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序章【beater-勢子-】

  1. 名前: 歯車の都香 2017/04/16(日) 13:05:00
    序章【beater-勢子-】

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    In that Island, the peal of Great Bell has the job that cautions everything's beginning and ending.

    その島において、グレート・ベルの鐘の音は全ての始まりと終わりを告げる役割を担っている。

     

                             ロウテック出版 【初めての“鐘の音街”観光ガイド】

                                               二ページ目より抜粋

     

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    自然の生み出す音だけが聞こえる、静かな夜だった。

    鬱蒼と生える木々が風に揺らされ、潮騒の様な音を鳴らし、虫々と鳥の鳴き声がそれに合の手を入れる。

    僅かに欠けた巨大な月は柔らかく白い輝きを放ち、夜空に浮かぶ雲の輪郭と女性の脚を思わせる見事な山の尾根を照らしていた。

    乾いた潮風は涼しく、夏のうだるような暑さを海の彼方へ押しやる。

     

    四方を透明度の高い海に囲まれ、自然豊かな複数の島で構成された街。

    ジェイル島は、そんな街の最南端に位置する小さな島だった。

    海岸には長い年月を経て風雨と潮が削った鋭利な岩が転がり、剥き出しの自然がそこかしこに溢れている。

    だが未開拓の島と云う訳ではなかった。

     

    島の森全体は夜の心地よい静寂その物に包まれ、そこに生きる生物たちは静かな夜を過ごしていた。

    巣で眠りにつく鳥もいれば、悲しげな声で鳴く鳥もいた。

    虫は次の世代を残すために異性を呼び寄せる音を鳴らし、雑木林の間から多様な音の混声合唱が聞こえる。

    僅かな光を吸収して光る獣の眼は、跫音を忍ばせ獲物となる動物の姿を探してゆっくりと上下する。

     

    獣たちは地面に鼻を寄せて匂いを追いながらも、小さな体で賢明に音色を奏でる虫を極力踏まないようにと足を進める。

    月光が森に落とす影は濃く、木々の間から木漏れ日のように降り注ぐ青白い光は日光よりも柔らかく儚い。

    僅かな蒸気がゆらりと天に上る様子が、月明かりによって幻想的な光景として目視できる。

    水辺の近くではカエル達が不思議と統制の取れた音楽を演奏し、川のせせらぎが森のざわめきと合わさって胎内を思わせる音を奏でている。

     

    静かな夜を過ごそうとする点で言えば、急な坂道を登り切った崖の上にある“セカンドロック刑務所”の囚人たちも同様だった。

    収監された死刑囚たちは死刑執行までの間、最期の時間を牢獄の中に鎖で繋がれて過ごしていた。

    殺人鬼、強姦魔、詐欺師、泥棒など彼らの犯罪歴はばらばらだが、誰一人として、そこでの生活に満足はしていなかった。

    自由を失い、誇りを失い、そして命を奪われるだけの余生に満足する人間は、そこにはいない。

     

    他者に対して与えた苦痛や屈辱を考えれば、然るべき処遇なのだと自覚する者もいるが、それでも、望むのはやはり自由。

    再び自由を手にして、再び己の心の赴くままに行動したいというのが、受刑者全員の望みだった。

    同時に、罪を犯した人間が自由を望むことを許す被害者もいない。

    被害者が望むのは、徹底的な苦痛の伴った贖罪だ。

     

    苦痛と汚辱に塗れた余生を過ごし、後悔に満ちた死を遂げさせる。

    それこそが、被害者が最初に抱く自然な感情。

    その感情を実現させる場所が、ここ、セカンドロック刑務所だ。

    セカンドロックはジェイル島自体が刑務所としての役割を持つように設計された、監獄島だ。

     

    その名前は世界で最も有名だった刑務所にあやかって付けられのだが、その性能は決して名前に負けることはなかった。

    厳重な警備、設備、全てが一流揃いの施設だ。

    当然、刑務所である以上は避けられない脱獄者は何人もいた。

    しかし、誰一人として脱獄に成功した者はいない。

     

    厳重極まる監獄からの外に出たのは、セカンドロック設立から現在に足るまでに一度だけ。

    八十七年前に起こった三人の脱獄未遂事件。

    それに関わった三人の犯罪者たちは、週に一度だけある運動の時間の際に打ち合わせを行い、一年で計画を実行に移した。

    脱獄の方法は極秘とされ、分かっているのは三人が嵐の夜を選んだということだけだった。

     

    しかし全員が島の土を踏む前に、計画に勘付いた看守たちによって捕らえられ、監獄の中央で嬲り殺しにされた。

    非人道的な殺害の光景は全ての囚人に見せつけられ、殺人鬼でさえ、目を背ける程だった。

    死体は見せしめとしてしばらくの間そこに放置され、やがて、死体が放つ悪臭に囚人たちは三日間食事が出来なかった程だという。

    今でも床にその痕跡が残っていると、当時からいる人間は語っている。

     

    刑務所を上空から見ると綺麗な正五角形をしており、それぞれの頂点には監視塔が立てられている。

    そこから周囲を監視するのはサーチライトと人の眼、そして温度を識別する機械の眼だった。

    強力な熱感知カメラの情報は逐一監視室でチェックされ、六時間ずつのシフトで二十四時間交代の監視がされている。

    脱獄を補助しようとする人間など、万が一不審な物があれば、監視室から遠隔操作で機関銃を撃つことも出来た。

     

    施設は外壁を強固な鉄筋コンクリートで固め、外壁と内壁の間には分厚い鋼鉄の板が埋め込まれ、隙間はない。

    コンクリートは劣化を防ぐための薬品が混ぜて練られた物で、数世紀の時が流れたとしても強度はほとんど変わらず、戦車砲の直撃にも耐えられる。

    内側の壁や床は同一柔軟性のある素材で保護され、自殺と脱獄の両方を防いでいる。

    受刑者全員に与えられた独房に窓もライトもなく、常に薄暗がりの中での生活が強いられている。

     

    ベッドはおろか、毛布すらなく、あるのは排泄用の携帯便座が一つ。

    鉄格子の代わりに設けられた五十口径の銃弾も防ぐ強化アクリルには、空気穴と食事受け渡し口の穴だけが空けられていた。

    嘗て脱獄王として名を馳せた東洋人が行ったように、食事に出されたスープを使って金属を錆びさせての脱獄もまた、不可能だ。

    偶然金属片を手に入れたとしても、房を開けるためにはカードキーが必要になる。

     

    両手足の親指同士が結束バンドで巻き付けられ、更には手錠、足錠が嵌められた上に、それが鎖で壁に繋がっていた。

    手先が器用な人間でさえも、指と手足の付け根を押さえられてはどうにも出来ない。

    また、大きな吹き抜けを囲むようにして独房が設置されているため、誰かの目を盗むことは不可能だった。

    これが、施設が五角形の理由の一つだ。

     

    創設から長い時代が経過した今も尚、脱獄不可能と言わしめる堅牢な警備の維持には、“正義の街”ジュスティアの協力があった。

    正義を貫くことを誇りとするジュスティアの街から出た犯罪者の中でも、特に極悪とされる人間はここに運ばれる。

    汚点を街に残さず、別の場所で罪を償って死んでもらいたいという、街の方針だった。

    勿論、ジュスティアはそれを強要することはしていない。

     

    島の警備に軍人や装備を惜しげもなく提供し、相互扶助の関係を保っているのだ。

    ここはジェイル島。

    またの名を、監獄島。

    罪人が死をもって罪を償うために辿り着く、最果ての島。

     

    ――八月八日、午後九時三十七分にそこを訪れた人物によって、ジェイル島が持つ長い記録が終わりを告げた。

     

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                      ,,,.ii..,               The AmmoRe!!

                    ,,..,ll::;;liii|,,..,,,         原作【AmmoRe!!のようです】

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    サーチライトが空と海、そして地上に広がる闇に向けられ、影の中にある翳を照らし出す。

    小動物が強烈な光に怯えて逃げ、森の奥深くに走り去る。

    そして、それを狙っていた肉食獣が狩りを始める。

    白と黒で熱源を示す映像を見る監視室の男達は、何も異変がないことを確認してから、別の方向にカメラを向けた。

     

    藪に潜んで脱獄補助のチャンスを窺う愚か者は、今日もいない。

    監視員たちはそれでも気を抜かずに、注意深く闇に浮かぶ熱源を見ていた。

    濃く淹れたコーヒーを飲んで眠気を覚ましつつ、BGM代わりに流しているラジオの声に耳を傾けるのが、彼らの日課だった。

    厳戒態勢の敷かれた警備網を突破するためには、唯一の入り口から来るしかない。

     

    刑務所唯一の入り口は崖を背にした施設の正面にあり、そこに続く道は未舗装の状態だ。

    装輪装甲車で攻め入られたとしても、その悪路が機動力を削ぎ、迎撃を容易にする。

    また、道の脇には対戦車地雷も設置されており、一定の重量を超える乗り物がそこを通ると爆発する仕組みになっていた。

    近々指向性対人地雷も設置する案が出ており、来月中には実現する予定だった。

     

    入り口から監獄に行くまでには、二重の警備態勢が敷かれていた。

    外部の重役であろうと面会希望者であろうと、その対処は同一とされており、変装や裏切り行為による事故の発生を封じている。

    第一段階は、施設に続く分厚く背の高い鋼鉄の扉の前で、身分と所持品の確認を行う。

    あえて屋外で検査をすることにより、危険物を施設内に持ち込まれる危険性を無くしたのだ。

     

    第二段階では施設に入り、最新の機器を用いて改めて所持品の検査を行う。

    体内に隠し持った微細な金属片、更には毒物でさえ見逃さない。

    全ての検査が終わり次第、特殊繊維の枷を両手に嵌め、一人に対して三人の警備員が監視に付く。

    不審な行動が見られ次第、彼らには射殺許可が下りていた。

     

    夜も深まった九時三十七分、左右を深い森に挟まれた荒れた道に現れたのは一人の禿頭の男だった。

    特徴的な垂れた眉毛は一見して温厚そうな印象を与えるが、眼光の鋭さは彼が只者では無い事を雄弁に語っている。

    その日、第一ゲート前で警備に当たっていたのはビオ・ブランドーとダノン・プレーンの二人だった。

    ジュスティア出身の二人はその男を見た時、コルト・カービンライフルの安全装置を無意識の内に解除していた。

     

    今晩この刑務所を訪問する予定の人間と言えば、ジュスティアから来る査察のヘリコプター以外はいないはずだ。

    招かれざる客と考えた方がいいと、ビオは判断した。

     

    ::,J,::)「止まれ」

     

    ビオは銃口を向けた。

    彼の背後の建物から溢れる光が、男の顔を照らし出す。

    光に照らされた青白い顔は無表情だったが、気だるげに垂れ下がった眼には狂犬と同じ類の光が宿っていた。

    黒いポロシャツにジーンズ姿とラフな格好で、武器は手にしていない。

     

    禿頭の男は指示通りに歩みを止め、淀んだ目でこちらを睨む。

    場数を踏んだ人間の眼だ。

    服をしたから持ち上げる過度に発達した筋肉は、ボディビルダーの比ではない。

    肌に刻まれた細かな傷は、これまでに通り過ぎた道の険しさを物語る。

     

    アポイントなしでも受刑者に面会することは出来るが、身分と持ち物を検査する必要がある。

    今この段階で、この男を門前払いにすることは出来ない。

     

    ::,J,::)「ここは刑務所だ。 観光客の来る場所じゃない」

     

    「分かっているさ。 僕は面会に来たんだ。

    僕は記者だ」

     

    カメラも持たない記者など、妙な話だ。

    だがこの施設内ではカメラは禁止されている。

    それを知った上で持ち込んできていない可能性もあり、怪しむ要素にはなり得ない。

     

    ::,J,::)「記者? 誰に取材するつもりだ?」

     

    「デミタス・エドワードグリーンと、シュール・ディンケラッカーだ」

     

    今世紀最悪の泥棒、デミタス“ザ・サード”。

    そして今世紀最悪の誘拐魔、シュール“バンダースナッチ”。

    どちらも一年以内の処刑が決定している人間のカスだ。

    逮捕されてから少なくとも三年――生き地獄を味あわせるため最低限与えられる期間――は経過しており、記事にするには旬な人物とは言い難い。

     

    三世を意味する“ザ・サード”と云う渾名は、彼が盗みの前に送り付けた予告状の中で、自らが伝説の怪盗の孫だと主張していたからである。

    デミタスは歴史的、芸術的に価値の高い物を盗み、高値で売り払った。

    その被害総額は天文学的な物で、盗まれた品の多くは闇市場に流れ、未だに手がかりが掴めていない。

    彼が捕まったのは、ジュスティア軍が保管する貴重な棺桶を盗もうとして失敗したからだ。

     

    事前の情報もあったが、過去五回も被害を出したジュスティアの意地もあった。

    ジュスティアは世界中にある警察の本部ある街で、正義の代行者としての自負と責任があった。

    軍に向けて予告状を出したデミタスを捕らえるために“円卓十二騎士”が投入され、デミタスは捕らえられた。

    その場で殺すことも出来たが、ジュスティアとしては愚か者には長い苦しみを味あわせたかったこともあり、セカンドロックに投獄された。

     

    世界各地を転々としながら誘拐と人身売買を行ってきたシュールもまた、一時期は話題になった犯罪者だが今では風化しつつある。

    主に十三歳未満の子供を対象として誘拐、監禁、凌辱の限りを尽くしてから売り払う悪質な手段。

    悲鳴を残すことなく子供たちを誘拐する手際の良さと、抵抗と逃走を防ぐために両手足の腱を切断することから、“バンダースナッチ”の名で知られた。

    高額な現金取引が主な人身売買界の大物として、その業界に巨大なコネを持っていた彼女は、居場所すら簡単には捕まらなかった。

     

    分かっているだけでも二十の隠れ家があり、その地下からは子供たちの様子が記録されたデータが見つかっている。

    そのデータは高額で取引され、世界各地の変態の欲望を満たすために使われたらしい。

    売られた子供たちは、まだそのほとんどが見つかっていないという噂だ。

    奴隷として売られているのならばまだ探しようがあったが、高額で取引される臓器移植目当てとなると、最早救助は絶望的だった。

     

    そんなシュールを捕らえたのは、人質解放を専門とする会社の人間だった。

    その人物はシュールの隠れ家を突き止め、単身で突入し、見事に子供たちを救出した。

    救助された子供の中には両足を切断され、傷口を焼いて塞がれた子供もいたという。

    彼がいなければと思うと、ぞっとする。

     

    ビオは目の前にいる自称記者の男に、嫌悪感を覚えた。

    あの人でなし共に今更何を訊く必要があるのか。

    今すぐにでも縊り殺してやりたいと思って止まない犯罪者に、何を訊くというのか。

    それでも、仕事とは切り離して考えなければならないのが辛いところだ。

     

    ::,J,::)「……ボディチェックを」

     

    「あぁ、分かった。 ところで、この後すぐに連れが来るんだ。

    どうにも膀胱が弱くてね。

    だから面会者は二人になる」

     

    そう言って、男は親指で背後の森を指した。

    どこかで用を足してくるというと、男だ。

    感心できることではない。

    監視塔からその姿は見えているだろうし、何よりその格好のまま死んでも大変だからだ。

     

    ,,,_ア゚)「ここは野生動物や毒を持った虫が多い。

         藪に行くのはあまり感心しないな」

     

    「一刻を争うって言っていたからね。

    さ、始めてくれ」

     

    ダノンがビオに目配せし、ビオは頷いた。

    ライフルを背中側に回し、ダノンは金属探知機を使って男の体を念入りに検査する。

    金属反応は出なかった。

    続いて、衣服の中のチェック。

     

    例えば、プラスチックで作られたペーパーナイフでさえも、使い方一つで凶器になる。

    ここでは、どんな小さな物も見逃すわけにはいかなかった。

    靴を脱がせ、中敷、靴底、靴紐に至るまで念入りにチェックする。

    ベルトも外して素材や隠された物がないかも確認した。

     

    結局、男の体から出てきたのはボールペンと新品のメモ帳だった。

    メモ帳のリング部分は厚い紙で作られていたために、持ち込みが可能な品だった。

     

    ,,,_ア゚)「悪いが、ボールペンは禁止だ。

         中にある羽ペンを使ってもらう」

     

    「構わないよ。 書ければいいんだ」

     

    メモ帳だけを返された男はそれをジーンズのポケットにしまった。

    ほどなくして、もう一人の男が藪から現れた。

    十字教のキャソックに身を包んだ程よい肉付きをした、長身の神父だった。

    茶色の髪の毛は短く刈られ、円らな碧眼は凪いだ海のように穏やかだった。

     

    禿頭の男に比べると怪しげではない。

     

    「こんばんは、皆さん。

    すみません、お待たせしてしまって」

     

    温和そうな表情をした神父は、首から金色の輝きを放つシンボルを下げていた。

    奇妙なシンボルだった。

    十字教のそれではない。

    木が枝を伸ばした、変わったシンボルだった。

     

    「所持品検査ですか。 では、私もお願いします」

     

    再びダノンが金属探知機を手に神父を調べた。

    服の中も調べたところ、神父が持ち合わせていたのは首から下げた金色のネックレスだけだった。

     

    ,,,_ア゚)「それをお預かりしても?」

     

    「出来る限りご配慮いただきたいのですが、無理は言いませんよ」

     

    ダノンが意見を求めてきたので、ビオは頷いた。

     

    ,,,_ア゚)「いえ、お持ちになっていて結構です」

     

    肩の無線機を取り、ビオは第二ゲートに連絡を入れた。

     

    ::,J,::)「こちら第一ゲート。 男性二名がそちらに向かう。

         一人は記者で、もう一人は神父だ」

     

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                                配給

     

    Low Tech Boon】→ttp://lowtechboon.web.fc2.com/ammore/ammore.html

     

    Boon Bunmaru】→ttp://boonbunmaru.web.fc2.com/rensai/ammore/ammore.htm

     

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    第二ゲートは施設に通じる最後の検問所だ。

    十平方メートルほどの空間は薄暗く、空気は乾いている。

    一切の装飾品の無い白い部屋には、ジュスティアから派遣された腕利きの軍人が四人いた。

    その晩、そこを守る四人の軍人は現れた二人の男を見て、警戒心を露わにした。

     

    神父は笑顔だし、禿頭の記者は無表情だ。

    危険を感じる要素は特に見当たらないが、それでも、彼らの直感が告げるのだ。

    この二人に気を許してはいけないと。

    それもそうだ。

     

    ここは極悪非道な罪人を収容する場所。

    そこを訪れる人間が、普通であるはずがない。

    第二ゲート警備担当者、ビブリア・ガガーリンは己の勘に従ってライフルだけでなく、拳銃の安全装置も解除した。

     

    +゚べ゚+)「目的は?」

     

    「取材だよ」

     

    禿頭の男が答えた後に、神父が続く。

    胸元に右手を添えて、若干腰を屈めての礼のおまけつきだ。

     

    「そのお手伝いに」

     

    +゚べ゚+)「どこの社の取材だ?」

     

    ビブリアはあくまでも慎重に、男達の本質を見極めようと決めた。

    こうして尋問している間にも、床、天井、壁に仕掛けられた高性能な探知機が男達の体に危険な武器や脱獄用の道具がないかを調べている。

    部屋全体が赤くなれば何か発見したことを知らせ、何も変化がなければ危険性は低い事を示す。

     

    「僕たちは会社には属していないよ」

     

    飄々とした禿頭の男の発言に、ビブリアは眉を顰めた。

     

    +゚べ゚+)「社でなければ、自費出版の類か?」

     

    新聞社やラジオ会社が今更あの二人の事件を特集するとは考えにくい。

    ならば、誰かの偏執的な執念で行われる取材と云うことだ。

    パラノイアは時に思いもよらぬ行動を招くことがある。

    その最たる例が、受刑者に対する執拗な追跡だ。

     

    しかし、それは然るべき理由があったために、当然の報いとして認知されていた。

    それが受刑者たちの精神に多少なりとも揺さ振りをかけることが、数多くの歴史の中で証明されていた。

     

    「出版はしないさ。 あくまでも、取材だよ。

    さ、時間がない。 拘束具を」

     

    禿頭の男と神父は腕を体の前で組んで、捕縛を催促した。

    全ての質問に対して二人の男から有益な情報は得られなかったが、ビブリアはこれ以上訊くことを止めた。

    この男は、被害者に雇われた類の人間の可能性が高かった。

    時々あるのだが、探偵などを雇って事件の真相を知ろうとする被害者がいる。

     

    探偵の中には様々な経歴の持ち主がおり、ただならぬ雰囲気を漂わせる人間も、勿論その中にいる事が多い。

    それに、通常の検査に必要な時間よりも多めに待たせたが、反応は何もない。

    後ろで待機していた部下に合図をして、二人の両手首に特殊繊維の枷を巻き付けさせた。

    幅の広く分厚い繊維の枷は対象者の手首を痛めることもないし、抜け出すための技も存在しない。

     

    ::0::0::)「では、こちらへ」

     

    カービンライフルで武装した兵士が六人、面会希望の二人を囲みながら歩き始めた。

    重々しい音を響かせながら開いた扉を潜ると、そこにはアクリルの扉が付けられた独房に閉じ込められた囚人たちが並んでいた。

    特徴的な五角形の吹き抜けがフロア全体に解放感を与え、天井には外部の光を取り入れる――朝から昼までの貴重な光源――為の巨大な強化ガラスがはめ込まれている。

    夜になれば、そこから月を見上げることも出来た。

     

    五つの壁と水平になるように並ぶ五階建ての棟はAからEまでの五つの棟に分けられており、天井と壁から離された形で設計されている。

    全ての棟が向かい合う形となっており、脱獄だけでなく互いの様子までもが筒抜けの状態だ。

    その棟は一つの階に二十人を収容することが可能で、それが五階分積み重ねられている。

    一階から五階までは転倒防止用の手摺が付けられた階段で繋がっている。

     

    都合、一つの棚に百人が収容されている計算だ。

    つまり、ここには五百人の死刑囚がいると云う事になる。

    倉庫に積まれたコンテナ、もしくはペットショップのショーケースを思わせる光景だ。

     

    「僕はデミタスを。 君はシュールを頼むよ」

     

    「分かりました」

     

    歩く速度を全く変えず、視線すら交えずに二人はそれぞれの目的の場所に向かう。

    兵士達も二手に分かれ、左右と前方に立って誘導を始めた。

    どうしても悪寒が消えないビブリアは、少し離れて禿頭の男の後ろを追うことにした。

    目的の独房はB棟の五階にあった。

     

    階段を上り、房の前に着く。

    男が羽ペンとメモ用紙を手にその前に立つと、中で丸まって寝ていたデミタスが薄目で見た。

     

    「やぁ、起きたかい?」

     

    (´・_ゝ・`)「……誰だい、あんた」

     

    力無く答えたデミタスは三十代後半のはずだったが、二回りは歳を取って見えた。

    逮捕時とは異なり、癖の強い髪の毛は肩まで伸び、脂ぎっていた。

    口髭も伸び放題で、痩せこけ、目は眼窩に落ち窪んでいる。

    細身で長身の手足に付いた筋肉も落ちていて、枯れ木の様だ。

     

    彫りの深いハンサムな男だったが、今ではもう見る影もない。

    元々の人相から大分変ってしまっているが、掠れたような渋い声色だけは昔の面影を残している。

     

    「僕が誰だっていいだろう?

    それより訊きたいことがある。

    君は、この世界を変えたいと思うかい?」

     

    (´・_ゝ・`)「おい看守の旦那、こいつ何なんだ?

          今更精神科医を頼んだんじゃないだろうな」

     

    デミタスは面白くもなさそうな声色で問いかけるが、兵士たちは三人とも肩をすくめた。

    この男が何者なのか、それを訊きたいのはこちら側なのだ。

     

    「僕は君がしたことを知っている。

    盗みの理由を知っている。

    “あの子達”が君に感謝していることも、知っている」

     

    (´・_ゝ・`)「……あんた、一体」

     

    「今すぐに返事を聞かせてほしい。

    僕と一緒に来る事で君が望んだ世界を叶えられるとしたら、どうする?

    世界を、変えたいかい?」

     

    何を。

    何を話しているのだ。

    何の話をしているのだ。

    階段で待機して聞き耳を立てていたビブリアは、不穏な空気を悟って腰のホルスターからコルトを抜いた。

     

    発言次第では、拘束しなければならない。

     

    (´・_ゝ・`)「……あぁ、そうだな」

     

    デミタスは返事をした。

    これが取材で無い事は明白だ。

    そして一連の会話は、デミタスの脱獄に手を貸すということを意味していた。

    男を取り囲む兵士たちがライフルを向ける。

     

    至近距離でのライフルは、使用者にとって非常に危険だ。

    距離が近い分、得物が持つ長さが仇となることが多い。

    近接戦では拳銃を使うか、せめてブルパップ式のライフルを使うのがセオリーだ。

    咄嗟の事に、兵士たちはそんな初歩的なことも忘れてしまっていた。

     

    後は、坂道を転がり落ちる石のように事態が動き始めるだけ。

     

    +゚べ゚+)「おい、おま――」

     

    (´・ω・`)「じゃあ、新鮮な空気を吸いに出かけようか。

         善は急げ、だ」

     

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    来訪者の神父に対して、ティメンション・マルタは奇妙な感覚を抱いていた。

    男の眼は優しげだし、物腰も柔らかい。

    おおよそ暴力とは無縁のお花畑で生きてきたような、そんな雰囲気すら感じ取れる。

    しかし、男の佇まいからは音を発しないスズメバチのように危険な雰囲気も感じ取れるのだ。

     

    スズメバチは攻撃をする前に警告をする。

    警告の後には猛烈で容赦のない攻撃がある。

    だが、彼らは羽音と警告音で周囲の生物に己の存在、そしてその危険性を知らせる。

    彼らから音を取った場合、恐るべき暗殺者となる。

     

    その存在を認識できるのは、攻撃された後なのだから。

     

    「シュールさんはどんな様子ですか?」

     

    神父の質問にマルタは短く答えた。

     

    IeUeI「ここに来てからは誰とも一度も口をきいていない。

          大人しく過ごしているが、人は見かけによらないぞ」

     

    「その通りですね」

     

    会話はそれで終わった。

    四人はシュールが鎖で繋がれた檻の前に到着するまで、無言のままだった。

    シュールが収監されている独房は、E棟の一階にあった。

    垢と埃で汚れた布一枚で体を覆う女性が、独房の中で半身を壁に預けて地面に座り込んでいた。

     

    半分だけ開いた目は虚ろで、ブラウンの瞳は光を反射していない。

    以前は整っていた顔も、頬骨が見えるまでに痩せこけている。

    瑞々しかった唇は渇いてひび割れを起こし、荒れている。

    腰の辺りまで伸びた黒髪は櫛を一度も通していないため、ごわごわとしている。

     

    艶はなく、栄養が行き届いていないのが一目で分かる。

    女らしさが残っているとしたら、布きれの下にある小振りな胸ぐらいだ。

     

    lw´‐ _‐ノv

     

    独房の中のシュールはただ茫然と壁を眺めており、強化アクリル板の向こうにいるマルタたちに一瞬たりとも視線を向けようとはしなかった。

    この女は何を考えているのは分からない。

    分かるのは、子供たちを誘拐し、売り捌いたことだけだ。

    歳は確か、三十代手前だったと聞いたことがある。

     

    IeUeI「会話の内容は全て記録させていただきます」

     

    「勿論、構いませんよ。

    ……やぁシュールさん、今晩は」

     

    lw´‐ _‐ノv

     

    声をかけても、シュールは反応しない。

    無駄だ。

    昔は違ったかもしれないが、今は会話が成立する人間ではない。

    ジュスティア軍の尋問係が子供たちの行き先を吐かせるために一カ月かけて聞き出せたのは、彼女の悲鳴だけだったという。

     

    女にしか通用しない尋問や薬も使ったが、シュールは悲鳴以外喋らなかった。

    そこまでいくと、心に異常があると考えるしかない。

    拷問や尋問を耐え抜くには、コツがいると聞いたことがある。

    それは、自らの意志で精神を崩壊させるという手だ。

     

    何度も何度も、自分自身に問いかけて心を壊すのだ。

    本当に自分はここにいるのか。

    痛みを感じているのは、本当に自分なのか。

    これは悪夢であって現実ではないのか、と。

     

    そうすれば、何も喋らずに済む。

    ただし、一度壊れた心が元に戻ることはない。

     

    「そのままでいいから聞いて欲しい。

    貴女は、世界を変えたいと思いますか?」

     

    lw´‐ _‐ノv

     

    気のせいだろうか。

    一瞬だけ、シュールの眉毛が動いたように見えたのは。

     

    「貴女が誘拐をした経緯を、私は知っています。

    ……それもまた、世界を変えたかったからでしょう?」

     

    シュールの眼が、確かに神父を向いた。

    その眼は鋭い眼光すら放っており、先ほどまでとはまるで違う人間に見えた。

     

    「私達に手を貸してくれませんか?」

     

    lw´‐ _‐ノv「……目的は、何?」

     

    男は胸から下げたシンボルに手を当て、優しげに、だがしっかりとした口調で答えた。

     

    ( ・∀・)「世界が黄金の大樹となるために」

     

    その言葉の直後、B棟の方から肉を叩きつけるような音が聞こえてきた。

     

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          _______

        || ____   | |

        || |    ||   .||         総合プロデューサー

        ||.  ̄ ̄   ||        アソシエイトプロデューサー

        ||.        ||        制作担当【ID:KrI9Lnn70

        ||.        ||

        ||.  |三三| ...||

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    禿頭の男、ショボン・パドローネは一呼吸で勝負を決めようと考えていた。

    理由は二つ。

    一つは敵に余計な動きをさせたくなかったから。

    そしてもう一つは、この後の予定が分刻みで決まっているからだ。

     

    (´・ω・`)「墳ッ!!」

     

    ショボンの左右、そして背後に三人の兵士がいたが、三人とも、何が起きたのか詳しく分かった者は誰一人としていなかっただろう。

    特殊繊維の枷を力任せに引き千切り、その勢いを利用して左右同時に放たれた裏拳は二人の男の胸骨を破壊し、手摺の向こうに殴り飛ばした。

    背後にいた男の股間を蹴り上げると、その体が宙を舞って手摺を越えた。

    彼らが事態を理解しかけた時には、既に落下した後。

     

    待っているのは、頭部の損傷による即死、もしくは瀕死の重傷だけ。

    小さな悲鳴が聞こえた時には、もう、彼らは結末を迎えていた。

     

    +゚べ゚+)「――お前!!」

     

    階段の影に隠れていた男が、拳銃を手にして姿を現した。

    隠れて見ているのは分かっていたが、遅い登場だった。

    遅すぎるぐらいだ。

     

    (´・ω・`)「……君はねぇ」

     

    羽ペンは鳥の羽を加工しただけの、非常に簡単な筆記具だ。

    骨の先端を削って切れ込みを入れた物で、それをインクに浸して使うのだが、殺傷能力はゼロに近い。

    それも、使い方次第だ。

     

    (´・ω・`)「呼んでないんだよ!!」

     

    原始的な飛び道具である矢は、速度と安定性によって敵を殺傷する道具となった。

    では羽ペンはどうだろうか。

    武器にはなり得ないのだろうか。

    脆く、強度の無い羽では、何もできないのだろうか。

     

    答えは、否。

    当たり所と使い方次第だ。

    今、ショボンが人間離れした筋力で投擲した羽ペンは安定した速度で、男の目元に命中した。

    それだけで、効果は表れた。

     

    +><+)「ぬぁっ?!」

     

    目潰しは時間を稼ぐための技。

    それが成功した時点で、ショボンの勝利と男の死は確定していた。

    銃口が上に向かって逸れ、必殺となり得た二発の銃弾はあらぬ方向に飛んでいく。

     

    (´・ω・`)「悪いが、マナー違反は一発退場だ」

     

    ――拳の一撃で人間が殺せるのか。

    ショボンは警官時代、何度か犯人を殴殺したことがある。

    拳で人間は殺せる。

    しかし、一発で殺すのは不可能だと理解した。

     

    何度も執拗に頭部か心臓を狙って拳を繰り出すしか、方法はない。

    その理由は、筋力の限界にあった。

    どれだけ日々鍛錬を積み重ねても、人間の拳はそう簡単に武器にはならない。

    気の遠くなるような時間と想像を絶する執念によって磨き、洗練した場合でのみ、人間の四肢は初めて武器化する。

     

    残念なことに、警官時代にショボンの四肢は武器にはならなかった。

    だが今、ショボンの四肢は武器と化していた。

    筋肉を一時的にだが、劇的に強化させる失われた技術。

    強化外骨格を作ることの叶わなかった貧困国が作り出した強化薬物、“マックス・ペイン”。

     

    使用後に全身に激痛が走るという副作用があるが、一時間の間、使用者は全身の筋力が十倍以上になる。

    今やショボンの右ストレートは人を殺せるだけの威力を持っている。

    どのような機器を使ったところで、筋力の高さに反応する探知機はない。

    それが、この薬物の強みだった。

     

    強化された脚力で地面を蹴り飛ばし、ショボンは男の髭が数えられる距離にまで接近した。

     

    +゚べ゚+)「かひゅっ!!」

     

    喉の骨を背骨ごとへし折る一撃。

    それが、男の命を奪った。

    絶命した男は銃を取り落とし、階段から転げ落ちた。

    まだ人の手の温もりが残るコルトを拾い上げ、ショボンはデミタスの前に戻った。

     

    (´・ω・`)「さぁ行こう。 君は、こんな狭い世界で生きるべき男じゃない」

     

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    (;・∀・)「た、大変だ…… 人が、人が死んでしまった……」

     

    IeUeI「糞っ、あんたはここにいろ!!」

     

    警備の男達はライフルを構え、Bブロックに向かった。

    マドラス・モララーは言われた通り、その場で待つことにした。

    ただし、大人しく待つ気はなかった。

    出来る事なら誰も傷つけたくないし、モララーは格闘術が苦手だった。

     

    ( ・∀・)「……で、シュールさん、どうしますか?

         私達と一緒に世界を変えませんか?」

     

    さほど気にした風もなく話を再開したが、実際、モララーは人が死んだことに対して悲しんでいた。

    まだ役に立ったかもしれない命。

    話次第では味方になったかもしれない命だった。

    それでも、死んでもらった方が計画の進行には好都合だとしたら、死ぬべきだ。

     

    目の前で鎖に繋がれたシュール・ディンケラッカーの命に比べれば、彼らの命などあまり価値がないとも感じる。

    彼女は天才だ。

    子供の心を掴み、それを支配する能力の高さは世界一と言っていい。

    恐怖と暴力、そしてトラウマこそが支配に必要不可欠な要素だ。

     

    彼女の手口はそれを全て満たしているだけでなく、ある一つの目的のために向けられていることが、組織が評価している点である。

     

    lw´‐ _‐ノv「……内容次第」

     

    ( ・∀・)「ありがとう、シュールさん」

     

    彼女の心はまだ、壊れていない。

    尋問と云う名の拷問に耐えられたのは、彼女の精神の強さの賜物だ。

    何か口にすれば、それだけで尋問が激化することを知っているため、何も喋らなかったのである。

    悲鳴に呪詛を込めて、彼女は長い時間耐え抜いたのだ。

     

    lw´‐ _‐ノv「でも、私をどうやってここから出すの?」

     

    ( ・∀・)「あぁ、それなら大丈夫」

     

    大気を震わせる爆音が、上空から響いた。

     

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     == ==ヾ、= ,-- -- -- --―――=|= f'´ ||

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            fユへ、        _ ,r:'´:f^ :`'ュ、: : : _:-‐ 二三.、

           〃dノシ       r'´_: : : : : ヾン: :_.┴' ´r‐ ''"、´  、 {

          // 'l;:.∧     f: :f:,,.: -‐ 'f"´fl´|ffャ   ム - =

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              'l;::.:.∧  _ - '":l|: : | ´|l´|:l   !_,||=': : |   l: :0: :o : : p: :|

          撮影監督・美術監督・美術設定・ビジュアルコーディネート【ID:KrI9Lnn70

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

     

    ショボン・パドローネが暴れ始めたのとほぼ同時に、セカンドロック刑務所上空に一機の中型多目的ヘリコプターが現れた。

    高度は三百フィート。

    事前にジュスティア軍から査察があると連絡があったため、誰も警戒はしなかった。

    疑問を持った時にはショボンが暴れ始め、接待どころではなかったのだ。

     

    だから。

    誰も気付かなかった。

    ヘリコプターから、一つの黒い影が零れ落ちたことに。

     

    :::::::::::)『……』

     

    黒い影は天窓の強化ガラスを突き破り、刑務所内への侵入を成功させた。

    雨のようにガラス片が降り注ぐ中、片膝を突いて監獄内の中央に現れたのは、滑らかな光沢を放つ人の形をした黒い殺意だった。

    細身の体を覆う丸みのある装甲には傷一つなく、青白い光が鼓動するように点滅する黒いヘルメットの向こうに、顔は見えない。

    そして、後頭部から腰の辺りまで伸びた直径約一インチの黒いケーブルの束は、まるで髪の毛の様なしなやかさを持っていた。

     

    一つの目的に特化して設計、製造された強化外骨格――別名、“棺桶”――の名は、“アバター”。

     

    [:::|::,]

     

    IeUeI「ファッツ?!

     

    突如として現れた約七フィートの来訪者に、ジュスティア出身の兵士たちはマニュアル通りの対応を見せた。

    カービン銃を向け、問答無用で発砲し始めたのだ。

    銃弾の雨に晒されながらも、アバターの使用者は動揺した様子を見せない。

    彼らの銃に装填されている弾の種類など、気にもしていないと言わんばかりに。

     

    銃弾は装甲に当たると、マッシュルームのように潰れて地面に落ちた。

    丸みを帯びた装甲に受け流された銃弾は、壁や床にめり込んだ。

    ライフル弾では、棺桶に十分なダメージを与えられない。

    ようやくそれが人間ではなく棺桶だと気づいた男が、大声で叫ぶ。

     

    (ΞιΞ)「くそっ、棺桶だ!!」

     

    アバターは後ろの腰に取り付けていた自動装填式のショットガン、AA-12を悠然と構え、兵士たちを撃ち殺し始めた。

    その場から対して動くこともせず、膝立ちのまま次々と銃爪を引いて散弾を放って行く。

    散弾は防弾着をつけていない男達の頭に正確に命中し、肉を散らせた。

    四人ほど撃ち殺した時、ようやく刑務所中にサイレンの音が響き渡り始めた。

     

    [:::|::,]『……』

     

    アバターは腰を上げ、周囲を見渡す。

    警備員は遮蔽物に身を隠し、無意味だと分かりながらも銃爪を引く。

     

    (´・ω・`)「僕はいい!! まずはモララーから頼む!!」

     

    壁際に追い込んだ兵士を縊り殺していたショボンが、そう声をかける。

    頷くこともなく、アバターはその場から駆け出した。

     

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               総作画監督・脳内キャラクターデザイン【ID:KrI9Lnn70

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    ジュスティアでは、“正義”とは誰よりも早く、正確に実行されるべき項目として幼少期から徹底的に教え込まれる。

    セカンドロック刑務所で最も戦いのキャリアが長いナショジオ・ユニオンジャック少佐は、ショボンが戦闘を開始した時に誰よりも早く棺桶を準備した。

    十年近く使い込んだ愛用の棺桶、“ユリシーズ”を起動させるための音声コードを入力したのは、サイレンが鳴り響いた直後の事だった。

     

    (●ム●)『どんな戦いにも正義が二つあるわけではない。

          最後まで正義を貫いた者が唯一の正義なのだ』

     

    彼の体がコンテナに取り込まれ、体全体に機械仕掛けの鎧が取り付けられ、八フィートの巨人となる。

    そのガバメント・シリーズのCクラスの棺桶は、ジュスティア軍人の憧れの存在として人気のある物で非常に貴重な物だった。

    全身をグレーの強化装甲で覆い、特徴的な防護襟に守られたその堅牢さはガバメント・シリーズの中でも五指に入る。

    小型のグレネードランチャーを全身に隠し持ち、状況に応じて多様な戦い方が出来る。

     

    装着を終えたナショジオは、棚のコンテナからミニガンを取り出して、それをユリシーズの背面アタッチメントに取り付けた。

    このアタッチメントが世界にあるほぼ全ての武器と連結できることが、ユリシーズの持つ最大の特徴だ。

    武器、兵器の運搬を容易にする実用的な機能だ。

    武装を整えたナショジオは武器庫から出て、独房で暴れている愚か者たちを鎮圧するために監獄に向かった。

     

    兵士たちは装備を揃えるために武器庫に向かっているために、殆ど人がいなかった。

    まばらに聞こえるカービンライフルの射撃音に被せるようにして、ショットガンの乱暴な銃声が響いている。

    勇敢な部下が戦っている音だ。

    そしてその音が消えた時、ナショジオは怒りに声を震わせて叫んだ。

     

    <::::::>〕『……脱獄を試みる馬鹿は久しいが、手助けする阿呆は初めてだ。

           俺の部下を殺して、楽に死ねると思うなよ!!』

     

    言葉が終わるよりも僅かに早く、黒い棺桶が散弾を乱射しながらB棟の影から飛び出した。

    右手でミニガンをすぐさま起動し、猛烈な弾雨を浴びせる。

    細身の棺桶が相手ならば、この銃弾には絶対に耐え切れない。

    それを理解しているらしく、相手は左右に銃弾を避けながら接近してくる。

     

    互いの放つ銃弾が地面を穿ち、壁を破壊する。

    円を描くように移動しながら放つミニガンの銃弾は独房の強化アクリルを粉砕し、収監されていた人間を肉片に変えた。

    どうせいつか死刑になるのだから、全く心は痛まなかった。

    それよりも、この侵入者を排除する方が重要だ。

     

    相手は弾の雨に気圧されてA棟の独房に追い詰めていることに、まだ気づいていない。

     

    <::::::>〕『疾いが、しかしっ!!』

     

    左手の甲に装着されたグレネードランチャーに焼夷弾を装填し、相手の動きを読んで三発連続で発射した。

    床が燃え、囚人がパニックを起こす。

    逃げ道を炎が塞ぎ、黒い棺桶は自然と壁際に逃げる。

    迂闊な――

     

    <::::::>〕『ちぃっ!?』

     

    ――壁を走って駆け上るなど、考えてもいなかった。

    すぐさま破片榴弾に切り替え、それを五発撃った。

    独房が爆発に巻き込まれ、爆発の直撃を受けた囚人の血がアクリル板に飛び散った。

    ミニガンの弾が切れたのと同時に、相手はショットガンを捨てて小型のナイフを逆手に構えた。

     

    ナショジオもミニガンを手放し、少しでも身軽になるためにアタッチメントからミニガンを外した。

    高周波ナイフを両太腿の鞘から抜き放ち、爆発的な加速で迎え撃つことにした。

    切れ味だけでなく運動エネルギーもナイフに込めるこの戦い方は、棺桶同士の近接戦闘ではよく使われる。

    そして、訓練兵時代からナショジオが得意とする戦い方だった。

     

    <::::::>〕『うらぁ!!』

     

    [:::|::,]『……』

     

    高周波ナイフの刃がぶつかり合う。

    火花が散り、二人は必殺の領域へ。

    力の優劣の差は、一瞬で現れた。

    押されて三歩後退したのは、侵入者の黒い棺桶だった。

     

    幾ら変わったタイプの棺桶とは言っても、所詮はAもしくはBクラス。

    Cクラスの棺桶に、力勝負で勝てるはずがない。

    反撃の体勢を取らせるよりも早く足払いを食らわせ、転倒させた。

    小さく跳躍し、右膝でナイフを持つ右腕の付け根を踏み潰す。

     

    膝の下で、確かな破壊の手応えを感じ取った。

    例え装甲に守られていても、使用者の関節は無事では済まない。

    腕の付け根を破壊すれば、そこから先を動かすことは出来ない。

     

    [:::|::,]『……』

     

    悲鳴一つ上げないとは中々に見上げた根性だが、それがナショジオの神経を逆撫でした。

    その時、左足の膝裏に激痛が走った。

    痛む足を見て、思わず驚愕の声を上げた。

     

    <::::::>〕『なっ?!』

     

    関節を破壊したはずの右腕が曲がって、その手が持つ高周波ナイフが突き刺さっている。

    関節部を狙われたために、ユリシーズの堅牢な装甲も今回ばかりは意味がなかった。

    人体の構造を考えて、動かせるはずがない。

    しかし、現実に起こってしまっている。

     

    思考を冷却させて詳しいことを考えずに、結果だけを見て行動を決定する。

    素早い行動は無理だ。

    もう、遊びはなしだ。

     

    <::::::>〕『ぬぅっ!!』

     

    痛みに耐え、右手のナイフを相手の喉元に振り下ろ――

     

    (;・∀・)「た、助けてくれ!!」

     

    ――す直前、背後から聞こえたその言葉が、ナショジオの腕を止めた。

    声の方を見ると、神父が一緒に来た禿頭の男に羽交い絞めにされていた。

     

    <::::::>〕『卑劣な!!』

     

    (´・ω・`)「随分と酷い物言いだ。

         まぁ、大人しくしなよ」

     

    <::::::>〕『……だが、人質は無意味だ!!』

     

    振り下ろしかけていたナイフを、喉に突き立てた。

    そこは装甲が薄く、ナイフでも容易に使用者を殺せる部位だ。

    何をしたとしても、最終的に人質が傷つけられるのは避けられないはずだ。

    ならば、己の職務を全うするのが最善の手と言える。

     

    黒い棺桶が動かなくなったのを確認し、ナショジオは足を引きずりながら振り返った。

    後は、殲滅するだけだ。

     

    <::::::>〕『神父さん、悪いがお祈りの時間はなしだ』

     

    (;・∀・)「神よ……」

     

    (´・ω・`)「あーあ、後でジョーンズ博士が怒るぞ。

         クール、さっさと終わらせてくれよ」

     

    その時、背後で棺桶が立ち上がる音がした。

    有り得ない。

    確かに急所を穿った。

    そんなことは、有り得ない!!

     

    <::::::>〕『馬鹿な?!』

     

    [:::|::,]『……』

     

    振り返る間すらなかった。

    迎撃する考えすら浮かばなかった。

    背後から肩に飛び乗ったその棺桶は、左手で高周波ナイフを逆手に構え、ユリシーズの後頭部からそれを差し込んだ。

    高周波ナイフの耳障りな音が頭の後ろから近づき、ゆっくりとナショジオの頸部を切り裂き始めた。

     

    <::::::>〕『うがああああああああああああああああああ!!』

     

    鋭利な激痛。

    滑らかに捌かれる感触。

    鎧が意味をなさないという現実を、ナショジオは理解できなかった。

    ナショジオが絶命するまでの三秒間は、彼がこれまでに味わってきたあらゆる幸福を打ち消すには十分すぎる時間で、現実を受け入れるには短すぎた。

     

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     :.、          !:::(

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         ,,..   //   ノ'

      π /;::::::::(,.,.(;;;::::(   ,,.,  ・っ 撮影・演出・音響・衣装・演技指導・編集【ID:KrI9Lnn70

       ):::::::::::::::::::::::::::/  '''''`   `

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    序章 イメージソング 【-バトルイマ- song by. THE BACK HORN

    ttps://www.youtube.com/watch?v=1LxNTnKER_g

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    (´・ω・`)「急ごう、増援が来るまでにあまり時間はないぞ」

     

    兵士の死体から銃と弾倉を失敬したショボン・パドローネは、デミタス・エドワードグリーンにコルトガバメントを手渡しながらそう言った。

    デミタスは遊底を軽く引いて薬室に弾が入っていることを確認してから、頷いた。

     

    (´・_ゝ・`)「……後で詳しい話を聞かせてもらうぞ」

     

    二人は監獄に通じる扉の制御盤に銃弾を浴びせ、破壊する。

    これで多少の時間は稼げるはずだ。

     

    ( ・∀・)「何と惨い殺し方を……」

     

    棺桶を纏った死体に向けてそんな言葉をかけるマドラス・モララーの顔には、笑顔が浮かんでいた。

    安堵の笑顔だった。

    その後ろから、風に煽られる柳のように歩み出てきたシュール・ディンケラッカーは死体を一瞥することもなく、天井に空いた大きな穴から夜空を見上げて言った。

     

    lw´‐ _‐ノv「どうやって、この島から出るつもり?」

     

    最もな質問だ。

    当たり前すぎる質問に溜息を吐くこともなく、ショボンは腕時計を見ながら答えた。

     

    (´・ω・`)「外に迎えが来ている。

         後……二秒、一秒」

     

    彼の言葉に合わせるようにして、天窓の穴から黒くて太いラぺリングロープが垂れてきた。

    その先端には折り畳まれたハーネスが三つ、束になって取り付けられていた。

    ハーネスを組み立てると、一度に三人が引っ張り上げられる仕組みだ。

    ショボンは自分以外の三人に組み立てたハーネスを着せて、ロープを何度か引いて安定性を確かめる。

     

    それからハーネスをロープの金具と接続させ、作業を完了させた。

     

    (´・ω・`)「一度に運べるのはこれが限界だ。

         後はこっちでどうにかするから、モララー、頼んだよ」

     

    ( ・∀・)「えぇ、任せてください。

         私の命に代えても、このお二人をお守りいたします」

     

    そして、三人の体がゆっくりと持ち上がり、天窓の向こうに消えて行った。

    上空で待機していたブラックホークに収容され、次の準備が整うまではここで待つしかない。

     

    (´・ω・`)「クール、損傷はどうかな?」

     

    [:::|::,]『カメラに少しノイズが出る程度で、深刻な問題はない。 それより、増援がくるぞ。

         どう対処する?』

     

    (´・ω・`)「ここの仕組みは調べてある。

         あの扉はけっこう頑丈に作られているから、もう五分は稼げるはずだ。

         脱出も困難なら、侵入も困難。

         難攻不落の要塞ならではの弱点だね」

     

    [:::|::,]『だが、棺桶を使われたらどうする?』

     

    その言葉を肯定するように、扉の向こうで強い力が叩きつけられる音が響いた。

    爆発物の類ではない。

    金属同士の激突する音だ。

     

    (´・ω・`)「……下調べではあのユリシーズを黙らせれば、残るのはグラマトン中尉の棺桶ぐらいしか脅威はない。

         刑務所長は昨日からジュスティアに定例会議に行っているから、残っているのは有象無象の連中だ。

         それに、僕たちの任務はここの壊滅じゃない。

         対象者の脱獄を成功させることだよ。

     

         戦いは最小限に抑えるべきだ」

     

    ショボンの言葉に、アバターは首を縦に振った。

    目の前の扉が刻一刻と力任せに変形される中でも、ショボンは冷静だった。

     

    (´・ω・`)「上の連中に、僕の棺桶を降ろす様に伝えてもらえるかな?

         グラマトン中尉の棺桶は、残念だが君の棺桶では止められない。

         僕がやる」

     

    [:::|::,]『了解した。 ……モララー、ショボンの棺桶をロープと一緒に降ろしてくれ』

     

    上空の同僚に向けて送られたメッセージは、それから三十秒後に実現した。

    黒く、巨大で重々しい棺桶が上空から落ちてきた。

    アバターは一歩も動かずにそれを両手で受け止め、ショボンに渡した。

    遅れてロープが降りてきて、アバターの隣でとぐろを巻く。

     

    [:::|::,]『死ぬなよ』

     

    アバターはロープを掴み、ショボンはBクラスの棺桶を背負う。

    砕けた天窓に向かって上昇する同僚を見届けて、ショボンは嘲笑うように独り言ちた。

     

    (´・ω・`)「死ぬ時は死ぬのが人間だが、今はその時じゃないのさ」

     

    それから三分後。

    遂に、扉が棺桶の攻撃に耐え切れずに吹き飛んだ。

    現れたのはテリー・グラマトンが駆るネイビーカラーのCクラスの棺桶、“ガーディナ”のカスタム機だ。

    特徴とも言える長身の高周波刀は肩にはなく、代わりに六つの切れ込みが入った四角いコンテナ――中身は恐らく小型ミサイル――が取り付けられている。

     

    両手には金属製の打突用フレームが付いた大口径機関銃、そして体全体はグレーの追加装甲で守られていて、本来の流線型の装甲は頭部だけにしか残されていなかった。

    特定の戦場に特化した装備の変更は棺桶の設計上、装着してから手作業で行われるため、時間が掛かる。

    その手間さえ惜しまなければ、ガーディナは海でも空でも戦える。

    機動力を殺し、火力と膂力に特化したカスタム機はグラマトンが“不動の猛将”と呼ばれる所以となった。

     

    十五フィートの長身を誇るあの棺桶ならば、分厚い扉を拳で破れる。

    随伴は銃火器で武装するジョン・ドゥが六機。

    予想通りの展開だ。

     

    /ⅰ《゚::|::゚》)『……ナショジオ!?

            賊が、楽に死ねると思うな!!』

     

    両肩のコンテナから十二発の小型ミサイルが射出され、両腕の機関銃が火を噴いた。

    ジョン・ドゥたちも、徹甲弾を浴びせてきた。

    問答無用の攻撃もまた、予想通り。

    故にショボンは、グラマトンが入ってくるのと同時にコンテナを相手に向け、起動コードを入力していた。

     

    (´・ω・`)『英雄の報酬は、銃弾を撃ち込まれることだ』

     

    ショボンが駆る“ダイ・ハード”は、Bクラスのコンセプト・シリーズの棺桶だ。

    胸や腕を守る装甲は薄く、関節部の守りはほぼ皆無に等しい。

    頭部を守るヘルメットはもはや形式的な物で、爆発や徹甲弾には耐えられない。

    しかし、上半身に比べて脚部の装甲が圧倒的に厚く、脛から巨大な楯が生えているような歪な形をしていた。

     

    その正体は、高周波発生装置が内蔵された可変式の楯だ。

    攻撃のスタイルに合わせて自動で位置を変え、更には真ん中から二つに分かれて蹴り技のリーチを伸ばすと云うことまで可能だった。

    焦げ茶色の装甲の形はおおよそ美とは程遠い姿をしているが、その分、下半身の防護は完璧だった。

    何よりも特化しているのが、その機動補助能力だ。

     

    十階建てのビルに相当する高さから落下してもその衝撃を緩和し、使い手に一切の負担を掛けさせない。

    更に、下半身の装甲の数カ所に圧縮空気による加速装置を隠し持っており、高速起動も可能だ。

    バッテリーは上半身と両足とで分かれており、状況によっては無駄な装甲を切り離しても動くことが出来る。

    棺桶同士の戦いにおいては脛、踝、踵、爪先に仕込まれた高周波ナイフが決め手だ。

     

    機動力で勝り、そして、速度を乗せたナイフの一撃で相手を屠る。

    それが、ダイ・ハードの戦い方。

    装着を終えたショボンはコンテナから出ると、即座にその場を離れた。

    小型ミサイルと銃弾が降り注ぐ中、ショボンは冷静そのものだった。

     

    コンテナが爆風で倒れる頃には、彼はグラマトンの正面にいた。

    この距離、この位置なら随伴しているジョン・ドゥ達は手出しができない。

    例え身長差が二倍近くあろうとも、サイズの差は優劣の差には結びつかない。

     

    ::[-=-])『さぁ!!』

     

    /ⅰ《゚::|::゚》)『無礼――』

     

    ミサイルコンテナを切り離して身軽になったグラマトンは、打撃戦に打って出た。

    ガーディナはその巨体故に、超近接戦闘では小回りが利かない。

    それを補うための長身の刀と機動力なのだが、今はそれがない。

    哀れなことに、グラマトンは有り余る火力では接近戦を補えないことを失念している。

     

    攻撃しやすいように右足の可変式楯が脹脛の位置に移り、足に隠されていた高周波ナイフが全て飛び出す。

    ナイフの起動を確認することもなく、ショボンは迷わずに飛び回し蹴りを放つ。

    迎え撃つグラマトンは、反射的にそれを左腕で防御した。

    左腕が落ち、潤滑油と血が床を汚す。

     

    ショボンは右足が地面に着くとそれを軸足に変え、左足の回し蹴りで残った左腕を切断した。

    この間、わずか一秒弱。

     

    /ⅰ《゚::|::゚》)『――るなっ?!』

     

    そして、右の可変式楯が二枚に別れ、爪先を覆って巨大な刃に変貌する。

    必殺の突き返し蹴りが、グラマトンの頭部を切り落とした。

    彼の部下達は手を出す時間すらなかった。

    気付いた時にはグラマトンがミサイルと銃弾の洗礼を浴びせ、気付いた時には腕を失い、そして、気付いた時には首が落ちていたのだから。

     

    マックス・ペインとダイ・ハードを合わせれば、例え棺桶を用いたところで今のショボンに攻撃を当てる事すら適わない。

    我が目を疑う兵士たちをよそに、絶妙なタイミングでロープが天井に空いた穴から落ちてくる。

    慌てて彼の部下達が銃爪を引き始めるが、もう遅い。

    ショボンはグラマトンの体を蹴り飛ばし、爆発的な加速と両足の楯を使って巧みに銃弾を防ぎながら、素早くその場を離れる。

     

    弾雨を掻い潜りながら棟の壁面を走って登り、その頂上部からロープに飛び移った。

     

    ::[-=-])『では諸君、おさらばだ!!』

     

    それを合図に、ショボンの体は急上昇し、監獄から抜け出した。

    それは綺麗な月の浮かぶ夜に、細かく千切れた灰色の雲が流れる八月八日の夜の事。

    これが、ジェイル島から二人の脱獄犯が出た、歴史的な夜の事。

    ここは鐘の音街、ティンカーベル。

     

    ――これはティンカーベルに世界最大の豪華客船にして船上都市、“オアシズ”が到着する前夜の事である。

     

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                 制作協力【全てのブーン系読者・作者の皆さん】

     

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    八月九日に日付が変わった時、シュール・ディンケラッカーとデミタス・エドワードグリーンはティンカーベルのモーテルの一室で食事をしていた。

    シャワーで汚れた体を洗い、衣服も真新しい物が用意された。

    サラダを頬張り、シャンパンを飲み、肉汁が溢れ出るレア・ステーキとライスをワインで飲み込んだ。

    血色がよくなり、二人がリラックスしたのは早朝の三時過ぎの事だった。

     

    lw´‐ _‐ノv「……で、そろそろ教えてくれてもいいんじゃない?」

     

    バスローブに身を包むシュールが、食後酒に用意されたグラッパを飲みながら質問した。

    誰に、というほど相手を特定した質問ではなかった。

    その部屋には、シュールとデミタスを除いて、他に三人いたからだ。

    禿頭のショボン・パドローネ、キャソックのマドラス・モララー、そしてワイシャツとスラックス姿の黒髪の女。

     

    誰でもいいから、答えてくれればそれでよかった。

    脱獄を成功させ、食事を与え、平穏を与えたその目的を知りたかった。

    シュールは自他共に認める慎重な人間だ。

    特に、誘拐と云う仕事を生業にしている場合は、慎重さが物を言う。

     

    大胆さはその次に必要で、事前の情報や状況には細心の注意を払う。

    相手の魂胆を知るところから、まずは始めなければならない。

    答えたのは、黒髪の女だった。

    腰まで伸びた女の黒髪は毛並みが良く、手入れが行き届いているのが一目で分かる。

     

    瑠璃色の瞳は眼光鋭く、その奥は深淵のように暗かった。

     

    川 ゚ -)「私達は世界を変える。

         そのために、ある人間を始末するのに手を貸してほしい」

     

    lw´‐ _‐ノv「殺し屋でも雇えばいい」

     

    川 ゚ -)「それはマフィアのすることだ」

     

    馬鹿な人間だとは思えないが、馬鹿な願いだと思う。

    人殺しはシュールの得意分野ではない。

    確かに、人を殺すことは出来るが、それは無抵抗の子供相手に限る。

     

    lw´‐ _‐ノv「意味が分からない。

           人の命を奪うのは、私の特技じゃない」

     

    川 ゚ -)「知っている。 殺すのはこちらでやる。

         その下準備を整えてほしいんだ」

     

    殺すための準備。

    それも、シュールの専門外だ。

    人を捕まえることに関しては専門だが、殺しに関しては素人同然。

    となると、求められているのは――

     

    lw´‐ _‐ノv「誰かを捕まえる、ってこと?」

     

    川 ゚ -)「そうだ。 ただ殺すのではなく、苦痛を持って殺す。

        そのためには、弱みになる対象を捕らえる必要がある。

        容易な相手ではないからな。

        だろう、ショボン?」

     

    (´・ω・`)「あぁ、これが曲者でね。

         女が二人と、糞耳付きの糞雄餓鬼が糞一匹。

         女の一人は棺桶持ちだ」

     

    ショボンの言葉には怒りが混じっていた。

    特に、耳付きのことについて話した瞬間は明確な悪意が込められていた。

     

    (´・_ゝ・`)「じゃあ俺は、その棺桶を盗めってことか?」

     

    シャンパンを瓶から直に飲みながら、デミタスが口をはさんだ。

    女はまず彼を見て、それからショボンを見て、再びデミタスを見て頷いた。

     

    川 ゚ -)「この話に乗るか、それとも乗らないか。

         まずはそれについて答えてもらいたい」

     

    lw´‐ _‐ノv「ノーと言ったら? 殺すの?」

     

    武器が手元にない以上、シュールたちは反撃もままならないまま殺される。

    断った場合、処遇は相手の気持ち次第となる。

    一応、訊いておきたかった。

     

    (´・ω・`)「おいおい、勘違いしないでくれ。

          僕らは人殺しが趣味ではない。

          断った場合は、そうだな……この島で第二の人生を楽しんでもらうだけさ」

     

    (´・_ゝ・`)「悪党は皆そう言うんだ。

          ……だが俺は乗った」

     

    飲み干したシャンパンの瓶を覗き込んで、デミタスはそれを床に置いた。

    新たなシャンパンをクーラーボックスから取り出し、栓を空けて飲み始める。

    三分の一を一気に飲み、デミタスはげっぷ交じりに深い溜息を吐く。

     

    (´・_ゝ・`)「この世界は、変えなくちゃならねぇ。

         それを知っている奴はほとんどいないのが現実だ。

         俺はな、それが我慢ならねぇんだ」

     

    熱の入った言葉だ。

    シュールはグラスを空にして、それをテーブルに叩きつけるように置いた。

    純米酒をグラスに注ぎ、ステーキを一口食べてそれを酒で流し込む。

    辛口の酒とステーキがよく合う。

     

    純米酒にはやはり、塩胡椒で味を調えたステーキが一番だ。

     

    lw´‐ _‐ノv「私も乗る。 でも、訊きたいことがある」

     

    元より断るつもりはなかった。

    あくまでも確認のために訊いただけで、戯れのようなものだった。

     

    川 ゚ -)「なんだ?」

     

    lw´‐ _‐ノv「理由が知りたい。 子供まで殺す、その理由が」

     

    川 ゚ -)「ん? そもそも、餓鬼だろうが何だろうが、耳付きに生存権を許すこと自体がおかしいだろう。

         家の中で見かけた害虫の子供を生かしておくか?

         生ごみに散らかす害獣の子供を放置するか?

         不要な雑草が成長していない内に刈り取るのと同じ、根絶やしにするためだよ」

     

    さも当然のように言い放った女の言葉は、シュールには同意しかねた。

    子供は価値がある。

    それは、未来を担っているからだ。

    暗い未来も明るい未来も、全ては教育次第だ。

     

    幼い子供には常識が足りない。

    その常識を曲げてしまえば、優秀な道具として使える。

    生まれてから言葉を覚える前に性技を教え込めば、立派な性奴隷として育つ。

    箸を持つよりも早くナイフを持たせ、人を切り刻むことを覚えさせれば、兵士となる。

     

    耳付きは兵士としての需要はなく、性奴隷としての価値しかない。

    百ドル近くの値が付くため、いい商売の道具だ。

    どうやら、この女とは価値観が違うらしい。

    それでも、それは些細なことだ。

     

    細かなことだが、多方面から質問をすることで彼らの持ち合わせている価値観や情報を手に入れられた。

    これから彼らと共に行動をする中では、簡単には手に入れられないような情報だ。

    これで分かったことがある。

    彼らは本気だ。

     

    lw´‐ _‐ノv「そう。 それだけ」

     

    川 ゚ -)「誤解しないでほしいが、私は子供が好きだ。

         こう見えて、娘がいたこともある」

     

    lw´‐ _‐ノv「へぇ。 今はどうしているの?」

     

    女は、その質問には答えなかった。

    興味があったから訊いただけだったので、シュールは肩をすくめておどけて見せた。

    気分を害したのか、クールはその部屋から出て行こうとする。

    あの女には、子供の話をしない方がいいらしい。

     

    その背中に、デミタスが声をかける。

     

    (´・_ゝ・`)「なぁちょっと待った。 あんたの名前は?」

     

    川 ゚ -)「クールだ。 クール・オロラ・レッドウィング」

     

    そして、振り返らずにクールは部屋を出た。

    奥の部屋の扉が閉まる音が聞こえてから、物腰柔らかくモララーがフォローを入れる。

     

    ( ・∀・)「済みません、彼女、悪い人ではないのですが」

     

    (´・_ゝ・`)「分かっているさ。 君らは何者なのか、それを最後に教えてくれ」

     

    それは、シュールも知りたいことだった。

    ヘリコプターを所有する財力。

    コンセプト・シリーズの棺桶を惜しげもなく使う武力。

    情報の精度が物語る勢力。

     

    それだけの組織を、シュールは聞いたことがない。

    一体何に価値を見出し、何を信念に行動しているのか。

    分からないことだらけだ。

     

    lw´‐ _‐ノv「世界が大樹になるためにって、どういう意味?」

     

    モララーがシュールに告げた言葉。

    その意味を知りたい。

     

    (´・ω・`)「……この世界は、どうしようもなく混沌としている。

         絶え間ない抗争。

         終わらない紛争。

         消えることのない暴力、そして差別と格差。

     

         僕には我慢できない。

         僕には容認できない。

         それがなぜ起き続けるのか。

         長い、永い間、考え続けてきた。

     

         そして、教えられた。

         この世界は大小それぞれの街で構成されている。

         それぞれのルールで、それぞれの規則で、それぞれの鉄則に従って、それぞれの利益を追求し、追従した。

         結果、争いが生まれ、暴力が生まれ、差別が生まれ、混沌が生まれたのだと。

     

         僕らは、その根源を絶つ。

         根底を覆し、世界に蔓延るルールを変える。

         ルール、そう、ルールだよ。

         常識、そして掟となりつつあるルールを、変えてみせる。

     

         既存のルールに従って育った樹を全て伐採し、根絶やしにする。

         その後、新たなルールを布き、新たな大樹の根を世界に降ろす。

         己にすら容赦のない伐採と植樹を行う者。

         これが、僕らの目的にして、僕らの正体だ」

     

    この男。

    大人しいと思ったが、信念の強さが狂気じみている。

    紛れもなく、シュールと同類の人間だ。

    シュールもまた、世界を変えたいと思っていた。

     

    この狂ったルールが蔓延る世界を少しでも変えたいがために、子供を誘拐し、売った。

    彼女の誘拐の対象となった子供たちには共通点があった。

    誘拐に関わったことのある子供、という一点だ。

    それ以外の子供には、絶対に手を出さなかった。

     

    誘拐され、売買された子供を改めて誘拐し直し、本来の家族に売った。

    誘拐犯の子供を誘拐し、凌辱し、それから売った。

    罪と罰。

    因果応報。

     

    悪行には報いを。

    それを示したかった。

    それが彼女の戦いだった。

    子供を不幸にするだけの誘拐組織はシュールの行いを知り、僅かだがなりを潜めたのだ。

     

    世界のルールは、変える必要がある。

     

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

     

                     If you want to change the world.

                      もしも世界を変えたいのなら。

     

                    If you want to take down the world.

                    もしも世界を手に入れたいのなら。

     

                  Remember, remember the rule of this world.

                      この世界のルールを思い出せ。

     

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

     

    デミタスはショボンの言葉に、深く感銘を受けた。

    そうとも。

    この世界は変える必要がある。

    この世界に蔓延るルールは、変えなければならない。

     

    盗みを働いたのは、元々は金が目的だった。

    小金が欲しかったのだ。

    自分が暮らしていた孤児院の一か月分の食費が、欲しかったのだ。

    初めて盗んだのは、酔っ払って路地で寝ていた金持ちの腕時計だった。

     

    腕時計は七十三ドルで売れた。

    孤児院で飢える百二十六人の子供たちは、一週間ぶりの食事に喜んだ。

    だが足りなかった。

    次に盗んだのは、女を買いに来ていた男の財布だった。

     

    四時間も逃げ回った結果、七百ドルが手に入った。

    その晩、孤児院では半年ぶりの肉が振舞われた。

    満ち足りた食事を前にして子供たちが見せた笑顔が、全ての始まりだった。

    それからデミタスは盗みを本業として、世界中を歩き回った。

     

    美術館。

    宝石店。

    豪邸。

    銀行。

     

    ありとあらゆる店から、金品を盗んで金を得た。

    得た金は自分が育った孤児院に送った。

    だが足りなかった。

    心が救済を快感へと変え、更なる救済を求めた。

     

    そして、更なる困難を求めてしまった。

    予告状を出し、警察を欺き、華麗に盗んだ。

    名が知られるようになると、幼い頃から読んでいた本に登場する人物から名をもらい、“ザ・サード”と名乗った。

    得た金を世界中の孤児院に送り付け、デミタスは満たされ始めた。

     

    少しでも子供たちが飢えから解放され、少しでも笑顔になれればと。

    ただそれだけが狙いだった。

    ただそれだけでよかった。

    全ては世界のルールが歪んでいるからだ。

     

    歪んだルールに抗うために、デミタスは戦ったのだ。

     

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

     

                               That is ...

                               それは……

     

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

     

    (´・ω・`)「改めてよろしく頼むよ、デミタス・エドワードグリーン、シュール・ディンケラッカー」

     

    lw´‐ _‐ノv

     

    (´・_ゝ・`)

     

    二人の眼は、もう、独房にいた時とは別物になっていた。

    信念を持ち、理想を胸にした立派な同志となっている。

    大樹はより強大に、より強固になる。

    この二人の助力があれば、変えられるはずだ。

     

    この世界のルールを。

     

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

     

                            The power.

                              力だ。

     

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

     

    (´・ω・`)「ようこそ、ティンバーランドへ」

     

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

                   これは、力が世界を動かす時代の物語

          This is the story about the world where the force can change everything...

                     ,-┐ ∧ヾ V r

                  ,r-、」 k V Y / //__

                    ィx \マ ィ、 〈 | 、V r r‐┘

                 > `` l/,ィ V / 〉 〃 ,ニ孑

                f´tァ 厶フ ヽ! fj |/7-‐¬

                 │k_/`_> ,、    , xへ戈!

                | l      ̄ | f^´  ̄    !

                ヽ`--____| |      / /

                 \       __ ̄二ニ='

                  そして、愛に満ちた新たな旅の始まりである

                  And it is the beginning of new AmmoRe!!

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                           Ammo for Tinker!!

                          【序章 beater-勢子-

                                了

     

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