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  1. 名前: 歯車の都香 --/--/--(--) --:--:--
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第十章【Reasoning!!-推理-】

  1. 名前: 歯車の都香 2017/04/15(土) 21:22:00
    第十章【Reasoning!!-推理-】

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    Do you have the fucking evidences?

    証拠は持った?

     

    Fucking conviction?

    確信は?

     

    Fucking confidence?

    自信は?

     

    Can you begin to fucking reasoning now?

    クソッタレな推理は始められそう?

     

    So, foolish detectives, it is ShowTime!!

    では愚かな探偵諸君、ショータイムだ!!

     

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    嵐が過ぎ去ったその海域は、赤子の肌を撫でるような優しい風が吹いていた。

    猛烈な嵐が上空から連れてきた冷気が潮の香りと混ざり合って、海上は優しい夏の香りがしていた。

    蒼穹を映す群青の水面は、乱反射を繰り返して煌めきを放つ。

    穏やかな波の中、一隻の船がその巨体を海に浮かべていた。

     

    象牙の様な白い肌の船は、雄々しくも上品な雰囲気が漂っている。

    一見すると体を休める鯨のようだが、船内は穏やかな状況ではなかった。

    その巨大な船の名は、オアシズ。

    世界最大の豪華客船にして、世界最高の船上都市である。

     

    船には街がまるまる一つ収まっていた。

    集合住宅、飲食店、果ては風俗店。

    大型のプールやスケート場、コンサートホールまでもが設けられている。

    巨大な発電設備によって船の電力は全て賄われ、不自由のない船旅が約束されていた。

     

    最高水準の安全性と設備を持つその街で、大きな事件が起こった。

    全ての始まりは、八月四日に起きた無差別連続殺人事件だ。

    船員の殺害から始まり、警備員詰所の襲撃、民間人の毒殺。

    そして、海賊団による襲撃事件。

     

    “オアシズの厄日”と呼ばれる一連の事件は、大きく二つの枠組みで構成されていた。

    連続殺人事件と、海賊襲撃事件だ。

    一つ目の事件は未だに解決をしておらず、犯人の見当も付いていない。

    二つ目の事件が起こった時、オアシズに常駐する探偵たちは全てがその瞬間のために仕組まれた物であることに気が付いた。

     

    そして今、二つ目の事件が解決に向けて大きな動きを見せていた。

    事前に第二の事件を予期した人間が指示した迎撃策が、その効果を発揮し始めたのである。

    意図的に入り口を解放し、敵の行動を制限したのだ。

    簡単な奇襲になるはずだった海賊たちは一つのブロックにその戦力を集中させられ、大打撃を受けた。

     

    勿論、オアシズ側も無傷では済んでいない。

    迎撃に参加した探偵、警備員の三割が死傷した。

    オアシズ側の迎撃作戦は、決して賭けではなかった。

    立案者は多少の被害が出てもオアシズが勝てるように、この作戦を立てた。

     

    作戦の核となる迎撃は時間との勝負であると同時に、連携力の勝負でもあった。

    船全体がその作戦を理解して、命を失う覚悟が出来るかどうかに全てがかかっていた。

    それは杞憂だった。

    オアシズの乗組員たちは勇敢で、愚直だった。

     

    命を落としかねない作戦に対して不服を言わずに、果敢に戦って死んでいった。

    被害者の中には船内に家族がいる者もいた。

    激しい攻防によって、双方共に甚大な被害を被ったのは一階だった。

    熾烈を極める殺し合いは、血で血を洗う争いへと変貌し、美しい彫刻の施された噴水を破壊し、水を赤く染めた。

     

    流血の成果として事件は今、終息に向けて着実に進んでいた。

     

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         ‥…━━ August 6th PM13:26 on the 5th floor, in the 3rd block ━━…‥

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    ノハ<:::|::,》『これで終わりだ、海賊』

     

    その女性は五階にいた。

    全身を黒の軍用強化外骨格――通称“棺桶”――に包み、その顔は透過性のあるスカイブルーのヘッド・マウント・ディスプレイが覆い隠していた。

    細身の体に似つかわしくない巨大な左手には、悪魔的な造形をした鉤爪が付いている。

    そして、右手に装着された巨大な杭打機は傑作強化外骨格ジョン・ドゥの心臓部を打ち抜いていた。

     

    女性はジョン・ドゥから杭を引き抜いて、血を振り落とした。

    ねっとりとした赤黒い血が、薬莢の転がる地面に花を咲かせて彩る。

    地面には同じようにして一撃で胸の急所を破壊されたジョン・ドゥがもう一体、転がっていた。

    強い芯を感じさせる声の女性の駆る棺桶は、最小単位であるAクラスの物だ。

     

    サイズの差を物ともせずに海賊たちを翻弄できたのは、彼女の技量と棺桶の性能の差だった。

    彼女のそれは、量産型の棺桶とは設計思想がまるで違う。

    単一の目的のために特化して作られた棺桶は、“コンセプト・シリーズ”と呼ばれる物だった。

    そして彼女が使う棺桶は“対強化外骨格用強化外骨格”であり、この世界にある棺桶の天敵だった。

     

    殺し屋 “レオン”の渾名でマフィアたちを恐怖の底に叩き落とした女性は、戦闘終了を確認してから棺桶を脱いだ。

    汗で額に付いた髪の毛を振りながら現れたのは、凛とした目鼻立ち、瑠璃色の大きな瞳を持つ二十代半ばの女性だった。

    小柄ながらもその体に搭載した筋肉の質は決して男に引けを取らず、激情のままに磨き上げた技は体格差、性別差を無意味にする。

    経験と実践に基づいて構築された心と体の強さは、オアシズに乗り込んだどの海賊よりも上だった。

     

    棺桶を運搬用コンテナに収めてそれを背負った女性の名は、ヒート・オロラ・レッドウィング。

    共に旅をする小さな耳付きの少年に別の影を重ねる、元殺し屋の旅人である。

     

    ノパ⊿゚)「さて、愚かな夢の結末を見に行くか」

     

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             /  ../ ,,/ ||/′   ´   _/     i|'、  _

            _ -‐フ ,,/i !/  ゙丶_ ,、 ヘ 、 ,..彡ーt----y |,' i ,'< -

               ./ l'、∨ _,,-''t''ヽ、`""  .__    _/ . i l ,'|lィくヘ

             /' /!ヽ 丶__,,,,-       `''''''''"´    ナ `lノ

             ''′〃 |./'、      、               /

         ‥…━━ August 6th PM13:27 on the 1st floor, in the 3rd block ━━…‥

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    (=゚д゚)「けっ」

     

    その男は一階にいた。

    皺だらけのスーツに、返り血で赤い斑の付いたワイシャツ。

    両手は機械仕掛けの籠手に覆われ、右手には甲高い音を立てる高周波刀が握られている。

    対強化外骨格用近接戦闘特化型“ブリッツ”は、棺桶の堅牢な装甲を容易く切り裂くために作られた物だ。

     

    男が左手に持つのは、対棺桶用の徹甲弾が装填されたベレッタM8000

    最後に切り倒した海賊の米神にその狙いを定め、銃爪を引いて確実に息の根を止めた。

    これで、彼の周囲にいた海賊たちは全滅した事になる。

    戦闘経験はあるらしかったが、彼からしたら話にならないレベルだった。

     

    男にとっては他愛のない相手と云うだけで、オアシズの人間からしたら苦戦する相手だった。

    優れた棺桶の有無以前に、オアシズ側の兵隊は戦い方が綺麗すぎる。

    もっと卑怯であるべきだ。

    相手が非武装であろうと何であろうと、敵対の意志を示した以上は優位な状態で戦うのが自然だ。

     

    それが互いの生存をかけての殺し合いならば、尚更だ。

    弱い者が先に死ぬのが自然の摂理だ。

    生き残りたいのであれば、最善を尽くして相手を殺す手段を考え付く必要がある。

    共に海賊討伐をしていた探偵たちが周辺の探索を行い始めたのを確認し、高周波刀のスイッチを切りって男はそれをアタッシュケース型のコンテナに収めた。

     

    男の名はトラギコ・マウンテンライト。

    生涯で最も興奮する事件を解決するために、とある旅人を追う刑事である。

     

    (=゚д゚)「歯応えがねぇ連中ラギ」

     

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               / / .ィ。´ ノ      /バ:.

              .' 1  ´ ̄        f } '.

             У          _/  ) / |

            〈/ 、ノ- ==x  |     ノ   、

         ‥…━━ August 6th PM13:28 on the 1st floor, in the 3rd block ━━…‥

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    (´・ω・`)「……これで一階、クリアだ」

     

    地面に伏せるその男もまた、激戦地である一階にいた。

    同僚の探偵達と喫茶店前に机と椅子で組んだバリケードの間から、その瞬間が来るのを待っていた。

    建物の影に隠れている海賊が、プレッシャーに耐えかねて逃げ出す瞬間を見計らっているのだ。

    そして、その時が来た。

     

    電池切れになった棺桶を捨てて走り出した海賊の後頭部を撃って、一発で仕留めた。

    膝から先がなくなったかのように力なく倒れ、海賊はそれきり動かなくなった。

    脳幹を撃ち抜き、あらゆる行動を無に帰した。

    その銃声を最後に、一階から銃声が消えた。

     

    悲鳴も怒号もない。

    あるのは硝煙と血の濃厚な香り。

    海賊襲撃から約一時間での幕引きだ。

    想定よりも早い幕引きだった。

     

    それと云うのも、事前の対応があったからだ。

    市長であるリッチー・マニーからの指示がなければ、こうはいかなかった。

    オアシズ側の死傷者は五割を超えたことだろう。

    彼の英断で、多くの人間が命を救われた。

     

    冷静に事件の分析と結果の確認を行う男の名は、ショボン・パドローネ。

    オアシズで起こった事件を担当する、熟練の探偵である。

     

    (´・ω・`)「……さて、市長はどこだ?」

     

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                   ‥…━━ August 6th PM13:30 ━━…‥

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    八月六日。

    午後一時三十分。

    船上都市オアシズを襲った海賊たちは文字通り一人残らず全滅し、船に取りついていた海賊船は全て斬り離された。

    勇敢な船員たちの活躍により、オアシズはシージャックの危機を脱したのである。

     

    後に“オアシズの厄日”と呼ばれるこの事件は、全部で三部構成であった。

    第一部、連続殺人事件の発生。

    第二部、海賊襲撃事件の発生と解決。

    そして、最終部。

     

    ―――“オアシズの厄日”そのものの解決である。

     

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    AmmoRe!!のようです

         ‥…━━ August 6th PM13:41 on the 1st floor, in the 1st block ━━…‥

                                            Ammo for Reasoning!!

     

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    危機が去った事を知らせるアナウンスが入ると、船内は歓声に包まれた。

    それから、全てが逆転した。

    第三ブロック以外の全てのブロックが解放され、乗客たちは抑圧された鬱憤を晴らす様に酒を飲み、食事を楽しんだ。

    事件を一種のエンタテインメントのように楽しみ、酒場は海賊の話題で持ち切りとなった。

     

    客の中には、この事件で犠牲になった海賊以外の人に対して黙祷を捧げ、涙を流す人もいた。

    その間、船員たちは第三ブロックに転がる死体を袋に詰め、血を洗い流す作業を黙々とこなしていた。

    クルウ・ストレイトアウトが取り仕切る死体安置所は死体で溢れかえり、ショボン・パドローネの提案でやむなく海賊の死体を海に投棄した。

    警備員と探偵の人数が大幅に削れたことへの対処は、当日中に各ブロック長で話し合いの場を設けることとなった。

     

    そう云った事後処理などの影響でしばらくの間は、第三ブロックを通ることは出来ない。

    第一ブロックと第二ブロック。

    第四ブロックと第五ブロック。

    当面は、これらのブロック間の移動が頻繁に行われるだろう。

     

    行こうと思えば、屋上まで上がってそこから第三ブロック以外に自由に行くことが出来る。

    既に好奇心旺盛な客達はそうやって移動をしているそうで、確かに言われてみれば、他とは違う興奮の仕方をしている人間がいる。

    観察するべきポイントは、彼らの目と口だ。

    目が何か目的の物を探している風でもなく、忙しなく動いたり、緩みそうな口元を無理矢理引き締めていたりと、観察し甲斐があった。

     

    他人の不幸は蜜の味と云う言葉は、幸不幸は表裏一体であることを意味しているのだそうだ。

    誰かが不幸になれば、それによって幸福になる人間がいる。

    なるほど、その通りだ。

    人は他人の不幸を前にして、やっと幸福を感じられるのだ。

     

    海賊たちも、その考えでオアシズを襲ったのだ。

    極端な話をすれば、狩りや釣りと同じ。

    生きるために行動を起こしただけに過ぎない。

    ただ奇妙なのは、彼らが持つ武器や兵器が似つかわしくないほど高価であること。

     

    ――と、オアシズ内で今起こっている事態について、つば広の黒い中折れ帽子を目深に被る女性は隣を歩く少年に向けて話した。

    限りなく黒に近い灰色の髪は肩まで伸び、毛先に行くにつれて軽くウェーブしている。

    深紅の瞳は影の中でも鋭く光り、周囲の細かな部分を注意深く観察していた。

    女性は夏だというのに、黒いスーツとシャツ、糊の効いたスラックスの上に、同じく黒のロングコートを着ていた。

     

    帽子とコートの下には、狼の耳と尻尾が隠れている。

    いわゆる、耳付きと呼ばれる人種だ。

    だが女性がそれを隠すのは、羞恥心やコンプレックスのためではない。

    自らの容姿について多くを語らないが、それだけは断言できる。

     

    この女性、ロウガ・ウォルフスキンは自らの容姿を誇りにしているのだ。

    今の服装には意味があるのだと、手を繋いでいるだけで聞かずとも分かる。

     

    i、゚ー ゚イ`!「この事件、ブーンはどう考える?」

     

    ロウガは左手の先にいる少年に目を向け、意見を聞いた。

    踝まである大きなカーキ色のローブに身を包み、ベージュ色のニット帽を被る少年は、ブーンと云う名を持っている。

    彼はロウガと同じく獣の耳と尻尾を衣服の下に隠す、小さな旅人だ。

    質問に対し、ブーンは素直な考えを口にした。

     

    (∪´ω`)「ししょー、まだおわってないとおもいます」

     

    確かに、海賊の撃退は完了した。

    それが犯人の狙いなら、阻止できたことになる。

    目論見は破綻した。

    だがそれだけだ。

     

    オアシズ内にいる内通者がまだ捕まっていない以上は、事件は終わっていないということだ。

    事件の終了が犯人の確保を意味するならば、まだ終わっていない。

    犯人が生きている限り、いつまた再起を図るか分からない。

     

    i、゚ー ゚イ`!「その通りだ。 では、それが分かっている状況で我々にできることは何だ?」

     

    (∪´ω`)「はんにんをさがすこと、ですか?」

     

    i、゚ー ゚イ`!「惜しい。 それも楽しいが、それは主たちに任せることになっていてね。

          我々が探すのは、犯人の目的だ」

     

    確かに、ブーンは犯人が引き起こした事件にそこまで関わることが出来ていない。

    海に投げ捨てられて以降、事件の概要は人伝にしか聞いていないのだ。

    船内で誰がどのような動きをしているか、それが観測できていない以上、犯人に目星を付けることは出来ない。

    最前線で事件と向き合っている人間こそが適任なのである。

     

    (∪´ω`)「……あるじさんが?」

     

    i、゚ー ゚イ`!「あぁ、そうだ」

     

    それ以上、ロウガは“主”について話すそぶりを見せなかった。

    午前中に行った実戦訓練でブーンが負けたから仕方がない。

    そういう約束だった。

    主について聞くことは諦め、ブーンは自分達がやることを考えた。

     

    犯人の目的を探す。

    それは、犯人との接点が少ないからこそ可能な行動だった。

    この事件を引き起こした犯人は愚かではない。

    ならば、その真の目的についてそう簡単に表に出すはずがない。

     

    ロウガの言葉がそのまま答えになっていた。

    犯人の目的を探すという言葉は、海賊の襲撃が真の目的では無いと考えていると云うことだ。

    ブーン達にできることは、高い位置から状況を見て犯人の真意を探ること。

    事件から離れていなければできない動きだ。

     

    これはこれで難しそうだが、ロウガが一緒ならば大丈夫だろう。

     

    i、゚ー ゚イ`!「そのためにも、まずは船全体を見て回ろう。

          幸い、ここは第一ブロック。 すなわち、船首側だ。

          大きな魚の頭にいるわけだ。 さ、食後の散歩を続けようか」

     

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         ‥…━━ August 6th PM13:41 on the 1st floor, in the 1st block ━━…‥

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    第一ブロック一階はお祭り騒ぎとなっていた。

    喫茶店や居酒屋が階を無視して出店を開き、それまで感じていた恐怖を忘れるように賑わう。

    商売よりも乗客の心の傷を癒すために、全ての店が料金を取らなかった。

    市長であるリッチー・マニーの配慮で、ハザードレベル5発令中と同様の処置が施されるとのことだった。

     

    ロウガは屋台の一つに足を向け、“たこ焼き”なるものを購入した。

    湯気の立ち上る丸いそれは、ソースとマヨネーズがたっぷりとかかっている。

    食欲をそそる香りだ。

    爪楊枝を刺して一つとり、ブーンに差し出した。

     

    i、゚ー ゚イ`!「食べてみなさい」

     

    (∪´ω`)「お!」

     

    空気を口に含みながら咀嚼する。

    とろりと蕩けた中身で上顎が火傷したのが分かったが、ソースの香りが生地と合わさり、中に隠れていた大きなブツ切りのタコを噛んだ時、それは気にならなくなった。

    熱くて蕩けて香ばしい。

    歯応えもある。

     

    甘じょっぱいソースと生地の組み合わせの美味さもさることながら、一口サイズなのが嬉しい。

    これならいくつでも食べられそうだ。

     

    *∪´ω`)「ほふほふ」

     

    i、゚ー ゚イ`!「ふむ、幸いなことに、このたこ焼きが目的ではなさそうだな」

     

    ロウガも一つ食べて、残りをブーンに手渡した。

    薄い紙で作られた船の様な奇妙な器に盛られたたこ焼きは、残り四つだった。

    屋台から十ヤード離れる頃には、全て胃袋に収まっていた。

    ゴミ箱にそれを入れて、二人は移動を続ける。

     

    向かうのは、船首方向だ。

     

    (∪´ω`)「どうしてこっちなんですか、ししょー」

     

    i、゚ー ゚イ`!「船を掌握したいなら、まずは操舵室か船尾のスクリューを狙う。

          で、最も近い場所が操舵室だからこちらに向かうんだ。

          最高レベルの厳戒態勢が敷かれているだろうけどね」

     

    それでもそこを目指すというのだから、ロウガは自分の腕に相当の自信があるらしい。

    まだ彼女が他の人間と戦う様子を見ていないため、その実力は分からない。

    ブーンはこれまでに多くの戦う人間を見てきた。

    ロウガの放つ雰囲気はブーンに自由を与えてくれた人に近いが、どことなく不思議な親近感がある。

     

    その為に、安心して素性も知らない彼女と共に行動が出来た。

    命の恩人であるデレシアがお守りにくれたニット帽も、常に守られているような気がして、気に入っていた。

    ロウガの足取りは早く、一歩が大きい。

    彼女が歩いているのに対して、ブーンは小走りで付いていかなければならなかった。

     

    i、゚ー ゚イ`!「ふむ、甘い物も食べたいな。

           ひょっとしたら、犯人はこれが目的かもしれないぞ」

     

    いきなりそう言って、ロウガはリンゴ飴と書かれた屋台に足を運んだ。

    ブーンの拳程の大きさがあるリンゴを飴で覆ったお菓子だった。

    ロウガはそれを二つ買った。

     

    i、゚ー ゚イ`!「食べるのは後だ」

     

    エレベーターまで行き、それに乗って七階を目指した。

    二人きりのエレベーター内で、ロウガが手短に言った。

     

    i、゚ー ゚イ`!「我々がやるのは、情報の入手、そして報告だ。

          手に入れた情報は逐一報告し、共有する。

          戦いにおいて情報の共有は重要な鍵を意味する」

     

    (∪´ω`)「はい、ししょー。

          でも、どうやってじょーほーを?」

     

    操舵室に入るのは不可能だろう。

    それなのに、どのようにして情報を入手するのか。

     

    i、゚ー ゚イ`!「ふふ、我々にしかできない方法だよ。

           エレベーターが七階に到着できるということは、封鎖されているのは出入り口だけのはずだ。

           なら、入らないで情報を知ればいい」

     

    (∪´ω`)゛「お?」

     

    ロウガの答えはよく分からなかった。

    再び聞こうとしたが、その前にエレベーターが七階に到着した。

    二人は無言のまま操舵室に近づき、五十ヤード離れた場所にある橋に設置されたベンチに腰掛けた。

    操舵室の扉の前には銃を持った制服姿の男が二人立っている。

     

    i、゚ー ゚イ`!「リンゴは好きだろう? 私も好きなんだ」

     

    状況に相応しくない質問をされ、ブーンは彼女の意図があるのだろうと考え、頷いた。

    リンゴ飴を渡され、ブーンはとりあえずそれを舐め始めた。

    ロウガは視線を前に固定したまま、質問をしてきた。

     

    i、゚ー ゚イ`!「さて、ブーン。 何が見える?」

     

    視界に入っているのは壁と操舵室に続く扉。

    武装した男が二人。

    それぐらいだ。

     

    (∪´ω`)「とびらと、おとこのひとがふたり、あとライフルです」

     

    i、゚ー ゚イ`!「そうだな。 ライフルで武装しているということは、その向こうに行かせたくないということだ。

          向こう側には操舵室がある。

          さて、操舵室がどんな状況か知りたいとは思わないか?」

     

    (∪´ω`)゛「しりたいです」

     

    それを知るために、こうしてここに来たことは分かっている。

    犯人の目的の手がかりを掴むには、船全体の状況が分かっていた方がいい。

    仮に犯人が操舵室を狙っているとしたら、あるいは、騒ぎに乗じて既に操舵室を襲っていたとしたら。

    船が置かれている状況は、限りなく最悪と云う事になる。

     

    だが、情報を手に入れるための方法が思いつかなかった。

    距離は離れているし、中に入るための出入り口には警備がいる。

     

    i、゚ー ゚イ`!「封鎖は船長の独断だそうだ。

           これ以上、シージャックの危険を船に与えるわけにはいかないから、誰も入れない、という理屈らしい。

           しかしそれが真実かどうか、中で何が起きているのかを確かめる必要がある。

           会話が聞ければ僥倖だ。

     

           では方法は?」

     

    ;∪´ω`)「ちからずくですか?」

     

    ブーンの答えに、ロウガは小さく笑った。

     

    i、゚ー ゚イ`!「ふふ、急いでいる時ならそれも有りだが、私はそれを好かない。

          あそこの二人、年齢は?」

     

    ;∪´ω`)「え、えっと……さんじゅっさいぐらい、ですか?」

     

    i、゚ー ゚イ`!「正解だ。 三十代前半だろうな。

          その判断材料は?」

     

    ;∪´ω`)「かん、です」

     

    i、゚ー ゚イ`!「いいや、違うぞ。 ブーン、君は感じ取って計算したんだよ。

          彼らの顔に刻まれた皺、匂い、呼吸音を。

          それらの情報から彼らの年齢を考え付いたが、それを勘と考えたんだ。

          勘と云うのはつまるところ、無意識下での計算だ」

     

    (∪´ω`)「そうなんですか?」

     

    i、゚ー ゚イ`!「そうなのさ。

           加えて、我々には普通の人間よりも遥かに優れた耳があり、鼻があり、目がある。

           ならば、この距離で操舵室の情報を入手するのは不可能ではない」

     

    だが限りなく不可能だ。

    今の自分に、果たしてその様な芸当が出来るのだろうか。

    そう考えているのが分かったのか、ロウガはまっすぐに目を見つめて言い切った。

     

    i、゚ー ゚イ`!「意識と訓練の問題だ。 まずは聴覚情報。

          耳に意識を集中させろ。 扉の向こうに入り込む様にイメージするんだ。

          難しければ、目を閉じろ」

     

    言われた通り、ブーンは目を閉じて耳に意識を集中させた。

    様々な音の情報が聞こえる中、前方の音だけを選別する。

    思えば、日常生活の中で無意識の内に音を選別するようになっていた。

    そうしなければ、うるさすぎて眠ることもできなかったのだ。

     

    音の情報が形となって、不鮮明な映像を瞼に浮かべさせた。

    人の息遣いと跫音が位置と姿、性別、体重、精神状態を教える。

    反響する跫音が建物の壁と柱の位置を教える。

    次第に、操舵室の前に立つ男達の姿が浮かんできた。

     

    その先に、三人分の息遣い。

    それ以上は聞こえない。

    それでも確かに内部の情報が手に入った。

     

    i、゚ー ゚イ`!「さぁ、次は嗅覚情報だ。

           これが出来るようになれば、今後の人生でかなり役立つ。

           一階から立ち上ってくる匂いは飲食店のそれだ。

           それと混じった匂いの中から、明らかに飲食系の物ではないものを探し出せ」

     

    ロウガの香り。

    リンゴの香り。

    誰かが残した匂いのきつい香水。

    その中から、血の匂いを嗅ぎ取った。

     

    (∪´ω`)「ししょー、ちのにおいがしました」

     

    i、゚ー ゚イ`!「上出来だ。 つまり、血が流れるはずのないブロックで血が流れている。

          それが意味するのは?」

     

    (∪´ω`)「きづかれないように、ちをながすことがおこった?」

     

    i、゚ー ゚イ`!「そうだ。 操舵室から漂う匂いかは分からないが、少なくともこの階層で血が流れた。

          それも少量じゃない。 操舵室が襲われたとの情報は聞いていないが、これは知っておいた方がいいな」

     

    自分でも驚きだった。

    扉を開けずに部屋の中の状況を知るなど不可能だと考えていた。

    だが、自分には出来ることがあった。

    無力ではないのだ。

     

    i、゚ー ゚イ`!「これが、我々の持つ力さ。

          ここではこれ以上の情報を得るのは難しいだろう。

          さ、裏付けだ」

     

    ロウガに促され、二人は操舵室前に向かった。

    警備に立っている男二人が、すぐにその視線と注意を二人に対して向けた。

    近づくにつれて、血の匂いがより鮮明になってきた。

    血の発生源は紛れもなく、操舵室だ。

     

    そして、警備している二人からも血の匂いがした。

    操舵室前を通過して、エレベーターに乗る。

    エレベーターで屋上へ行く途中、ロウガから再び問いがあった。

     

    i、゚ー ゚イ`!「どうだった?」

     

    (∪´ω`)「あのふたりからも、ちのにおいがしました」

     

    i、゚ー ゚イ`!「奇妙な話だ。 第一ブロックでは銃撃戦が起こっていないのに、警備員が血の匂いをさせている。

           さぁ、これはどう云うことだろうか」

     

    ロウガは先ほどから幾度もブーンに質問をして、答えるのをじっと待っている。

    この奇妙なやり取りは、ペニサス・ノースフェイスの授業形式にとてもよく似ていた。

     

    (∪´ω`)「けがをしたんじゃなくて、けがをさせた?」

     

    i、゚ー ゚イ`!「その可能性が高い。 いずれにしても、あの二人が血の匂いをさせているのは事実だ。

          屋上に行き、別の情報を収集しよう」

     

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              ‥…━━ August 6th PM14:04 on the penthouse━━…‥

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    人工芝の敷かれた屋上に白いパラソルを広げ、その下に並ぶ白い椅子に深々と腰掛けて酒を片手に海を眺める人がまばらにいるだけだった。

    警備員が二人、銃と棺桶を持って待機している。

    この場所はどこのブロックにも属さないために、封鎖はされていない。

    主に飲み物の屋台が出店していて、よく冷えた酒やジュースが振舞われていた。

     

    柔らかな潮風が運ぶ夏の空気は涼しかった。

    日差しは強く、果てしなく続く青空の眩しさに目を細めた。

    一面に広がる大海原。

    水平線の果てに浮かぶ大きな入道雲に心を奪われ、その先に向かって歩いてみたいと云う気持ちが生まれる。

     

    今、自分は旅の途中。

    あの水平線の向こうに行くことも、出来るかもしれない。

    正面から吹いてくる冷たい潮風はローブの中にも入り込み、ブーンの体を冷やしてくれる。

    少し肌寒く感じるほど、風は冷ややかだった。

     

    日差しの強さと風の冷たさのアンバランスさが、気持ちよかった。

     

    i、゚ー ゚イ`!「良い風だ。 さて、ここでは匂いを元に何かを見つけるのは期待できない」

     

    質問される前に、ブーンは自分の思う正解を口にする。

     

    (∪´ω`)「かぜと、うみのにおいがあるからです」

     

    屋上は先ほどと比べて環境が大きく違う。

    風が強く、匂いが分散してしまっている。

    尚且つ、潮風と云う海の匂いの運び手がいるために、弱い匂いはたちどころに上書きされてしまうのだ。

     

    i、゚ー ゚イ`!「いいぞ、その調子だ。 では、何を頼りにするべきだと思う?」

     

    (∪´ω`)「め、ですか?」

     

    i、゚ー ゚イ`!「そうだな。 まぁ、折角だから飲み物でも飲んで観察するとしようか」

     

    手近な屋台でロウガはミントジュレップ――砕いた氷をぎっしりと詰めたミントの香りがするカクテル――を注文し、ブーンにはオレンジジュースを頼んだ。

    ストローの刺さった大きなグラスを持って、二人はフェンス沿いの席に腰掛けた。

    勧められるままにジュースを飲み始める。

    オレンジの独特の甘味と酸味、そして果肉の食感が美味しかった。

     

    i、゚ー ゚イ`!「うむ、美味い。

           しかし、もう少しミントの風味が欲しいところだ」

     

    特に慌てる様子もなく、ロウガは優雅にストローでカクテルを飲む。

    その目線は、ブーンと同じく空に向けられていた。

    ロウガも、あの入道雲に想いを馳せているのだろうか。

    胸を締め付けられるような、この奇妙な感覚に胸を痛めているのだろうか。

     

    ここではないどこか。

    自分の知らないどこか。

    誰も見たことのないどこか。

    世界の果てを知りたいと、そう思っているのだろうか。

     

    ゆっくりと三口飲んだところで、ロウガはゆっくりとブーンに目を向けた。

    深紅の瞳の奥に宿る光は、何を考えているのかを悟らせない。

    だが優しげだった。

    言葉よりも雄弁に、ロウガの眼は多くを語る。

     

    今、ブーンは試されているのだと。

     

    i、゚ー ゚イ`!「講義の続きだ。 先ほどは聴覚と嗅覚を使った情報収集だが、今回は視覚だ。

          今、見るべき物は?」

     

    ブーンは考えた。

    目の前には多くの情報があるが、犯人の目的に直結する情報は砂浜で砂鉄を探すようなものだ。

    情報を絞る必要がある。

    絞った上で、観察すべき対象を決めるのだ。

     

    (∪´ω`)「ひと……じゃないです。

          じめんとか、ですか?」

     

    そう答えを出した理由は、情報が持つ鮮度の問題だ。

    海賊襲撃の際、この屋上は閉鎖されていた。

    警備員がいたかもしれないし、海賊がいたかもしれない。

    ならば、何かしらの情報が残るとしたらそれは地面などの構造物に限られる。

     

    流動的な人間を観察しても、成果はまず得られないだろうと考えたのだ。

     

    i、゚ー ゚イ`!「……その通りだ、ブーン。

          取り分け、警備員の近くだ。

          彼らが動いていないことに気付いたか?」

     

    二人の警備員は、左舷の縁一か所に固まって立っていた。

     

    (∪´ω`)「お?」

     

    i、゚ー ゚イ`!「では、今から三分間様子を観察するといい。

          いいか、足元だ。

          警備員は動いてその場所の安全を保つのが仕事だと、頭に入れておきなさい。

          動こうとする人間は、目の次に足を動かす」

     

    言われた通り、ブーンは警備員の足元に注意を向けた。

    オレンジジュースを飲みながら。

    潮風に耳を傾けながら。

    注意深く、足元を観察した。

     

    三分の間、彼らはただの一ミリたりとも足を動かそうとはしなかった。

    動くつもりがまるでない。

     

    (∪´ω`)「うごきたくないだけかもしれませんお」

     

    i、゚ー ゚イ`!「緊急事態において動きたくない理由は、怠惰ではない。

          そこに人を近寄らせたくないからだ」

     

    警備員の後ろには、転落防止用の柵が後ろにあるだけだ。

    何故、そこに近寄らせたくないのか。

     

    i、゚ー ゚イ`!「さて、人工芝の形状は見ての通り入り組んでいる。

           一度汚れてしまえば、短時間で掃除をするのは困難だ」

     

    目を凝らして警備員の足元を見る。

    人工芝の影に、赤黒い染みを見つけた。

    ここで戦闘があったことを意味する証拠だ。

    だがそれを隠す意味は何だ。

     

    i、゚ー ゚イ`!「ふふ、なるほどね。

          ブーン、ここで少し待っていなさい。

          私は報告と、少し確認することがある」

     

    ブーンの頭を軽く撫でて、ロウガは席を立った。

    柵から覗き込んでその下にある何かを確認し、反対側も同様に確認。

    それから、船首部分から船尾に向かって大きな歩調で進んで行った。

    言われた通りにそこで待つことにしたブーンは、引き続き観察を続けることにした。

     

    ただし、今度は目ではなく耳を使うことにした。

    観察していることを悟られないように、視線は空と海に。

     

    (∪´ω`)「お?」

     

    その時。

    ブーンは水平線の彼方に浮かぶ入道雲の向こう。

    果てしなく続くその先に、極小のビル群を見たような気がした。

     

    (∪´ω`)「……?」

     

    瞬きをした次の瞬間、それは消えた。

    どうやら、パラソルの下で男が読んでいる本の表紙がビルだったために、勘違いをしたらしい。

     

    i、゚ー ゚イ`!「お待たせした。

          確認ついでに主に話をしておいた。

          これで、我々が手に入れた情報が向こうで役立つだろう」

     

    主とは何者なのだろうか。

    犯人の目的も気になるが、今のブーンには、そちらの方が興味深かった。

     

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          ,zxz 、                    ,{ 狂三ミ }z-ミ    _  ィ=ミx

          ト,:::::::ハ                      ‘f  ム-イハ ィ乍ハ  ぃぐ/=-}.=-}

         f '^¨ト、_L -ミ             ,、 n    ア:::::::::::〈 ム_ムz.〈災什ミ=-_._

     __,、  ヒ ./:::::::{ ,、  ヽ            〈 ` }   .:::::;::::::::└ァ':::::::::::::ト, ム三匕_/:::::::::::::

    . .ハ    `):::::::T:::::ヽ ヽ         `ヽ `ーヤミ/ヽ:::::::::::::;:::::::::::L/::::::::::::::\ー 、::

         ‥…━━ August 6th PM14:15 on the 1st floor, in the 3rd block ━━…‥

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    第三ブロックの復旧作業はまだ続いていた。

    主に死体処理が大きな障害となっていて、探偵と警備員はその作業に駆り出されていた。

    ショボン・パドローネは作業補助を得意とする強化外骨格“マハトマ”を装着し、海賊の死体を運んでいた。

    人間の腕力だけで作業をしていては時間が掛かる上に、腰に負担が掛かるからだ。

     

    マハトマはレリジョン・シリーズと呼ばれる軍用強化外骨格で、戦闘向きではない。

    物資の運搬や作業に特化しているために、普段は船倉内での作業に使われていて、従業員は自由にそれを使える。

    地面に散らばるガラス片で怪我をすることもないし、重い瓦礫を撤去するのにも適した棺桶だ。

     

    (´・ω・`)「ふぅ……」

     

    ベッドメイクの際にリネンを回収するカートには、血みどろの死体が乱雑に詰められている。

    ショボンはそれを両手に一台ずつ持って、死体投棄場所を目指していた。

    死体を回収してカートに詰める道中で、ショボンは損耗の大きさに驚いた。

    探偵、警備員の死傷者は三桁。

     

    報告書によれば頼みの綱であったジュスティア軍“ゲイツ”は全滅し、司令官も死亡した。

    四十二人の勇猛果敢な兵士は死体安置所に収容され、ジュスティアへの無言の帰宅準備を整えている。

    長距離無線でジュスティア軍に被害を報告したところ、最初の襲撃で全滅を告げる連絡があったとのことだ。

    色々と予定から狂ってしまったが、ここからならまだ修正が出来る。

     

    死体廃棄場所となっている第一ブロック警備員詰所非常口には、先客がいた。

    ベニー・ジンジャー。

    探偵の同僚だ。

     

    (´・ω・`)「やぁベニー」

     

    「ショボンか、無事だったか」

     

    ベニーはカートから死体を取り出しては、海に放っている。

    その隣に並び、ショボンは彼の戦果を褒めた。

     

    (´・ω・`)「実戦は初めてだったんだろう?

         すごいじゃないか」

     

    「あぁ、だけどトーマス達が……」

     

    トーマス・“ブルーフェイス”・トレインはベニーの旧友だ。

    いつも二日酔い状態の顔色をしていることから、ブルーフェイスの渾名が付けられた。

    トカレフ自動拳銃を愛用していたが、自動小銃の前には無力だった。

     

    (´・ω・`)「彼らの死を悔やむよりも、その死をどう活かすか、さ」

     

    死体を海に捨てながら、ショボンはそう言った。

    人の死は避けようのない現実として、誰にでも訪れる。

    それを乗り越えるためには、その死を自分なりに解釈してやる必要がある。

    特に、親しい間柄ともなればそれは絶対に必要だ。

     

    カートを置いて、ショボンはその場を去った。

     

    (´・ω・`)「……さて、犯人でも見つけますかね」

     

    ショボンは自分の任務を果たすために、第三ブロック内の捜査を始めることにした。

    ここからが彼の本職だ。

    死体が大量にある中で、尚且つ死体を処理していては推理をするのは難しい。

    まずは一度自分に相応しい場に変えてから始めるのが推理の鉄則だ。

     

    ショボンの中で、犯人の候補として挙がっているのは三人。

    第一ブロック長、ノレベルト・シュー。

    第二ブロック長、オットー・リロースミス。

    そして市長、リッチー・マニー。

     

    当然なことながら、犯人の目的は海賊に船を襲わせることだ。

    それによって利益を得ることが出来る人間は、ノレベルトとリロースミスの二人だ。

    オアシズの鍵である市長を捕らえれば、多額の現金を手に入れることが可能になる。

    金以外にこのオアシズに狙いはないはずだ。

     

    だが、オアシズには多額の金が眠っている。

    オアシズの運営に充てられるだけの膨大な金だ。

    人を狂わせるだけの金。

    マニーを犯人候補に挙げたのは、彼が被害者を装って海賊と協力し合っている可能性もあるからだ。

     

    現に、保険金を手に入れるために銀行員が保険屋と手を組んで、わざと銀行強盗をさせる例がある。

    誘拐事件でも同様だ。

    オアシズが契約している保険会社は誠実なところだが、どんな物事にも例外はある。

     

    (´・ω・`)「バーは開いてるかな?」

     

    ショボンはバーボンウィスキーが好きだった。

    飲み始めたきっかけは、男らしいからという単純な物だったが、今ではその甘い風味が病みつきになっている。

    逆に、スコッチウィスキーが嫌いだった。

    匂いが独特で、どうしても好きになれなかったのだ。

     

    考え事をする時。

    情報を仕入れる時。

    酒は大きな力を与えてくれる。

    第三ブロックにある酒場で、美味いバーボンを出してくれるのは“ジムマーク”だ。

     

    モップで血を洗い流す人の間を、軽い挨拶を交わしながら歩いていく。

    店の電気は消えていた。

    木製の扉には弾痕。

    窓ガラスは砕けていた。

     

    (´・ω・`)「あらら……

         マクフライ、生きてるか?」

     

    店の中に声をかける。

    ぼろぼろの扉が開いて、マクフライ・モーガンが顔を出した。

     

    「肩に一発ぶち込まれたけど、どうにか生きてるよ」

     

    (´・ω・`)「年代物の散弾銃で刃向うからさ。

         レバーアクションはもう古いよ」

     

    「あれがいいんだよ、探偵」

     

    マクフライは警備員の一人だ。

    ただし、彼の場合は臨時の際にだけ警備員として働くことになっている。

    選択は自由だったが、彼は第三ブロックで長い間店を出してきたこともあり、ぜひ戦いたいと志願したのだ。

    彼は自分の店で戦うことを選んだ。

     

    その結果、マクフライは第三ブロックの復旧に手を貸すこととなり、自由に出入りが出来る立場にいた。

    まだ第三ブロックは封鎖体勢が解除されていないが、彼は復旧に手を貸すために店を開けていた。

    このブロックで酒が飲めるのは、彼の店を置いて他にはないはずだ。

     

    「オープンは当分先だが、あんたは特別さ。

    入りな、探偵」

     

    (´・ω・`)「すまないね」

     

    「昼間っから酒を飲む探偵は、お前ぐらいさ」

     

    証明が銃弾で破壊されたため、店内は薄暗かった。

    薄らと見える、砕けた酒瓶と銃弾が抉った木のカウンターが痛々しい。

     

    (´・ω・`)「ジム・ビーム・プレミアムをもらおうかな」

     

    「他には?」

     

    (´・ω・`)「いや、ストレートのダブルで頼む。

         チェイサーはいらない」

     

    埃を被った酒瓶を棚から取って、マクフライはその栓を抜いた。

    グラスに注がれる琥珀色の液体は、甘い香りを漂わせる。

     

    (´-ω-`)「嗚呼、これだよ、これ」

     

    唇の先を湿らせるほどの少量を飲んで、その風味を味わう。

    鼻から息を抜くと、その香りがよく分かる。

    甘い香りは気分を落ち着かせてくれる。

    その時、ドアが軋む音を立てて開いた。

     

    (=゚д゚)「店主、俺もいいか?」

     

    そう言いながら現れたのは、トラギコ・マウンテンライトだった。

    確かに彼は第三ブロックで戦っていた。

    今ここにいるのは不自然ではない。

    同僚からの報告によればコンセプト・シリーズの棺桶を駆使し、海賊たちを輪切りにしたとのことだ。

     

    了承を得ずにカウンター席に座ったトラギコは、ショボンを一瞥もしなかった。

     

    (=゚д゚)「スコッチだ。 アードベック・ウーガーダールをストレートで」

     

    (´・ω・`)「トラギコ君、昼間から酒とは感心しないね」

     

    (=゚д゚)「うるせぇラギ。

        自分の手元を見てから言えラギ」

     

    (´・ω・`)「不機嫌だね、大丈夫?」

     

    いつもは不要な火種を撒き散らさないトラギコが、いつになく不機嫌だ。

    何かが彼の身に起こったのだと考え、ショボンは話を聞くことにした。

     

    (=゚д゚)「あんたも知ってるだろ。

        俺はバーボン野郎が嫌いなんだ」

     

    ベニーは雰囲気から状況を察して、無言でアードベックを注いだ。

     

    (´・ω・`)「そのことでは随分と意見が食い違ったね。

         だけど君は人の好みで喧嘩を吹っ掛けるようなことはしない。

         何があったんだい?」

     

    (=゚д゚)「喋りたくないラギ」

     

    グラスを傾けて、トラギコはスコッチを半分飲んだ。

    ペースが速い。

    いつになく不機嫌だ。

     

    (´・ω・`)「君は昔からそうだ。

         何かあると自分の中だけで解決しようとする。

         良い姿勢だとは思うが、たまには僕を頼ってもいいんじゃないかな?

         十五年前の“CAL21号事件”でも、そうだっただろう?」

     

    次の瞬間、ショボンは胸倉を掴まれて持ち上げられていた。

    利き手でない左手で大の男一人を持ち上げる腕力もさることながら、その速度も素晴らしい。

    右手は懐にあったベレッタM8000を自らの腋の位置で構え、撃鉄も起きて安全装置も解除されている。

    動きが鈍るどころか、磨きがかかっている。

     

    流石はトラギコだ。

    “虎”の渾名は伊達ではない。

     

    (#=゚д゚)「いいか老いぼれ、俺の前でその事件の事を口にするんじゃねぇラギ。

         特に、手前にみたいな元糞同僚に言われるのが一番嫌いラギ」

     

    (´・ω・`)「……せめて、銃は止めてくれないかな?」

     

    両手を上げて無抵抗を強調するが、トラギコの眼から殺意は消えない。

    想像以上に怒らせてしまったらしい。

     

    (#=゚д゚)「なら、口の利き方には気を付けろ。

         こいつは俺よりも気が短けぇし、ちょっとしたことで熱くなりやすいラギ」

     

    (´・ω・`)「悪かった。 確かに、僕にはあの事件を語る資格はない。

         本当にすまなかった」

     

    今から十五年前の話だ。

    トラギコが特徴的な頬の傷を作るきっかけとなった事件。

     

    (#=゚д゚)「いいか、次は殺す。

         警告なしで肺をぶち抜いて、両手足をぶった切る。

         あんただから一度だけ警告してやったが、次はねぇラギ」

     

    ショボンを突き放して、トラギコは残ったスコッチを一気に煽って出口に向かった。

     

    (´・ω・`)「もういいのかい?」

     

    (=゚д゚)「……血の匂いのするマハトマを外してない奴と、これ以上同じ場所にいたくねぇラギ」

     

    店を出て行ったトラギコの背中を見送って、ショボンは彼の抜け目のなさに驚いた。

    頭に血が上って行動していながらも、冷静な観察力の持ち主だ。

    彼の座っていた席に目を向けると、白い名刺サイズの紙が置かれていた。

     

    (´・ω・`)「……ん?」

     

    手に取って裏返して見ると、そこには場所と時間が書かれていた。

    それは、パーティーへの招待状だった。

    恐らくは事件終結のためのパーティーだ。

     

    (´・ω・`)「午後六時に、第三ブロック一階会議室……」

     

    ショボンはバーボンを一気に飲み干して、店を出て行った。

    まだ推理は終わっていない。

    時間まで、約三時間半。

    パーティーの時間までにやるべきことは分かっていた。

     

    (´・ω・`)「探偵ってのも、楽じゃないね」

     

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           ‥…━━ August 6th PM18:00 on the in the 3rd block ━━…‥

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    部屋の空気は冷たかった。

    エアコンの設定温度は二十四度。

    快適なはずだった。

    しかし、確かに空気は冷たかった。

     

    その部屋に集められた、もしくは集まった人間は全部で十人だった。

    彼らの共通点は、招待状を受け取っている事だった。

    招待状を受け取った人間は全員、その部屋にいた。

    ただの一人も逃げることなく、遅れることなく、時間通りに席について円卓を囲んでいた。

     

    第三ブロック会議室。

    最早説明の必要もなく、そこは決着の場と化していた。

    第一ブロックから第五ブロックまでの各代表者、五名。

    第一ブロック長代理、ライトン・ブリックマン。

     

    ライトンの隣に第二ブロック長、オットー・リロースミス。

    続いて第三ブロック長、ノリハ・サークルコンマ。

    第四ブロック長、クサギコ・フォースカインド。

    第五ブロック長、マトリクス・マトリョーシカ。

     

    ブロック長陣の対面に、市長、リッチー・マニー。

    探偵、ショボン・パドローネ。

    刑事、トラギコ・バクスター。

    解剖学者兼検死官、クルウ・ストレイトアウト。

     

    そして、一般客のデレシアが席についている。

    息の詰まる程の沈黙を破ったのは、市長だった。

     

    ¥・∀・¥「突然の招集にもかかわらず、よく集まってくれた。

          ここに呼んだのは、このオアシズで起こった事件を終わらせるためだ」

     

    マニーの発言に、誰も驚かなかった。

    誰もがそれを予期して覚悟していたのだ。

     

    ¥・∀・¥「海賊の行動を見るに、それなりの立場の人間の中に、内通者がいる。

          ハザードレベル5の限定解除をしたのが、第三ブロックであるのを知っていたことから明白だ。

          裏切り者か、或いは元からそれが目的で潜入したのかは分からない。

          だが、海賊に手を貸すために罪のない常客を殺し、オアシズの船員にも犠牲者を出した。

     

          ……ショボン・パドローネ、推理は出来たかい?」

     

    指名をされ、マニーの隣にいたショボンが立ち上がった。

    人を集めた場で推理を披露させられることは経験と立場上、予期出来ていた。

    だから事前に情報を集め、整理をして、推理もしてきた。

    その為、黒皮の手袋を嵌めた手には数枚の紙があった。

     

    時間までに集めた証言、証拠がそこには書かれている。

    これが、ショボンの武器となる。

    準備は万全だった。

     

    (´・ω・`)「ではこれより、この事件を終わらせます。

         ……どうか、ご協力をお願いいたします」

     

    ショボンは咳払いをして、久しぶりの推理に心を躍らせた。

    集まった人間は一人を除いて、彼の話に耳を傾け、目を向けていた。

    唯一、金髪碧眼の旅人だけは美味しそうに紅茶を飲んで、時折横目でショボンを見ている。

    まぁいい。

     

    こちらの推理を聞く内に、彼女も理解するだろう。

    ショボン・パドローネが暴く真実を。

     

    (´・ω・`)「事件の始まりは、当船の従業員であるハワード・ブリュッケンが殺害されたことでした。

         知っての通り、彼の死体は関節を無視して破壊され、足の付け根を切って血抜きをされた上に頭を撃たれていました。

         ここまでは、いいですね?」

     

    全員が無言の同意を示す。

    最初の被害者、ハワード本人の事はあまりよく知らない。

    しかし、彼の事を知る人間から話を聞く内に、彼の事がだんだんと好きになった。

    まるで自分の友人のように、ショボンは犯人に対して憎しみの感情を抱いた。

     

    まずは状況の再確認からだ。

     

    (´・ω・`)「被害者の住んでいる第三ブロックの監視カメラは、事件時には作動していなかったことが分かっています。

         死体からは毒物が確認され、身動きが取れない中で殺された。

         クルウ、そうだね?」

     

    ショボンは二つ隣のクルウにそう話を投げかけた。

     

    川 ゚ 々゚)「えぇ、そうよ。 人工の毒で即効性が高く、ほんの少量で身動きを奪うってやつ。

         だから痛覚はそのまま、意識もそのまま。

         きっと殺された時も同じよ」

     

    (´・ω・`)「毒はどこから検出されたんだい?

         つまり、何を媒介にして摂取させられたか、ってことだ」

     

    川 ゚ 々゚)「飲食物よ。 彼が飲んだお酒に入っていたわ。

          銘柄や種類は分からないけど、アルコールと一緒に検出されたのは確かだわ。

          でも、現場には毒入りの飲食物が何も残されていなかった」

     

    それからショボンは、現場にビールの空き缶とウォッカの空き瓶が転がっていた事を説明した。

    鑑識に回したが、どちらからも毒は発見されなかった。

    ショボンは犯行後に犯人が毒を混入した酒を回収したのだと、自分の推理を補足事項として話した。

    それなら、証拠が残っていないことに説明がつくのだ。

     

    誰も、彼の推理に茶々を入れることはしなかった。

    この段階まで全員が納得しているという意味だ。

    次に、毒の混入に関わる情報の説明に入る。

     

    (´・ω・`)「さて、その酒ですが、殺害前日に詰所で同僚と賭けをした際に譲り受けたものだと云うことが分かっています。

         同僚の目撃証言で裏は取れています。

         オルェイ・マケバッカス、賭け好きの男で独身、借金は過去にはありましたが、現在はゼロ。

         新品のビールと開封済みのウォッカを賭けたそうですが、毒の混入については否定しています。

     

         彼の部屋を捜索しましたが、毒は見つかりませんでした」

     

    毒はいくらでも隠せる。

    特に液体ともなれば、下水にでも流してしまえばそれまでだ。

    彼を犯人だと勘違いさせないように、ショボンはすぐに強調した。

     

    (´・ω・`)「ですが、彼は犯人ではありませんし、毒を混入してもいません。

         その根拠は、彼には賭けの記憶があった点と、殺害予想時間には同僚とポーカーをしていました。

         複数人が証言しています。

         完璧なアリバイがあるんです」

     

    彼の無実を証明するためにも、これは重要な証拠だった。

    時にアリバイは物証よりも信憑性を持つことがある。

    特に、複数人からのアリバイ証言は現場に残された時計よりも信頼することが出来る。

     

    (´・ω・`)「では誰が、どの段階で毒を混入したのか?

         答えは簡単でした。

         その日以降、船倉の詰所で目撃されていない人物がいるのです。

         ジャック・ヒューストン、という人物です」

     

    後に調べた結果、そのような名前の従業員はいないことが分かったとも付け加えた。

     

    (´・ω・`)「その人物は恐らく、オルェイの酒がロッカーに入っている段階で毒を混入したのでしょう。

         船倉の詰所なら、それは容易です。

         更に言えば、詰所なら第三ブロックのカメラを機能させなくすることが可能なのです。

         ここまででお分かりかと思いますが、犯人は変装を得意とし、船の警備構造を熟知している人物です。

     

         該当する人物はただ一人、ノレベルト・シューなのです」

     

    確たる証拠を繋ぎ合わせることで、ノレベルトの足跡がハッキリと浮かび上がった。

    長々と推理を披露したが、犯人の一人目はノレベルトであると理解されれば十分だ。

     

    (´・ω・`)「ハワード氏を死に至らしめた銃弾を回収して線条痕を調べたところ、ノレベルト氏の持つ銃と一致しました。

         続いて第二の事件、警備員詰所の事件です。

         この事件で分かったのは、犯人は棺桶の操縦に長けているということです。

         ですが思い出してください。

     

         この襲撃の前にサイタマ兄弟が襲われるという事件が起こりました。

         ノレベルトは格闘術に長けているとは言えませんでしたし、何より、棺桶を使うことも出来ませんでした。

         これは、探偵なら誰もが知る事実です。

         彼女は格闘テストに四回、落ちているんです」

     

    腕を隠すためにそのような演技をしていた可能性もあるが、探偵免許取得のための試験で落ちたことを考えるとそれは低い。

     

    (´・ω・`)「第二の事件と第一の事件では、実行犯が異なるとしか考えられません。

         共犯者がいるのだと、私は考えました。

         そうでなければ、“三銃士”たちを襲えるはずがない。

         棺桶一機で警備員詰所を襲撃、殲滅するなど、とてもではないが無理です。

     

         第三の事件、801号室の毒殺にも手を貸す事が出来た人物こそが、共犯者なのです」

     

    共犯者、という言葉に数人が動揺を見せた。

     

    (´・ω・`)「そう、我々の中に共犯者がいるのですよ。

         ノレベルトを匿い、海賊を手引し、道具を調達した人間が。

         偽りの忠誠心で捜査をかく乱し、多くの人を殺した愚劣な人間が、ここにね」

     

    ここからが本質。

    ショボンが時間をかけて調べていたのは、ノレベルトの人間関係だ。

    彼女と協力してこの船を恐怖と混沌に陥れ、互いに利益を得ようとした卑怯者。

    その人物を探していたのだ。

     

    彼女の人間関係は非常に広く深かった。

    関係者に彼女の話を聞くと、口を揃えて彼女は健全で真面目な人間だったと語る。

    異性関係もなく、そのことで焦りを見せることもなかったという。

    つまり、出会ったばかりの男に唆されて動くような人間ではなかったのだ。

     

    何が彼女を変えてしまったのか。

    それは時間だ。

    時間と出会い、そして影響が全てを変えたのだ。

    複数の情報筋から手に入れたのは、彼女が最近ある男と頻繁に出会っていた目撃談だ。

     

    両者に尋ねても否定されるばかりで答えは出なかったと言うものの、その鮮烈な姿は目撃者の記憶に残されている。

    静かに息を吸って、ショボンはその人物を見つめた。

    自分は大丈夫だと安心しきった顔だ。

    この瞬間からショボンの目は撃鉄。

     

    言葉は弾丸。

    激情は炸薬。

    そして口は、銃口と化す。

    狙いは対面にいる男。

     

    (´・ω・`)「ねぇ、オットー・リロースミスさん」

     

    £;°ゞ°)「はぁっ?! な、何を言い出すんだ、ショボン!!

           私が共犯? おいおいおい、冗談はよしてくれ!!」

     

    普段の冷静な態度はどこへやら。

    取り乱したロミスに、ショボンは追い打ちをかける。

     

    (´・ω・`)「おやおや、随分と慌てていますね」

     

    £;°ゞ°)「当たり前だろう!! いきなり人を犯人呼ばわりして、君、正気か?!」

     

    (´・ω・`)「正気ですよ、私は常に。

         ではお尋ねしますが、海賊迎撃中、貴方はどこにいたのですか?」

     

    £;°ゞ°)「そ、それは……」

     

    ショボンは偶然、彼が海賊迎撃中に第三ブロック内を移動している様子を目撃している。

    彼を除くブロック長陣が一か所に集められているにも関わらず、だ。

    何か答えられない事情があったのは明白だ。

     

    (´・ω・`)「大方、海賊とお話をしていたのでしょう。

         ちなみに分け前は?」

     

    ロミスは真っ青にしていた顔を赤くして、激昂した。

     

    #°ゞ°)「ふざけるのも大概にしたまえ、探偵!!

           私がやったという証拠がないだろう?!

           私がノレベルトとつるんでいるという証拠もないだろう?!

           いい加減な捜査と推理で、人を貶めるのが君の仕事かね!!」

     

    今にも掴みかからんばかりの権幕で、ロミスは机の上を叩いた。

    その様子にほとんどの人間が驚いた。

    デレシアは眉一つ動かさずに、紅茶を飲んでいた。

    トラギコは爪を眺めていた。

     

    (´・ω・`)「あるんですよ、証拠が」

     

    £;°ゞ°)「う、嘘だ!! そんなもの、あるはずがない!!」

     

    (´・ω・`)「貴方の部屋で、一つの薬莢が見つかったんですよ。

         貴方のベッドの下にね」

     

    真空パックの中に入った薬莢を机の上に置く。

    あるはずのない証拠品を見て、ロミスは言葉を失った。

    顔面蒼白のロミスは、誰かに助けを求めようと目を動かす。

    誰も彼を擁護しない。

     

    哀れな姿だ。

     

    (´・ω・`)「そして、この薬莢は最初の事件、つまりハワードの殺害に使われた物であることが分かっています。

         これは、貴方がノレベルトと関係を持っている事を雄弁に物語る証拠です」

     

    一発の銃弾。

    探偵たちが意地になって下水の中からそれを見つけなければ、その薬莢が事件と関連性のあるものだとは分からなかった。

    真実を語ってくれたのは、その銃弾だったのだ。

     

    £;°ゞ°)「あ、有り得ない…… 私は、私は!!」

     

    (=゚д゚)「共犯ってことは、主犯がいるんだろう?」

     

    やっとトラギコが推理に口を出してきた。

    これが推理の醍醐味だ。

     

    (´・ω・`)「あぁいるさ。

         本来この場にいなければならない男の事が、分かるかい?」

     

    (=゚д゚)「探偵長、“ホビット”のことラギか?」

     

    トラギコなら、必ずその名前に辿り着くと信じていた。

     

    ;・∀・¥「彼が、あの“ホビット”が?!

          彼はこの船のために何年も――」

     

    (´・ω・`)「欲望の前に、年月も情も意味はないんですよ。

         彼なら今頃、海賊の乗ってきた船で優雅にシャンパンでも飲んでいるでしょう。

         ……気づくのが、少し遅かった」

     

    目頭を押さえ、ショボンは深い溜息を吐く。

    推理において、犯人を追いつめる際には慎重にならなければならない。

    それと同時に、より強烈な発言も必要となる。

    致命的とも言える、決定的な矛盾。

     

    それを指摘してやることこそが、推理においての詰みの作業だ。

    ただしこれは初手としては使えない。

    事前の下ごしらえとして幾つもの細かな前提を用意した上で、初めて効果を発揮する切り札なのだ。

     

    (´・ω・`)「更にもう一つ」

     

    £;°ゞ°)「な、何だ」

     

    (´・ω・`)「貴方、そこのデレシアさんの部屋を間違えて記憶していましたね。

         彼女の部屋が801号室だと勘違いをしていた。

         毒殺された人は、勘違いで殺されたのです」

     

    £;°ゞ°)「あ……あっ……」

     

    ロミスはショックのあまり、それ以上言葉が出てこない様子だ。

    音もなく席を立ったショボンは、ロミスの傍に歩いていく。

    彼は数歩後退ったが、ショボンは彼の腕を素早く掴む。

    自殺などされたら事だ。

     

    探偵の本分とは、犯人を殺さずに生け捕りにし、死よりも辛い思いをさせることにある。

    ロミスの腕を引いて、マニーの隣まで連れて行く。

     

    (´・ω・`)「……市長、これ以上の被害拡大を防ぐために、彼を船倉房に連れて行こうと思います。

         お手数ですが、ご同行していただいても?」

     

    マニーは深い溜息を吐いた。

    一度だけロミスの顔を見たが、直ぐに下を向いた。

     

    ¥・∀・¥「……仕方あるまい」

     

    動機についてはまた後で聞けばいい。

    今は、この男をマニーと共に船倉に連れて行くだけだ。

     

    (´・ω・`)「続きは下で聞こう……さ、行くぞ」

     

    これで、長く続いた惨劇も終わる――

     

    ζ(゚ー゚*ζ「あら、茶番はもうお終いなの?

          これだけ待たせておいて、随分と荒っぽい推理ね」

     

    ――はずだった。

     

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                        Now, it's time to do.

                      さぁ、答え合わせの時間よ。

     

    AmmoRe!!のようです                           Ammo for Reasoning!!

     

                      第十章【Reasoning!!-推理-

     

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    デレシアの発言に、ショボン・パドローネは静かに反応を示した。

    上半身と視線をデレシアに向け、口を結んで待っている。

    不満に感じているわけではない。

    彼は先ほどまでのデレシアと同じく、待ち望んでいるのだ。

     

    好奇心を満たし、納得させ得る推理を。

    推理とは料理だ。

    揃えた材料を上手く形に出来るか否かが、成功に直結する。

    先ほどの推理は、最低の料理だった。

     

    ファストフードと同じ、早さだけを重視した推理だった。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「そんな言いがかりが推理と言えるのかしら?」

     

    (´・ω・`)「……随分と強気だね。

         だが、私はそれ相応の材料を揃えているんだ。

         言いがかりとは心外だな」

     

    紅茶の水面を眺めながら、デレシアはそれを聞き流した。

    聞く必要もない。

    ここから先に必要なのは、一方的な証明だ。

    勿論、彼が用意した情報を使うつもりはない。

     

    そのような物は、使うまでもないのだ。

    必要な物は自分自身で用意してある。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「ハワードの下りは概ね正解でしょうね。

          だけど、肝心な部分が証明されていないのよ」

     

    オアシズ内で殺されたハワードの殺害には、一つの矛盾点がある。

    その部分にショボンは一切触れていない。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「犯人はどうやって被害者の部屋に入ったのかしら?」

     

    (´・ω・`)「マスターキーだろう?

         履歴にもそう残っている」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「ではどうして、被害者は犯人の侵入に気付かなかったのかしら?

           鍵が開けられた上に、チェーンが切断されたのにどうして対処しなかったのかしら?

           犯人はハワードが毒を飲んだと、どのようにして知ったのかしら?

           さ、説明を」

     

    (´・ω・`)「それは……」

     

    不可思議なのは、侵入のタイミングだ。

    残されていた衣類などから、彼が酒を風呂上がりに飲んだ可能性が非常に高い事が分かっている。

    つまり、何かの作業の途中ではなく、ゆっくりと腰を据えて酒を飲んでいたことは間違いないのだ。

    盛られた毒は即効性で、摂取されてからすぐに体の自由を奪う種類のものだったと調べがついている。

     

    当たり前の話だが、摂取しなければ自由を奪うことは出来ない。

    この際、どの酒に毒が含まれていたかは問題ではない。

    問題なのは、毒を飲んだタイミングを知った方法だ。

    ハワードが毒を飲んだと云う事、そしてその瞬間を正確に把握しなければ、抵抗されずに侵入することは不可能なのだ。

     

    毒の性質上、正に賭けだ。

    だが殺人を賭けで行うほど、この犯人は馬鹿ではない。

    より確実な方法で、ハワードが毒を飲んだタイミングを把握してから犯行に及んだと考えるしかない。

    そうなると、犯人が扉を開いてチェーンを切断して侵入したという前提が違うのだ。

     

    逆なのだ。

     

    (´・ω・`)「……説明してくれるかい?」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「犯人は、最初から部屋にいたのよ。

          そしてそこで毒を盛った」

     

    チェーンを掻い潜って部屋の中に入るには、家主が席を外しているタイミング以外にない。

    最初から部屋にいれば、ハワードが酒を飲むタイミングも分かるし、彼が風呂に入っている間に毒を盛ることも可能だ。

    それならば、彼が万が一職場で酒を飲んだとしても計画は一切狂わない。

    主な下準備は全て、部屋で行われたのである。

     

    その言葉に、トラギコが反応した。

     

    (=゚д゚)「だが、カードキーの履歴はどう説明する?

        ハワードの後に、確かにノレベルトが入室した履歴が残ってるラギよ。

        時間もそこまで開きがないラギ」

     

    デレシアの推理を推測でなくするためには、その証明が必要となる。

    カードキーの履歴を偽造するには、デジタル・アーカイブ・トランスアクターだけでは不可能だ。

    だが。

    それが真実であれば、何の問題もないのである。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「カードが入れ替わっていたのよ。

          本人の知らない間に、ノレベルトの物と彼の物がね」

     

    彼の持つカードとノレベルトのカードが入れ替わっていれば、説明がつく。

    履歴だけを見れば確かにノレベルトが後に入室した事になっているが、それはカードの順番の話なのだ。

    実際は真逆。

    犯人がハワードのカードで入室した後に、ノレベルトのカードを使ってハワードが帰宅したのだ。

     

    (=゚д゚)「……例の賭けか」

     

    トラギコはすぐに、その答えに辿り着いた。

    証言の中にある通り、被害者は帰宅前に一つの賭けを行った。

    タネは手品と同じ。

    財布の内容物の数を賭けの対象とするもので、その際にカードを入れ替えたのだ。

     

    相手が別の物に目を奪われている隙に、目的の物を入れ替えるという単純な物だったが、効果は覿面だった。

    扉が難なく開けば、誰もその鍵が別の物だと疑うことはしない。

    それがカードキーの様な物ともなれば、尚更だ。

    使用の度にカードの番号を確認するような人間は、平時であればまずいない。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「そして、忘れ物を取りに船倉に戻ったハワードが目撃されているけれど、恐らくそれは変装をした犯人だったはずよ。

           犯人は船倉である物を手に入れて、別の場所に保管したの。

           ただ、ハワードを殺した犯人は彼よりも先に部屋に向かう必要がある関係で、その場にいることが出来なかった。

           それを解消するのが、自由に動ける人間がもう一人いたという仮定。

     

           ――そう、貴方が推理した通り、犯人は二人いる」

     

    そろそろ、核心部分へと迫る時間だ。

    肝心なのは、犯人が二人いるという事実。

    一人は大胆で、暴力的な行動をしながらも決してその影に気付かせない。

    もう一人は繊細かつ慎重な性格の持ち主で、表にその姿を見せる役割を担っている。

     

    性格と役割が真逆の配置。

    これによって、実体と影とが別々に動き回るためにその動きが全く掴めず、追いかけることが出来なかったのだ。

    これが犯人像に靄をかける仕組みだった。

    よく練られ、よく訓練された人間の成せる犯行だ。

     

    変装に長けた方の犯人はハワードが船倉を出た後に続き、道中で戦闘を得意とする仲間にカードを渡した。

    カードを受け取った犯人は素早く移動し、ハワードよりも先に部屋に入った。

    一方、変装を得意とする方はそのままの格好で船倉に戻り、忘れ物を回収したのだ。

     

    (´・ω・`)「待ってくれ、ある物って?」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「軍用強化外骨格、ジョン・ドゥ。

          警備員詰所襲撃の際に使われた物よ」

     

    武器庫の使用履歴には、ハワードの名前が残っていた。

    彼の名前で何かの武器が持ち去られたのは、言うまでもない。

    最も強力な武器は、やはり、棺桶だ。

    それも、汎用性に富んだジョン・ドゥを選ぶのは自然な話である。

     

    (=゚д゚)「そこまではいいラギ。

        だがその物言いは、ハワード殺害に使われた棺桶がジョン・ドゥでないと言っているように聞こえるラギ」

     

    流石は刑事だ。

    細かいところに気が付く。

    だからこそ、喋り甲斐がある。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「ジョン・ドゥでは大きすぎて目立つために、犯行後の移動に支障が生じるわ。

           だから小型の棺桶が必要だった。

           どの棺桶を使ったのかは、今日の作業を見れば分かることよ」

     

    (=゚д゚)「マハトマ、ラギね」

     

    マハトマは殺傷能力の高いジョン・ドゥとは違い、貸し出しに厳しい制限がない。

    実際問題として、死体の処理に使われるほどにマハトマは危険視されていないのだ。

    だが腕力を人間以上に強化する点で言えば、十分に殺傷力がある。

    人間の四肢を折り曲げることなど、造作もない事だ。

     

    両腕に付ける形の棺桶であるため、非常に容易に持ち運びができる。

    犯行後には何食わぬ顔で船倉に戻せば、証拠品の隠滅は完了する。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「ハワードが毒を飲んだことを確認してから、犯人は彼を殺した。

           排水溝の上で頭を撃って、弾丸を消し去ろうとした。

           犯人の計算通り、結局見つかったけどね」

     

    デレシアはあえて、殺害の過程について詳しく触れなかった。

    この場合、過程はどうでもいいのだ。

    彼女が話そうとしているのは、犯人の動きについてなのだから。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「これがハワードの事件の全貌。

          次に、私が遭遇した警備員詰所襲撃の事件よ」

     

    これから話すのは、単身で詰所を襲った人間。

    デレシアと銃口を向け合い、ブーンを海に投げ捨てた人間の話だ。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「探偵さん、犯行の前に死体の映像が流された理由、考えた?」

     

    (´・ω・`)「船全体を恐慌状態にするため、かな」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「私も最初はそう思ったわ。

          でもね、本質は違うのよ」

     

    秘密裏に事件を起こしていた犯人が、突如としてその方向性を変えた瞬間だ。

    この瞬間にこそ意味があるのだと、デレシアは考えた。

    犯人が見せた隙の一つ。

    本命の動きがここに隠されていると。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「保険掛けと安全な移動のためだったのよ。

          ノレベルトのマスターキーが使用不可能になるのは時間の問題だったし、足跡がついてしまう。

          そこで犯人はまず、警備員詰所に入ることの出来る新たなカードキーを手に入れることにした。

          どのようにして手に入れるか、としたら答えは力づくしかないわ。

     

          如何に人目に付きにくい場所で、確実に権限のあるカードを持つ人間を襲うとしたら、探偵か警備員しかいない。

          案の定、反応した人たちがいた。

          “三銃士”こと、サイタマ兄弟よ。

          こうして犯人は、警備員詰所に向かうための新たなカードキーを手に入れた」

     

    これが保険掛けだ。

    万が一、マスターキーが使えなかったとしても、警備員詰所に入ることが出来る。

    そしてその保険は見事に効果を発揮した。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「もう一つ、犯人は安全を欲しがった。

          その安全と云うのは、誰にも怪しまれずに目的の場所に移動するための状況が欲しかったのよ。

          船内がビデオで混乱している時が、犯人にとって最も移動がしやすい時間であったと推定すると、ある推論が出てくる。

          犯人の一人はこの船の関係者。

     

          もっと言えば、事件に関わる役職の人間であるという可能性がね」

     

    (;=゚д゚)「……」

     

    (´・ω・`)「……」

     

    探偵たちが目を光らせている中、詰所に向かうのは容易ではない。

    だが大きな事件が起きた直後に事件解決を任された立場の人間ならば、例え警備員詰所に向かったとしても誰も気にも留めない。

    誰の記憶にも残らない安全な移動こそが、犯人がビデオを流した主な目的だったのである。

    結果、犯人が計画した通り警備員詰所への侵入と大量殺人を許してしまったのだ。

     

    (´・ω・`)「だが分からないことがある。

          どうして詰所を襲ったんだ?

          何のために、そんなリスクを?」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「事件に本腰を入れてもらうためよ。

           船全体が事件解決に向かって足並みを揃えれば、海賊への迎撃準備に致命的な時間を与えられるからね」

     

    (´・ω・`)「……ほぅ」

     

    関心を態度に表すショボンとは対照的に、トラギコは不服そうだった。

    ただ、直ぐに感想を口にするのではなく、彼は何かを考えている様子だった。

    ややあって、トラギコはやっと口を開いた。

     

    (=゚д゚)「ここまでは全部、手前の推測だろ?」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「ええ、そうよ。 それがどうしたの?」

     

    (=゚д゚)「……何を隠しているラギ?

        なんでまだ、犯人の名前を挙げない?」

     

    いい食いつき方だ。

    しかしまだだ。

     

    (´・ω・`)「トラギコ君、まだ推理は終わっていないんだよ。

         デレシアさん、続けて」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「……犯人の目的は海賊を招き入れ、市長の身柄を確保させることだった。

          何故か? 目的達成のために、どうしてもマニーが必要だったからよ」

     

    オアシズ内でマニーの存在は絶対だ。

    彼は生きている限り、オアシズの全てを自由にできる。

    ブロック間を閉鎖することも、閉鎖されたブロックを行き来することも。

    生きた鍵としての彼の利用価値は、オアシズでは最上だ。

     

    ;・∀・¥「……私、が?」

     

    突然名前が出されたマニーは、目を丸くして驚いた。

    彼は海賊襲撃時、デレシアの指示で別の場所に避難していたのだ。

    海賊たちが彼を探していたことは、その耳に届いていない。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「えぇ、貴方よ。 海賊には報酬を、そして犯人は貴方を手に入れる予定だったの。

          何が欲しいかまでは分からないけどね」

     

    (=゚д゚)「目的は分かった。 で、結局犯人は誰ラギ?」

     

    焦ってはいけない。

    急いてはいけない。

    これは、一種の駆け引きなのだ。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「ここまでで私が説明したのは犯人の目的と、その行動。

          肝心の犯人については、これから説明するわ」

     

    ここからが本命の推理。

    犯人の正体に迫るための推理だ。

    その為にはまず、第一の事件から紐解く必要がある。

    第一の事件こそが、一連の事件を解決するための大きな矛盾を秘めていたのだ。

     

    これに気付かなければ、犯人の正体に辿り着くことは出来ない。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「そもそも、この事件の始まりはハワードではなかったの。

           ねぇ、トラギコ?」

     

    その言葉に、初めは不服そうな表情を浮かべたが、次第に待ち望んでいたように目を輝かせて反応した。

     

    (=゚д゚)「……あぁ、ポートエレンだ」

     

    事前にトラギコに話していた通り、ここでバトンを彼に渡す。

    彼に話してもらいたいのは、ポートエレンで発見されたクリス・パープルトンの事だ。

    デレシアはトラギコがポートエレンの事件を調べていたことを知っていた。

    そこで、彼にポートエレンの事件を語ることとその詳細、更には海賊殲滅後の船内の調査報告を求めた。

     

    思った通り、トラギコはその話を飲む代わりに条件を提示してきた。

    この船で起こった事件の解決に、デレシアが手を貸すというものだ。

    双方の利害が一致し、タイミングはデレシアに一任された。

    そして、今がその時だった。

     

    デレシアの推理に対して異議を唱える事をしなかったショボンが、ここで動いた。

     

    (´・ω・`)「彼女は自殺だ、事件ではない」

     

    トラギコは彼の言葉を無視し、説明を始めた。

     

    (=゚д゚)「被害者はクリス・パープルトン。 コクリコ・ホテルが立つ崖下にある入り江に浮かんでいるのが見つかった。

        死因は窒息死。 部屋には遺書が残されていたラギ」

     

    それから、チェックインの時間、発見時の部屋の状況。

    事細かな情報をトラギコは話し始めた。

     

    (=゚д゚)「チェックインしたのは、八月三日の夜十一時三十八分。

        無人でのチェックインが可能だったために、目撃者はいない。

        発見時、部屋には鍵が掛かっていた。

        テラスの窓――内開き式の――が開いて、 遺書は、鏡台に置かれていた。

     

        この遺書の字と、チェックイン時の筆跡は一致したラギ。

        そうラギね、ショボン?」

     

    (´・ω・`)「……あぁ、そうだよ」

     

    ショボンは面白くなさそうな口調で肯定した。

    だが、トラギコは気にせずに続ける。

     

    (=゚д゚)「ショボン、あんたはホテルに滞在していたオアシズの人間が無実だと証明するためにここに行ったんだよな?」

     

    (´・ω・`)「あぁ、そうだ」

     

    (=゚д゚)「滞在していた人間の名前は?」

     

    (´・ω・`)「守秘義務がある。 乗客の安全が最優先だ」

     

    リロースミスの肩から手を動かさずに、ショボンは言い放つ。

    彼は探偵だ。

    探偵は顧客の情報を墓まで持って行く。

    一度断ったら、二度目はない。

     

    肩をすくめて、トラギコはデレシアを見た。

    彼は約束を果たした。

    次は、デレシアが果たす番だ。

     

    (=゚д゚)「と、こんなところでいいラギか?」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「上出来よ。 その被害者の名前を特定した証拠品は?」

     

    (=゚д゚)「部屋の番号と台帳からだ」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「……そう、つまり被害者の名前はあくまでも台帳上のもの。

          本名は全く別の物よ」

     

    (´・ω・`)「別?」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「貴方達がよく知る名前よ。

          ノレベルト・シュー、って名前」

     

    その瞬間、それまで沈黙していたブロック長達がその顔を衝撃に歪めて驚きを露わにする。

     

    £;°ゞ°)「そんな!!」

     

    ノリハ; .゚)「死んでいたのですか……」

     

    ('l')「ブロック長が、死んだ……?!」

     

    ;・∀・¥「どういう事だ、ショボン!!」

     

    当然、その原因はショボンにある。

    死体の顔を確認していながら、ノレベルトと分からなかったのだから。

     

    (´・ω・`)「……それは気付かなかった。

         だが事件、と断言していることについての説明は?」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「遺書があっても、それは誰でも書けるわ。

          そして、トラギコも気付いたことがあるはずよ」

     

    旨味を全て持って行くと、彼が気の毒になる。

    予定外の対応だったが、トラギコは不満一つもらさずに、改めてデレシアからのバトンを受け取ってくれた。

     

    (=゚д゚)「有り得ねぇんだよ、遺書があるってことが」

     

    (´・ω・`)「有り得ない? 現に在り得ているからこそ、遺書があったんだろうが」

     

    (=゚д゚)「遺書は鏡台の上に置かれていた、そうだろ?」

     

    (´・ω・`)「あぁ」

     

    (=゚д゚)「被害者が飛び降りたとされる夜は、かなりの強風だったことが記録されているラギ。

        それこそ、シーツが捲れ上がるぐらいのな」

     

    真っ先に気付いたのは、マニー、そしてノリハの二人。

    それからロミス、ライトンが理解する。

    強風の中で遺書だけが飛ばされずにいたのは、有り得ない話なのだ。

    鏡台の上から発見するには、風が弱まった時に置かれるしかない。

     

    本人が飛び降りた後では、それを置くことは不可能。

    何者かが置いたのだ。

     

    (=゚д゚)「他にもあるラギ。

        死体にあるべきものがなかったラギ。

        でっけぇ打撲傷がな」

     

    シーツが飛ぶほどの風力ならば、飛び降りる人間にも影響を及ぼす。

    ましてや風の影響が強い崖上ならば、体は崖側に向けて流されるはずだ。

    当日に風が崖側に向いて吹き付けていたのはシーツの捲れ方と、窓の開き方で証明できる。

     

    (=゚д゚)「死体にあったのは細かな擦過傷、そして古い銃弾の傷ラギ。

        薬で意識が朦朧としているなら、力まず、余計なことを考えずに頭から飛び降りるはずラギ。

        助走をつけて飛ばない限り、絶対に打撲傷が出来る。

        だが、手摺を飛び越えるってなると、薬の件がどうにもおかしいんだ。

     

        意識を混濁させるのは、死の恐怖を和らげるための物だ。

        つまり、薬がある程度効いた状態で飛び降りないとならねぇ。

        落ちることは出来ても、全力疾走するなんてこと、出来ないんだよ」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「そして、彼女の死亡とノレベルトの失踪のタイミングは一致するのよ」

     

    (´・ω・`)「台帳の件は? どう説明するんだい?」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「オアシズの人間が泊まっていたのなら、その中に例の共犯者がいたと考えるのが普通よ。

          存在しないクリスという人物を生み出して、捜査のかく乱を狙った。

          もっと正確なことを言えば、打ち上げられた遺体がオアシズと無関係であることを決定づけたかったのよ。

          そうすることで、ノレベルトは姿を消して船のどこかに隠れながら無差別な殺人を行った、と演出することが出来たわけ」

     

    第一の事件、つまりノレベルト殺害は彼女の姿を船から消すために行われた。

    あたかも彼女が変装をして、船のどこかにいると思わせるために。

    しかしショボンはそう簡単に頷かなかった。

     

    (´・ω・`)「じゃあどこで、彼女は殺されたんだい?」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「オアシズで殺し、海流を計算に入れてから投棄したんでしょうね」

     

    (´・ω・`)「……君の推理力には恐れ入るが、それがどう犯人に繋がるんだい?」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「犯人の一人は、ノレベルトの事を知っていて、彼女に近づけた人物」

     

    腐っても彼女はブロック長だ。

    周囲からの注目もあるし、責任と自覚のある人間だ。

    その彼女に近づき、人目に付かずに殺害するためには彼女と二人きりになる状況しかない。

    つまり、親密な関係で彼女に毒を盛れる人間以外、ほぼ不可能な犯行なのである。

     

    もう一つ、確かな情報がある。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「そして、犯人は右利きよ」

     

    (=゚д゚)「それについての根拠は?」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「私と対峙した時、その人物は右手で銃を使っていた。

          人が咄嗟に拳銃を抜くのは利き手よ。

          それまで誤魔化していたとしても、ね」

     

    ブーンが捕らえられた時、犯人はブーンの頭に右手で銃を突きつけた。

    そしてその銃ごとデレシアの銃弾が砕き、犯人は逃亡した。

    その際、犯人は腕を負傷している。

    骨が砕けたのか、それとも肉が千切れたのかまでは分からないが、怪我を負ったことは断言できる。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「今現在、犯人は右手を負傷しているのは間違いないわ」

     

    視線が、一斉にロミスに向けられた。

    彼の右手には、白い包帯が巻かれている。

    背後に立つショボンは、ロミスの手を高々と持ち上げて言った。

     

    (´・ω・`)「ロミスさん、これは?」

     

    £;°ゞ°)「襲われたんだよ、実は……

           ハザードレベル5が発令されてからしばらくして、それこそ、801号室のお客様が毒殺された後に。

           警備員の格好をした男が目の前に現れて、いきなり襲ってきたんだ。

           必要なら、警護についていた三人の証言もある」

     

    ;・∀・¥「どうして報告しなかったんだ!!」

     

    £;°ゞ°)「申し訳ありません、あの段階で皆をあれ以上不安にさせたくなかったのです」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「ロミスは白よ。 彼、左利きだもの」

     

    その証拠は、彼の腕時計が右腕についていることだった。

    作業効率を重要視する人間ならば、利き腕の反対側に時計をつけるものだ。

    少なくとも、ロミスは詰所を襲ってはいない。

    それは間違いない。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「彼はあくまでも、自分の職務を全うしようとしただけ。

          でしょ?」

     

    £;°ゞ°)「あ、あぁ」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「そしてロミス、貴方が私の部屋を801号室だと言った理由も、同じよね?」

     

    彼がデレシアの部屋を探していたことは知っている。

    彼が惹かれていることも。

     

    £;°ゞ°)「その通り、だ」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「毒殺の対象が完全な誤算だったのは事実だけどね。

          犯人は実在の従業員に変装し、毒入りのチョコを届けさせた。

          カードは警備員の死体から奪った」

     

    (=゚д゚)「で、いい加減犯人を教えてくれないか?」

     

    ζ(゚ー゚*ζ「それは簡単な話よ。

          どうしてこの事件が、これだけ厄介になったのか。

          犯人が仕掛けたトリックだけでは、これほどまでに現場が混乱することはない。

          もう一つ、犯人にはとびっきりの仕掛けがあったから。

     

          そうでしょう?」

     

    デレシアは笑みを浮かべた。

    勝利に酔う笑みではない。

    一つの大きな事件を、一つの大きな夢を踏み潰す楽しみを前にした、嗜虐的な笑みだった。

    得物を前にした獣が浮かべる残虐な笑みだった。

     

    大勢の人間を殺し、海賊を操り、目的を果たそうとした人間。

    捜査をかく乱させ、真実を靄にした人物。

    デレシアの愛するブーンを海に落とした、忌むべき人間。

     

    ζ(゚ー゚*ζ「ねぇ、ショボン・パドローネさん?」

     

    名を呼ばれたショボンは、ただ静かに口元を釣り上げただけであった。

     

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    AmmoRe!!のようです                           Ammo for Reasoning!!

     

                             第十章 了

     

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