仕事だ。

    不意に、ふわりと甘い香りが彼の鼻孔に届き、視線を上げるとそこにはマニーにとっての救世主がいた。

    彼女こそがオアシズの窮地を救い、マニーに足りない多くの力を持つ絶対の存在だった。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「何か悩み事かしら、マニー?」

     

    黄金の髪と碧眼を持つ旅人は、慈母の笑みでマニーに微笑みかけた。

     

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                  //∨|i |  | ヒ|乂 /// イ弐示く |    :j: : : . '.

                  ///: : i: : : :i i  │∠ : イ//   弋少 刈   //: : :: :

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                 / : : : : \ \ \: :从⌒            ∠/ //: / ノ.: :リ 〉:

           /   人 : : :  -=ニ二 ̄}川 >、  `''==一   ∠ -匕 /´The AmmoRe!!

           {   { 厂      . : { /⌒\   ー     原作【AmmoRe!!のようです】

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    窓の外で水平線から陽が昇る様子を、ヒート・オロラ・レッドウィングはベッドの上から物憂げな表情で眺めていた。

    昨夜は女三人で酒を飲み、日付が変わるまで飲み明かしたが、その影響ではなかった。

    彼女は昨夜の話の中で、ある疑問を膨らませながらも、それを口に出せなかった。

    その疑問はとても些細な物だったが、一度気にし始めたらもう止められなかった。

     

    ノパ⊿゚)「……」

     

    世界には多くの人間がいる。

    様々な人種、価値観、宗教観などを持った人間がいる。

    勿論、ヒートも多分に漏れず自分で構築した価値観に基づいて行動をしている人間だ。

    ヒートにとって一つの疑問だったのが、彼女の命の恩人であり、友人でもある女性の存在だ。

     

    彼女は美しく、強く、そしてあまりにも賢すぎる。

    同性すら魅了する、人間離れした美しさは自然が作り出した奇跡の一つとして受け入れられる。

    その強さは、ヒートのこれまで見てきたどの人間よりも圧倒的だった。

    対強化外骨格用の弾を使っているとは言え、生身の人間が平気で強化外骨格――棺桶――と渡り合い、圧倒するのは非現実的な光景だった。

     

    しかし、その強さと賢さもさほどの問題ではない。

    世界は広い、それで十分だ。

    彼女の強さのおかげで、ヒートはこうして生きていられるのだ。

    それに、彼女の人間性も非常に気に入っている。

     

    正直、ヒートは彼女の事が大好きだった。

    時には姉として。

    時には母として。

    常に彼女はヒート達を導いてくれる。

     

    人間性や強さなどは旅をする中で理解できるが、どうしても分からないのが、彼女のこれまでの足跡だ。

    知らずとも問題はないが、彼女の育ちや生い立ちなど、ヒートは何一つ知らない。

    知っているのは、理不尽なまでの強さと世界の全てを知っているかのような頭脳の持ち主であり、ヒート達の仲間ということだけ。

    彼女がいなければオアシズは沈み、多くの乗客が嵐の中に消えて行ったかもしれない。

     

    その前のポートエレン、ニクラメン、フォレスタ、オセアンでもそうだ。

    追随を許さないその強さと知恵があったからこそ、旅の同行者であるヒートはこうしていられる。

    感謝してもしきれない関係にあるのは、間違いない。

    間違いないが、それでも、気になって仕方がない事もあるのだ。

     

    ――デレシア。

     

    彼女は何者なのか。

    本名は。

    出身地は。

    これまでに何を見て、何をしてきたのか。

     

    ヒートは何も知らない。

    世界最強の街、イルトリアの人間とも深い交流を持つ彼女。

    これまでに何を経験し、何を見て来たのか。

    彼女について知っていることなど、ほとんどない。

     

    まるで世界の秘密そのもの。

    彼女のスカイブルーの瞳に見据えられると、世界そのものに見透かされているような錯覚に陥る時がある。

    あらゆる隠し事はその意味を失い、真実が見抜かれ、気を抜けば膝を突いて屈しそうになってしまう。

    全ての生命は彼女に平伏し、首を垂れるのが摂理にさえ思える。

     

    だがそれは些細な――とは言い難いが――問題だ。

    彼女との旅は楽しいし、何より安心していられる。

    不思議なことに、彼女が秘密の固まりだと分かったところで、何一つ不安になることはなかった。

    短い付き合いだが、決して、希薄な付き合いではない。

     

    ヒートは人を見る目が少なからずあると思っており、その目で見れば、デレシアは悪人には見えなかった。

    それでも気になることは気になるが、今はまだ訊く時期ではない。

    過去は誰にでもある。

    ヒートも例外ではない。

     

    デレシアが過去について深く追及することをしないことは、ヒートにとっては幸いだった。

    人に進んで話せるような過去ではなく、血濡れた暗い過去がヒートにはあった。

    いつか機会があれば、その話をすることがあるのかもしれない。

    今はまだ、その時ではない。

     

    ノパー゚)「……らしくねぇな、おい」

     

    少し考えすぎているのだと思い、ヒートは瞼を降ろして眠りにつくことにした。

    ヒートがデレシアと旅を続ける大きな理由は、別にあった。

    デレシアが連れている、小さな旅人。

    その少年の行く末が見てみたいという気持ちが強く、彼がどう成長し、どう変わるのかを最前列で見守りたかった。

     

    その気持ちがあるからこそ、ヒートはデレシアと共に旅を続けることを楽しんでいた。

    だから、その旅人が海に落ちた時は自分の半身を失ったような喪失感があり、無事だと分かった時は本当に安堵した。

    今のヒートの生きる目的は、彼の成長を見続けることだけだと言っても過言ではない。

    小さな体に刻まれた無数の傷跡は、彼の悲惨な歴史だ。

     

    彼がこれまでに受けてきた処遇を考えると、今の彼はかなり変わったのだと思う。

    奴隷として売られた彼の生い立ちは分からないが、それがどれだけ悲惨な人生だったのかは想像できる。

    少年はただの人間ではなく、“耳付き”と呼ばれる獣の耳と尾を持つ人間なのだ。

    耳付きは総じて人間として扱われず、道具として扱われ、虐げられる。

     

    そうして一生を終える。

    それが一般的な耳付きの生涯だ。

    多くの人間が耳付きを忌み嫌うのも、一般的な話だ。

    だが、少年はデレシアの手を借りて自由を手にし、多くを学んでいる最中だ。

     

    きっと彼なら、海綿のように多くを学んで成長していく事だろう。

    かつて自分が出来なかった事を、ヒートは彼に教えていくつもりだ。

    彼にはもっとたくさんの事を学び、育っていってもらいたい。

    良くも悪くも人を惹きつける彼ならば、どんな人間にでもなれるだろう。

     

    その気持ちは、デレシア、そしてイルトリア人であるロウガ・ウォルフスキンの思惑と一致した。

    女三人で行った昨夜の酒盛りは素晴らしい時間だった。

    同じ気持ち、同じ意見の人間同士で飲む酒程美味い物はなく、共通の話題で語り合うのはとても貴い時間だ。

    月を肴に酒を飲み、少年のこれからについて語り合い、そうして時間が過ぎ、ヒートは悟った。

     

    いつかきっと、ブーンは――

     

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    Low Tech Boon】→ttp://lowtechboon.web.fc2.com/ammore/ammore.html

     

    Boon Bunmaru】→ttp://boonbunmaru.web.fc2.com/rensai/ammore/ammore.htm

     

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    少年は朝早くに起床し、作り立ての朝食をがつがつと食べていた。

    卵を三つ使った目玉焼きとたっぷりのベーコン、山盛りのコールスロー、そしてバターの添えられた厚切りのトーストを三枚。

    それに加えて、デザート代わりの香り高いバナナが添えられていた。

    出された食事の一つ一つをしっかりと味わい、堪能する姿は、少年の年頃にしては珍しい。

     

    目玉焼きは半熟で、ナイフで切れ目を入れたらすぐに黄身が溢れ出た。

    フォークとナイフで溢れ出た黄身とベーコン、そして白身を合わせてフォークに突き刺し、口に運ぶ。

    濃厚な甘みを持つ黄身と、香ばしいベーコンの塩味が体に沁み渡る。

    カリカリに焼かれた熟成ベーコンは、少年のお気に入りだった。

     

    まだ上手に使いこなせないが、最初の頃に比べればフォークとナイフを大分使えるようになってきた。

    たどたどしく握るフォークでコールスローを口に運び、咀嚼し、リンゴジュースを飲む。

    皿に残った黄身をトーストで綺麗に拭い取り、最後にバナナを食べた、

    芳醇な甘さのバナナに舌鼓を打ち、満足の内に朝食を終えた。

     

    パンの甘みも、卵の新鮮さも、リンゴジュースの鮮度も、全て味わいつくした少年の表情は幸せそのものだ。

     

    (∪*´ω`)「ふひゅー……」

     

    幸せそうに溜息を吐いた少年の名は、ブーン。

    かつて奴隷として生き、今はデレシア、ヒートと共に旅をする少年だった。

    少年には獣の耳と尾があったが、同席する二人の人間はそれを気にも留めていなかった。

    人間に耳があるのと同じように、少年にも形は違うがそれがある、といった認識だった。

     

    ブーンが朝食を美味しそうに食べる様子を見て、同席者は微笑ましくその光景を見ていた。

    同席者の一人、若い女性にも獣の耳と尾があった。

    だがそれはブーンの物とは違い、ブーンが犬のそれなら、女性の耳と尾は狼のそれだった。

    狼の耳を持つ女性、ロウガ・ウォルフスキンは音一つ立てずにナイフとフォークを操って食事をしている。

     

    彼女の深紅色の瞳は、保護者のようにブーンに向けられていた。

    仔犬を見守る様な、静かな視線だった。

     

    i、゚ー ゚イ`!

     

    イルトリアという街の人間である彼女は、ブーンと同じく、耳付きと呼ばれる人種だった。

    しかしながら、イルトリアは世界でも珍しく、耳付きを差別する人間がほとんどいない。

    それは耳付きが持つ身体能力の高さと優秀さを知っているからだ。

    現に彼女は人間離れした戦闘能力によって職を得て、耳付きでない人間よりも高い給料を得ている。

     

    人間離れした身体能力を持つ人種である彼女は、その力を活かして護衛の仕事を生業としていた。

    強力無比な力を持つ彼女は要人を守り、姦計を企てた者を殲滅した。

    そしていつしか、彼女を知る人々は“讐狼”と呼んで恐れるようになった。

    必ず復讐を果たす彼女の執念は、正に狼のそれだった。

     

    ロウガの視線に気づいたブーンは、自分が何かしたのかと焦るが、彼女は無言のまま人差し指で口の端を指して、そこが汚れていることを教えた。

    布のナプキンを使い、ブーンは慌てて口元を拭う。

     

    i、゚ー ゚イ`!「それでいい」

     

    (∪´ω`)「ありがとうございますお、ししょー」

     

    ロウガはブーンに師匠と呼ばせ、ブーンは彼女の事を師匠と呼んだ。

    二人の間には奇妙な師弟関係が出来上がっていたが、更に奇妙な関係がその場にはあった。

     

    ( ФωФ)「ブーン、バナナは好きか?」

     

    (∪´ω`)「すきですおー」

     

    ( ФωФ)「バナナは体にいいんだ、もっと食うといい。

           ほれ、吾輩の分をやろう」

     

    熟したバナナを受け取り、ブーンは満面の笑みを浮かべた。

     

    (∪*´ω`)「おー」

     

    ロウガの隣に座る、黒髪をオールバックにした男性。

    宝石のような黄金瞳を持ち、眉から頬まで走る深い傷跡と彼自身が放つ凄みは人間離れした何か別の生物を彷彿とさせる。

    80を越えてもなお、前イルトリア市長ロマネスク・O・スモークジャンパーは衰えを知らない獣だった。

    ロマネスクは“ビーストマスター”の渾名でいくつもの街を恐怖の底に落とし、恐怖の代名詞として世界の権力者たちが恐れをなした存在だ。

     

    そんな彼の背景を全く知らないブーンは、ロマネスクと友人の関係にあった。

    周囲から見たら孫と祖父ほど年齢が離れているが、それでも、二人は間違いなく対等な友人だった。

    バナナを頬張り、その甘さに目を細めて喜ぶブーンをロマネスクは目を細めて見ていた。

    さりげなく二人を交互に見てから、ロウガはブーンの頭を撫でて言った。

     

    i、゚ー ゚イ`!「よし、腹ごしらえが済んだら稽古の準備だ。

          少し休んでから着替えるといい。

          皿洗いは後だ」

     

    ブーンは頷き、寝室へと向かった。

    寝室の扉が閉まったのを確認してから、コーヒーを飲みつつ、ロマネスクはロウガに訊いた。

     

    ( ФωФ)「今日はずっと稽古か?」

     

    i、゚ー ゚イ`!「はい、主。

           徒手訓練をした後、ヒートを交えて射撃訓練をしようかと。

           彼女はかの“レオン”だとのことで、少し興味があります」

     

    レオン、という言葉を聞いた時にロマネスクは興味深そうに眉を上げた。

    凄腕の殺し屋レオンの名はイルトリアにまで響き渡っている。

    ある日突然現れ、いくつものマフィアを壊滅させた末に突然消えた謎の殺し屋の正体が、よもやあの若い女性だとは誰も思うまい。

    武人の都の人間としては、非常に興味のある人間だった。

     

    果たして、その実力はどれほどのものなのだろうか。

     

    ( ФωФ)「ほほぅ、案外世界は狭い物なのだな。

           だがあのデレシアが共に旅をするのだから、よほどいい人間なのだろうよ。

           吾輩は別の事をさせてもらおう。

           デレシアに頼まれてな、ちとやらんとならんことがある」

     

    i、゚ー ゚イ`!「かしこまりました、主。

          私に何か出来る事はございますか?」

     

    ( ФωФ)「そうさな、昼飯はブーンの好きな物を食わせてやってくれ。

           だが稽古は手を抜くなよ。

           仔犬にも牙はあるのだ」

     

    ロマネスクはそう言って、コーヒーを飲み干した。

    深く頷き、ロウガは賛同の意味で笑みを浮かべた。

     

    i、゚ー ゚イ`!「ブーンには才能が有ります。

           彼は正に海綿、教えた分だけ吸収する。

           こちらも教え甲斐というものがあります。

           昨日は本番で教えを発揮する胆力も見せましたが、あれが出来る者はイルトリアでも稀でしょう。

     

           私の見立てだと、潜在能力で言えば“右の大斧”に匹敵するかと。

           如何せん、彼は優しすぎます。

           この世界で生きるには、あまりにも」

     

    ( ФωФ)「デレシアがあいつを気に入るのも分かる

           ……可哀想に、あいつは良くも悪くも人を惹く。

           これまでの経緯を想像するのは易い話だ」

     

    空になったコーヒーカップに、ロウガがコーヒーを注ぐ。

    角砂糖を二つ入れ、スプーンで混ぜた物をロマネスクが一口飲む。

     

    ( ФωФ)「ティンカーベルといえば“デイジー紛争”の地、おまけに時期も近いな。

           ブーンは知っているのか?

           奴の恩師がそこで戦ったことを」

     

    i、゚ー ゚イ`!「おそらくは知らないかと。

           話した方がよろしいですか?」

     

    ( ФωФ)「いや、その必要はまだない。

           “先生”の話は、奴が知りたいと思った時に話せばいい」

     

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         ヽ::::::、 \ヽじ リ    |:::/  '|´:::::::::::::::::::::::::: 脚本・監督・総指揮・原案【ID:KrI9Lnn70

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    ソファに腰かけ、デレシアとマニーは対面して話をしていた。

    話と言うよりも、マニーの相談にデレシアが乗っているという図だった。

    マニーは胸の内を全て吐き出し、この先どうするべきか、意見を求めた。

    デレシアは短くそれに応じた。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「堂々としていなさい、マニー。

          貴方は市長。

          胸を張って命令し、胸を張って助けを求めればいいわ」

     

    ¥・∀・¥「ですが、私に出来るでしょうか……

          リーダーらしい姿を見せることが……」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「リーダーだからこうするべき、じゃなくてリッチー・マニーならどうするのか。

          皆が期待しているのはそれよ」

     

    これまでの人生で、マニーは何度も挫折を味わってきた。

    金にものを言わせれば解決できるようなことも、進んで手を出して解決してきた。

    それは人望を獲得するための努力だった。

    幼少期より、マニーは金持ちであることを理由に差別に近い扱いを受けてきた。

     

    金持ちが成功しても、それは金の力だと思われてきたのだ。

    代々オアシズを動かしてきたリッチー家の人間は、同じ扱いを受け続けてきた事だろう。

    その中でマニーが学んだのは、行動に勝る証明はないという事だった。

    金以外の力で努力していることを示し続ければ、やがて、それは人望になる。

     

    それに気付かせてくれたのは、彼がまだ幼い頃にオアシズで出会った一人の旅人だった。

    父、そして祖父の共通の友人であるその旅人は今、マニーに最後の一歩を踏み出す勇気を与えてくれた。

    そうだ。

    周囲がどうであれ、マニーはマニーなのだ。

     

    彼にしか出来ない方法がある。

    昔からそうだったように、彼のやり方で人々に見せてやればいい。

    金に頼らない金持ちの在り方を見せたように、困難に直面したオアシズ市長がどう立ち振る舞うかを。

    自信を持って挑み、自信を持って失敗すればいい。

     

    マニーならばそうする。

    このリッチー・マニーならば、そうする。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「さ、見せつけてあげましょう。

          オアシズ市長、リッチー・マニーの実力を」

     

    ¥・∀・¥「……えぇ!!

          やってやりますよ!!」

     

    目を輝かせて、マニーは立ち上がる。

    歳をとるにつれて、大人と言う生き物は褒められる機会や慰められる機会が減ってくる。

    どうしようもない困難に直面した時、逃げるか、それとも立ち向かうか。

    自力での解決を試みて失敗し、鬱状態に陥る人間は後を絶たない。

     

    だが、誰かが力を貸してくれるだけで、人は強くなれる。

    たった一言。

    デレシアがマニーに向けた一言がそうであるように。

    その一言が、人を救うのだ。

     

    電話を手にし、マニーは受話器の向こうにいる秘書に向けて、短い命令を下した。

     

    ¥・∀・¥「全責任者に通達しろ、我々の楽園(オアシズ)を取り戻すと!!」

     

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            {::.::.//  {::l::.!: ./V   {{fトイV㍉、, }::.::}::.://}.::}::.::}::.「´

           メァイ/    Vヘト、{    、__f竺シ_,  '__:./.:厶广/.::.::/.::/.::/

          /{ {/.:{ __   ヽ. .      ̄ ̄`   ノイL} V.::.::.::./

    .    /   Vハ/  }  / \ ヽ            マAmmoRe!!のようです

    .  _/     ,イ弋/、 {  Ammo for Reknit!!編 序章【concentration-集結-

    ´ /      弋. く ヽ. !   { {、  /ーー`__ / ,/

     {          ヽ ヽ. 丶、 ヽ. {     l:::/ ./

            ト、 __ _ヽ ヽ.  丶、 ヽ. \   }/ /゙{

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    まずは情報の整理から取り掛かることになった。

    五人のブロック長はそれぞれのブロックで出た被害状況を仔細漏らさず集約し、まとめあげた。

    簡単なように思われる作業だが、実際には非常に繊細で神経をすり減らす作業だった。

    被害状況の把握をするだけでも大掛かりな作業となり、一時間も経たずに会議室の隅に書類の山が出来上がった。

     

    こうして集められた情報を精査し、重要な物を優先して処理出来るよう、ランク分けをした。

    ランク分けを任されたのは第二ブロック長、オットー・リロースミス。

    膨大な情報を前に、ロミスは挽きたてのコーヒーを飲みながら優雅に仕事をこなしていた。

    余裕の表れではなく、彼なりの精神集中方法だった。

     

    £°ゞ°)「……うん、いいコーヒーだ」

     

    コーヒーを片手で飲みつつ、付箋を貼りつける手は止まらない。

    色分けされた付箋はその書類のランクを意味している。

    ミスの許されない作業をこなすロミスの顔は、だがしかし、色の異なる紙を仕分けているかのように涼しげだった。

     

    マト#>Д<)メ「ロミスさんが挽いたんですか?」

     

    £°ゞ°)「あぁ、それぐらい当然じゃないか」

     

    彼は山と化した書類を驚くべき速度で選別し、瞬く間に山の背が縮んでいく。

    そして分けられた書類の中から、最も重要なランクの物に目を通すのは第五ブロック長マトリクス・マトリョーシカ。

    彼女は最重要書類を読み、次に必要な対処方法を大きめの付箋に書いて書類に貼り付けた。

    分厚いマニュアルに基づいて下されるその対処方法は、彼女の頭の中にしっかりと記憶されており、彼女はマニュアルを読まずにそれを書き記すことが出来た。

     

    ノリパ .゚)「では、飲食店については説明した通りの対応をしてください」

     

    こうして処理方法が判明した書類と電話を手にするのは、第三ブロック長ノリハ・サークルコンマだ。

    各ブロックにいる責任者達に連絡し、即座に対応させる。

    その指示を受けた人間は部下を引き連れ、処理に走った。

    ロミス、マトリクス、ノリハが最初に処理するべきだと判断した仕事は、掃除だった。

     

    臨時で追加の船内清掃係を雇い、徹底した衛生管理と景観の復旧を急がせた。

    昨夜はお祭りのような騒ぎで盛り上がりを見せていたが、その盛り上がりを殺さない内に急いで掃除をしなければならない。

    視覚情報は非常に重要で、特に、争いの痕跡の一切を消し去ることを徹底させた。

    弾痕、僅かに焦げた椅子や床も元通りに掃除をさせ、最優先にして最速の仕事を要求した。

     

    現場では清掃係は軽んじられるが、マニーが直々に清掃係の全員に向けて激励の言葉を送った。

     

    ¥・∀・¥『乗客全員――勿論、君達も含めて――があの悪夢を少しでも忘れ、最高の時間を取り戻すためにはどうしても君たちの協力が必要だ。

          このリッチー・マニー、諸君らの実力を見込んでお願いする。

          賊に汚されたオアシズを、君たちの手で美しい姿に戻してほしい。

          ……この通りだ』

     

    多くの清掃員はそれまで、あまり自分の仕事に誇りを持っていなかった。

    だが、マニーの言葉で彼らはその考えを改めた。

    彼らが担っているのは乗客の日常。

    清掃員は気を引き締め、マニーの言葉に鼓舞されて清掃を行った。

     

    後に乗客が撮影した写真が話題を呼ぶのだが、彼らは船尾から一ブロックずつ徹底して清掃と修理点検を行い、所要時間は合計で五時間足らずだった。

    一切のミスもなく、無駄もなく、彼らはマニーの言葉に感化されて仕事を完遂したのだ。

    ノリハはそれとほぼ同列で、船内の警備態勢を強化させた。

    そして、警備員たちにマニーが送った言葉は、後にこのオアシズの警備員の標語となった。

     

    ¥・∀・¥『君たちはこの船の安全そのものだ。

          君たちは笑顔を絶やさず、注意を怠らず、そして愛想を忘れることなく職務にあたってほしい。

          そうすれば、武力ではなく君たちの魅力で乗客が安心するんだ。

          頼む、どうか乗客達を安心させてやってほしい。

     

          彼らに日常を取り戻させるのは、君たちにしか出来ないんだ』

     

    その言葉を聞いた警備員たちは、二人一組で行動し、乗客を見つけては笑顔で挨拶をした。

    挨拶は日常の行為であると同時に、敵意がない事を示す有効の証だ。

    船のあちらこちらで挨拶が交わされ、乗客たちは事件がなかった時のように船旅を楽しみ始めた。

    それを見て、警備員たちは自分達の行いが間違っていなかったことに深く感動し、更に徹底して挨拶を行った。

     

    ('l')「擦過傷はっと……」

     

    二人のブロック長の後ろで、第一ブロック長ライトン・ブリックマンは被害者の正確な状況の把握を行っていた。

    負傷者、死傷者、行方不明者。

    それらをリスト化し、治療の状況、保証金額を明確にしていく。

    これは金で解決できるものと、そうでない二種類に分けられる。

     

    医者の手配が必要な人間はティンカーベルに到着したら搬送し、そうでない人間は船内で治療を受けてもらう。

    発生する費用の大まかな金額をはじき出し、それを経理担当者に伝えなければならない。

    正式な第一ブロック長として急遽任命されたライトンは、それでも自分に出来る精いっぱいの事をしていた。

    彼の計算は素早く、そして精確だった。

     

    ('l')「……むむ」

     

    電卓とリストとを見比べる彼の正面には、そこで出された負傷者と乗客のリストを照らし合わせるクサギコ・フォースカインドがいた。

    負傷した人間がどこの誰なのか、今回の事件の場合はそれがかなり複雑化していた。

    途中で現れた特殊部隊ゲイツの人間なのか、それとも一般人なのか。

    書類の山にジュスティア軍人の名前が埋もれないよう、クサギコは信じがたい正確さで書類を見比べる。

     

    ジュスティア警察の人間も数名混ざっており、それを見失わないよう、そして速度を落とさないように仕事をこなす。

     

    W,,゚Д゚W「えーっと、こいつは……」

     

    ('l')「クサギコさん、ちょっとこれについて訊いてもいいですか?」

     

    W,,゚Д゚W「おう、どれだ」

     

    クサギコは複数同時の仕事を処理することに関しては、この五人の中でも最高の能力を持っていた。

    不慣れなライトンのサポートを引き受けたのも、彼が自分自身の能力に対して自信を持っているからだった。

    その自信は的確な物差しで測られ、評価されていた。

    彼はライトンへの指示を考えつつ、自分の仕事の処理も考えていた。

     

    W,,゚Д゚W「それはな、こっちの保険を適応するんだ」

     

    元々彼らブロック長は選び抜かれた精鋭であり、優れた能力を見込まれて今の地位にいる。

    名前だけではなく、彼らは実力のある責任者だった。

    新任のライトンもまた、“メモいらず”と称されるほどに記憶力と応用力があった。

    そして全員が、マニーから受け取った言葉に少なからず影響を受けていた。

     

    ¥・∀・¥『私の、ではない。

          我々のオアシズを取り戻すんだ』

     

    そして彼らの知らないところで、マニーは船内にある全ての店の責任者に対して言葉を送っていた。

    全てのレストラン。

    全ての物品店。

    一つの例外もなく、一店の抜かりもなく、マニーの言葉は彼らの耳に届けられた。

     

    ¥・∀・¥『美味い食事、素晴らしい商品、最高の定員。

          これらは君たちにしか演出することが出来ない最高のエンタテインメントだ。

          日常を、非日常を、その全てを君たちが演出するんだ。

          オアシズという街を支えるのは、そんな君たちが客に与える幸福感なのだ。

     

          さぁ、見せてやろうじゃないか。

          ここは海上の楽園、ここは船内の理想郷。

          我々のオアシズはテロリストや海賊如きでは揺るがないという強さを!!』

     

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         総合プロデューサー・アソシエイトプロデューサー・制作担当【ID:KrI9Lnn70

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    生き残った人間がいた。

    最悪の状況下に於いて、最高の運に恵まれた人間がいた。

    それはマティアス・ノルダールとリリー・リトホルムの二人だった。

    彼らはオアシズに於ける一連の事件のバックアップとして配置され、当初の予定で在れば何もすることなく、その役割を終えるただの観光客のはずだった。

     

    だが、転機は訪れてしまった。

    計画が破綻し、彼らの所属する秘密結社の重要人物が警察に捕まってしまったのだ。

    何としても彼女、ワタナベ・ビルケンシュトックを解放し、この船から逃げなければならない。

    ティンカーベルに到着する前に、この船を去らなければ同志との合流は叶わない。

     

    同志と合流が出来れば、結社内の彼らの地位は間違いなく上がる事だろう。

    生きて帰る。

    生きて連れ帰る。

    それが、彼らの任務。

     

    焦ってはならない。

    時期を待ち、確実に彼女を解放できる瞬間を待たなければならない。

    彼らは黄金の大樹。

    待ち続けている悲願の日々を考えれば、数時間待つことは苦ではない。

     

    最も苦痛なのは、彼らの夢を阻害する人間の存在だ。

    刑事を殺してでもワタナベを奪還し、同じ夢を追う彼女を救い出し、共に夢を追うのだ。

    世界を変える夢を見る彼らが所属するのは黄金の大樹を掲げ、世界中にその根を張り巡らせる“ティンバーランド”。

    同じ大樹の一人として、誰か一人を目の前で見捨てるなど、決してできない。

     

    世界が黄金の大樹となるためならば、この船が沈むことになろうとも、良心は痛まない。

     

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               編集・録音・テキストエフェクトデザイン【ID:KrI9Lnn70

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    黄金の髪と青空色の瞳を持つ旅人、デレシアはオアシズの屋上に一人立っていた。

    屋上は人払いがされ、彼女以外の人影はなく、聞き耳を立てる者もいない。

    正面から吹いてくる風が、軽くウェーブした彼女の髪をまるで梳くように撫で、ローブの裾をたなびかせる。

    潮の香りで肺を満たし、手摺に肘を乗せ、デレシアは青空の下に広がる大海原を眺めている。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「……」

     

    彼女の視線は大海原の果て、船の進行方向の遥か彼方。

    水平線の向こうに浮かぶ入道雲の下に向けられていた。

    普通の人間であればその入道雲を目視することは出来ない程の距離だが、デレシアの瞳は確かにその雲を捉えていた。

    彼女の表情はいつもと変わらず、ブーン達に向けられる笑顔のままだったが、瞳の奥にある深淵は何を考えているのかを誰にも悟らせない。

     

    デレシアは瞼を降ろし、静かに呼吸を整えた。

    遠い昔に思いを馳せるようにしたのは、ほんの一瞬の間だけ。

    次の瞬間には瞼を開き、何事もなかったかのように再び水平線の向こうを見つめた。

    風の音とローブの布擦れするような音だけが、屋上に響いている。

     

    他に聞こえるのは波の音と、上空を飛ぶ海鳥の鳴き声だけ。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「悪いわね、せっかくの旅行中に」

     

    ( ФωФ)「なぁに、他ならぬお主の誘いだ。

           それで、何があった?」

     

    いつの間にか屋上に現れたロマネスク・O・スモークジャンパーを振り返り、デレシアは驚いた様子も見せずに声をかけた。

    対するロマネスクも、跫音一つ、扉を開く音さえ立てなかった自分に気付いたデレシアに対して驚くことはなかった。

    海を背にし、デレシアは旧友の様な親密さで元イルトリア市長に話しかける。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「ここ最近、あの大馬鹿達の動きが目立ってきているわ。

          大樹と言うよりも雑草ね、あれは」

     

    ( ФωФ)「ティンバーランドか。

           聞いてはいたが、このような形で実際に相手にするとはな」

     

    忌々しげな声で、ロマネスクはその名を口にした。

    心なしか、次に出てきたデレシアの声にも不愉快そうな色が見え隠れしていた。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「ただ、船の中にいる奴らはもう少し泳がせようと思うの。

           今回はかなり大規模な事を考えているらしいから、何を考えているのかとても楽しみでね。

           その方が潰し甲斐があるものね」

     

    ぞっとするような優しげな声のデレシアの言葉に、ロマネスクは冷笑した。

    それは相手に対する同情と言うよりも、怒らせてはならない人間を怒らせた輩が当然迎えるべき結末を知る者の笑いだった。

    これまでに彼女を怒らせた人間がどうなったのか、ロマネスクは良く知っている。

     

    ( ФωФ)「ほほぅ。

           次の停泊先があの島なのは偶然か必然か、いずれにしても興味深い事だ」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「おそらくは偶然だけど、おもしろい話よね。

           ティンカーベルで私達にちょっかいをかけてくるのは間違いないでしょうね」

     

    オアシズが次に停泊するのは、“鐘の音街”ティンカーベル。

    それはデレシア達の目的地であり、ロマネスク達イルトリア人にとっては深い意味を持つ土地だった。

    一世紀以上前、その地でイルトリアとジュスティアの戦争があった。

    その戦争は“デイジー紛争”と呼ばれ、両軍に大きな被害を出し、島に爪痕を残した。

     

    デイジー紛争の影にティンバーランドという秘密結社の存在があると分かったのは、戦争終結後しばらく後の事だった。

    その秘密結社の存在を知っている者からすれば、ティンカーベルはティンバーランドとは切っても切れない関係のある場所だ。

    ティンバーランドがデイジー紛争に関わりさえしなければ、イルトリアだけでなく、ジュスティアの兵士も死なずに済んだのだ。

    だがそのことを知る者は少ない。

     

    戦争終結の際、ジュスティアとイルトリアとの取り決めにより、いくつかの歴史が“作られた”。

    戦争の発端。

    戦争の内容とその結末が考えられ、耳障りのいい物へと変わった。

    こうして歴史にデイジー紛争が記録され、今日まで語り継がれている。

     

    勿論、その事実を知るのは歴代の市長と一部関係者だけである。

     

    ( ФωФ)「手を貸すか?」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「えぇ、是非お願いしたいわ。

           私達は島に行くから、その間この船にいてほしいの」

     

    ロマネスクの提案をデレシアは受け、そう声をかけてくれることを予期して用意していた言葉を送った。

    その言葉を聞いたロマネスクは僅かに考え、口を開く。

     

    ( ФωФ)「マニー坊やのお守りか」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「えぇ、今この時があの子にとってはとても大切な時間なの。

           誰にも邪魔させたくないのよ。

           この船を任せてもいいかしら?」

     

    彼女の考えを理解したロマネスクはそれを快諾した。

     

    ( ФωФ)「いいだろう。

           ところで、ブーンについて訊きたいことがある」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「何かしら?」

     

    突風が吹き付け、その言葉を二人だけの秘密にしてしまう。

     

    ( ФωФ)「―――」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「―――、―――――」

     

    (´ФωФ)「――」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「――――――」

     

    風が止み、最後にロマネスクは嬉しそうに言った。

     

    ( ФωФ)「イルトリアに来る時には、必ず連絡をするのだぞ。

           最高のリンゴを用意しておく」

     

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         | 撮影監督・美術監督・美術設定・ビジュアルコーディネート【ID:KrI9Lnn70

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    船に入ってくる無線処理の担当者デジアイ・トーロがそれを捉えたのは、偶然ではなかった。

    音楽大学を首席で卒業し、微細な音の変化に関する論文と収音機の発明により、彼はいくつもの特許を持っている。

    音の天才である彼が高価な無線傍受装置をこよなく愛し、高価な機器を堂々と常時稼働させることに対して許可を得ていたのは、偶然ではないのだ。

    それまで隠れていた彼の優秀さを聞きつけたマニーが無線に関する全ての権限を与え、飛び交う全ての無線を記録するよう命じていたのだ。

     

    彼はヘッドフォンを耳に押し当て、送られてくる微弱な信号を聞き取った。

    不規則な感覚で聞こえてくるその音は、間違いなく暗号だった。

    ノイズの少なさから、このオアシズに向けて直接送られている物に間違いない。

    しかし、通常の無線ではなく、特殊な無線信号を使っていた。

     

    発信元を特定するため、周波数とノイズの特徴を手元のノートに書かれたリスト――彼の自作――と照会する。

    彼の指はジュスティア海軍のところで止まり、数字を二度見直し、それが海軍の発信する電子音である事が確認された。

    何かオアシズに秘密で伝えたい事があるのだろうかと思い、送られてくる暗号を紙に書き留める。

    聴力に特別な才能を持つデジアイは一言一句違わずに書き留め、それを暗号表と見比べた。

     

    だが。

     

    (HнH)「……あれ?」

     

    どの暗号表とも一致しなかった。

    緊急用の暗号とも異なるそれは、彼の推測だが、ジュスティア海軍が独自に使用する暗号文の可能性が高かった。

    という事は、この船にいる全軍人に向けて発信された暗号文であると考えられる。

    ジュスティアが何の相談もなしにこのような事をしてくるという事は、かなり重大な事態に違いない。

     

    1から26の数字で構成された文章。

    もしくは、特定の法則性を持つモールス信号の類。

    重要な暗号だと察した彼は、メモに取った暗号を専用の封筒に入れ、厳重に封をした。

     

    (HнH)「これを市長のところに持って行ってくれ」

     

    何もなければいいのだが、と思うデジアイだったが、彼の願いは叶う事はなかった。

    彼が受け取った暗号はその数十分後、別の人間の手によって解読され、上司達の間で共有された。

    そして、結果的にトラギコ・マウンテンライトの元から一人の犯罪者を逃がすことに繋がってしまったのだが、それは彼のせいではなかった。

     

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         総作画監督・脳内キャラクターデザイン・グラフィックデザイン【ID:KrI9Lnn70

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                        〕ヽ``丶、/ '⌒ヽ _ ノ| '" ノi:|

                      }ノ \ : :. { ~ :. :. :.ノ : :{ /  j

                      ∨ノ y   :{\``~、、  \ノ  :

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                {\     7<ヽ :八 vソ ヽ \ vシ  |:. |:. >    /

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    ロープを張ったリングの上に、二人の女性が相対する形で立っていた。

    その両手には本革製の分厚いグローブがはめられ、ヘッドギアを装着して万全の状態だった。

    動きやすいよう、二人はタンクトップとスパッツ姿で、拳を守るために綿が詰められたグローブの具合を確かめている。

    癖の強い黒髪を持ち、深紅の切れ長の瞳を持つロウガ・ウォルフスキンは正面に立つヒート・オロラ・レッドウィングに挑戦的な笑みを向けた。

     

    i、゚ー ゚イ`!「……」

     

    ノパ⊿゚)「……」

     

    それを受け、ヒートは瑠璃の様な碧眼で彼女を睨んだ。

    互いに恨みはないが、ヒートのリハビリも兼ね、ブーンに近接戦闘時の動きを見せるいい機会を作れるとあり、ロウガの提案に乗ることにしたのだ。

    彼女の提案は非常にシンプルだった。

    模擬戦闘を行い、その戦闘方法をブーンに視覚的に教えるという物だった。

     

    要するに、戦闘を行い、ブーンはそこから何かを学び取るというわけだ。

    尤もらしく聞こえるし、実際、言葉ではなく動きを模倣することで得られるものもある。

    だが彼女の本音が別にもう一つある事にヒートは気付いていた。

    確かにブーンの学習という目的もあるのだろうが、大きな目的はヒートと手合わせをすることに違いない。

     

    彼らイルトリア人は戦いに生き甲斐を見出し、戦いの中で喜びを感じ取る人間が多い。

    ロウガも多分に漏れず、その類の人間なのだろう。

    戦闘に対する貪欲な姿勢は、彼らイルトリア人の強さの根底にある物だ。

    彼らは武人として教育され、武人になるのだ。

     

    イルトリア人と戦うのは初めてではない。

    元イルトリア軍の男がマフィアの用心棒として働いており、その男を殺す時に随分と苦戦させられた記憶がある。

    彼らはその肉体も強靭だが、武器全般に精通し、強化外骨格の扱いも一流だ。

    しかし、相手は前市長のボディーガード。

     

    前とは違い、楽に勝ちを取れる人間ではないだろう。

    相手は人間以上の身体能力を持つ耳付きであり、その戦闘力は未知数だ。

    リハビリがてら、ヒートは自分の力がどこまで通用するのか試す機会を得たことに感謝した。

    ヒートは怪我を理由に休んでいられる性格をしていない。

     

    これからの旅先では、間違いなく戦いが待っている。

    強化外骨格ばかりに頼った戦いをしていれば、遅かれ早かれ倒れ伏すことになる。

    まずは体の調子を取り戻し、技術を身につけ、次に備えるのだ。

    グローブの下で拳を握り固め、ヒートは覚悟を決めた。

     

    これはスポーツではない。

    これは殺し合いではない。

    これは互いに互いを試すための場。

    ブーンに手本を見せる場、試合なのだ。

     

    ノパ⊿゚)「いつでもいいぞ」

     

    i、゚ー ゚イ`!「こちらも、同じく」

     

    リングの下では、ブーンが丸椅子に座って二人の戦いを見守っている。

    彼は気付くだろうか。

    一歩も動いていない段階ですでに戦いが始まり、相手の動きを予測し終えた段階で行動に移るという事に。

     

    ノパ⊿゚)「……」

     

    i、゚ー ゚イ`!「……」

     

    流石はイルトリア人。

    一部の隙も無く、仮に隙が見えたとしたら、それは巧妙な罠なのがよく分かる。

    恐らく、ロウガは隙を見せないだろう。

    こちらが気を抜き、知らぬ間に隙を生みだすのを待っているのかもしれない。

     

    時間による体力の消耗を待つよりも先に、ヒートは動くことにした。

    静よりも動。

    動の中に活路がある。

    相手の胸の動きで呼吸を読み取り、息を吸い込み始めた瞬間にヒートは先手を打った。

     

    必殺の右ストレート。

    狙いは胸部の強打による呼吸停止――

     

    ノパ⊿゚)「しっ!」

     

    i、゚ー ゚イ`!「……」

     

    ――その裏に巧妙に隠した、胴を狙った左の一撃。

    レバーブローによって相手の動きが僅かにでも鈍ればと考えた一発は、だがしかし、ヒートの目論見通りにはならなかった。

     

    i、゚ー ゚イ`!「ほう、いいフェイントだ」

     

    右肘でレバーブローを防ぎ、左のグローブで胸への一撃を防いだロウガの口からは感嘆した様な声が漏れ出た。

    バックステップで下がろうとしたヒートは、自分の右手が掴まれていることに気が付いたが、もう遅かった。

    急いでプランを練り直し、相手の動きを予期して左腕で腹部を防御する。

    その予想は当たった。

     

    ノハ;゚⊿゚)「っあが!!」

     

    だが、想像していた威力と実際に訪れた痛みは次元が違った。

    ロウガの繰り出した蹴りは、十分な加速すらさせずともヒートの左腕を痺れさせる威力があった。

    それは手加減を加えられた一撃だった。

    これが実戦だったら、ヒートの腕は折られていたはずだ。

     

    i、゚ー ゚イ`!「いい勘をしている。

          流石は“レオン”。

          正直触れられてやるつもりはなかったが、まさか、私にガードをさせるとは。

          噂に違わないセンスだ」

     

    その言葉はヒートの耳に届いていなかった。

    一瞬で沸点に達したヒートはロウガの動きを分析し、次の手を考えていた。

    彼女は拳ではなく、足技が得意に違いない。

    蹴りは拳よりも距離があり、威力があるが、速度がない。

     

    ノパー゚)「褒めてもらって光栄だ……!!」

     

    i、゚ー ゚イ`!「謙遜する必要はない。

          さぁ、次の一手はどうする?」

     

    ノパ⊿゚)「慌てるなよ、いい女は待つもんなんだよ」

     

    i、゚ー ゚イ`!「ほぅ、ではどう――」

     

    より近距離で戦いを挑めば、蹴り技は使えなくなる。

    退くのではなく、進むのだ。

    掴まれた拳を引き寄せ、ヒートは頭突きを放ち――

     

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            。   .   。  . 撮影・演出・音響・衣装・演技指導・編集【ID:KrI9Lnn70

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    八月八日。

    その日の夜は、雲が晴れて綺麗な月と星が見える、幻想的で静かな夜だった。

    だが、オアシズにある市長室に集まった二人の女性の表情は晴れやかとは言い難かった。

    デレシアとヒートは極秘裏に呼ばれ、マニーの話を聞いて呆れと驚きの溜息をほぼ同時に吐いた。

     

    二人が溜息を吐いた理由は二つある。

    一つは、トラギコ・マウンテンライトが捕えていたティンバーランドの一人が非常用脱出艇を使って逃げた――これは想定済み――という事。

    そして二つ目は、オアシズの厄日を引き起こし、船から逃げ遂せたショボン・パドローネ達がまた事件を起こしたという事だった。

    オアシズから逃げ去ってからあまり時間も開いていないのに、彼はすぐに新たな問題を起こした。

     

    舞台はティンカーベルのジェイル島。

    オアシズに負の歴史を残したように、彼はティンカーベルに負の歴史を残した。

     

    ;・∀・¥「情報の出所と精度は確かです。

          ジェイル島から脱獄者が二名出ました。

          ユリシーズ、ガーディナのカスタム機も破壊されたそうです」

     

    ショボン達は難攻不落、脱獄不可能の代名詞であるセカンドロック刑務所を強襲し、そこに収監されていた二人の死刑囚を脱獄させたのだ。

    彼も強化外骨格を使う人間――棺桶持ち――だったことは意外でも何でもなかったが、ジュスティア軍人の駆る強化外骨格に勝るとは驚きだった。

    デレシアの知る限り、ジェイル島に派遣される棺桶持ちは実戦経験豊富な者が選ばれるため、素人相手に後れを取るはずはない。

    まして、慢心から来る油断をすることは絶対に有り得ない。

     

    彼らはジュスティア軍人。

    戦いに無意味な正義感を持ち込むことはあるが、任務に支障をきたすような人間ではない。

    襲撃者の中にショボンがいたことは疑いようのない事だが、彼が戦いに参加したかどうかが気になった。

     

    ζ(゚、゚*ζ「襲撃者の数は分かる?」

     

    ¥・∀・¥「正確な数は不明ですが、棺桶が二機使用されたそうです。

          申し訳ありません、この情報を流した人間も全てを知っている訳ではないそうで……」

     

    マニーは有事に備え、世界中に幾つものつながりを持っている。

    例えば船が難破したり沈没したりした際、すぐに助けを求められるようにリッチー家が脈々と築き上げてきた繋がりの中には、金銭による繋がりも多くあった。

    その内の一つにジュスティア人の繋がりがあり、偶然にもその人間はジェイル島に派遣されていたのだ。

    ジュスティア人の中にも稀に金で動く人間がいるが、探すのは非常に難しい。

     

    マニーは逐一オアシズに関係のありそうな情報を収集し、それを踏まえて航海をしてきた。

    どれだけ些細な情報でも必ず金を払って収集し、協力者が常に新鮮な情報をマニーにもたらすように習慣づけていた。

    その習慣が実を結び、今回の情報をもたらした。

     

    ¥・∀・¥「ただ、脱獄者の名前は分かっています。

          シュール・ディンケラッカーとデミタス・エドワードグリーンです」

     

    反応したのはヒートだった。

    裏の世界に深くかかわっていた経歴を持つ彼女は、その二人の名に聞き覚えがあった。

     

    ノパ⊿゚)「愉快な面子とは言えねぇな。

         シュールって言えば“バンダースナッチ”だろ?

         子供を誘拐して売り捌いて、臓器売買もやってたらしいじゃねぇか。

         おまけにデミタスは“ザ・サード”。

     

         その二人だけ脱獄させた理由が気になるな。

         殺しをやらせるんなら別の連中を選んでもよさそうだけどな」

     

    ζ(゚、゚*ζ「……何かを奪うつもりね、私達から」

     

    デレシアの言葉にヒートが訊き返した。

     

    ノパ⊿゚)「奪う?」

     

    ζ(゚、゚*ζ「シュールは子供を誘拐することが得意で、デミタスは物を盗むことが得意。

          どっちも奪い取ることを得意としているわ。

          島の中で仕掛けてくるのか、それとも船の中なのかは分からないけどね」

     

    ;・∀・¥「またこの船が……」

     

    オアシズで大量殺人をされたマニーとしては、もう二度と彼らを船に乗せたくないはずだ。

    一度だけでなく二度も同一人物に船の安全を脅かされたとなれば、オアシズは街として死んでしまう。

    せめて準備するだけの時間があればいいのだが、終息から二日しか経っていない海上で新たな従業員や資材を仕入れることは不可能だ。

    あまりにも急すぎる展開に頭を抱えるマニーだが、デレシアが力強く言い放った一言が、彼の表情から不安を消し去った。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「大丈夫、そうはさせないわ。

          私達が島に行けば、あいつらはこの船にこないはずよ」

     

    ショボン達の狙いがデレシア達であれば、彼女達が島に上陸した方が互いにとって何かと都合がいい。

    デレシア達は降りかかる火の粉を払いのけられるし、オアシズは無意味に被害を拡大せずに済む。

     

    ¥・∀・¥「助かります、デレシアさん……」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「その代り、ちょっと協力してもらう事があるわ」

     

    ¥・∀・¥「私に出来る事であれば」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「狙撃用のライフルとバイク、それと幾つか道具を用意してほしいんだけど、いいかしら?」

     

    ¥・∀・¥「どちらもご用意できますが、品物についてはご希望の種類があるかどうか……」

     

    オアシズには武器保管室があり、ライフルや弾薬を用意することが出来る。

    中には銃を扱っている店もあるため、物に困ることはないだろう。

    問題なのはバイクだ。

    輸送コンテナに入っているバイクの種類は人気の車種が主で、デレシアの希望に添える物があるかは分からない。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「ライフルは何でもいいわ。

          ただ、バイクはアイディールを借りたいの。

          “サンダーボルト”が使っていたやつよ」

     

    そのバイクの名前を聞いて、マニーはデレシアの意図が理解できたかのように頷いた。

     

    ¥・∀・¥「それであれば、万全の状態でお貸しできます。

          メンテナンスは一日たりとも怠っておりません」

     

    ノパ⊿゚)「アイディール?

        バイクは結構知ってるつもりだけど、そんなバイク聞いたことねぇな」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「すごく珍しいバイクなの。

          ジャネーゼっていう場所にあった四つの会社が共同で開発したバイクで、私の知る限り、最高のバイクよ」

     

    ヒートが知らないのも無理のない話だ。

    現存するだけで僅かに30台。

    発掘された設計図やパーツを基に復元され、製造されたそれはその名の通り、バイク製造にかかわる人間とバイクを愛する人間にとっての理想形だった。

    高性能な電子制御システムによってあらゆる環境下で最適な走りを可能にし、まるで生き物のように乗り手の好みを学習する人工知能が搭載されている。

     

    乗ってきた人間によって性格を変えることから、アイディールは生きたバイクとして大勢のバイク乗りの憧れとしての地位を確立している。

    だが、あまりにも希少なバイクであるが故に、それを見てもその価値に気付かない人間がほとんどだ。

    残ったアイディールのほとんどが金持ちのコレクションとしてガラスケースの中に収められているか、外部の目に触れたり知られたりしないようにして保管されている。

    マニーの所有する一台も遺品整理のオークション会場で偶然見つけた物を彼の祖父が買い取り、コレクションの一つとして所有している物だった。

     

    ¥・∀・¥「よろしければ、後で試乗されますか?」

     

    ノパ⊿゚)「あぁ、是非」

     

    ヒートは頷き、デレシアも絶賛するバイクの正体と性能を早く知りたい気持ちが表に出ないよう、どうにか抑えた。

    だが、デレシアには見破られていた。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「ふふ、後で一緒に乗りましょ。

          ヒートは何か必要なものはあるかしら?」

     

    ノパ⊿゚)「あたしは9ミリの弾でももらおうかな。

        強化外骨格が相手になるだろうから、それ用の徹甲弾もあると嬉しい」

     

    ¥・∀・¥「勿論ご用意可能です。

          弾倉に入れた状態でお渡しいたします」

     

    ノパ⊿゚)「あぁ、そうしてくれると助かる。

        ところで、“サンダーボルト”って誰だ?」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「ジュスティアにいた狙撃手よ。

          といっても、昔の人だけどね」

     

    ノパ⊿゚)「ふーん。どんな奴だったんだ?」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「さぁ、私はあまり関わらなかったからよくは知らないわ。

          でも、ペニと仲が良かったのは知ってるから、面白い人だったんでしょうね」

     

    デレシアが口にしたペニサス・ノースフェイスの名を聞き、ヒートはその人物に少しの興味を持った。

    “魔女”と呼ばれた天才狙撃手であるペニサスは、フォレスタでその身を挺してブーン達を守り、死んだ。

    彼女はブーンにとっての先生、ヒートにとっての恩人、そしてデレシアにとっては友人だった。

    一体彼女がどのような経緯でジュスティアの軍人と交流を持ったのか、気になるところだ。

     

    デレシアも知らないというペニサスの過去。

    それを知る術は、もうどこにもない。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「それと、マニー。

           明日お願いしたいことがあるの」

     

    ¥・∀・¥「何でしょうか?」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「虎をあの島に上陸させる手助けをしてほしいのよ」

     

    ¥・∀・¥「トラギコ様をですか?

          しかし、ジュスティア軍だけでなく、警察にまで例の暗号が発信されています。

          我々にもトラギコ様にこの事を知られないよう協力するようにと、連絡がありました。

          どうやら、あの方をジュスティアに連れ帰りたいそうです。

     

          もちろん、我々としてもトラギコ様が島への上陸を望んでいる事を把握しておりますし、その願いを叶えたいと考えております。

          島に行けば間違いなく追われますが、いいのですか?」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「あの刑事さんならどうにかするはずよ。

          ジェイル島の事も教えてあげてね。

          そうすれば、絶対に動くから」

     

    ノパ⊿゚)「何で動くって分かるんだ?

         あの刑事、言っちゃあれだけどあんたに夢中だろ」

     

    間違いなく、トラギコはデレシアを追っている。

    恐らくは、オセアンで起こった事件の重要参考人として目星をつけ、確固たる証拠を手に入れようとしているのだ。

    だが捕まるつもりも、尻尾を見せるつもりもない。

    彼にはまだ別の事で働いてもらいたいというのが、デレシアの考えだった。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「優秀な刑事なら、何を先に処理するべきか分かるはずだもの。

          現に一人、貴重な証人を逃がした上に、ジュスティア軍と警察に追われていると知ったら、オアシズに留まるはずがないわ。

          彼が動けば、島にいるジュスティアの人間も動く。

          そうすれば私達の道が見えてくるって寸法よ」

     

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            ''  '.': ;,::. .  ..., ;) 制作協力【全てのブーン系読者・作者の皆さん】

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    八月九日の午前九時、オアシズの正面にティンカーベルの姿が見えてきた。

    予定通りマニーはトラギコに情報を流し、彼はそれに食いついた。

    デレシアの予想した通り、トラギコは島に上陸するとの事だった。

    全てがデレシアの予定通りになった事もあり、彼女の部屋にいる三人は荷造りに取り掛かっていた。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「脱獄犯がどうにかなるまでは、オアシズはここに停泊するそうよ」

     

    マニーが船内にある店を使い、デレシアのために揃えられた道具がカンバス地のザックに詰めて渡され、デレシアは中身を確認しながらそう言った。

    同じくマニーから弾を受け取ったヒートは弾倉をザックに詰め、自分自身の装備を最終点検している。

    両脇のホルスターには彼女の愛銃であるM93Rが納められ、後ろ腰の鞘には大ぶりのナイフがあった。

    オリーブドライのローブを被り、装備が引っかからないかを確認した。

     

    ノパ⊿゚)「となると、ティンカーベルの後はまたオアシズに戻るのか?」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「結末次第ね。

           私達の当初の目的はニューソクを不能にすることだったから、まずはそれを処理しないとね」

     

    (∪´ω`)「にゅーそくってなんですかお?」

     

    ベッドの上でザックを抱えるようにして座るブーンの質問に、デレシアが答えた。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「発電機の一つよ。

          小型で安全で、効率よく発電できる装置よ」

     

    (∪´ω`)「おー?」

     

    ブーンはよく分かっていない様子だった。

    装備の確認を終えたヒートは、デレシアの方を向いた。

     

    ノパ⊿゚)「でもデレシアはどうしてそんなのがこの島にあるって知ってるんだ?

        あいつらも知らないんだろ?」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「この島に何度か来たことがあるから、たまたま知ってただけ。

          かなり分かりにくい形で保管されているから、あいつらも気付けなかっただけよ」

     

    ローブを頭から被り、デレシアも準備を終えた。

    ベッドの上に置いてあったライフルケースを開き、そこから一挺の狙撃銃が現れた。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「私達が出かけるまでにはまだ時間があるから、少し銃の練習をしましょうか。

          ブーンちゃん、ロウガとの練習でライフルは撃った?」

     

    (∪´ω`)「おー、ありますお」

     

    ロウガとの試合後、三人は射撃練習を行った。

    ヒートはM93Rの具合を確かめ、ブーンは彼でも問題なく使える銃を探すことを主に行ったが、まだ見つかっていない。

    銃を撃つ機会が増えれば、自ずと見つけられるだろう。

     

    ノパ⊿゚)「確かレミントンを使ってたな」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「なら、こっちも使えるはずよ。

          これはね、WA2000っていうライフルよ」

     

    デレシアが掲げたのは、木と鉄が融合したライフルだった。

    セミオートマチック狙撃銃であるワルサーWA2000は非常に高価な銃で、民間に出回っているのはその廉価版の方だ。

    ボルトアクションに引けを取らない射撃精度に加えて、オートマチックならではの連射力を兼ね備えたこの銃は、確かに初心者には最適な銃とも言える。

     

    ノハ;゚⊿゚)「って、何を撃つつもりなんだ?」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「トラギコがちゃんと生きて島に上陸できるよう、手を貸すだけよ」

     

    弾倉を抜いたそれをブーンに持たせ、その重さを実感させた。

     

    (∪´ω`)「まえにつかったのより、おもいですお」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「そう、重い分扱いやすくなってるのよ。

          さ、屋上に行きましょうか」

     

    荷物を置いて、三人は部屋を出た。

    船内には放送が流れ、島に上陸することはまだ認められていないという連絡が繰り返されている。

    必要備品があれば船員が買い出しに行くとの旨が告知され、その費用はオアシズが全額負担するという捕捉もされた。

    今や、ティンカーベルは新たな人間を受け入れることも、外に出すことも許されていない状態だ。

     

    複数の島で構成されているティンカーベルにも、島と島の行き来が禁止され、ジュスティアは完全に犯人たちを島に閉じ込める作戦に出たのだ。

    かつてこの島であったデイジー紛争の時を彷彿とさせる動きに、デレシアはジュスティアの徹底主義が時代を経ても変わらないことに安心すると同時に、呆れた。

    こうして封鎖状態を作ることで逃げ道を失うのは自分達も同様なのだ。

    恐らく、彼らとしてはその昔とは状況が違う事を踏まえた作戦なのかもしれない。

     

    ティンカーベルはジュスティアの支配下にある街だ。

    どこの街よりも早く増援を送り込めるため、優位にあると考えるのも無理もない。

    あの時代はまだこの島に駐屯していたのはイルトリア軍で、迂闊に手出しが出来ない状態だった。

    今はもうそれを気にしないで作戦を展開できるという事は、確かに、ジュスティア警察にとっては有利だろう。

     

    元ジュスティア警察官であるショボンに悟られないよう、どのような作戦を展開するのか、興味に絶えない。

    未だ封鎖中の屋上へと上がり、三人は太陽の下で改めてティンカーベルの姿を見た。

     

    (∪*´ω`)「おー! でっかいおー!」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「島の真ん中に塔が見えるかしら?」

     

    (∪´ω`)「お、みえますお!」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「あれがグレート・ベル。

          ティンカーベルの象徴よ」

     

    (∪´ω`)「ぐれーと、べる」

     

    ノパー゚)「偉大な鐘、ってことさ。

        島に行った時に見に行こうな」

     

    ヒートの目にもグレート・ベルは見えているが、ぼんやりとした白い何かが浮かんでいるだけだ。

    ブーンの目に見えるそれはきっと、もっとはっきりとした形をしているのだろう。

     

    (∪´ω`)「お!」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「ヒート、ちょっとスコープで波止場の方を見てもらってもいい?」

     

    ノパ⊿゚)「おう」

     

    観測手用の高倍率な単眼鏡を受け取り、倍率を上げてその先を見る。

    小さな船が一隻、波止場とグルーバー島を繋ぐ橋の傍に浮かんでいる。

     

    ノパ⊿゚)「船が出てるな……」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「やっぱりね。

          その船、間違いなくジュスティアの船よ」

     

    ノパ⊿゚)「根拠は?」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「犯人が真っ先に逃走経路に選びそうな船の出航を許すわけないもの。

          哨戒艇の類でしょうね」

     

    ノパ⊿゚)「なるほど、確かに。

        ってことはよ、トラギコの事を待ってる連中かね?」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「きっとそうでしょうね。

          ジュスティアも流石に分かってるわね、あの刑事が大人しくしているはずがないって。

          船の中で付け回してたし、本人も分かってるでしょ」

     

    船が近付くにつれ、島全体が大きく見えてくる。

    緑豊かな三つの島。

    西からバンブー島、グルーバー島、そしてオバドラ島。

    鐘の音街の象徴であるグレート・ベルはグルーバー島にあり、船はその手前にある波止場に停泊する予定だ。

     

    美しい自然が見どころの街だが、非常に閉鎖的な街であることはガイドブックには書かれていない。

    ティンカーベルの人間が外部の人間と接する姿勢は、非常にビジネスライクだ。

    観光客に対しては驚くほど友好的に接するが、観光客が困っている時には一切の手助けをしない。

    彼らは観光客を金と面倒を持ち込む存在としか考えておらず、それは外の街から島に越してきた人間に対しても同じような接し方がされる。

     

    何十年と時間をかけてようやく受け入れられた時には、その人間もいつしか他の島民と同じように外部の人間に接するようになっている。

    負の連鎖は、決してなくならない。

    それは四方を海に囲まれた小さな街が生き延びるための工夫であり、生き方なのだ。

    事実、島の中で決められている掟さえ守ればよほどのことは起こらない。

     

    彼らが異なった価値観を持つ人間を恐れ、忌み嫌うのはその掟を破る存在だからだ。

    当然、異質な存在も彼らにとっては排除するべき対象だ。

    例えば、島で障害児が生まれた時、彼らはその赤子を海に捨てる。

    島の平和を護るためであり、そうした方が赤子のためでもあるというのが彼らの言い分だ。

     

    ましてや、耳付きとなると災厄の運び手としか見ない。

    耳付きが生まれた場合、その場で即座に殺され、母親は島の外に逃げざるを得なくなる。

    そのため、ブーンを連れていくためには帽子が不可欠になる。

    彼の正体に気付いて何かをしてくる人間がいれば、デレシアとヒートがそれを排除するだけだが、揉め事はニューソクを見つけてからの方がいい。

     

    目立つことでショボン達に居場所を知られ、邪魔される確率が高くなってしまう。

    まずはトラギコが島に上陸し、それからデレシア達が上陸すれば、いくらかの露払いをしてくれることだろう。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「だから、私達が手を貸して上げれば上陸しやすくなるでしょう」

     

    やがて、オアシズはその巨大な船体をゆっくりと止め、小さな波止場に接岸した。

    甲板から綱が投げられ、すぐに係留柱に結び付けられる。

    また、巨大な錨が海中に落とされ、船をその場にしっかりと留めさせる。

    その光景を、三人は屋上から見下ろし、それからその場に伏せた。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「じゃあ、ライフルの使い方実践編よ。

          ブーンちゃん、沖に船が見える?」

     

    (∪´ω`)「はい、みえますお」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「何が乗っているか見えるかしら?」

     

    (∪´ω`)「えーっと……じゅうをもったおとこのひとがいますお」

     

    ノハ;゚⊿゚)「……この距離でそこまで見えるのか」

     

    ブーンが人間離れした身体能力の持ち主であることは知っているが、ヒートの目算で海に浮かぶ船までの距離は軽く一マイルはある。

    白い小さな点にしか見えないが、ブーンの目には人間とその武器が見えるらしい。

    橋までの距離も同じく一マイルほどあり、一見すれば無害な船に思えなくもない。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「って言う事は、あの船はトラギコの邪魔をするつもりってことね」

     

    デレシアはWA2000にサプレッサーを取り付けてからバイポットを降ろし、屋上の縁から船に向けて銃を構えた。

     

    ノパ⊿゚)「当てられるのかよ、一マイルはあるぞ。

         サプレッサーなんて付けたら射程が縮むぞ」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「面倒事は避けたいから、仕方ないわよ。

          さて、ブーンちゃん、よく見ているのよ。

          まずは風向きを見ましょう。

          ヒートは波止場の方で動きがあったら教えて」

     

    ヒートは船の左手側へと移動し、単眼鏡を覗いた。

     

    ノパ⊿゚)「準備オッケーだ」

     

    船倉から輸出品を詰めたコンテナがトラックに乗せられ、そのトラックはジュスティア軍の人間が厳重に調査し、そして軍人の手で島内に運び込まれることになっていた。

    マニーの話によれば、トラギコはコンテナが降ろされる瞬間を狙って動くとの事だ。

     

    ノパ⊿゚)「おっ、トラギコだ……

         っておい、さっそくなんか絡まれてるぞ」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「人気者の宿命よ」

     

    そして次の瞬間、デレシアとブーンが同時に反応した。

     

    (∪´ω`)「おっ」

     

    ζ(゚、゚*ζ「あら」

     

    その意味をヒートは遅れて理解した。

    眼下でバイクに乗り、今まさに逃げ出そうとしていたトラギコが吹き飛んだのだ。

    不自然極まりない転倒の仕方は、前輪に何かが起きたことを示していた。

     

    ζ(゚、゚*ζ「撃ったわね、あの船から」

     

    ノハ;゚⊿゚)「船上からこの距離を?

         しかも相手はバイクだぞ!」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「へぇ……面白いことするわね」

     

    ヒートの視線の先で、トラギコが走り出した。

    だがバイクに弾を当てられる人間がいるのならば、人間がいくら走ったところで逃げ切れるはずもない。

    デレシアの手元でくぐもった銃声が鳴った。

    しかし、ヒートの視線の先でトラギコは足を撃たれて転倒している。

     

    ノハ;゚⊿゚)「おいおい、当たって――」

     

    再びデレシアが発砲する。

    すると、トラギコが掲げていたコンテナが衝撃を受けたのように彼の手を離れた。

    やがてトラギコは黒塗りのSUVに乗せられ、その車はグルーバー島へと猛スピードで走って行った。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「これでよし」

     

    ノハ;゚⊿゚)「どういうことだ?」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「弾道を変えたのよ。

          だから、最初の一発は足に当たったし、次の一発はケースに当たったでしょ」

     

    ノハ;゚⊿゚)「……はぁ?!」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「飛んできた弾に当てて、致命傷を外させたのよ。

           たぶん、狙撃した方は何かのミスだって思うでしょうね」

     

    ノハ;゚⊿゚)「マジかよ……」

     

    飛来する弾に弾を当てる。

    それは曲芸の一つとして実際に可能な技だが、距離と条件が違う。

    曲芸として見せる技はタイミングが決められ、距離は非常に近く、方向は限定されている。

    だが今回、デレシアがやったという狙撃は一マイル離れた距離から狙撃された弾丸を狙い撃つという物。

     

    正面から弾を受け止めるのではなく、上方から相手の弾道に侵入させ、僅かに擦り当てることで狙いだけを変えるという行為は偶然や運の要素があったとしても、狙えるものではない。

    理論上は可能だろうが、ヒートには想像も出来ない技だ。

    見えない物に当てるだけでなく、そのタイミングを予期しなければ決して出来ない。

    デレシアに対する疑問が一つ増えたが、次に彼女の口から出てきた言葉に、ヒートは流石に押し黙るしかできなかった。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「ペニならもっと上手にやれたわ」

     

    ライフルケースと薬莢を回収し、デレシア達は屋上を後にする。

    部屋に戻った三人は用意しておいたそれぞれの荷物を持ち、船倉へと向かうことにした。

    道中、ブーンは幾つかの質問をした。

     

    (∪´ω`)「ペニおばーちゃん、デレシアさんよりもすごかったんですか?」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「えぇ、ペニおばーちゃん以上に狙撃が上手い人間はそうそういないわ」

     

    (∪´ω`)「おー、ペニおばーちゃんすごいおー!」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「ふふふ。もし機会があれば、おばーちゃんのお話をしてあげるわね」

     

    (∪*´ω`)゛「おねがいしますお」

     

    そして次の質問は、ホットドッグの屋台を見つけた時にぽつりと彼の口から出てきた。

     

    (∪´ω`)「……シナーさん、どこいっちゃったんだろ」

     

    ヒートはその答えを知っていた。

    ブーンに優しく接した餃子屋の店主は、オアシズの厄日の際、トゥエンティ―・フォーを使ってヒートと対峙した。

    結果としては分厚い装甲に幾つもの穴を空けたが、中の人間には当たらないよう、巧妙に攻撃を受け止められていた。

    そしてショボンが逃げるのとほぼ同時に、彼自身も逃げ遂せたのだ。

     

    彼はデレシア達の敵だった。

    本音を言えば敵として出会いたくない、出会わなければよかったと思う人間だった。

    ブーンの成長に少なからず関与した人間が敵という事実は、出来れば彼には伝えたくない。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「忙しい人だから、また別のところで餃子を売りに行っているわよ」

     

    (∪´ω`)「おー、つぎにあったら、もっとおはなししたい……ですお……」

     

    ノパ⊿゚)「大丈夫、その内会えるさ。

         こういうのを縁、って言うんだ」

     

    (∪´ω`)「えん?」

     

    ノパ⊿゚)「あたし達が出会ったようなものさ」

     

    (∪´ω`)「お、じゃあまたあえますかお?」

     

    ノパー゚)「……あぁ、きっとな」

     

    どのような形で出会うかは、言う必要はないだろう。

    次に会う時はおそらく、完全な時として殺し合う関係で出会う事だろう。

    船倉に到着し、コンテナの前で三人を出迎えたのは市長と五人のブロック長達だった。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「あら、随分と大げさね」

     

    ¥・∀・¥「デレシア様、どうかお気を付けください。

          円卓十二騎士も脱獄犯を捕まえるために派遣され、正直、島はあまり快適な状態とは言えません」

     

    ジュスティアが誇る十二人の騎士。

    彼らはジュスティアを守る騎士としてその実力と忠誠心を認められた正真正銘、正義の都の最高戦力である。

    その名が出ても、デレシアは表情一つ曇らせなかった。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「大丈夫よ。 ちょっとお散歩するような物だから」

     

    ¥・∀・¥「何かあれば、これを使ってください。

          逆探知防止機能の付いた携帯電話です。

          常に出られる状態にしておきますので、何なりとお申し付けください」

     

    ただの携帯電話だけでも相当な価値があるが、逆探知防止機能が付いた物になると、市民の平均生涯年収にまで達する。

    デレシアは黒い携帯電話を受け取り、微笑んだ。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「ありがとう、マニー。

           とても助かるわ」

     

    ¥・∀・¥「ジュスティア軍と警察に、特例としてアイディールが島に上陸する旨は伝えてあるので引き留められることはないはずです。

          それと、アイディールはデレシア様にお譲りいたします。

          それは私の様な海の人間には無用の長物。

          世界を旅される方にこそふさわしい乗り物です。

     

          その方が、祖父もバイクも喜ぶはずです」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「ありがたくいただくわ。

           ブロック長の皆さんも、忙しいところありがとう」

     

    マニーの背後に一列で整列し、腕を前に組むのは五人のブロック長。

    ずい、と前に一歩踏み出したのはノリハ・サークルコンマだった。

     

    ノリパ .゚)「はい、オアシズの恩人が発たれるというのに何もしないようでは、我々ブロック長の沽券にかかわります。

         いえ、それだけではありません」

     

    マト#>Д<)メ「我々のオアシズを救って下さった方に、この程度しか出来ない不甲斐なさ……

           もし我々に出来る事があれば、いつでも、何でもお力になります」

     

    W,,゚Д゚W「ジュスティアの無線の傍受はすでに信頼できる部下達に行わせております。

         何か大きな動きがあれば、逐一ご連絡いたします」

     

    ('l')「このご恩、我々は決して忘れません」

     

    最後に歩み出たのは、オットー・リロースミスだった。

    彼は恥じ入るかのように首を垂れ、デレシアに非礼を詫びるとともに、バイクのキーをデレシアに手渡した。

     

    £°ゞ°)「数々のご無礼、ご容赦ください。

          僭越ながら、アイディールにパニアを装着させていただきました。

          全て防弾仕様で、9ミリ弾までは耐えられます」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「ありがとう、ロミス。

          貴方が自分の行いを過ちだと思うのならば、その過ちを次に活かしてね。

          貴方達ならオアシズをより良い街に出来るはずよ。

          ……じゃあ、私達は行くわね」

     

    コンテナに積まれていた一台のバイク。

    それは、全てのバイク乗りの羨望の的であり、理想の形。

    車体の半分は蒼いカウルに包まれ、本来は後輪を挟む位置にあるはずの大口径二本出しのマフラーが後部座席の下に収まっており、前の乗り手が改造したのだと分かった。

    フロントライトの下には鳥の嘴を彷彿とさせるカウルがあり、三つの鋭い形のライトが伝説に登場する猛禽類の目を彷彿とさせる。

     

    ナックルガードは鉄芯が入っており、転倒したとしても破損することは間違ってもあり得ない。

    エンジンガードとアンダーカウルには傷や錆もなく、大切に扱われてきたことを如実に物語っていた。

    フルパニアを装備したバイクは埃一つ積もっておらず、つい先日まで乗り回されていたかのような生気があった。

    柔らかいシートの上には一組のライディンググローブが用意されていた。

     

    グローブを付けてからシートに跨り、デレシアはスイッチを操作し始めた。

    エンジンの位置が地面から僅かに離れ、アドベンチャータイプの様な姿へと変わる。

    これがアイディールの最大の特徴。

    電子制御による車種の変更だ。

     

    エンジンの位置を高くすることも、低くすることも、全て電子制御装置が行ってくれる。

    更に、走行中にもその可変機能を使用することが出来るため、路面状況の変化に即応できるよう設計されていた。

    セルフスターターとキックスターターを両方供えた実用性重視のアイディールは、あらゆる需要に応え、あらゆる供給をすると絶賛された車種だ。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「……いい子ね」

     

    一言そっとそうつぶやき、デレシアはタンクを優しく撫でた。

    セルスイッチを押すと、低く、そして静かなエンジンが始動した。

    ギアをファーストに入れ、クラッチを軽く握りながらアクセルを回す。

    コンテナからバイクを出したデレシアはギアをニュートラルに入れてから、ブーンを自分の前に乗せ、ヒートをその後ろに乗せた。

     

    £°ゞ°)「ご要望通りのヘルメットです」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「ありがとう、ロミス」

     

    デレシアとヒートはジェットヘルメットを、ブーンはゴーグルの付いたハーフヘルメットを用意させた。

    ブーンだけヘルメットの種類が異なるのは、彼が人とは異なる耳を持ち、それを上手く隠せるのがハーフヘルメットだったからだ。

    デレシアは目の前に座るブーンにヘルメットを被せ、ストラップを首の下で止めると彼の垂れた耳が丁度隠れた。

    ヘルメットの感触を確かめるように、ブーンが両手でヘルメットを触る。

     

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                             , へ、

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    (∪´ω`)「おー」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「あら、やっぱり似合うわね」

     

    ノパー゚)「あぁ、ばっちりだ」

     

    (∪*´ω`)「おー」

     

    準備が整い、デレシアとヒートはバイザーを降ろし、デレシアはブーンのゴーグルをかけてやった。

    コンテナがクレーンで動かされ、鉄の軋む音が船倉に木霊する。

    その中でも、デレシアの声は見送りに来た六人の耳に明瞭に聞こえた。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「それじゃあ、行ってくるわ。

          また会いましょう」

     

    エンジン音を残し、デレシア達三人はオアシズを出てティンカーベルへと向かった。

    その姿は小さくなり、やがて、消えて行った。

    斯くして、この日。

    様々な思惑を持つ人間達が、一つの島に集結することになる。

     

    これは――

     

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

     

                   これは、力が世界を動かす時代の物語

          This is the story about the world where the force can change everything...

     

                     そして、新たな旅の始まりである

                  And it is the beginning of new AmmoRe!!

     

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

     

    AmmoRe!!のようです Ammo for Reknit!!

    序章【concentration-集結-】 了

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ページのおしまいだよ。。と