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  1. 名前: 歯車の都香 --/--/--(--) --:--:--
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第四章【preliminary-準備-】

  1. 名前: 歯車の都香 2017/04/16(日) 13:08:00
    第四章【preliminary-準備-】

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    大衆の望む真実とは目に見える物の集合体であり、

    我々はそれを作り上げる共同体でなければならない。

     

                         //

             /`‐──-_____,-‐´ /

            ./  / ̄ ̄/ 三三=  彡 /

           /  /__/ 三三=  彡 /

         ./―――モーニングスター新聞社則その1

     

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    普段は静かな夜なのだが、その日に限ってはサイレンの音が鳴り響く夜だった。

    消防車、そして救急車がグルーバー島の各所から集められ、エラルテ記念病院の火災に対処していた。

    火を消す事よりも、炎が周囲に被害を及ぼさないようにする事に力が注がれ、怪我人の搬送や継承者の対処には島民も参加した。

    その騒ぎは、一目と喧騒とは無縁の路地裏にも届いていた。

     

    生活臭と下水道から込み上げる悪臭が立ち込める民家の間にある薄暗い路地裏には、一匹の王がいた。

    薄汚れ、大きな体をした野良の雄猫だ。

    その猫は路地裏の主として長らく君臨しており、近隣の住民からはその傲慢な態度とゴミを荒らす事から嫌われていた。

    大型犬はもちろん、人間に恐れをなさない姿はまさに王。

     

    猫にしては珍しく、この王は報復と云う事を知っていた。

    人間がこの猫に危害を与えれば、間違いなく報復の対象となった。

    報復は執拗に行われ、いつしか人間はその猫に手を出す事を諦めたのであった。

    王は力もあり、そして行動的だった。

     

    しかしその人物が姿を見せた瞬間、路地裏の王は威嚇の鳴き声を上げる事もなく、脱兎の如く逃げ出した。

    王の逃亡は必然だった。

    現れたのは、人の姿をした虎だったのだ。

    例え狩りをせず楽に餌を獲得する動物であっても、野生に生きる動物である以上は対面した相手との力の差が歴然である事を察すれば、遁走は必至。

     

    ましてや、手負いの獣で怒り狂っている状態ともなれば逃げない方が異常だ。

    野生に生きるものとして、王の判断は正しかった。

    そんな事情を知らない男の目には野良猫がただ逃げ出しただけにしか映らず、むしろ興味の対象外だった。

    男は大激怒していた。

     

    壁に手をつき、足元に転がるゴミを蹴り飛ばして、男は路地を進んだ。

    男にとってかつての王の存在など考慮するべき事ではないし、全く知らない事だった。

    思考の全ては事態の把握と整理、その解決に使われるありとあらゆる暴力的な手段の算出に割り当てられた。

    絞殺か、撲殺か、それとも殴殺か。

     

    あらん限りの苦痛と屈辱を与えた後に殺すための方法と過程を、男は考えていた。

    男は、復讐を誓った獣と化していた。

     

    (#=゚д゚)「……」

     

    中年の男の名は、トラギコ・マウンテンライト。

    “虎”と呼ばれ、世界中の犯罪組織からも恐れられる敏腕の刑事である。

    二十年以上も刑事として難事件解決の最前線で働き、そして解決してきた男は執拗に犯人を追い立て、捕え、そして殺してきた。

    だが今や、トラギコは追われる身となっていた。

     

    誰が追っているのかは分からなかったが、それでも、トラギコは逃げざるを得なかった。

    彼を助けた医者の命を奪った人間に復讐するために、今はただ、逃げて生き延びなければならなかったのだ。

    そのためには手段を選んではいられない。

    無様であろうが、己の矜持に反する事だろうが、関係はない。

     

    重要なのは、心に正直であるか否かの問題なのだ。

     

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    土地勘がない状況での逃亡は、非常に危険だ。

    危険な場所がどこで、身を隠していい安全な場所も分からないからだ。

    追う側にとってはその逆で、戸惑った人間の心理を考えるだけで追いつく事が出来る。

    逆を言えば見知った場所であれば危険な場所も安全な場所も分かるため、逃亡は容易に進む。

     

    隠れ場所は早急に決定しなければならない。

    人目に付くだけで、隠れ場所はその安全性を欠いてしまうのだ。

    ただでさえトラギコは白衣を着ている事もあって、人一倍人目に付きやすくなる。

    目撃情報は簡単に広まるだろう。

     

    そのため、トラギコは悪臭を我慢して路地裏を選んで人通りのある道から離れていた。

    意味のない事は分かっているが、サイレンの音が通り過ぎるたび、トラギコは警戒してその方向を睨んだ。

    炎が夜空を赤く染め、黒煙が星を覆い隠している。

    本棟と離れている事を考えれば、被害は隔離病棟だけに留まる事だろう。

     

    放火は衝動的に行える手ごろな犯罪だ。

    燃料と火種さえあれば誰にでも出来る。

    しかし、燃え広がるには誰にも邪魔されないと云う条件が付加される。

    邪魔されると云う状況下においても放火を遂行するためには、強力な燃料が必要だった。

     

    トラギコを襲ってきた人間は、強力な燃料どころか兵器を導入してきた。

    棺桶と呼ばれる軍用第三世代強化外骨格だ。

    これまでにデヴォティーなどの火炎放射器を主兵装とする強化外骨格を目にしてきたが、その中でもあれは格が違う。

    燃料の正体は分からないが粘度が高く、対象を確実に焼き殺すように設計されている。

     

    単一の目的で開発されたコンセプト・シリーズならば、燃料不足で戦えなくなる事はないだろう。

    悔しいが、今の装備と状態ではあれに対して報復する事もままならない。

    戦うための準備が必要だった。

    今は雌伏の時。

     

    虎視眈々とチャンスを狙うしかない。

    決してそれを見逃す事のないように、逃げながらじっくりと追い続ける他ないのだ。

    追われるのは初めての経験ではない。

    マフィアに追われた事もあるし、カルト集団、果ては堕落した同僚にまで追われた事がある。

     

    コツは分かっている。

    振り向きざまの一発を食らわせるのだ。

    逃げる事は決して恥ずかしい事ではない。

    生き延びて復讐すれば、それは意味のある行為となる。

     

    だが復讐が失敗すれば、意味は失われてしまう。

    殺されたカール・クリンプトンの命の意味も、失われてしまうのだ。

    それは彼の命を無駄にすると云う事で、決して許容出来る事ではない。

    友人の恩に報いるためには、必ずやり遂げなければならない事なのだ。

     

    正体不明の旅人を追うのは後回しにして、まずはこの問題を解決するところから始めなければならない。

    視線の先に人気のほとんどない薄汚いアパートを見つけ、トラギコは錆だらけの階段を上った。

    人の出入りがなさそうな扉の前に立ち、ノブを回して鍵がかかっているかを確認する。

    しっかりと施錠されていた。

     

    扉に耳を当て、中から物音がしないかを探る。

    物音は、しない。

    人がいないのなら、侵入して拠点に出来る。

    一番いいのは天井裏に隠れる方法だ。

     

    天井裏に隠れていれば、人目に付く心配もないし、家主がいなくなった隙に水や食料を確保出来る。

    万が一鉢合わせたとしても、力によって制圧し、警察手帳を利用すれば万事解決だ。

    侵入しても問題ない事を確認してから、トラギコは鍵穴を覗き込んだ。

    昔ながらの作りをした、ピッキングが容易なレバータンブラー錠だった。

     

    腕時計のベルトに隠していた針金を取り出し、それを曲げて鍵穴に捻じ込む。

    上下させ、力を入れて回す。

    この手の鍵は、特定のピンを全て持ち上げ、特定の方向に回転させてやれば解錠出来る。

    静かに扉を開いて、ゆっくりと中に入った。

     

    入ってすぐに気付いたのは、人の気配がする事だった。

    物音をほとんど立てず、僅かな音だけで辛うじて判別出来る気配。

    扉の外からでは気付く事の出来ない程の気配だ。

    運が悪いが、入ってしまったものは仕方がない。

     

    せいぜい、まともな人間である事を願うばかりだ。

    靴を脱いでその場に置き、後ろ手で扉の鍵を静かに閉める。

    ベレッタの安全装置をかけ、暴発に備える。

    民間人であれば銃口を見れば言う事を聞くはずだ。

     

    気配のする部屋は、玄関を上がってすぐ左の部屋だった。

    姿勢を低くし、僅かに開いた扉をそっと押し開くと、そこには赤い空間があった。

    狭くて湿った部屋には、赤い光が灯っていた。

    壁と壁の間に張られた紐には何枚もの写真がかけられ、ここが現像室である事を物語っている。

     

    写真はまだ現像が完了しておらず、先ほど干したばかりなのか滴が滴り落ち、何も映っていない。

    脂ぎった髪を伸ばした背の低い男が、背中を丸めて写真を現像液に浸していた。

    女でなくてよかった。

    これが若い女だと、泣き叫んで事態が厄介になってしまう。

     

    屈んでいた体を伸ばし、壁をノックしてからトラギコは声をかけた。

     

    (=゚д゚)「お邪魔してるラギよ」

     

    ;-@@)「ぬぁあああああ!?」

     

    写真を現像していた男がトラギコの男に驚き、机の上のものをひっくり返して倒れた。

    液体が飛び散り、トレーが床の上に落ちる。

    その拍子にスイッチャーを押してしまったのか、部屋のライトの色が白に切り替わる。

    慌ただしい男だ。

     

    ;-@@)「ぎえええええええ!?」

     

    手に持っていたアタッシュケースとスーツを手放し、代わりにベレッタを構えた。

     

    (=゚д゚)「おい、黙れ」

     

    銃口を向けると、男は両手で口を押えて黙った。

    手の下に見えるのは二十代の男の顔だ。

    半袖のTシャツは汗で汚れ、ジーンズは色褪せている。

    指紋で汚れた厚い眼鏡をかけ、日焼けした肌に不似合いな細い手足。

     

    行動力はあるが力のないタイプだ。

    得意分野は環境保護活動か、菜食主義運動だろう。

    この手の男は、早めに誤解を解くに限る。

    押し込み強盗だと勘違いされると厄介だ。

     

    (=゚д゚)「俺は刑事ラギ。 極秘捜査のために、この家を間借りするラギ」

     

    ;-@@)「け、刑事? でも、格好が……」

     

    精神疾患を患った人間だと思われてもおかしくない。

    服装とは、そう云うものだ。

    患者着に白衣。

    どう見ても不審者のそれだ。

     

    (=゚д゚)「ぶっ殺されてぇのか、手前?!

        カモフラージュラギよ、カモフラージュ!!

        疑うんなら、このスーツの胸ポケットを調べてみるラギ」

     

    男は警戒しながらも言われた通りに床のジャケットを手に取り、警察手帳を探し当てた。

    警察手帳には様々な情報が載っており、識別番号や偽造防止の透かしなどが全てのページに記入されている。

    顔写真とトラギコとを見比べ、男はようやく警戒を解いた。

     

    -@@)「どうやら、本当のようですね」

     

    (=゚д゚)「最初っからそう言っているラギ」

     

    トラギコも銃口を男から外し、対話をする姿勢をとった。

    男はゆっくりと立ち上がって、ずれた眼鏡を直した。

     

    -@@)「トラギコ・マウンテンライト刑事……あぁ、“虎”の刑事さんですね。

          噂は聞いていますよ。

          僕はアサピー・ポストマン、モーニングスター新聞ティンカーベル支社で記者をしています。

          捜査とはいったい?」

     

    記者。

    それも、世界最大の新聞社の記者だと云う。

    モーニングスター新聞は世界中のニュースを網羅する情報配信会社で、年に十回はジュスティアと衝突している会社だ。

    内藤財団が保有する新聞社をも凌ぐ規模を誇る事からか、自分たちが真実の代弁者であると勘違いをしている節が見られる。

     

    捜査の妨害、被害者への執拗な取材など悪質な事もあるが、彼らが手に入れる情報は警察の捜査にかなり役立っている。

    使い方を誤らなければ優秀な情報屋だが、本質は大衆に対しての情報発信と自己顕示欲を満たす事にある。

    双方の利益が一致しない限りは、関わらないに限る。

    実はこれまでに何度かトラギコの捜査を邪魔した記者を殴って整形外科送りにした事があり、アサピーがその事で協力を渋らないか、内心で危惧した。

     

    協力を拒んだり渋ったりした場合の対処は、いつも通り力による行使である。

    最悪の場合、口封じのために両足を砕いてでも協力させるしかない。

     

    (=゚д゚)「それを教えられないから極秘捜査って言うラギ」

     

    -@@)「なるほどですね。 具体的に、どのような事に協力をすればいいので?」

     

    一言で断らなかったと云う事は、話し合いの余地があると云う事だ。

     

    (=゚д゚)「備品を揃えたり、情報収集したり、まぁそんなところラギ」

     

    -@@)「……協力は構わないのですが、僕の利益はどこにあるので?

          言っておきますけど、名誉とか勲章とかはいりませんよ?」

     

    無論、そんなものを渡すつもりはない。

    相手は記者だ。

    記者が欲するのは名誉ではなく、情報なのだ。

    それも、一つの事件の始まりから終わりまでの一連の情報が。

     

    アサピーは自己紹介の際にティンカーベル支社に所属していると言っていた。

    この田舎町で新聞記者となると、周囲から得られる記事のネタはつまらないものばかり。

    そんな状況でアサピーが最も欲するものとなると、刺激的なニュースだ。

    その一つを、トラギコは持っている。

     

    (=゚д゚)「んなもん用意してないラギよ。 もっと実用的な物があるラギ。

        オアシズの事件概要を教えてやるラギ。

        犯人の名前やその職業、過去の経歴についても。

        それと、今起きた火災についてもだ」

     

    世界最大の船上都市オアシズで起こった殺人事件の概要は、その船に乗り合わせていて尚且つその事件解決に関わった人間でなければ知りえないものだ。

    オアシズにはモーニングスター新聞の記者はおらず、オアシズの厄日と呼ばれる事件は簡単な概要だけが広まっている。

    エラルテ記念病院で入院していた時、その日の朝刊と夕刊を見たが、詳しい内容は書かれていなかった。

    海賊が船を襲い、殺人犯が逃げ出した、と云う事だけが書かれていたがその解決に貢献した人間達の葛藤は当然載っていなかった。

     

    更に、今起きている火災の真相をいち早く手に入れられる。

    どのような人間が関与したのか、その概要は非常に高い価値を持つ。

    火災現場に行かずにここで現像作業をしていると云う事は、アサピーは現場に出向いても大した情報が得られない事を知っているのだ。

    自分がどれだけ聞き込みをしても、地元の新聞社以外には情報開示がされない事を分かっているのだ。

     

    相当な嫌われ者だからこそ、アサピーはここにいる。

    しかし、だからと言って彼が記者として腐っているかと言えば、それは断言できない。

    無駄足を踏むのを嫌っているだけだろう。

    トラギコの提案は、かなり魅力的なはずだ。

     

    記者であれば是が非でも知りたいはずだ。

    ニュースの裏側を。

     

    -@@)「へ、へへ……!!

          刑事さん、そうですよ、それがほしいんですよ、僕はぁ!!

          流石だ、いや、流石ですトラギコさん!!

          いやぁね、この島に飛ばされてからと云うもの、事件と云うような事件もニュースもなくてうんざりしていたんですよ。

     

          隣の家で双子の牛が産まれただの、三つ子の赤ちゃんの名前を募集しているだの、そんなのばっかり。

          おまけにここは閉鎖的で、新聞記者だと云うだけで邪魔者扱いですよ。

          せっかく寄港したオアシズの情報を手に入れようとしてもオアシズの乗客に話す事も出来ない。

          困っていた、そして欲していたんですよ、そんな情報を!!」

     

    アサピーは嬉々とした表情に変わり、握手を求めてきた。

    銃を持ち替え、右手でそれに応じた。

    協力者を得ただけでなく、協力関係を結ぶ事が出来た。

    この男は使い方次第では役に立つ。

     

    単純な性格をしているため、使いやすそうだ。

     

    (=゚д゚)「オアシズの乗客の扱いは今どうなっているラギ?」

     

    -@@)「朝到着してから一時間だけ外出が許されました。

          それ以降は全員船の中に戻り、ジュスティアが発表している逃亡犯が捕まるまでは船内で待機となってます。

          表では、ね」

     

    (=゚д゚)「裏があるのか?」

     

    -@@)「いや、僕の勘ですよ。

          誰か戻っていない人がいるんじゃないか、そう思うんです。

          例えば、オアシズから降ろされた積荷の中に人が隠れていたとしたら、とか可能性はあるわけで」

     

    (=゚д゚)σ「あの写真は? それに関係があるラギか?」

     

    もしもそうであれば、トラギコはかなり申し訳ない事をしてしまった事になる。

    新聞記者にとって写真は武器だ。

    武器を失ってしまえば、新聞としても記事としても効果は低くなる。

     

    -@@)「あぁ、気にしなくていいですよ。 どうせ、価値のない写真ですから。

          何枚かいります?」

     

    床に落ちていた数枚の写真を拾い上げ、アサピーはそれをトラギコに差し出した。

    それは風景を写した白黒の写真だった。

    山を写したもの、山から海を見下ろした構図のもの。

    若干の手振れによって輪郭がぼやけてしまい、上手いとは言い難い。

     

    (=゚д゚)「へぇ、白黒とはまた変わった写真ラギね」

     

    -@@)「仕事の片手間でコンテストに出して賞金をもらおうとしたんですけど、どうも才能がないみたいで。

          やっぱり、新聞用の写真と風景では撮り方が違いますね」

     

    (=゚д゚)「仕方ねぇラギよ」

     

    最後の一枚は、街中の写真だった。

    客で賑わう市場の様子だったが、そこに見た事のある人物の横顔が映っていた。

    注意してみなければただの風景の一部として見過ごしてしまう所だった。

    スカルキャップを被った男は、特徴的な垂れ眉毛と老犬のような頬の皺を持っている。

     

    間違いなく、ショボン・パドローネだ。

    そしてその横に立つ男にも、見覚えがあった。

    癖の強く長い黒髪の下から覗く、鋭く細められた目。

    長身に似合う長い山羊髭、まっすぐに結ばれた口。

     

    人相が変わっているが、漂わせる雰囲気と目つきは見間違えるはずがない。

    この二人が、この島にいる。

    グルーバー島にいるのだ。

    脱獄犯、デミタス・エドワードグリーン、通称“ザ・サード”が。

     

    (=゚д゚)「……この写真、いつ撮った?」

     

    -@@)「それは今朝の四時ですね。 朝市の写真です。

          生活の躍動感を撮ってみたつもりなんですが……」

     

    (=゚д゚)「お前は才能があるラギよ」

     

    これで、追っている人間の正体に確信が持てた。

    黒幕はショボンの所属する組織だ。

    勘付いてはいたが、それが確信に変わった。

     

    -@@)「本当ですか? 差し上げますよ」

     

    (=゚д゚)「まずはこいつらだ。 この二人を探すラギよ」

     

    追われるのは性に合わない。

    今この段階から、迎え撃つ。

     

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                              第四章【preliminary-準備-】       |!

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    まず調達しなければならないのは、松葉杖と武器だった。

    脹脛ならまだしも太腿の一部を失ってしまった以上、歩行は困難だ。

    かと言って車椅子を使うつもりはない。

    車椅子は脚力が著しく低下する上に、タイヤがパンクしてしまえばそれまで。

     

    もっと言えば、コントロールを簡単に奪われてしまう欠点がある。

    その点、松葉杖は武器にもなるし隙が少ない。

    トラギコが好むのはボルトアクション式のライフルを仕込み、有事の際に使う事だ。

    工作は得意な方で、これまでに三回その作業をした事がある。

     

    一度は同僚に頼まれ、後の二回は捜査中に相手を油断させるための道具として松葉杖を使った際に仕込んだ時だ。

    勿論、命中精度は悪い。

    所詮は急造品の暗器だ。

    銃身を杖先として使う以上、弾道に若干の歪みが生まれてしまう上に、静音性はほぼ皆無となる。

     

    一発ごとに弾を込めるボルトアクションライフルとしては申し分ないが、如何せんトラギコの性格は狙撃手に向いていない。

    出来れば銃弾は連続して発砲出来る方がいい。

    それでも、奇襲するには十分な道具だ。

    松葉杖を二つ用意すれば銃は二挺になる。

     

    必要な道具はボルトアクションライフルと松葉杖、そして加工するための工具一式だ。

    特製の松葉杖の制作が完了し次第、街中に出向いて捜査が出来る。

    全てをメモに残し、トラギコはそれを渡した。

     

    (=゚д゚)「一か所で買い揃えるなよ、変にマークされると厄介ラギ。

        それと、ライフルの弾と俺の銃の弾も忘れずにな」

     

    -@@)「えぇ、買うのはいいんですけど、お金は?」

     

    薄手の外套を着ながら、アサピーがそんな事を尋ねてくる。

    本来であればトラギコが赴いて警察手帳を使って手に入れるのだが、新聞記者がそれを代行するわけにはいかない。

    今の状況を考えれば即座に通報されるのは明らかだ。

    となれば、正攻法で行くしかない。

     

    (=゚д゚)「お前のおごりに決まってるラギ」

     

    現金の持ち合わせは少ししかない。

    警察手帳と云う便利な存在がなければ、刑事はろくに飲食も出来ないのだ。

    それは、横領や買収を防止する名目で経費が削減されているのだと聞いた事があるが、どうやらトラギコだけらしかった。

    何故か上司に嫌われていて、トラギコだけ捜査費用を現金で渡されないのだ。

     

    ;-@@)「ちょっ!! ライフルを買うお金なんてありませんよ!!」

     

    この島の相場は知らないが、安い銃なら百ドルもあれば買える。

    後は工具の値段だが、それはアサピーの交渉に任せる。

     

    (=゚д゚)「支社の金庫を使えばいいラギ」

     

    ;-@@)「そんな事できませんって!!」

     

    (=゚д゚)「ネタが必要なんだろ? だったら、協力するラギよ。

        なぁ、早いところ調達してきてくれたら、明日の朝には記事に出来るラギよ。

        どこの新聞社よりも正確な記事、こいつぁ本社にも認められるチャンスラギ」

     

    記者が食べていけるのは、記事になるネタがあり、新聞を読む人間がいるからだ。

    新聞を読む人間は過激なニュースを好み、その続報を知りたいがために新聞を購入する。

    その購買者を増やすには、継続性のあるニュースが必要だ。

    そして、そのニュースが大衆の要求に応じているか、と云う点も忘れてはならない。

     

    ;-@@)「むむ……む……」

     

    (=゚д゚)「ライフルは安いのでいいが、プラスチックとか使ってるのは駄目ラギよ。

       木で作られた奴か鉄の奴ラギ。

       松葉杖はアルミ製の軽い奴ラギ」

     

    ;-@@)「金庫については保留して、一先ず買いに行ってきます」

     

    (=゚д゚)「それでいい。 お前が出かけている間、記事になりそうな事をメモに書いておいてやるラギ」

     

    要求だけでは交渉は進まない。

    相手の望むものが手に入る、そんな状況を示してやらなければならない。

     

    -@@)「お願いしますよ、ほんと」

     

    (=゚д゚)「一先ずはエラルテ記念病院の話ラギ。 後は、俺の捜査が終わったらオアシズの事を教えてやるラギ。

        酒はなんかあるラギか?」

     

    -@@)「あぁ、キッチンの奥にビンゴ大会の景品でもらったのがあります。

          どうぞお好きにしていてください」

     

    話が分かる男だ。

    トラギコはアサピーと云う男に利用価値を見出すのと同時に、今後とも付き合っていれば何かしらの恩恵がある物だと考えた。

    マスコミ関係者は好かないが、この男は利用しやすい。

     

    (=゚д゚)「じゃ、頑張ってくるラギよ」

     

    玄関から出て行ったアサピーを見送り、トラギコはびっこを引きながら、空のペットボトルや古い日付の新聞、洗濯物が散乱したリビングを通って台所に向かった。

    電気を点けてると、そこには見た事のある黒い酒の箱が転がっているのが見えた。

    金色の線で描かれたシルクハットに杖と云う特徴的なシルエットは、その酒の名前を広く知らしめるのに一役買っている。

    人々は親しみを込めて、その酒をこう呼ぶ。

     

    (=゚д゚)「ジョニ黒かよ」

     

    ジョニー・ウォーカーは代表的なブレンデッド・ウィスキーだ。

    様々な種類が出ており、その中で最も有名なのは赤ラベル。

    それに次いで黒ラベルが広く知られている。

    違いは熟成年月や混ぜている酒の種類だが、値段には雲泥の差がある。

     

    黒ラベルは十二年以上熟成されたものを四十種類使用しており、複雑な香りが売りの一品だ。

    だがトラギコはブレンデッド・ウィスキーが好きではなかった。

    この際文句を言っても仕方がないが、ティンカーベルはウィスキーの名産地でもある。

    それなのに、とどうしても愚痴が出てしまう。

     

    手つかずの状態のボトルを片手に、次は冷蔵庫の中を物色する。

    つまみになりそうなものは、何もなかった。

    仕方なく魚肉ソーセージを一本取って、扉を閉める。

    洗濯物の上に座って、トラギコはボトルの封を切った。

     

    (=゚д゚)「……カール、仇は必ず取るラギよ」

     

    目の前で死んだ友人を想って、トラギコは酒を掲げた。

    これは死者に対する儀式ではなく、自分に対する儀式だった。

    覚悟を決める、決意を固める。

    必ず復讐を果たすと、己に言い聞かせるための儀式なのだ。

     

    ボトルから直に飲み、ソーセージにかぶりつく。

    味は殆ど感じられなかった。

    いい酒、いい肴だったとしても同じだっただろう。

    途方もない怒りが全身を支配している時は、いつもそうだ。

     

    酒は何の効果もたらさず、料理も味を感じない。

    ただ吸収し、動くための燃料としてしか体が受け付けないのである。

    新品のボトルを十分足らずで飲み干すと、トラギコは適当な服を見繕って持ってきたスーツに着替える。

    脚の傷を触って確かめるが、まだ痛む。

     

    (=゚д゚)「くっそ……」

     

    カールを殺害した人間は、射撃に自信のある人間に違いなかった。

    夜の狙撃は非常に繊細な物だ。

    通常、狙撃とは湿気、風の動き、そして温度に左右されるもの。

    夜になるとそれに加えて、火災によって発生する風や熱の動き、そして視界の悪さが付け加わるからだ。

     

    風の動きを読まなければ銃弾は流され、別の標的に当たる事もあるし、外れる事もあり得る。

    あの時は風の動きが熱によって滅茶苦茶、そしてそれを判別するための目標物すら見えない状況だった。

    だが、だがしかし。

    その状況を踏まえて狙撃を行ってきた。

     

    いや、考えようによっては建物の陰から拳銃、もしくはライフルで撃たれた事も考えられる。

    かと言って、近距離であればマズルフラッシュや銃声を聞かせない位置から、目撃される事なく射撃をした事になる。

    それは現実的とは言い難い。

    目撃されずに近・中距離から狙撃してきたと考えるのが、最も現実的だ。

     

    消音器付きの中距離狙撃銃、VSSヴィントレスあたりが可能性としては最も高い。

    殆どが曖昧な事だらけだが、二つ確かな事がある。

    一つは、犯人はトラギコたちの声が聞き取れない距離から撃ってきた事。

    そしてもう一つは、襲撃者はトラギコとカールを間違えて撃ったと云う事だ。

     

    恐らくは暗視装置を使ったために二人の区別がつけられず、服装から判断して発砲したのだ。

    白衣を着ていた人間と、そうでない人間。

    カールの気遣いが、二人の生死を分けたのだ。

    もし、カールがあの時、白衣を着せていなかったら。

     

    背中を撃たれて倒れ、死んだのはトラギコの方だった。

    礼を言うべきか、それとも謝るべきかは分からない。

    それでも、彼の意志を尊重する事だけは確かだ。

    まず捜査をするべきは、病院周辺にある建物の屋上と空き部屋だ。

     

    薬莢を落としておくような馬鹿ではないと思うが、何かしらの手がかりが残っているかもしれない。

    可能性を探す事。

    それが捜査なのだ。

     

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    その店に入った瞬間、アサピー・ポストマンは店主から軽蔑の目を向けられた事を理解していた。

    店主だけでなく、居合わせた客からも汚物を見るような目で見られた事も知っていた。

    記者とは常に嫌われるものだ。

    嫌われると云う事は、それだけ情報を嗅ぎまわっている事の証拠であり誇るべき事だと、アサピーの先輩は教えてくれた。

     

    今なら言える。

    そんな事はない、と。

    人から好かれなければ欲しい情報もニュースも一向に耳に入らず、詳細は彼方へと遠ざかる。

    昔の自分にそれを教えてあげたかった。

     

    ジュスティアの膝元であるティンカーベルに事件など転がるはずもなく、そこに飛ばされると云う事は遠まわしに退職を宣告されたのと同義だと。

    それに気付いた時にはもう遅い。

    牛の出産の写真を撮り、迷い猫の捜索を行ったりと、新聞記者としては最低の仕事ばかりだった。

    でかい仕事が出来たと思えば、地元住民の妨害にあって記事に必要な情報や写真が手に入らないなど、

     

    しかし、トラギコの出現によってそれらは大きく変わる事になった。

    “虎”と呼ばれる刑事の話は、何度か聞いた事がある。

    本社に勤務している敏腕の記者が病院送りにされたり、高級なデータ保存式のデジタルカメラを粉砕されたりと散々な暴れ者。

    事件解決能力に関してはジュスティアでも屈指の人間で、関わった事件のほぼ全てを単独で解決している凄腕の刑事だ。

     

    中でも彼の名を広めたのは、“CAL21号事件”だ。

    アサピーがまだ記者になる前に起こった事件だが、今でもその残酷かつ理不尽な展開は克明に記憶している。

    一人の異常者が施設にいた女児たちを次々と犯し、殺し、その結果出た判決は無罪。

    無罪に喜ぶ犯人を殴殺したのは、トラギコだった。

     

    彼はこの事件の担当者で、判決が出た後も裁判官、検事、弁護士、その場にいて不服を言わなかった人間全員に怒鳴り散らした。

    その様子はラジオで流れ、あまりにも放送禁止用語が多く出過ぎた事で彼のやり方を非難する人が続出した。

    何故なら正義を重んじるジュスティアの人間がそのような言葉を使うのはどうなのか、と思う人間がいたからだ。

    特に、ジュスティアに住む人間からの文句が多かった。

     

    その後についてはよく分からないが、犯人が殺され事は覚えている。

    そんなトラギコと仕事を共に出来るとは夢にも思わなかった。

    正直、彼が怪我をしていなければあの場でサインでも求めていたかもしれない。

    ともあれ、現実的な事に目を向けると金が手元にほとんどなかった。

     

    要求されたものを買えないわけではないが、店側が気前良く売ってくれるのかどうか、そしてトラギコのネタが金に結び付くのか、それが心配だった。

    ともあれ、品物を用意しなければチャンスはない。

    この島で手に入れた数少ないチャンスだ。

    使わない手はない。

     

    品物を探して店内を歩くアサピーは、溜息を五回ほど吐いた。

    デジタルカメラを買うために貯めていた金をここで使う事になるとは思わなかった。

    記者になってからずっと貯めてきたのは、ジュスティアの高級店で見かけたニッコール製の一万五千ドルするカメラのためだった。

    発掘されたカメラを基に発掘された基盤や機材を繋ぎ合わせて作られたモデルで、世界で使われているデジタルカメラのほとんどがそれだ。

     

    発掘された太古の遺産を復元している職人、そして昔ながらの手作業を街の名物とする“ギルドの街”ラヴニカの品だ。

    いい品物はラヴニカから、と云う諺もあるぐらいだ。

    松葉杖を見つけ、加工に使えそうな工具もカートに乗せる。

    それを転がして会計を済ませ、乱暴に釣銭を受け取り、車に戻った。

     

    希望のカメラから遠ざかったのか、それとも近づいたのかは分からないが、アサピーの財布から百五十ドルがなくなった事だけは確かだ。

    車を走らせ、アサピーは銃の販売をしている店に向かった。

    銃を買うのは初めてではないが、この島に来て買うのは初めてだ。

    どこの店でもそうだが、銃を買う時には信頼関係が必要になる。

     

    客から強盗に転じるのはよくある事。

    同時に、店が強盗に転職する可能性もある。

    だから、店主に怪しまれずに銃を買わなければならない。

    一歩間違えば、店主は商品の動作確認を含めて発砲してくる。

     

    たどり着いたのは、住宅地から離れた場所にある古びた店の前だった。

    看板は錆だらけで店の壁は黒ずみ、店内の明かりがなければ店だとは分かるまい。

    廃墟だ。

    陰鬱な気持ちのまま店先に車を止めて店に入ったアサピーは、気付く事が出来なかった。

     

    ――路地裏から彼を見つめる瞳があった事に。

     

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    アサピーは二時間ほどで家に戻ってきた。

    その頃には火事は収まり、周囲の騒々しい空気もどこかに消えていた。

    残ったのは、焼け焦げた匂いだけだった。

    トラギコはアサピーから頼んだ品を受け取り、その質を確認した。

     

    ライフルはウィンチェスターのボルトアクションライフル、M70だった。

    狩猟用の銃として重宝されている一品だ。

    構造が単純なことから大量に生産された事もあるが、精度の良さと手頃な値段から猟師に好まれている。

    そのため、狩猟のためと言えば疑われずに買える一挺。

     

    良い選択だ。

    構造も簡単で、加工も容易に出来る。

     

    (=゚д゚)「ありがとよ。 尾行は?」

     

    さっそくドライバーとレンチを使って標準装備の光学式照準器を取り外しながら、トラギコは万が一のために質問をした。

    その質問が意外だったのか、それとも意味が分からなかったのか、アサピーは首を傾げて聞き返した。

     

    -@@)「尾行?」

     

    事前に言っておけばよかったと、今さらながらアサピーの職業を思い出した。

    新聞記者は追われる事に慣れていないのだ。

     

    (=゚д゚)「何事にも気を配っておいた方がいいラギよ」

     

    -@@)「大丈夫ですよ、尾行なんて来ないですよ」

     

    (=゚д゚)「どうかな。 まぁいい、メモの用意は?」

     

    -@@)「あ、大丈夫です」

     

    スコープを慎重に床に置き、発射機構の分解を始める。

    この時にバレルも一緒に取らなければならない。

    アサピーがメモ帳とペンを手にしたのを見てから、トラギコは先ほど自分でメモにした内容を噛み砕いて話し始める。

     

    (=゚д゚)「そもそも俺が病院にいたのは、足を撃ち抜かれたからラギ。

        撃った相手はまぁ、ジュスティア軍の人間ラギ。

        目的はお前と同じで情報を得るためラギ」

     

    -@@)「なら、何で撃つ必要があったので?」

     

    (=゚д゚)「俺が逃げたからラギ」

     

    ;-@@)「何故逃げたので?」

     

    (=゚д゚)「あいつら嫌いラギ。

        ……ってのは冗談で、俺は別の事件を追っていたから時間を使いたくなかったラギ。

        それに、俺は嫌われてるからそのまま事件の担当から外される可能性もあったラギ」

     

    取り外した発射機構を床に置いて、次に松葉杖に手を伸ばす。

    アルミ製の軽い物で、大きく三つのパーツに分かれている高さ調節が可能な物だった。

    脇の下に押し当てる部分、二股に分かれたパイプ、そしてまっすぐに伸びる伸縮可能な支柱。

    これがいいのだ。

     

    (=゚д゚)「まぁそんなわけで入院したわけラギ。

        1923時に火災に気付いて対応が始まったラギ。

        言っておくけど、あくまでも気付いた段階がその時間ラギ。

        発生時間とは違うラギよ」

     

    -@@)「なるほど、その時の病院の対応は?」

     

    (=゚д゚)「全く問題はなかったラギ。 避難が必要な患者から随時避難させたラギ」

     

    松葉杖の杖先を取り外す。

    今回は銃が一挺だけのため、一本だけ加工することになる。

     

    (=゚д゚)「問題だったのは、火の回る速さラギ。

        発覚とほぼ同時に消火が不可能と判断されるレベルの炎。

        間違いなく、放火ラギ」

     

    ;-@@)「ほほう」

     

    (=゚д゚)「で、ここからがもっと問題だったラギ。

        最後に俺が避難する事になったんだが、院内で発砲音がしたラギ」

     

    ;-@@)「発砲?」

     

    (=゚д゚)「俺は自分の荷物を回収するために金庫に寄ったんだが、そこに強化外骨格が出てきたラギ。

        黒い奴で、火炎放射兵装。 紛れもなくコンセプト・シリーズの奴ラギ。

        そして、放火の主犯ラギ」

     

    メモ帳にペンを走らせながら、アサピーは当然の質問をした。

     

    -@@)「どうして避難の途中で金庫に? 何を回収する必要があったんですか?」

     

    (=゚д゚)「俺がここに持ってきた荷物ラギ。

        まぁ、非常識なのは分かってたラギ。

        話を戻すラギ。 主犯は何故か俺を狙っていたラギ。

        口封じが目的だと考えるのが自然ラギね」

     

    空洞になった杖先に発射機構を入れるため、金属用の鋸で加工を始める。

    棹桿操作が行えるようにするには、一部を縦に切り取らなければならない。

     

    -@@)「何故口封じを?」

     

    (=゚д゚)「んなもん知らんラギ。

        ただ分かるのは、でかい組織が絡んでいるって事ラギね。

        その内の一人は、ショボン・パドローネって云う元警視、現探偵ラギ。

        そして、オアシズの事件の実行犯の一人ラギ」

     

    その時、眼鏡の奥でアサピーの目が輝いた。

    元警官がオアシズの事件、そして今回の放火事件に関係していると云う情報は、かなり貴重なものだ。

    恐らくはアサピー以外の記者は知らないだろう。

    この情報だけでも、アサピーは昇進出来るかもしれない。

     

    トラギコとしてはこれが記事になり、世界中に知られる事でショボンのいる組織が白日の下に晒されればと考えている。

    そうすれば、これまでのような秘密裏の行動も警戒されて破綻するかもしれない。

    あくまでも、邪魔が出来ればいい。

    そのためならば、例え警察本部に流していない情報だとしても喜んでマスコミに提供し、利用させてもらう。

     

    ;-@@)「なんて事だ……!!」

     

    (=゚д゚)「記事にする時に絶対に忘れないでほしいのが、あの火事で一番の功労者はカール・クリンプトンって男ラギ。

        この島の出身者じゃねぇが、かなり優秀な医者だったラギ……

        俺と逃げてる時、背中から撃たれて殺されたラギ」

     

    ;-@@)「なんと……誰に?」

     

    (=゚д゚)「それを調べるのが、俺の仕事ラギ。

        ……一応、簡単に概要をこっちでも書いておいたラギ、好きに使ってくれ」

     

    洗濯物の山に置いたメモ帳を顎で示し、トラギコは作業を続行する。

    ボルトと銃爪は支柱と二股のパイプの付け根に合わせる事で、秘匿性を高める。

    バレルは支柱の中に入れればいいし、ボルトなどもパイプに加工をすれば問題はない。

    発射機構が松葉杖の動きや射撃の反動でずれないように固定させる作業が、最も難しい。

     

    銃の反動はかなり強く、ライフル弾ともなれば拳銃の比ではないのだ。

    そこに加えてボルトアクションと云う強い負荷がかかる動作を考慮すると、溶接するぐらいでなければならない。

    が、溶接機を用意させるには金もかかるし何よりも目立つ。

    新聞記者が溶接の工具を何に使うのか、と云う疑念は瞬く間に住民間に広まってゆくゆくはトラギコの捜査にも支障をきたしかねない。

     

    そこでトラギコが考えたのは、非常にシンプルな方法だった。

    四方から差し込んだネジとボルトによる固定だ。

    アルミのパイプに穴をあけ、そこからネジを通してボルトと鉄板を使って発射機構を固定させる。

    単純だが確実だ。

     

    バレルは特に念入りに固定し、万が一にもずれないようにする。

    精度は低くても、狙い通りに弾が飛ばないと困るのだ。

    腋当て部分には予備の弾が収納できるように、クッション材を詰めた。

     

    (=゚д゚)「他のは?」

     

    -@@)「あ、これです」

     

    ずっしりとした袋の中には、長方形の箱が二つとケーブルが一本あった。

    箱の中を見ると九ミリ口径の通常弾とウィンチェスターのためのライフル弾が入っていた。

    本当は装甲の薄い棺桶にも通用する徹甲弾が欲しかったのだが、駄目だったようだ。

     

    -@@)「フルメタルジャケット? は売ってませんでした」

     

    (=゚д゚)「仕方ねぇラギ」

     

    ケーブルをアタッシュケースの淵に突き刺し、それをコンセントと繋いだ。

    これで、棺桶の充電が出来る。

    電気代についてはアサピーに頑張ってもらうしかない。

     

    (=゚д゚)「一先ずはこんなところで情報の交換はおしまいラギ。

        ほれ、さっさと支社に行って新聞にするラギ。

        本社に送るのも忘れるなよ」

     

    -@@)「ありがとうございます、トラギコさん!」

     

    (=゚д゚)「……いいから急ぐラギ」

     

    礼を言われる事は何もない。

    利害関係が一致していなければ、こんな事はしない。

    トラギコはカールの仇討を、アサピーはスクープを。

    それだけの関係だ。

     

    ――だから、彼が会社に行っている間に尾行者を処分するのはトラギコの役目なのだ。

     

    -@@)「じゃあ、ちょっと行ってきます」

     

    (=゚д゚)「人通りの多いところを行けよ」

     

    再び家を出て行ったアサピーが車に乗ったのを見届け、トラギコは窓の下にいる尾行者を目の端で見下ろした。

    黒いセダンはアサピーが帰ってくるのとほぼ同時に現れ、その後部屋を見上げられる位置に駐車されたままだ。

    運転手はそこから降りてきていない。

    見張られている。

     

    (=゚д゚)「……素人ラギね」

     

    スモークガラスでない上に街灯の下に駐車しているのが仇となり、中に乗っている人間の姿が見えている。

    素人ではあるが、トラギコがここにいる事を見つけ出している。

    恐らくはショボンの組織から指示を受けた人間だろう。

    一先ず窓を開け放ってからカーテンを閉め、部屋の電気を消した。

     

    追手ならば、殺せばいい。

    この場所に留まるつもりはないが、次に拠点とする場所のヒントを与えるつもりもない。

    こう云う時は、殺すに限る。

    サプレッサーが欲しいところだが、そんなものは――

     

    (=゚д゚)「お」

     

    ――代用品なら、あった。

    ペットボトルを使えばいい。

    作った仕込み杖の射撃性能を試す絶好の機会だ。

    車までの距離は目算で二十ヤード。

     

    狙撃と云うよりも、射的と言った方がいい距離だ。

    このぐらいの距離ならば、あまり誤差は出ないはずである。

    すぐに大きめのペットボトルに加工を施す。

    加工といっても底と飲み口を切り落とし、アサピーの衣服を中に詰めてテープで止めただけのものだ。

     

    杖先のゴムの部品を取り、音と熱が出ていくように数か所穴を開ける。

    そこに先ほどのペットボトルをはめ込むと、衣服とペットボトルがある程度の音を吸収してくれる仕組みだ。

    即席にしては上出来だ。

    まだ取り付けていなかった照準器を、把手の横にテープで強引に固定する。

     

    棹桿操作をしてから引き金を引いて、一先ずの動作確認を済ませる。

    がたつく事もなく、しっかりと撃針が落ちた。

    素早く初弾を薬室に入れ、ボルトでロックする。

    行動は早めに起こすに限る。

     

    部屋の奥へと移動し、衣類を山のように積み上げ、即席の狙撃台を作り上げる。

    警官時代に狙撃を行った経験が役に立つ時が来た。

    狙撃の成績は中の下。

    それも、高性能なライフルを使っての結果だ。

     

    今回はどうなるか分からないが、やるしかない。

    膝と腕を使って杖全体を抱え込むようにして固定し、車内を見る。

    人影は二つ。

    時折カーテンが動いて視界が遮られるが、どうにか確認は出来る。

     

    狙撃は忍耐が必要な攻撃だ。

    動じず、慌てず、静かにその時を待つ。

    だからトラギコは苦手だった。

    相手の動きを見る。

     

    五分、十分と時間が過ぎてゆく。

    そして、その時が来た。

    車の運転席、そして助手席の扉が開いたのだ。

    ここで焦ってはいけない。

     

    後部座席に人が残っている可能性がある。

    また、彼らがトラギコを狙っているのかもまだ不明だ。

    あくまでも尾行者の可能性が非常に濃厚である、と云うだけの話。

    現れたのは、十代半ばの少年たちだった。

     

    ピアス、服装、そしてその手にあるのは金属バットだ。

    これから野球の練習に精を出すような顔には見えない。

    何かを襲おうとしているのは間違いない。

    まだだ。

     

    まだ、撃てない。

    疑わしい、と云うだけでは人を殺せない。

    アサピーの部屋をバットで示したからと言って、彼らが敵だとは分からない。

    そうこうしていると、二人の少年はアパートに向かって歩き始めた。

     

    (=゚д゚)「くそっ……」

     

    もう少し血気盛んな若者であれば銃を手にしていただろう。

    それなら、気前よく銃弾を胴体に撃ち込んでやれたのに。

    そして二人は建物の死角に入り込み、終ぞ撃つ事が出来なかった。

    こうなっては仕方がない。

     

    残った車に照準を合わせ、人の動きがないかを見る。

    どうやら、中には誰もいないようだ。

    ボルトを引いて銃弾を取り出し、床に杖を置いた。

    この部屋に来られたらこのライフルでは戦えない。

     

    充電中の棺桶を使うか、それともM8000を使うか。

    答えは決まっている。

    棺桶を使うしかない。

    音を聞かれずに処理するには、肉弾戦で制圧するに限る。

     

    その場を離れ、アタッシュケースを手にする。

     

    (=゚д゚)『これが俺の天職だ』

     

    解除コードを入力し、籠手を両手に装着する。

    高周波刀も手に取り、トラギコは部屋の隅に身を潜め、落ちていた衣類を山にしてそこに隠れた。

    片足のハンデを考えても、チンピラ相手に負ける事はない。

    仮に相手が素人の振りをしたプロでも、強化外骨格“ブリッツ”があれば対処は出来る。

     

    ただし、相手が強化外骨格を使ってきた場合は例外だ。

    Bクラスのサイズにもなれば、トラギコは抵抗の末に殺される。

    そうでない事を願いながら、トラギコは敵襲を待った。

     

    『……な……っ……』

     

    玄関付近から人の声がしたのは、二分も経った頃。

    どのような手段で訪問してくるのか、それが問題だ。

    爆弾で扉をぶち破る事はしないだろうが、ショットガンでも持ち出されていたら事だ。

    室内であれに勝てる見込みがない。

     

    ドアノブが回り、扉が開いた。

    跫音を忍ばせて進入してきた気配は二つ。

    床を軋ませながら、土足で上がってきた。

     

    「すみませーん、隣の部屋の者なんですが……」

     

    気配の一つは現像室に向かい、もう一つがリビングに向かってくる。

    リビングに現れた男の手には、ナイフが握られていた。

    洗濯物の陰に潜むトラギコには、まだ気付いていない。

     

    「あびっ?!」

     

    予想外の悲鳴は、現像室の方から聞こえてきた。

    直後、床に固いものが落ちる音が続く。

     

    「どうした?!」

     

    その音に、男は廊下を振り返る。

    そして、悲鳴と共に倒れた。

    悲鳴を上げる前に飛来したワイヤー付きの二本の針を、トラギコは見逃さなかった。

    テーザーガンだ。

     

    しかも電圧が改造されているのか、悲鳴を上げて倒れた男は白目を剥いて痙攣を起こしている。

    瀕死の一撃。

    相手の動きを奪うためにここまでする人間を、トラギコは一人だけ知っている。

     

    (;=゚д゚)「ライダル・ヅーか?」

     

    肯定するように、廊下から現れた人影はリビングの電気を点けた。

    そこにいたのは、昼に見た時と同じ格好をした警視長官の専属秘書だった。

     

    瓜゚∀゚)「こんばんは」

     

    どうしてここが、とは訊かなかった。

    ジュスティアとティンカーベルは協力関係にある。

    街中の監視カメラの映像を調べれば、トラギコが逃げている様子も分かるはずだ。

    それをこの短時間で調べ上げた行動力は、流石としか言えない。

     

    そもそも、チンピラたちがトラギコの居場所を突き止められてヅーに突きとめられないはずがない。

    恐らく、チンピラたちよりも早い段階でトラギコの場所を突き止めていただろう。

    敵の動きを見るためにあえて襲わせ、トラギコが白である事を確認したのだ。

    ヅーは過程よりも結果を重要視する女だ。

     

    白黒を確認するためには、手段を選ばない。

    挨拶もそこそこに、ヅーは率直に用件を伝えた。

     

    瓜゚∀゚)「貴方の言っていた通り、なにやらきな臭い人間が動いています。

        ダニー・エクストプラズマンからも証言がありました。

        これはどう云う事ですか?」

     

    (=゚д゚)「知るかよ。 で、連れ戻しに来たラギか?」

     

    棺桶を取り外さなかったのは、襲われた際に抵抗するためだ。

    彼女のテーザーガンは時に死者を出す程強力な物で、それをまともに受ける気はない。

     

    瓜゚∀゚)「……結論から言うと、その逆です。

        円卓十二騎士でも始末できない輩が所属している組織が相手となると、我々は協力しなければなりません。

        そこで、トラギコさんには独自で捜査をしてほしいのです」

     

    らしからぬ指示だった。

    ジュスティアは集団行動を好む。

    だからトラギコは嫌われている。

    なのに、今さらになって単独行動を認めるとはどう云う事態の変化だろうか。

     

    (=゚д゚)「それは署の判断ラギか?」

     

    瓜゚∀゚)「私の判断です」

     

    (;=゚д゚)「熱でもあるラギか?」

     

    危うく言葉を失いそうになった。

    規律の鬼とも言われるこの女が、そのような特例的な指示を出す。

    これは異常である。

    明らかに、異常である。

     

    疑い続けなければならない事態だ。

     

    (;=゚д゚)「それとも何か、俺をはめるつもりラギか?」

     

    瓜゚∀゚)「どうしてそう云う考えしかないのですか?

         それとも不服ですか?」

     

    不服、と言えばその通りだ。

    不服なのは、ヅーの対応そのものにある。

    ある意味で、トラギコはヅーを信頼していた。

    規則に対しては馬鹿のように真面目な人間の変貌に、失望したのかもしれない。

     

    (;=゚д゚)「お前はいつも規則に従ってきた人間ラギ。

        そんな奴がいきなり規則に反するような事を言い出したら、誰だって疑うラギ」

     

    瓜゚∀゚)「まぁその通りですが、今回ばかりは特別です。

        ……貴方の担当医だったカール・クリンプトン氏ですが、射殺体で発見されました。

        合わせて、軍の人間二人が焼死体で発見。

        正直、これだけの事態を隠し通すのは非常に難しいのです。

     

        隠すだけならばまだいいのですが、脱獄犯の件もあります。

        私の見立てでは、この事態は更に混沌とした事になります」

     

    正しい見立てだ。

    恐らくは遅かれ早かれ、脱獄犯を始末しなければこの島は混沌と化すだろう。

    しかしその見立てが出来るようになるには、何かしら別の切っ掛けが必要になる。

    この女の固まった思考を柔軟にする切っ掛けとは、何なのか。

     

    (=゚д゚)「……何があったラギ?」

     

    瓜゚∀゚)「……何が、とは?」

     

    (=゚д゚)「お前をそうさせる切っ掛けラギ。

        それ以外にも何かあったんだろ?」

     

    しばしの沈黙。

    ヅーは、やや沈んだ声で言った。

     

    瓜゚∀゚)「私を信用できないのですか?」

     

    (=゚д゚)「あぁ、無理ラギ。 ショボンがあんな凶行に走ったのに、他の人間が大丈夫なんて保証はどこにもないラギ」

     

    これまで、トラギコの捜査についても疑念しか持ってこなかった人間を信用するのは難しい。

    ましてや、ヅーは規則一筋の堅物。

    その堅物が柔軟な対応をする裏には、何かがあるとしか考えられない。

    それこそ、純粋な善意を持っているのならば別だが、ことこの女には適応されない。

     

    警戒して対応をしていたトラギコは、彼女に現れた些細な変化に気付く事が出来なかった。

    落胆の色を浮かべた瞳が僅かに潤んでいた事など、トラギコには分からなかった。

    仮に分かったとしても、興味の対象外の話だったのだが。

     

    瓜゚∀゚)「……そうですか。 なら、好きにしてください。 私は私で動きます。

        ただ一つ警告しておきます。

        貴方が病院から抜け出した事を、警察と軍は把握しています。

        そして、アサピー・ポストマンと接触した事も」

     

    (=゚д゚)「早いラギね」

     

    瓜゚∀゚)「えぇ。 島中のカメラが警察の監視下にあります。

        どちらかと言えば、軍の方が貴方の捜索に躍起になっていますね」

     

    (;=゚д゚)「俺が何かしたラギか?」

     

    警察に追われるよりも軍に追われる方が悪い。

    彼らは情け容赦なく任務を遂行する機械だ。

    が、対処出来ないわけではない。

    ただ、性質の悪い女のようにしつこく追いかけてくるのが厄介なのだ。

     

    瓜゚∀゚)「彼らが欲しているのは、何故オアシズで“ゲイツ”が壊滅したのか、と云う情報です。

        その必要があれば、自白剤の使用も許可されています」

     

    (;=゚д゚)「……マジかよ」

     

    洒落や冗談では済まされない待遇だ。

    容赦なく足を狙ってきた軍ならば、手足の一本を吹き飛ばしてでも襲ってくるだろう。

    そこまでして今すぐに情報を手に入れなければならないと云うのか。

    何を焦っているのだろうか。

     

    必要なら、メモ書きで伝えることが出来る。

    軍内部に潜り込んだ人間のせいで全滅した、と。

    それを伝えることは非常に簡単だが、信じはしないだろう。

    あまりにも馬鹿げている、と一蹴されるのがオチだ。

     

    瓜゚∀゚)「グレート・ベルの近くにあるブライアンホテルの一室を借りました。

        そこを使ってください」

     

    今さら、恐れる事はない。

    ヅーが何を考えていようと、今はどうでもいい。

    警察がトラギコを利用しようと云うのなら、トラギコも彼らを利用するだけだ。

    全ては人生最後に相応しい事件を解決するための途中経過。

     

    (=゚д゚)「分かったラギ。 送って行ってくれるんだろうな?」

     

    瓜゚∀゚)「……それしか無いでしょう。

        それと、もう二つ。

        オセアンの事件に関係している意識不明の男が目を覚ましました。

        記憶障害が出ていて、証言を得られるまでには時間がかかりそうです」

     

    (=゚д゚)「……そいつぁ何よりな情報ラギ。 いいのかよ、そんな事まで俺に教えて?」

     

    その質問に対して、ヅーはまっすぐに目を見つめ返してから返答した。

     

    瓜゚∀゚)「それが二つ目。

        この事は、全て私の独断です」

     

    今度こそ、トラギコは言葉を失ってしまった。

     

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       |l ̄`~~| :|    | |             |l::::             同時刻

       |l    | :|    | |             |l::::          ジュスティアにて

       |l    | :|    | |   ''"´         |l::::

       |l \\[]:|    | |              |l::::

       |l   ィ'´~ヽ  | |           ``'   |l::::

       |l-''´ヽ,::   | |   ''"´         |l::::

       |l  /::      | ,'´____..:::::::::::::::_`l__,::::

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

     

    正義の都と呼ばれるジュスティアにある病院に、一人の入院患者がいた。

    あわや全身骨折に脳挫傷となりかけた患者は、全身に包帯を巻かれた状態でベッドの上にいた。

    白いベッドとは対照的に黒いスーツを着た男たちは、皆一様に険しい表情を浮かべて患者を取り囲んでいる。

    患者は二十代後半の男で、濁った血の色の目を持つ男だった。

     

    顔つきは剣呑で、少なくともまともな仕事をしてきた人間には見えない。

    服の下に見える体には無数の傷があり、筋肉もかなりついている。

     

    *´_ゝ从「で、何か思い出したか?」

     

    スーツの男が問うも、患者は首を横に振るだけ。

    男が目覚めてから何度も繰り返されてきた質問は、いまだ進展を見せない。

    患者の男はある事件の最重要参考人として、ジュスティア警察に保護されていた。

    オセアンで起こった事件を解決するために必要となる、貴重な情報を持っているとされているからだ。

     

    男が生きている事は奇跡に近かった。

    貴重な情報源だけでなく、貴重なモデルケースとなった。

    即ち、高層ビルから落下して生還した数少ない人間の一人、と云うモデルだ。

     

    *´_ゝ从「そうか…… じゃあ、何かイメージでもいい。

           こう、頭に浮かんだ光景とかはあるか?」

     

    スケッチブックと鉛筆――無論、先端はあえて潰してある――を渡された男は、慣れない手つきで絵を描き始めた。

    これは初めての進展だった。

    周囲の男達が固唾を飲んで見守る中、スケッチブックには一人の女性の姿が浮かび上がってきた。

    上手くはないが、特徴を捉えていると考えられる。

     

    軽くウェーブした髪。

    そして、マントもしくはローブを着た優しげな眼をした女性だった。

     

    *´_ゝ从「これは女性か?」

     

    男は頷く。

    実のところ、男が声を発した事はこれまで一度もなかった。

    故に男はサイレントマンと呼ばれていた。

     

    *´_ゝ从「この人がどうしたんだ?」

     

    男――サイレントマン――は首を横に振る。

    言わんとする事が分からなければ、捜査の役には立たない。

    ログーランビルから落ち、トレーラーの上に落下した男。

    名持ちの強化外骨格に身を包んでいた男。

     

    その男の口が、ゆっくりと動いた。

     

    「……会いたい」

     

    サイレントマンの第一声。

    それは、求める言葉だった。

     

    ( ゙゚_ゞ゚)「この人に、会いたい……」

     

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

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         ll::::::::::::.,' -―‐- 、 'i,:'!  ゙ ,. , -,,z=

    .    l!::::::::::::!   ._,,,_' ,ヾi,:i,   シ',r'"{:.`''AmmoRe!!のようです

        l|l::::::::::::l , z,=r;;テミ、', li,   '゙ _,,`

        ゙il::::il ',:::l '´ ヾ.''゙ノ   '! ':,        Ammo for Tinker!!

        li,''゙ ゙' l `' = ''"  l  丶

         l,',, :'i,          l            第四章 了

         ll:::::::::',         l

         ll>::::::',      〈 _ _

     

                         To be continued...!!

     

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