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第一章【breeze-潮風-】

  1. 名前: 歯車の都香 2017/04/15(土) 21:14:00
    第一章【breeze-潮風-】

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                   ‥…━━ August 4th AM07:05 ━━…‥

                                            Ammo for Reasoning!!編
                                                       第一章
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

    潮風は市場の活気と海の香りを乗せて、街全体に凉を運んでいた。
    所々が敗れた白い――今では薄汚れている――テントが港に設営され始め、次々と漁船から陸に魚が上げられる。
    水揚げ場では、早速威勢のいい声で競りが始められ、ベルの音と歓声が上がる。
    砕いた大量の氷の上に魚が積まれ、テントの方へと運ばれる。

    商品が届いたその場で、赤いマジックペンで段ボールの札に値が書かれ、売り子が手と口で客を呼び寄せる。
    漁船の船着き場の反対側にある荷降ろし場には、中型の輸送船が錨を降ろして停泊し、重機を使って荷を降ろしている。
    積み荷を仕分ける水夫たちの肌は皆黒々としており、額には大粒の汗を流していた。
    木箱の隙間からは木屑が顔を覗かせている。

    中身は別の土地から輸入された酒だ。
    これから輸出する特産品のポートワインは、降ろした荷と引き換えに積み込まれることとなる。
    この土地のポートワインの原料は、西部に広がる畑で採られたブドウだ。
    気候の影響も強いが、発酵の際に使用する樽の独特な香りがワインに移り、それがポートエレン産のワインの特徴となっている。

    数は少ないがウィスキーも生産しており、こちらも磯の香りと樽の香りで人気を博している。
    色とりどりの野菜と鮮魚が並ぶ漁港で開催されているポートエレンの朝市は、普段以上の賑わいを見せていた。
    その原因は、港に停泊している巨大なビル群かと見紛う船。
    その名はオアシズ。

    世界最大の船上都市にして、世界最大の客船でもあるオアシズが補給のためにポートエレンに寄港しているのだ。
    出航時間は夜なので、船の上で長い時間を過ごしていた人間達は久しぶりの地上を味わおうと、ポートエレンの朝市を訪れていた。
    オアシズの客だけでなく、住民から船員まで、出航時間までの間で地上の空気と店を満喫している。
    混雑する朝市の中、カーキ色のローブ――ペニサス・ノースフェイスからの贈り物――を身に纏うデレシア、ヒートに肩車をされたブーンがゆっくりと通り抜ける。

    濃い灰色の空の向こうから、涼しげな風が吹いてくる。
    どうやら、海の向こうでは大雨が降っているようだ。
    風向きと強さを考えると、昼には雨雲がポートエレン上空に到達するだろう。

    ζ(゚ー゚*ζ「ブーンちゃん、朝ご飯はどんなものが食べたい?」

    (*∪´ω`)「おー、シャキシャキしたものが、いいです」

    耳付きと呼ばれるブーンのような人種は、獣と人間のあいのこのような物で、歯応えのあるものを好む。
    逆を言えば、歯ごたえの無い物はあまり好まない。

    ノパー゚)「リンゴサラダでも食うか?」

    (*∪´ω`)「リンゴサラダ?!」

    ヒートの頭上で、ブーンが顔を輝かせる。

    ノパー゚)「あぁ、シャッキシャキのレタスとトマト、それとスライスしたリンゴのサラダだ。
        あたしはシーザーサラダドレッシングをかけて食うのが好きだが、そのままでも十分美味いんだ」

    ζ(゚ー゚*ζ「なら、私がいいお店を知っているから、そこに行きましょう。
          少し歩くけど、いいかしら?」

    ノパー゚)「どんとこい」

    (*∪´ω`)゛「おー!」

    デレシアの案内に従い、三人は市場を北西へと進んでいく。
    ブーンの尻尾は絶え間なく揺れ続け、露店に並ぶ様々な食品に目を輝かせていた。
    取り分け興味を示していたのが、マグロと新玉ねぎのカルパッチョだ。
    露店ではそれを、ガーリックバターを塗った一口大の固めのパンに乗せて販売しており、食欲をそそる香りが大勢の鼻と心を虜にしていた。

    確かに、この香ばしさは朝食を食べていない人間には拷問的な威力を発揮する。

    (*∪´ω`)「おー……」

    ノパー゚)「あれを食いたいのか?」

    (*∪´ω`)゛「えっと……はい……」

    デレシアとほぼ同時に気付いていたヒートが、デレシアが言おうとしていた言葉を口にした。
    甘やかすと決めたのだから、これぐらいはいいだろう。
    傷を癒すためにも食事は重要だ。
    価格も十五セントと安く、サイズも一口大だ。

    ノパー゚)「よし、一つ買ってやるよ」

    (*∪´ω`)「え?!」

    ノパー゚)「ただし、一つだけだぞ」

    (*∪´ω`)゛「お!」

    ヒートが人混みを掻き分け、露店の前に並ぶ。

    「いらっしゃい! おう、坊主、何にする?」

    (;∪´ω`)「……」

    いつもと違う対応に、ブーンは解答を躊躇った。
    普段なら、彼の耳を見られた瞬間に罵声が浴びせられてきたのだが、どういうわけか、それがない。
    この反応に驚いていることにデレシアもヒートも気付いており、微笑みながら見守っている。
    自分が被っている帽子の力が本物だと理解したのか、ブーンはおどおどしながらも答えた。

    (;∪´ω`)「その……ちいさな、パンの……えと……」

    ノパー゚)「それはマグロのカルパッチョ、って読むんだ」

    (;∪´ω`)「マ……グロの、カル、カルカルカルパッチョのせ? を……ください……」

    「あいよ! ねーさんたちの分もおまけしとくよ!」

    ζ(゚ー゚*ζ「あら、ありがとう」

    両手でブーンの足を押さえているヒートに代わって、デレシアが料金を支払う。
    人混みから一旦離れて、露店の脇にあるパラソルと椅子とテーブルが置かれた飲食スペースに立ち寄る。
    席は全て埋まっていたため、三人は立ったまま食べることにした。
    紙ナプキンで包んで渡されたパンをブーンに渡す前に、一言付け足した。

    ζ(゚ー゚*ζ「少しずつ口に入れて、ちゃんとよく噛んで食べるのよ」

    (∪´ω`)「はい」

    ノパ⊿゚)「ゆっくりと噛まないと駄目だからな」

    (∪´ω`)「わかりました」

    受け取ったパンは、ブーンのちょうど一口ほどの大きさがある。
    言いつけ通りほんの少しだけ口に含み、パンの欠片がヒートの頭に落ちないようにと、唾液でパンを柔らかくしてから噛み千切った。
    ゆっくりと咀嚼を繰り返し、固形から液体になる頃に飲み込む。

    ζ(゚ー゚*ζ「はい、ヒートの分も」

    ノパ⊿゚)つ「おう」

    口で受け取ったパンを、ヒートは唇と舌を器用に使って口内に運ぶ。
    ブーンの半分以下の咀嚼で飲み下したヒートは、一言で感想を述べた。

    ノパー゚)「六十三点。
        だけど、海の上なら八十点越えだな。
        白ワイン片手に、釣りなんかしながらだといいな」

    その中途半端な点数の理由を知るため、デレシアは半口食べた。
    そして理解した。
    塩味がかなり強く、味に深みが足りない。
    フレッシュバジルを一枚足すだけでもかなり変わるだろうに。

    が、海上で釣りをしながら片手で食べるとなると、この塩味の強さとガーリックの風味は逆にプラスポイントになる。
    ニクラメン生まれならではの意見だ。

    ζ(゚ー゚*ζ「そうね、そのぐらいが妥当かしら」

    ようやく一口目を飲み込んだブーンは笑顔で感想を口にした。

    (*∪´ω`)「おいしいです!」

    点数など関係なく、純粋な味の観点で評価を下すブーンの方が、彼女達よりもよっぽど料理を楽しんでいる。
    旅が長くなると、どうもよくない癖がついてしまうことに気付かされ、デレシアとヒートは同時に困った風な笑顔を浮かべた。
    子供は大人の教師とはよく言ったもので、彼らから教わることは山のようにある。
    それはかつて自分達が知っていた事なのだが、いつしか成長する過程で忘れ去り、あるいは捨て去ってしまった感情だ。

    普通の子供よりも過酷な生活を強いられてきたにも関わらず、ブーンはそういった点が全く削れておらず、年相応のまま残っている。
    ある意味で奇跡に近い存在で、それが彼の持つ魅力の一つだ。
    だからこそデレシアだけでなく、ヒートやペニサス、ギコと云った人間が彼に惹かれるのだ。

    ζ(゚ー゚*ζ「じゃ、行きましょう」

    デレシアの案内に従って、三人は石畳の坂道を上るにつれ、次第に景色が変わってくる。
    建物の前に並ぶ黒板には、色鮮やかなチョークでモーニングセットの内容が書かれている。
    観光客向けのレストランやホテルが軒を連ねる通りを抜け、市場全体を見下ろすことの出来るところまでやってきた。
    人通りはほとんどなく、崖に打ち寄せる波の音と木々のざわめきが合わさった音に、二人分の跫音が合わさるだけの静かな通り。

    その先に、デレシアの目指す店がある。
    店の名前は“トラットリア・ペイネシェン”。
    美味くて安い窯焼きピザと、新鮮で濃厚なグレープジュースが楽しめる店だ。

    ζ(゚、゚*ζ「あら、残念」

    しかし、店の前には一枚の張り紙があるだけで、客の姿はなかった。
    借家、と汚い字が色あせた紙に書かれている。
    以前来た時、店主は三十七歳。
    まだ死ぬような時間は経過していないはずだ。

    店内の酷い荒れ具合と埃の積り方を見ると、最近借家になったばかりと云う訳ではなさそうだった。
    早死にでもして、家族が店を売ったのか。
    紙に理由は書かれておらず、ただ、借家としか書かれていない。
    あまりにも唐突に、まるで、草を根ごと引っこ抜いたような印象があった。

    ノパ⊿゚)「地上げ屋、ってわけでもなさそうだな。
        ただ、あんまり愉快な理由でもなさそうだけど」

    何かに追われるようにして店を後にした、といった様子だろうか。
    しかしそれなら、借家にする理由は何だ。
    売地にするならまだ分かるが、借家と云うことは、戻ってくる予定があるということだ。
    不自然な閉店の理由を考えても状況は変わらないと判断し、デレシアはヒートとブーンを見て肩をすくめた。

    ここが駄目となると、彼女が知り得る中で二番目に美味いグレープジュースを出す店に行くしかない。
    今日は、何が何でもブーンとヒートにグレープジュースを飲ませるのだと決めていた。

    ζ(゚ー゚*ζ「仕方ないわ、別のお店に行きましょう。
          この坂の上にあるホテルのレストランなの」

    ノパ⊿゚)「……この坂の上だな?
        名前は?」

    ζ(゚ー゚*ζ「コクリコ、ってホテルよ。
          後二百ヤードぐらいかしらね」

    ノパー゚)「よーし、コクリコ、だな。
        負けた方の……おごりだ!!」

    そう言うや否や、ヒートは肉食獣を思わせる勢いで坂を駆け上った。
    石畳と云う足場でさえ、彼女の健脚ぶりは大いに発揮され、瞬く間にその姿が離れていく。
    背中のブーンが喜んでいるのは、ローブの下の尻尾の動きを見ればよく分かる。

    ζ(゚ー゚*ζ「それなら!」

    ヒートが肉食獣なら、デレシアの速度は弾丸だった。
    五十ヤードはあった距離が、ほんの三秒でゼロになり、秒針が一つ動くまでにはヒートはデレシアの背中を見ることとなる。

    ノハ;゚⊿゚)「はぁっ?!」

    振り返りざま、デレシアは驚きの表情を浮かべるヒートに対して余裕の声をかけた。

    ζ(゚ー゚*ζ「お先に失礼、御嬢さん」

    上り坂において重要なのは、如何にして一歩を稼ぎ、どのようにしてピッチを上げるかにかかっている。
    ヒートの走り方はそれを心得ていたが、デレシアの速度には遠く及ばない。
    背中のブーンの有無を抜きにしても、彼女は勝つ自信があった。
    結果、二十ヤード近くの差をつけてデレシアがホテルに到着し、遅れてヒートが到着した。

    息一つ乱さずに到着したヒートは悔しそうに、だが、すっきりとした様子で敗北を認めた。

    ノパー゚)「……疾ぇな、やっぱ。
        秘訣は何だ?」

    ζ(゚ー゚*ζ「疾く走ることよ」

    (∪´ω`)「どうやってはやく、はしるんですか?」

    ζ(゚ー゚*ζ「刺激に対する反応を速めて、一瞬に力を込めて地面を蹴り飛ばして、可能な限り先に着地すると同時に、逆の足で同じく地面を蹴り飛ばす。
           これの繰り返しよ」

    指をぐるぐると回しながら行った説明に、ブーンは何度も頷いた。
    この理屈は、短距離走における速度向上の全てと言っても過言ではない。
    ストライドとピッチの絶妙な関係を説明するには彼はまだ幼いし、そんなややこしい説明をするよりも単純な方がいい。
    物事は単純が一番なのだ。

    (∪´ω`)゛

    ζ(゚ー゚*ζ「さ、適度な運動もしたし、ご飯にしましょう」

    コクリコ・ホテル。
    ポートエレンでも五指に入る長い歴史を持つホテルで、建物は木と鉄筋コンクリートで作られている。
    切り立った崖の上に位置しており、そこから眺める水平線に浮き沈みする太陽と、眼下の険しい岩場に生じる渦巻きの迫力が人気を呼んでいる。
    岩場では小型の漁船が釣りに訪れ、観光客がやった餌で肥えた魚を釣り上げる姿がよく見られる。

    エンジンを積んでいなければ船は渦巻きから脱出することが出来ないため、観光客の立ち入りは禁じられている。
    人間が禁止と云う言葉に魅了されるおかげで、コクリコ・ホテルは客に困ることはない。
    何も景色だけが、コクリコ・ホテルの売りではない。
    ホテルのレストランで出される魚料理はここの白ワインとよく合い、食が進む。

    安めの金額設定だが、それ以上の価値を持つ料理が出される。
    また、金額が安く設定されている理由だが、デレシアはその秘密を知っていた。
    調理される魚は昔からつながりのある漁師から安く仕入れ、酒はホテルの料理に魅了された地主の持つ畑で作られた物をこれまた安く仕入れることで、コストを削減しているのだ。
    これはコスト削減が目的だったのではなく、開業当初、ホテルのオーナーが地元の物にこだわった食事を提供したいという信念が大元だ。

    この信念は先ほどのトラットリア・ペイネシェンも感化され、小さい店ながらも切り盛りしていたのであった。
    ホテルの前にはちゃんと看板が出ており、昔と変わらず、十ドルでワイン、サラダ、魚料理、焼き立てのパンが付いてくるコクリコ・セットが書かれていた。
    字体を見るに、デレシアの知っていたシェフから代替わりしたようで、しかしながら価格を守っているのを考えると、その意志は継がれているようだ。
    ガラス張りの回転ドアを開けて中に入ると、そこには風変わりな客が一人、フロントの女性と話していた。

    一瞬、デレシア達に目を向けたその客は、黄色いポロシャツの上に皮製のホルスターを下げ、真新しいジーンズを履いていた。
    ホルスターの中に納まっているのはグロックで間違いない。
    ホックは外してあり、いつでも発砲が可能な状態にあった。
    デレシア達を見てすぐにしまったのは、机上に置かれていた警察バッジだ。

    警察が権力を振りかざしてただ飯を食らおうという魂胆ではなさそうだ。
    ジュスティアの膝元の街でここまで腐敗が進んでいるとは思えず、となれば、彼が調査のためにここに来ていることは明白。
    必然的に事件、もしくは事故が起こったことを意味している。
    が、今は朝食が優先である。

    ζ(゚ー゚*ζ「三人、コクリコ・セットで。
          飲み物はグレープジュースね。
          サラダにはスライスしたリンゴを乗せてくれる?」

    警察を完全に無視して、デレシアは近くで固まっていたウェイターの男性にそう言いつけ、席に案内させた。
    警官はカウンターに腕を乗せ、デレシア達を品定めするような目で観察を始めた。
    対象にそれを悟られていることから、警官としての経験はそこまで豊富ではなさそうだ。
    無能な警官が相手ならその追及をかわすことは造作もない。

    トラギコ程の人間が出てくるとなると話は別だが、この警官は犯人追求にそこまで執着できそうもない。
    つまらない男だ。
    三人は四人席について、ウェイターがガラスのコップに氷の浮かぶ水を注ぐのを見ていた。
    男の手は震えていなかったが、表情は硬い。

    気の毒だが、このホテルで良からぬことが起こったのだろう。
    客人同士のトラブルならばここまで緊張することはないはずだ。
    ホテルでは日常茶飯事、無い方がおかしいイベントなのだ。
    となると、死人が出た可能性が高い。

    ――デレシアは、自分の悪い癖がまた出てしまっていることに気付き、誰にも気づかれないように笑った。

    旅が長くなると、一つ一つの現象の背景を考えてしまう。
    砂丘の湖や、火口に咲く一輪の花。
    それらと人間の歴史は、デレシアにとっては同じものだ。
    向かい合って座っているヒートは、隣のブーンにナイフとフォークの使い方を確認しているため、デレシアの自嘲に気付いていなかった。

    「お待たせしました」

    気配を殺して移動していた眉雪のウェイターが三つのグラスとサラダを盆に載せ、デレシア達の席に戻ってきた。
    その足取り、跫音の殺し方といい、長い経歴がありそうだ。
    盆を脇に抱え、最後に一礼して去ろうとした男性の姿に、デレシアはその人物の名を思い出した。

    ζ(゚ー゚*ζ「ありがとう、パーカー・スティムウッド。
           随分と大人になったのね。
           盆を回す癖は相変わらずね」

    「……え?
    お客様、どうし――」

    驚いた風に顔を上げてデレシアの顔を直視した瞬間、パーカーと呼ばれたウェイターは目を大きく見開いた。

    「で、デレシア様?!
    お久しぶりでございます、私の事を覚えておいで下さったのですか!
    いや、それにしても……」

    ζ(゚ー゚*ζ「いいじゃない、細かいことは」

    ノパ⊿゚)「知り合いなのか?」

    ζ(゚ー゚*ζ「随分前のね。
           前来た時はいなかったけど、ひょっとして修行にでも行っていたのかしら?」

    気恥ずかしげに、パーカーは口元に皺を作った。
    まるで、旅行の感想を親に報告する子供のようだ。

    「お恥ずかしながら、他の地で技術と知識の吸収にと思いまして……
    最後にデレシア様とお会いしてから二週間後のことでございます。
    それからつい三年前に戻ってまいりまして」

    ζ(゚ー゚*ζ「いいことね、パーカー。
          じゃあ、冷めない内に焼きたてのパンと新鮮なバターと、とっておきのジャムを持ってきてくれるかしら?」

    パーカーは返事をしなかったが、心得ているとばかりに恭しく一礼してその場を去った。
    相変わらず跫音を立てず、無駄のない動きだった。
    他にも客はいたが、パーカーが軽く頷くと、別の従業員が対応した。

    ノパー゚)「さっすが、顔が広いんだな」

    ζ(゚ー゚*ζ「知り合いが多いだけよ。
           それじゃあ、この先の旅に向けて」

    デレシアとヒートがグラスを掲げ、ブーンもそれに倣った。
    それから軽くグラスをぶつけ合い、濃厚な深淵にも似た紫影の液体を一口飲む。
    途端に、ヒートとブーンの表情が変わった。

    ノハ^ー^)「……こいつは美味い」

    (*∪´ω`)゛「おいしいです!」

    濃厚な味わいながらも、飲み終えた後口に残るのはその芳醇な香りだけ。
    喉に残るようなこともなく、見た目と味に反して爽やかな飲み心地と後味は、この地方のブドウならではのものだ。
    二人に好評なようで、デレシアは安心した。
    だが、この味は前回とは全く違う。

    この味は、トラットリア・ペイネシェンのものだ。

    ノパー゚)「ブーン、これがリンゴサラダだ」

    (*∪´ω`)「リンゴ!」

    目を輝かせ、ブーンは早速サラダを食べ始めた。
    新鮮な野菜とリンゴを噛む音だけで、彼が満足していることがよく伝わる。
    薄らと湯気の立ち上るパンを籠に入れて戻ってきたパーカーを見て、デレシアはにこりと笑んだ。

    ζ(゚ー゚*ζ「このジュース、どうしたの?」

    「流石、お気づきになりましたか。
    来る途中に見かけられたとは思いますが、ペイネシェンがあのようなことになってしまったので、そのブドウ畑を当ホテルで買収したのです。
    ご存じの通り、あの畑のブドウはジュースにするとこの地域で一番の味になりますからな。
    幸いにして製法は同じなので、ある程度あの店の味を再現できております」

    ペイネシェンに何があったのか、デレシアはあえて訊かなかった。

    ζ(゚ー゚*ζ「なるほどね」

    「さ、どうぞこちら焼き立てなので、冷めない内にご堪能ください」

    そう言って置かれた籠から漂う甘い香りに、ブーンは垂れた瞼をより一層垂れさせた。
    ヒートかデレシアが手を出さないと自分が手を出してはいけないと思っているのだろうか、グラスを両手で持ったまま、パンと二人を交互に見やっている。
    そわそわして落ち着いていない様子に、ヒートが動いた。

    ノパー゚)「ブーンはまだ傷が治ってないから、少しずつ、ちゃんとよく噛んで食べる事。
        いいな?」

    (*∪´ω`)゛「はい」

    ノパー゚)「じゃあ、まずはあたしと半分こだ」

    拳大のパンを手に取り、ヒートがそれを半分に千切る。
    より濃厚な香りと湯気に、ブーンは目を輝かせ、喉を鳴らした。
    ブーンの取り皿にパンを乗せ、自分の皿にも乗せてから、ヒートはジャムの瓶を手に取った。

    ノパー゚)「ジャムの使い方は分かるか?」

    蓋を開けながら投げかけられたヒートの問いに、ブーンは小さく首を横に振った。

    ノパー゚)「よし、じゃあ覚えような。
        まず、こうしてパンを小さく千切って……」

    親指ほどの大きさに千切ったパンに、ナイフで掬い取ったブドウのジャムを乗せ、パンの淵でナイフの刃に付いたジャムを拭うように取る。
    それをブーンの口元まで運ぶと、彼は自然と口を開けた。

    ノパー゚)「はい、あーん」

    (*∪´ω`)「おー」

    ヒートの手からパンを食べたブーンの表情が、蕩けるように緩んだ。
    何度も何度も言いつけどおりに噛み、そして飲み込む。

    (*∪´ω`)「あまくて、ふわふわしてて……あまくておいしいです」

    ノパー゚)「本当か? じゃあ、あたしも食べよう。
        さっきあたしがやったように、パンを千切ってジャムを塗ってみな」

    ぎこちない動きだったが、ブーンはヒートと同じようにパンを千切ってジャムを塗ることが出来た。

    ノパー゚)「あーん」

    (*∪´ω`)「おー」

    先ほどヒートがそうしたように、ブーンが彼女にパンを食べさせた。
    ブーンが周囲の目を気にせずそういう事が出来るようになっているのを確認してから、デレシアは彼の成長を喜んだ。
    雰囲気を察してその場を消えるように立ち去ったパーカーに目で礼を述べ、デレシアもパンを食べ始めた。
    食事にはたっぷりと二時間かけ、三人はサービスで出されたブドウのシャーベットで朝食を締めくくった。

    ζ(゚ー゚*ζ「美味しかったわ、シェフにお礼を言っておいてくれる?」

    「かしこまりました、シェフも喜びますよ。
    何せ、他ならぬデレシア様からの御言葉ですからね」

    ζ(゚、゚*ζ「あら? シェフは誰なの?」

    「ジェフですよ、しょっちゅう皿を割ってはトーマスさんに怒られていた、あの彼が当ホテルの料理長なのです」

    ζ(゚ー゚*ζ「すごいじゃない! そう、あのジェフが……
          貴方も鼻が高いんじゃないの?」

    「えぇ、それはもう」

    「お楽しみのところ申し訳ないが」

    会話に割って入ってきたのは、それまで様子を窺っていたあの警官だった。
    机の上に厭味ったらしくバッジを投げて置いてきたので、デレシアはそれを丁寧に払い落とした。

    「この……!!」

    ζ(゚、゚*ζ「申し訳ないのなら、後にしなさい」

    バッジを拾い上げ、警官はそれをデレシア達に向けながら言った。

    「今朝、このホテルのすぐ近くで水死体が発見された。
    それについて何か情報を知っていたら、教えていただきたい」

    デレシアが警官の顔も見ずに出したのは、テ・ジヴェの乗車券だった。
    打刻された時間は、彼女達がこの街に来てまだ半日となってないことを示している。

    「そんなものはどうでもいい。
    知っているのか、知らないのか、それを教えてもらいたい」

    ζ(゚、゚*ζ「知らないわ」

    「やれやれ」

    その時、新たな人物がデレシア達の席に近づいてきていた。
    ショートカットにした白髪、鳶色の瞳をした、ゆったりとしたベージュ色の服を着る身長六フィートほどの初老の女性――の変装をした男性だ。
    声や仕草、果ては雰囲気までもかなり巧みに誤魔化しているが、体重のかけかたと匂いで分かる。

    「まったく、見てられないね、君の捜査は」

    「なんだ、お前は……って、男?!」

    変装した男性はまずかつらを取り、次いで顎の下に手を入れ、マスクを取った。
    禿頭の男の顔には深い皺と傷が幾つも刻まれ、垂れ下がった眉の下にある老犬のように静かな目が、一瞬だけデレシア達に向けられた。

    (´・ω・`)「情報収集はもっと丁寧に、そして誠意をもってやらんといけないな、坊主」

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      Y ノ  ノ⌒ヽ          '';;;;;;;;;;;_;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/
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                   ‥…━━ August 4th AM10:07 ━━…‥

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    歳は五十代後半、もしくは六十代前半。
    首の太さが常人離れしていることから、彼が格闘術に長けていることが分かる。
    しわがれた声の奥に潜む獰猛な雰囲気は、年老いた獅子にも似ている。

    「誰だ、お前は」

    (´・ω・`)「ショボン・パドローネ、って言えば伝わるかな?」

    「ショボン……?
    ……し、失礼しました、ショボン警視!」

    (´・ω・`)「元警視、だけどね。
         今は探偵だよ」

    なんだかややこしいことになってきたと、デレシアとヒートは目で会話をした。
    彼女達の席を囲むようにして二人の男が現れてから、ブーンはヒートの方に身を寄せ、動きを窺っている。

    (´・ω・`)「君、発見者への聞き込みは?」

    「ぶ、部下が行っております」

    (´・ω・`)「君も行きたまえ。
         このホテルは私が調べておく、もちろん、後で調書を送るから心配しないように」

    「はっ!!」

    警官は敬礼をして、ホテルから出て行った。

    (´・ω・`)「すまないね、御嬢さん方。
          だが彼には悪気はなかったんだ、許してやってくれないか?」

    ζ(゚ー゚*ζ「別に、怒っていないわよ。
          で、探偵さん。
          変装をしてここに張り込んでまで、何を知ろうとしていたのかしら?」

    (´・ω・`)「はははっ、いや、単純にホテル内の捜査だよ。
         ……ここ、いいかな?」

    デレシアの隣に座ったショボンは、向かいの席にいるブーンに軽く会釈した。
    ブーンは体を小さく震わせ、恐る恐ると云った様子で目礼した。

    (´・ω・`)「残念、嫌われてしまったのかな。
         さて、この件の詳細を――私が調べた限り――話させてもらおうか」

    事が起こったのは、今朝の六時半。
    ホテルの近くで漁をしていた男性が、崖の下に浮かぶ白い布を発見、引き上げてみたところ女性の水死体であることが分かった。
    死因は窒息死、解剖の結果、死亡推定時刻は午前一時ごろ。
    多量の薬物反応がでたことから、自殺の可能性が高い。

    女性の身元が分かる物は身についていなかったが、ホテルの宿泊客の女性が一人消息不明になっていることから、その人物である可能性が濃厚だった。
    ホテルの名簿には昨日の夜十一時三十八分にレイトチェックインしたとの記録が残されていた。
    このホテルでは、夜の十時を過ぎると予約客は自分でチェックインの記録を付けて部屋に行くことになっており、女性の顔を見た人物はいない。
    が、自殺を計画していた女性の心境を考えると、自然なことだった。

    遺体発見後、ショボンは彼女の泊まっていた部屋にオーナーと共に立ち入った。
    部屋には鍵がかけられており、カードキーはベッドの下から発見された。
    テラスに続く窓は開け放たれており、そこから飛び降りたものと推測された。
    遺書は鏡台の上に置かれているのが見つかり、字体はチェックインした際に記されていた物と一致している。

    そこまで話すと、ショボンは懐から黒皮の手帳を取出し、部屋の図面と現場写真を並べて見せた。
    部屋に入ってすぐ右手側に、洗面台・トイレ・シャワーが備わった三点ユニット。
    右の壁沿いに大きなベッドが置かれていて、シーツが乱れていたが、使った形跡はなく、風の影響と判断された。
    遺書の置かれていた鏡台は左の壁、窓の近くにあり、これまた使用の形跡はなく、備え付けの鏡以外何も置かれていない。

    窓は内側に向けて開くタイプで、部屋に入った時には開いていた。
    荷物は一切なく、抜け殻のような部屋になっていた。
    写真と図面での説明を終えたショボンは、やっと本題に入った。

    (´・ω・`)「彼女を自殺に追い込んだ人間を探し出したい」

    続いて、ショボンは手帳に挟んでいたもう一枚の写真を机に置いた。
    それは、遺書を写真に収めたものだった。

    (´・ω・`)「彼女が部屋から飛び降りて以降、チェックアウトをした人間はいない。
          私がそうさせた。
          遺書には、とある人物に向けての恨み言が書いてあるが、名前が書いてないんだ。
          警察はその人物の特定に躍起になっている。

          ちなみに、私がここにいるのはオアシズの乗客が無実だと証明するためだ。
          これで、ある程度納得がいったかな?」

    つまり、このショボンと云う探偵はオアシズが雇っている探偵だということだ。

    ζ(゚、゚*ζ「納得はしたけど、私たちは何も知らないわ。
          残念だったわね」

    (´・ω・`)「まぁ、そうだろうね。
         だけど、探偵っていうのは疑い深く慎重でね。
         済まない、時間を取らせてしまったね。
         せめてものお詫びとして、ここの勘定は私が払っておこう。

         それと、警察には君たちは事件に一切関係ないと伝えておく」

    ζ(゚ー゚*ζ「そう、それならお言葉に甘えさせてもらうわ。
           ごちそうさま」

    デレシア一行はホテルを後にして、市場の方へと向かった。
    風が冷たい空気を運んできた方には、嵐の前兆である黒雲が浮かんでいたのであった。

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                         全ては、予定通り。
                        事件は事故になった。

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

    (´・ω・`)「おい、ホテルの客全員から情報を聞きたい。
          全員、この食堂に集めてくれ。
          全員だ、いいな?」

    受付カウンターにいた女性従業員が強張った表情を浮かべたが、ショボンの一瞥に頷いた。
    館内放送を入れ、睡眠中の客も全員集まるようにアナウンスをかけた。

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                       誰も真実にはたどり着けない。
                              誰も。

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    席についた七十一名の前で、ショボンは宣言した。

    (´・ω・`)「いかなる偽りも、このショボンには通用しない。
         必ず見抜き、突き止め、そして――」

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                        凄腕の探偵だろうと。
                         凄腕の刑事だろと。

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    (´・ω・`)「――真実を、私の前に引きずり出してやる」

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                          陳腐で滑稽な台詞だ。
                 この偽り、引きずり出せるものなら、してみるがいい。
                      目の前にいる偽りを暴いてみるがいい。

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    (´・ω・`)「さぁ、始めようか。
         真実探しを、ね」

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                           さぁ。
                             舞台の幕は上がった。
                                       演者は十分。
                                   下地は完璧。

               真実とやらが見つかることを夢想するといい。
          偽りに満ちた真実を見つけ、歓喜するがいい。
      計算され尽くした計画を前に目を逸らし、偽りの道を進むがいい。
               そして偽りの答えを掲げ、声高らかに勝利を宣言するがいい。

                    精々見抜いてみるがいい。
                             偽りのとやらを。
                                 精々突き止めてみるがいい。
                                             真実とやらを。


                             では、始めよう。
                         真実探しとかいう、茶番劇を。

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    Ammo→Re!!のようです
                   ‥…━━ August 4th AM10:33 ━━…‥
                                            Ammo for Reasoning!!編
                  ||     _r-----i≡====≡ニニ≡≡=__,|_,r、_i_|__|,r=、_j_j_|__|_rュ_
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    iー----------`ー'゙-、__ノ_,_,_,_,_,'_,'_,'_,'_,'_,'_,'_,'_,'_,'_,'_,'_,'_,'_,'_,'_,'_,'_,'_,'_,'_,'_,'_,'_,'_,'_,'_,'_,'_,
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                              第一章
                           【breeze-潮風-】
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

    市場に到着したデレシアは、まず、オアシズの乗船券を購入することにした。
    自殺だか他殺だか知らないが、デレシア達に関係のない事件に関わる必要はない。
    ポートエレンには一日と滞在しないのだから、面倒事に巻き込まれるだけ時間の無駄だ。

    (*∪´ω`)「おー……」

    ノハ;゚⊿゚)「おー……」

    目の前に停泊している世界最大の船上都市オアシズを前に、ヒートとその肩の上のブーンは言葉を失っていた。
    一枚壁、あるいは山としか思えないその巨体は、圧巻の一言に尽きる。
    原子力空母よりも遥かに巨大で力強く、そして生活の拠点となり得るこの船は世界で最も巨大なだけでなく、世界で最も時間を掛けて修復された船でもある。
    直上を見上げてもその先端は見えず、その全貌も分からない。

    海に浮く都市。
    それがオアシズなのである。

    ζ(゚ー゚*ζ「チケットを買ってくるから、ちょっとだけ待っててね」

    ノハ;゚⊿゚)「おう……」

    (∪´ω`)゛「お」

    船に圧巻される二人をその場に残して、デレシアは船から港に降りている五本の橋の内の一つを上った。
    エスカレーターがデレシアの体重を感知し、自動で動き始める。
    かけられた体重の位置でエスカレーターの進行方向が変わるタイプの物だ。
    船上に到着すると、黒服の男四人がデレシアを迎えた。

    (■_>■)「失礼、チケットは?」

    ζ(゚ー゚*ζ「持っていないわ。
           ティンカーベルまで、三人分欲しいのだけど」

    デレシアの格好を見て、男は若干眉を顰めて言った。

    (■_>■)「三人分ですと、一万七千ドルになりますが」

    ζ(゚ー゚*ζ「はい」

    男の手に、デレシアは要求された金額分の金貨を乗せた。
    それを見て男は己の無礼を感じたのか、仰々しく受け取り、枚数を数え始めた。

    (;■_>■)「た、確かに。
           こちらがチケットになります。
           チケットは――」

    懐から銀色のケースを取出し、指紋認証を済ませて取り出したのは、三枚のプラスチックのカードだ。

    ζ(゚ー゚*ζ「部屋の鍵、各種サービスを受ける際に使用する、でしょう?」

    カードに内蔵されたチップがオアシズ内の様々な施設を利用する際に活躍する。
    部屋の鍵、身分証明であることは当然だが、売店やレストランでの代金はこのカードに記録され、下船時に一括で支払うという仕組みだ。

    (;■_>■)「は、はい。 その通りです。
           ではこちらを」

    ζ(゚ー゚*ζ「ありがとう」

    三分で手続きと購入を済ませたデレシアは踵を返し、何気なく街を見下ろした。
    ブーンとヒートがデレシアの姿を見つけて手を振っていたので笑顔で振り返し、市場を歩く見知った人物の姿を見咎めた。
    あれは――

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
        { 。  ・  。゚  ・ }
      .  { ・  ∴  ・  ノ
        ζ~μwJ~νι
         /;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:ヽ
        /;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:ヽ
    ‥…━━ August 4th AM10:40 ━━…‥
      .  {;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:.ノ
        ε~~J~νιζ
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

    二十分前にようやく仮設遺体安置所から解放されたトラギコ・マウンテンライトは、この上なく不機嫌だった。
    仮設遺体安置所は蒸し暑く、おまけに酷い腐臭がしていたからだ。
    死体が腐敗を始めている証拠だった。
    関わりたくはなかったが、流石に腹立ったトラギコは若い検視官の頭を掴んで振り回し、トラギコは早急に氷を持ってきて遺体を冷やすように命令した。

    全く興味のない一件に関わってしまったのは、自らの悪名が彼の想像以上に広まっていたことにあった。
    市場に入った途端、坂から降りてきた彼の後輩である警官と鉢合わせし、捜査に協力するように要請された。
    この要請を拒絶しようものなら、トラギコが今後警察本部から援助を受けられなくなるだろうと、遠巻きに脅されたのだから仕方がない。

    (#=゚口゚)「で、仏さんは?」

    手袋、マスク、手術着を着たトラギコが遺体袋を前に検死官に尋ねると、彼は手元のクリップボードを見ながら答えた。

    「クリス・パープルトン、三十一歳。
    職業、住所、その他もろもろ不明です。
    死因は窒息死、もしくは溺死で、血液検査で極めて強い薬物反応が出ています。
    恐らくは薬物の過剰摂取による――」

    (=゚口゚)「待てよ、もしくはって何だ、もしくはって」

    「じゃあ溺死で……」

    (=゚口゚)「ふざけんな!
        そこんとこちゃんと調べるのが手前の仕事だろうが!
        調べたら俺に資料を寄越せ!」

    トラギコが不機嫌になった第二の原因が、この検死官にあった。
    兎に角全てがいい加減で、責任感の欠片もなかった。
    それに付き合わされて貴重な時間を浪費し、デレシア達を追い詰めるチャンスを失うことを考えると、この上なく腹が立った。
    遺体袋のジッパーを開くと、青ざめた女性の顔がそこあった。

    まだ新しい水死体だ。
    遺体袋を全開にし、死体を隅々まで凝視する。
    全身に細かな擦り傷や切り傷、小さな打撲の跡があるが、これは海面を漂っていた際に岩場で付いたものだと推測できる。
    肩と太ももに古傷を見つけ、それが銃創であることに気が付いた。

    この女性は撃たれた経験がある。

    (=゚口゚)「撃たれた時期はわかんねぇ……というか、調べて無いラギね?」

    塗られたマニキュアとは正反対に蒼白になった手の指を見ながら、トラギコは一応尋ねた。
    返答は予想通りだった。

    「は、はぁ……」

    検死官に期待することを止めたトラギコは、引き続いて死体を調べる。
    女性の顔をよく見ると、口紅が薄らと塗られていた。
    死に化粧と云う訳か。
    足の指にマニキュアが塗られていないのを見るに、この女性がそこまで気が回らないぐらいに焦っていたと推測される。

    (=゚口゚)「暴行は……」

    傍に置かれていたクスコ式膣鏡を使い、確認する。
    新しい傷はなく、体液も確認できないため、性的暴行を受けた可能性が極めて低いことを確認した。

    (=゚口゚)「……ないラギね。
        おい」

    「はい?」

    (=゚口゚)「ひっくり返せ」

    理由を尋ねようとしたので、トラギコは殺意を込めた睨みでそれを封じ、死体の背中を見た。
    古い刺し傷が一つ、わき腹付近にあった。

    (=゚口゚)「服には?」

    「岩礁でできた傷だけでした。
    傷口の位置と一致しています」

    (=゚口゚)「そこは調べたんだな」

    死体を元通り仰向けにさせ、袋を閉める。

    (=゚口゚)「俺は街に行ってくるから、お前は死因を明らかにしろ。
        いいな、どんな小さなことでも必ず報告するラギ」

    「は、はい!」

    というわけで安置所を後にしたトラギコは街の屋台で好物のチョコミントアイスを買い食いしても、機嫌は一向に良くならなかったわけである。
    飛び降りたと思われるホテルに出向いて、その後で死因を明らかにし、調書をまとめ、契約者であるホテルに報告すれば万事解決。
    今日中に片が付くだろう。
    不意に視線を感じ、そちらに目を向けると、オアシズがあった。

    (=゚д゚)「……経費で乗れるのか?」

    目的地がどこであれ、オアシズへの乗車券は五千ドルを下ることはない。
    経費として申請するにしても、稟議書ものの金額だ。
    書類は嫌いなので、普段は貸のある部下にやらせているが、こればかりはそうはいかない。
    アイスを齧りつつ、トラギコはホテルに続く坂道を渋々上ることにした。

    ホテルの看板を前にする頃には、トラギコのアイスは胃袋に収まり、汗がだらだらと流れていた。
    クロジングで買ったジャケットは汗で濡れ、ワイシャツも汗で肌に張り付いていた。

    (;=゚д゚)「くそっ、もう少し平らな所に建てやがれってんだ……」

    涼を求めるようにしてホテルに入ると、そこに、懐かしい顔があった。

    (;=゚д゚)「あ? ショボン警視?」

    (´・ω・`)「ん? トラギコ君?
         水泳でもしたのかい?」

    (;=゚д゚)「ちげぇラギ!
        何であんたがここにいるラギ?」

    ショボン・パドローネ。
    トラギコが三カ月だけコンビを組んだ先輩である。
    とうに引退して、外地で家族と共に隠居生活を送っていると聞いていたのだ。

    (´・ω・`)「そりゃあ捜査のために決まってるだろう?
         今は探偵をやっているんだ」

    (;=゚д゚)「捜査? 自殺した女の捜査ラギか?」

    (´・ω・`)「あぁ、そうだよ。
          その様子だと、君も捜査に加わっているみたいだね」

    (;=゚д゚)「不本意極まりないけど、そうなってるラギ」

    汗で濡れたハンカチで、トラギコは汗を拭う。
    気を利かせたウェイターが氷の浮かんだ水を持ってきたので、それをありがたく一気に飲み干した。

    (=゚д゚)「……ふぅ。
        ってことで、俺は俺の仕事をさせてもらうラギ」

    (´・ω・`)「まぁ待ちなよ。
         情報が幾つか手に入ったんだ、それを君にも共有してもらいたい」

    (=゚д゚)「……教えてもらうラギ」

    (´・ω・`)「手帳とペンは?」

    (=゚д゚)「捨てたラギ」

    ショボンは溜息を吐いて、自らの手帳を開いてトラギコに見せた。
    ページには部屋の見取り図と入った際の状況などが子細に記されており、写真も挟まっていた。
    窓は開いていたがドアは閉まっていて、そのことは同伴したオーナーが確認している。
    鍵はベッドの下にあり、遺書は鏡台の上に置かれていた、とのことだ。

    遺書の内容を撮影した写真を見て、トラギコはショボンに尋ねた。

    (=゚д゚)「恨んで自殺、ってことは男か女かは分からないラギね」

    (´・ω・`)「ホテルの人間は全員調べたが、彼女の事を知っている人はいなかった」

    クリアファイルに入った二種類の用紙を見る。
    一つは、日ごとに分けられたチェックインの確認票だった。
    昨日、仏よりも遅くにチェックインした人物はいない。
    もう一つは、それらをまとめた書類だった。

    (´・ω・`)「全員集めて個別に話を聞いたが、やはり駄目だった。
         そんな人間、聞いたこともないってさ」

    (=゚д゚)「オアシズからも泊まりに来てる奴がいるラギね」

    (´・ω・`)「休憩のためだよ。
          まぁ、その人たちがいるから僕が出張ることになったんだけどね。
          オアシズ付けの探偵だからね」

    (=゚д゚)「ふーん」

    興味がない話だったので適当に聞き流しながら、リストの名前を頭に入れた。
    恨みがあろうがなかろうが、どうでもよかった。

    (=゚д゚)「調べる意味、あるラギか?」

    (´・ω・`)「自殺した原因を作った人間を許せないからね」

    (=゚д゚)「ま、好きにしてくれラギ」

    書類と手帳を返そうとすると、ショボンは軽く首を横に振った。

    (´・ω・`)「それは警察に渡すことにするよ。
          その手帳のカバーだけ返してくれるかな? 中は新品だから気にしなくていい」

    (=゚д゚)「ありがたくもらっておくラギ」

    黒皮のカバーを返し、トラギコは女性が泊まっていた部屋に向かった。
    手袋をしてドアを開けると、ひんやりとした潮風が勢いよく吹き付けてきた。
    風通しは良好、見通しも抜群だ。
    鏡台に置かれていたという遺書はすでに片付けられており、遺留品は何も残されていない。

    開かれたままの扉からテラスに出て、眼下の様子を窺う。
    切り立った崖の上にあるだけあって、その光景は迫力満点だった。
    侵食を受けて針山のように尖った岩場が真下に広がり、その先には激しくうねる海がある。
    海面に突き出した岩の付近には渦巻きも確認でき、意識があったとしても間違いなく溺死するだけの潮流があった。

    部屋に戻り、改めて遺留品を探したが、結局、ホテルで得た収穫はショボンの手帳ぐらいだった。

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    Ammo→Re!!のようです
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                                           Ammo for Reasoning!!編
                                          第一章【breeze-潮風-】 了
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