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Epilogue【Relieve!!-解放-】

  1. 名前: 歯車の都香 2017/04/15(土) 19:38:58
    Epilogue【Relieve!!-解放-】

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    Ammo for Relieve!!編 Epilogue【Relieve!!-解放-】
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    ‥…━━ August 3rd PM19:00 ━━…‥

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    弓のように細い月が夜空に浮かび、足りない分の明かりは星が補った。
    町外れの酒場に続く道に街灯はなかったが、天然の明かりが影を濃く照らしだす環境の中で、それは不要だった。
    その酒場は看板が朽ちていて名前が読めず、客からは“廃屋”と呼ばれていた。
    客層はこの近隣の人間ではなく、別の地域から流れてきた者がほとんどだ。

    クロジングに立ち寄ろうとする旅人は少なく、床下のある宿を借りるぐらいなら、銃を枕に野宿をする方がマシだと言われている。
    クロジングから最も近い距離にあるこの“廃屋”に客が押し寄せるのは、必然だった。
    店主もこの地の利を活かして、店に隣接する宿――娼館も兼ねている――の経営も行っている。
    だからこそ、ここの店には訳ありの人間がよく訪れ、店側もそれを知っているので配慮した店作りになっている。

    基本的に客は個室を宛がわれるので、他者に顔を見られないようになっている。
    勿論、会話の面でも秘匿性は比較的高い。
    酒場特有の喧騒と店内で流れるラジオが内密な話を上塗りするために、他者に聞かれる心配も少ない。
    情報交換には、もってこいの店だった。

    その日、酒場で一番人気の肴は、もちろん海底に沈んだニクラメンの話だ。
    店でその話に触れない人間はいない。
    それは事件とも事故とも、災害とも言われているが、誰も事実に辿り着いていない。
    生存者はおらず、街が沈んだ時間と事実以外、正確な情報は何一つない。

    謎が謎を呼ぶこの話は、店で流されているラジオからもそのことについてパーソナリティーが面白おかしく話している。
    ひょっとしたら発電機の暴走による大規模な爆発か、それとも海底生物による襲撃か、などだ。
    リスナーから寄せられたハガキを交えて、その話は更に真実からかけ離れた方向に盛り上がりを見せていた。
    木の板で区切られた個室で、五人の男女は大量の酒と食べ物、そしてジュースを前に話をしていた。

    ヒート・オロラ・レッドウィングは、ストローを使ってジョッキから水を美味しそうに飲む、四肢のない少女に尋ねた。

    ノハ^ー^)「うめぇか、ミセリ?」

    ミセ*'ー`)リ「はい、このお水美味しいです」

    ミセリ・エクスプローラーは、トソン・エディ・バウアーの膝の上でそう感想を述べた。
    流石に七ドルもする水だから、ただの水ではないだろうと興味を示して注文したのは、トソンだった。
    トソンはジョッキから直接一口飲むと、その味の違いに気付いたようだった。

    (゚、゚トソン「これはドルイド山の水ですかね」

    ζ(゚ー゚*ζ「そうね、このあたりの井戸から汲んだのかもしれないわね」

    (*∪´ω`)「あの……ぼくも……」

    デレシアの膝の上で、遠慮気味に声を上げたブーンの垂れ下がった目がデレシアを見上げる。
    全身に傷を負ったブーンは、自力で食事をすることは困難で、しばらくの間は流動食しか食べられない。
    むしろ、あれだけの傷で、すでにここまで回復していることが驚きだった。
    ローブの下の尻尾がわさわさと揺れ、気持ちを素直に表現する姿は本当に可愛らしかった。

    ニクラメンから脱出後、ブーンはすぐにクロジングの街病院に連れて行かれた。
    当然、医者は嫌な顔をもろにしたが、デザートイーグルと視線を合わせた途端に従順になり、ブーンの治療を的確に行った。
    破裂した内臓もすでに回復が始まっており、命に別状はないとの診断だった。
    撃鉄を目の前で起こして尋ねたのだから、真実だろう。

    ζ(゚ー゚*ζ「はい、どうぞ」

    トソンから回ってきたジョッキをブーンの前に持ってくる。

    (∪´ω`)「あ、あの……じぶんでもてます……から」

    ζ(゚ー゚*ζ「いいから、ね?」

    そう言って、強引にデレシアの手で水を飲ませる。
    今日一日は、ブーンを徹底的に甘やかすと決めていた。
    それだけのことを、この小さな少年はやったのだから。
    ちなみに明日は、ヒートがブーンを甘やかす番になっている。

    (*∪´ω`)「すきとーった、あじ?」

    喉を鳴らして水を飲んだブーンは、感想を漏らしたというよりかは、それが正解かどうかを確認するような口調だった。
    人よりも遥かに優れた嗅覚と味覚を持っているブーンには、水の味の違いが分かるのは当然だった。

    ζ(゚ー゚*ζ「良い表現ね、ブーンちゃん」

    食事を始める前に、トソンが早速話題を切り出した。

    (゚、゚トソン「では、本題に入りましょう。
        デレシア様、この後はどのような予定を?」

    ζ(゚ー゚*ζ「一先ずは、船を使ってティンカーベルに向かうわ」

    通称“鐘の音街”、ティンカーベルは沖合にある三つの島と無数の小さな島からなる街だ。
    山々に囲まれたその地には、ティンバーランドが求めているニューソクがある。
    しかしティンカーベルの人間はそれを使おうとはせず、安全な状態でどこかの島に保管している。
    そのことは公にはなっていない情報だ。

    他にも、強化外骨格が大量に眠る谷や、上質なウィスキーの蒸留所などがある。
    観光名所ではないが、いい街だ。
    仮に遭遇しなくても、先んじてニューソクに手を加えることが出来れば御の字だ。
    原子力発電施設は非常に繊細な機械の集合体で、どれか一つでも異常が検知されれば安全装置が作動して機能が停止する。

    ティンカーベルに向かうには、ここから北にある正義の街、ジュスティアを通って行く陸路。
    もしくは、海路を使って迂回する二つの道がある。
    速く到着するのであれば当然陸路だが、ジュスティアを通過するのは正直面倒だった。
    三重の検問所――スリーピース――を越えて、高さ百フィートの城壁に囲まれた騎士道精神が現在進行形で横行する街だ。

    常に軍事都市イルトリアと比較されてきたその街では、棺桶の持ち込みは一切禁じられている。
    更には人種差別思想が強く、肌の色は勿論、髪や瞳の色で街に入ることを拒絶されることもある。
    ブーンが街に入ることを拒まれるのは明らかで、そのような所にデレシア達が居合わせれば、検問の段階で戦闘になることは目に見えていた。
    街一つを潰せないこともないが、不要な戦闘は避けたい。

    (゚、゚トソン「なるほど」

    ζ(゚ー゚*ζ「トソンちゃんはどうするの?」

    (゚、゚トソン「ミセリ様をお連れして、一度イルトリアに戻ります。
        “戦争王”に、この一件をお伝えしておいた方がいいので」

    イルトリアの現市長、“戦争王”フサ・エクスプローラーがこの一件を知れば、直ぐに動いてくれるだろう。
    彼の動きは速く、そして静かで正確だ。

    ζ(゚ー゚*ζ「なら、黄金の大樹についての情報を集めるように言っておいて」

    (゚、゚トソン「かしこまりました。
        ティンカーベルに向かう船なら、この先のポートエレンに明日まで停泊しているはずです。
        ただ……」

    ζ(゚ー゚*ζ「オアシズ、でしょ?」

    世界最大の客船でありながら、世界最大の船上都市、それがオアシズだ。
    七千人が船上で生活可能な客船には、二千人の住民がおり、五千人の旅行客が常に乗っている。
    海上を移動する都市には、コンサート会場からスケート場、更には常駐の警察官から探偵まで揃っている。
    その原動力は驚くべきことに波力・風力・太陽光の自然のエネルギーから補っており、航海に燃料費はかからない。

    オアシズは旅行客と安全確実な輸送を収入源として、多くのビジネスを船上で行う。
    トソンが懸念しているのは、ブーンの事を快く思わない人間が多く乗っている船ならば、彼に逃げ場がなくなるということ。
    勿論、そのことを考えていないわけではない。
    しかし、この先も旅を続ける中で差別は避けて通れない災害のようなものだ。

    ブーンが自分の力でそれを打破できるまでは、デレシア達が手本を見せてやればいい。
    何事も経験だ。
    耳を晒さなければ、ブーンが疎まれたり蔑まれたりはしない。

    ζ(゚ー゚*ζ「ほら、これ」

    傍に置いてあった紙袋から取り出したのは、ベージュ色の毛糸で編んだ通気性のいい帽子だ。
    北国のティンカーベルの気候は、夏でも肌寒い。
    それに、船旅も何かと冷えるので、毛糸の帽子は別に不自然な服装ではない。
    試しにブーンに被せてみると、予想よりに可愛らしい姿になった。

      (~)
    γ´⌒`ヽ
    {i:i:i:i:i:i:i:i:}
    (∪´ω`)おー

    目的は彼を愛でる事ではなく、その耳を自然なものとすることにある。
    毛糸の帽子の端から覗くこの垂れ下がった耳は、あたかもファッションの一部であるかのように振舞える。
    これならば、オアシズ内ではもちろんのこと、北国でブーンが不快な視線を浴びることは減るはずだ。
    それにしても、本当に可愛い。

    ζ(゚ー゚*ζ「ブーンちゃん、この帽子には魔法がかかっているの。
           この帽子を被っていれば、ブーンちゃんが虐められることはないわ」

    (∪´ω`)「まほー?」

    ζ(゚ー゚*ζ「不思議な力の事よ。
          だけど、この帽子を取ったら、ブーンちゃんは自分の力でいろんなことと立ち向かわなければならないの。
          それだけは覚えておいてね」

    小さな頭を胸に抱きしめながら、デレシアはそう囁いた。
    無論、この世界に魔法など存在しない。
    ただの気休めだ。
    気休めなのだが、効果は絶大である。

    自信に満ちた行動は疑念を薄れさせ、信じ込ませる力がある。
    子供のブーンにそれを意識して行わせるのは難しいと判断し、デレシアはこの方法を取った。
    盲信しなければ、言葉は絶大な力を持つ。

    (∪´ω`)「……お」

    首を動かし、ブーンはつぶらな瞳でデレシアを見上げる。

    ζ(゚ー゚*ζ「ん?」

    (∪´ω`)「ぼく……あの……」

    やがて、意を決したようにブーンは口にする。

    (∪´ω`)「もっと、つよく……なりたい……です。
          ずっと、だれかに、たすけられるのは……あの、その……えっと……
          よくなくて……だから……ぼく、つよく、なりたいです。
          それで、それから……それ、から……」

    息を一つ呑む時間。
    これまで聞いたどの言葉よりも強く、深く、静かで、実直な言葉。
    今日までの成果とも言える言葉が、ブーンの口から紡がれた。

    (∪´ω`)「あいのいみを、しりたいです」

    ペニサスが死の間際、ブーンに与えた宿題であり命題。
    愛の意味を知る、ということ。
    愛されたことも、愛を感じたこともないブーンが知らなければならないその感情の正体は、ペニサスでも到達することが出来なかった。
    それを知るのに必要なのは時間でも知識でもなく、もっと、根本的な部分にある。

    果たして彼がそれを持っているのか否かは分からないが、この先の成長次第では到達できることだ。

    ζ(゚ー゚*ζ「……そう」

    嗚呼、とデレシアは思う。
    僅かな時間の中、出会いの連鎖が、彼をここまで成長させたのだと。
    そして彼は、依存の中でも確かな成長を見せ、少しずつ自立への道を歩き始めようと決意したのだ。
    何と愛しく、何と素晴らしい存在だろうか。

    長い旅の中で、ブーンと同じかそれよりも最悪な環境で育った人間を多く見てきた。
    しかしながら、ここまでデレシアの想像を裏切る成長を果たした人間は初めてだった。
    やっと、見つけた。
    成長を見届けたいと思わせるだけの存在ではなく、それ以上の存在。

    彼女の旅の同伴者として、最も相応しいと思える相手が。
    だから、まだブーンには学んでもらわなければならない。
    自分自身の事。
    そして、世界について。

    (゚、゚トソン「……ブーン、と呼んでも?」

    (;∪´ω`)「……お」

    (゚、゚トソン「遅れましたが、私はトソン・エディ・バウアーといいます。
         ブーン、貴方がいなければ、ミセリ様は今頃瓦礫の下。
         本当にありがとうございました」

    差し出された手と言葉に、ブーンは初め、戸惑いを見せた。

    (;∪´ω`)「お……お……おっ……」

    恐る恐るその手を握り、握手を交わす。
    どうやら、トソンもブーンの才能に気が付いたようだ。
    ある種の人間を惹きつける魅力。

    (゚、゚トソン「この恩は、必ずお返しいたします」

    ミセ*'ー`)リ「もー、トソン。
          そんな固っ苦しい言葉だと、ブーンが緊張しちゃうでしょ」

    (゚、゚トソン「敬意を表するに値する人物に敬語を使うのは、当然のことです。
        ミセリ様も知っての通り、あの状況下であの言葉を口にできるなど、イルトリア人でも稀なこと。
        ブーンは必ず、将来は大物になります」

    ζ(゚ー゚*ζ「勿論。 ね、ヒート?」

    ノパー゚)「あぁ、ブーンは間違いなくいい男になる」

    デレシアとヒートの思想は、大分似ているところがある。
    ブーンに対する見方も評価も、その大部分は同じだ。
    違いがあるとすれば、やはりブーンに向ける視線の種類だ。
    時間があればブーンの傍で話をしようとするヒートの心情はデレシアも理解できるが、その理由が分からない。

    旅の中でそれが分かれば、きっと、ヒートの事がもっと好きになることだろう。
    彼女が語るまでは、そのことに触れるのは止めておく。

    ζ(゚ー゚*ζ「さ、料理が冷める前に食べちゃいましょう」

    (゚、゚トソン「それもそうですね。
        ミセリ様、最初は何を?」

    ミセ*'ー`)リ「サラダをお願いします、トソン」

    ボウルに盛られたサラダを小皿に取り分け、トソンはフォークを新鮮なアスパラに突き刺した。
    それをミセリの口元に持っていくと、ミセリは一口でそれを食べた。
    七年前に視力と四肢を失った代わりに、彼女は優れた聴覚と嗅覚を手に入れた。
    だからこそ、卓上に並ぶ料理の中にサラダがあることが分かるのだ。

    ミセ*'ー`)リ

    (;∪´ω`)「おー」

    それを羨ましげな眼で見るブーン。
    意識が戻ってから、傷が癒えるまでの間、固形物が食べられないことを告げると、悲壮な表情を浮かべていた。
    噛み応えの無い物は、彼にとってはあまり好ましくないものなのだろう。
    しかしそれは、これまでに彼が食べたことのある流動食に問題がある。

    ノパー゚)「ちょっと待ってな、ブーン。
        今リンゴをすってやるからよ」

    (*∪´ω`)「りんご!」

    ぱっと顔を輝かせ、ブーンの尻尾がローブの下で激しく動く。
    店に頼んでおいたリンゴとすりおろし器を手にしたヒートは、それをすり始めた。
    果肉が細かくすりおろされ、溢れだした果汁を果肉が吸い上げる。
    ヒートはスプーンで果汁を吸った果肉を掬い、ブーンの口にそれを近づける。

    ノパー゚)「いいか、必ずよく噛んで食べるんだぞ」

    (*∪´ω`)「はい!」

    スプーンについた果汁を全て舐め取る勢いで、ブーンはリンゴを食べた。
    言いつけ通りに果肉を何度も噛んでから、喉を鳴らして飲み込む。

    (*∪´ω`)「おー! おいしいです!」

    この一場面を切り取ってみても分かる通り、ミセリと出会ってから、感情表現が少しずつではあるが出来るようになってきている。
    前は感情を表に出すことを恐れている様子だったが、大分慣れてきたのだろう。
    これも成長の証。
    ブーンは出会ったもの、経験したものを糧として進歩することが出来る。

    何とも嬉しいことだ。
    きっと、母親や姉と云うのはこういった時に感動を覚えるのだろう。

    ノハ*^ー^)

    ζ(^ー^*ζ

    自然と笑みがこぼれる。
    言葉ではとても言い表せないこの胸の高鳴り。
    抱き寄せ、想いを伝えずにはいられない。

    (*∪´ω`)「……お」

    ノハ^ー^)「どうした、ブーン?」

    (*∪´ω`)「りんご、ミセリにも……あげて……いいですか?」

    ノパー゚)「あぁ、もちろんだ。
        ミセリ、リンゴは食えるか?」

    ミセ*'ー`)リ「はい!」

    先ほどと同じ要領でミセリにすりおろしリンゴを食べさせると、ブーンと似た反応が返ってくる。

    ミセ*'ー`)リ「美味しい!」

    (*∪´ω`)「お! ミセリ、りんご、好き?」

    ミセ*'ー`)リ「うん!」

    食事はやはり、大勢で話をしながらした方が断然美味い。
    デレシア達成人組は、注文した酒を掲げ、静かにグラスをぶつけ合った。
    一口飲み、ゆっくりと息を吐き出す。
    酒に感覚が鈍る彼女達ではない。

    気分を落ち着かせ、気持ちを和らげるための酒だ。
    そうでなければこの気持ち、いつ爆発するかは分からない。
    微笑ましく、可愛らしく、愛しいこの光景。
    争いと殺戮の中で過ごした時間の長い彼女達には、何よりの薬だ。

    トソンも、ヒートも、そしてデレシアも例外ではない。
    長く争いの中に身を沈めていると、人はいつしか狂う。
    精神を病み、やがては死に至る。
    それに気付かず、殺戮こそが自分の全てだと誤解し、そして死ぬのだ。

    殺されるか、それとも自殺するか。
    死に方は様々だが、長生きをしたところでその人生に彩りはない。
    そうならないためにも、ミセリやブーンのような存在は必要だった。
    一時の安寧を与える無垢な存在。

    ただ笑顔を浮かべて、ただそこにいるだけでいいのだ。
    それだけで、彼女達は救われる。
    どんな薬物よりも強力で即効性の高い効果を約束してくれる。
    だから、彼女達はブーンやミセリに惹かれるのだ。

    今夜は、いい酒が飲めそうだった。

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       _ノー‐_.八_
     γ´  <__ノ`ヽ
      |l ______ l|
      |l |       | l|
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    ‥…━━ August 3rd PM19:40 ━━…‥
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    トラギコ・マウンテンライトは“廃屋”に来店するなり、椅子に座る間もなくシングルモルトウィスキーをダブルで注文した。
    カウンターに備え付けられた丸椅子に腰かけ、出されたナッツを一つ摘まんだ。
    気に入らないことだらけで非常に虫の居所が悪く、何か機会があればそれを発散したいところだった。
    続けて出されたウィスキーを一口だけ口に含み、その香りと味を堪能した。

    磯の香りを思わせる熟成香が鼻から抜け、一時の安らぎを与える。
    一杯十ドルの割には、いい味をしていた。

    (#=゚д゚)「……」

    苛立ちは収まらない。
    フォレスタで回収したあの男は少し目を離した隙に病院から連れ出された後で、分かっているのは連れ出した人間が“ジェーン・ドゥ”と名乗る女性であること。
    監視カメラも何故かその時に限って機能しておらず、人相は曖昧だった。
    貴重な情報源を失っただけでなく、その足掛かりさえ失ったのだ。

    こうしてまた、微妙な進展しかできていない。
    デレシアを追う中で、どうやら、トラギコは想像以上に巨大な思惑に片足を突っ込んでしまったようだ。
    それはいい。
    それは許容範囲どころか歓迎すべきことだ。

    だが、彼を嘲笑うように捜査が難航するのだけは気に入らない。
    何故ニクラメンを襲い、何故沈める必要があったのか。
    歴史に名が残るほどの大量虐殺が事件として報じられないのは何故か。
    事故後、一日足らずの内に真相究明に乗り出した内藤財団の不自然な動き。

    次から次へと、事態が複雑化していく。
    始まりはオセアンの大事件だったのが、今ではその範疇を明らかに超えている。
    恐らくは世界規模でこの事件は連鎖を起こし、飛び火していくだろう。
    結果としてトラギコが危惧しているのは、デレシアの謎を解くという重要な目的が妨害されないかと云うことだ。

    トラギコが目を離した一瞬の内に彼女は病院から姿を消し、消息を眩ませた。
    ギコ・カスケードレンジもまた、彼等をトンネルから脱出させてから姿を消した。
    本当に腹立たしい。
    どこまでも馬鹿にしている。

    どうしてもっと早く、彼女達と出会わなかったのか。
    もっと早く出会っていれば、もっと愉快な人生を過ごせたはずなのに。
    幾ら悔やんでもこればかりは改変のしようがないことぐらいは理解している。
    が、やはり悔しい。

    二口目は、先ほどよりも多めにウィスキーを口に含んだ。

    あらゆる手がかりを失った以上、手元の情報と経験を使って捜査を進めるしかない。
    デレシアが向かった方角は、恐らくは北だ。
    南のオセアンから北上してきている以上、彼女はそのまま進むだろう。
    トラギコを歯牙にもかけずに旅を続けることは、一目で分かった。

    だからこそ言える。
    彼女は針路を北に取り、旅を続行しているはずだ。
    となると、次の目的地は山を越えるか正義の街を越えるか、だ。
    耳付きの少年ブーンが怪我を負っていることを考慮すると、山越えは考え辛い。

    残された選択肢はジュスティアの突破だけ。
    では、トラギコが次に向かうべきはジュスティアだ。
    正直、トラギコはジュスティアに寄りたくはなかった。
    警察の本社があり、苦手な人間――トラギコを目の上の瘤として扱う人間――が大勢いるからだ。

    こうして出張費を使っていることも気に入らないだろうが、本部はトラギコに大きな借りがある。
    幾つもの難事件を解決し、警察への信頼獲得と利益への貢献だ。
    常客達の中にはトラギコの存在があるから依頼をする人間もいるほどで、それが、トラギコがここまで好き放題に動いていながらも解雇されない理由である。
    今も好き勝手に事件を追っている中でジュスティアに行けば、間違いなく壮絶な嫌がらせを受けるに違いない。

    取り分け、事務屋あたりから経費に関する文句で一週間は足止めを食らうだろう。
    デレシア達がジュスティアを通過するのであれば、トラギコは容易に彼女達と合流できる。
    さて、ここは思案のしどころだ。
    三口目は唇を湿らせる程度にしておき、ナッツに手を伸ばす。

    カシューナッツの甘い風味がウィスキーとよく合う。
    シングルモルトはトラギコが最も愛する酒だ。
    思考がよく回るようになり、意識が適度に調和された感覚になる。
    結果、トラギコは一つの答えを導き出した。

    陸路を使う。

    ただし、目的地はジュスティアではない。
    一先ずの目的地は貿易の中継点、ワインと潮風の街、ポートエレンだ。
    道は何も陸だけではない。
    空もあれば、海もある。

    ジュスティアを回避できる道は海路か空路だけだ。
    この周辺から飛行便は出ていない。
    となると、選択肢から除外され、残るのは陸路と海路の二つだったのだ。
    出ているのは、ポートエレンからの定期便。

    そして、船上都市のオアシズだけだ。

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    ‥…━━ August 4th 00:32 ━━…‥
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    厚い金属の壁と床に囲まれたその空間は、狭く息苦しかった。
    床は金属の網で作られ、その下には配管が通っている。
    空間全体からは唸るような低い音が鳴り続け、生き物の体内を思わせる。
    湿度も高く、世辞でも快適とは言い難い。

    ここは、海底三千フィートを進む原子力潜水艦“オクトパシー”の艦内。
    艦内食は毎週金曜日がカレーで、それ以外はレトルト食品が並ぶ。
    娯楽と言えば酒かカードゲームかの二択で、若い船員には不評だった。
    ワタナベ・ビルケンシュトックにとっては監獄と大差ない場所であり、正直、強化外骨格装着の際にコンテナ内に引き込まれるよりも苦痛に感じている。

    ストレスは面白いほど溜まる一方で、ワタナベは常に何かしらのストレス解消方法を探すことに艦内で過ごす時間を割り当てていた。
    今日のストレス解消に選んだのは、役立たずをなじることだった。
    机を挟んだ目の前で腕を組む偉丈夫に、挑発的な言葉をかけた。

    从'ー'从「で、お礼の言葉もないわけぇ?」

    ( ゚∋゚)「礼だと? 貴様が援護すれば、私が負けることもなければエクスペンダブルズを破壊せずに済んだことだろう」

    クックル・タンカーブーツは今にも怒鳴りそうな声色で、そう返す。
    ワタナベは意に介さず、手元のコーヒーカップを手に取る。
    湯気はとうになくなり、コーヒーはすっかり冷めきっていた。

    从'ー'从「へぇ、イルトリア人が負けた言い訳するんだぁ。
         みっともないなぁ」

    (#゚∋゚)「……なんだと?」

    身を乗り出して掴みかかろうとしたクックルの顔に、ワタナベはカップを投げつけた。
    視界を一瞬奪われたクックルの手は空を切り、代わりに、ワタナベは砕けたカップの破片をクックルの喉に押し当てた。
    先端が喉元に食い込み、ジワリと血が滲む。

    从'-'从「うるせぇんだよ、鳥頭。
         手前、助けてもらっただけでもありがたいと思えよ」

    (;゚∋゚)「ぐっ……」

    从'-'从「……ふん」

    薄く切り傷を残し、ワタナベはクックルを突き飛ばした。
    つまらない人間だ。
    殺す楽しみも見いだせない。
    席を立ち、自室に戻ろうとする背中にクックルが憎しみを込めた声をかける。

    (;゚∋゚)「ワタナベ、貴様……!!」

    从'-'从「何?」

    振り向きもせず、ワタナベはその場にクックルを残してその場を去った。
    道中、彼が背中から襲うことは考えていなかった。
    それが出来ないから、あの程度の男なのだ。
    部屋の前に来た時、別の種類の視線を背後に感じた。

    o川*゚ー゚)o「なかなかいい見世物だったよ、ワタナベ」

    ボサボサの金髪を持つ、小柄な女性。
    胸ぐらを大きくはだけさせたワイシャツと白い下着だけを身に着けた彼女は、濁った碧眼を輝かせ、ワタナベに声をかけた。
    女性の名は、キュート・ウルヴァリン。
    当初の予定通り、海底街から潜水艇で脱出したワタナベとクックルの回収を行った張本人だ。

    この作戦は元々クックルが請け負っていたもので、ワタナベはその支援に回っただけに過ぎない。
    結果的には成功でも、経過的には失敗に近い。
    クックルとキュートはこの後に別の作戦を控えており、これはあくまでも途中経過でなければならなかったのだ。
    無能さを前面に出したクックルのせいで、大分手古摺ってしまった。

    このままで本当にジュスティアでの作戦が成功させられるのか、ワタナベは疑問だった。
    まぁ、クックル程度を欠いたところで作戦に支障が出るような脆弱なものなら、最初から実行には移さないだろう。
    艦内の人間によれば、クックルは監視役的な意味で作戦に加わったのだという。
    監視役が足を引っ張るようでは、この先が心配だ。

    从'ー'从「あらぁ、やだなぁ、キュートさん見ていたんですかぁ」

    o川*゚ー゚)o「あぁ、堪能させてもらったよ。
           ニクラメンで何かいいことでもあったのかな?」

    流石だ。
    飄々としているが、鋭い観察眼と勘を持っている。
    隠し事は通用しなさそうだったが、素直に話そうとは思わない。

    从'ー'从「いい出会いがあったんですよぉ」

    それだけ言って、ワタナベは部屋に戻った。
    これ以上、キュートに話したくはない。
    胸の高鳴りはまだ収まっていない。
    嗚呼、早く。

    早く、彼に再会したいものだ。
    一体いつ、次は会えるのだろうか。
    そしてその時、彼はどう変わっているのか。
    それが気になって、体の芯が疼く。

    ワタナベに宛がわれた部屋は、剥き出しの金属の上に薄い布が乗せられただけの簡易ベッドがあるだけで、それ以外には本が一冊あるだけ。
    厚みのあるその本は綺麗な装丁がされていたが、手垢で汚れ、端は破れていた。
    ベッドに腰を下ろし、ワタナベはその本を手に取る。
    栞のはさまれたページを開き、そこに並んだ文字に目を走らせ、意識の世界をそこに投じさせる。

    十五年間の中で、もう何万回と読み返した本だ。
    内容は一字一句違えずに覚えている。
    それでも、この本を読むと気持ちが落ち着く。
    本の内容が気に入って読んでいる訳ではない。

    この本の存在が気に入っているだけなのだ。
    中身に関しても、決して傑作と呼べるものではないし、好きでもない。
    精々凡作止まりの、無名な作家の本だ。
    大切なのは、この本の存在だった。

    擦り切れた表紙には、“世界の童話集”と書かれていた。
    紛う事なき、子供向けの本だ。
    本には百近くの童話が載せられており、栞を挟んでいたページは特に念入りに読み返していた。
    この話だけは、ワタナベのお気に入りだった。

    一日に最低でも十回は読み直さないと気が済まないほどのお気に入りだ。
    随分と昔から伝わる物語らしく、その発端は親が子に読み聞かせようと考えた話らしい。
    何度読んでも愉快な話で、睡魔を誘う仕上がりだ。
    この話をいつか彼にも伝えたいと、ワタナベは切に思う。

    从'ー'从「……お休み」

    彼との再会に胸を躍らせながら、ワタナベはゆっくりと瞼を降ろした。

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      ゝ      ⌒ヽ,,
     (          ⌒ヽ
     (            )
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    ‥…━━ August 4th AM04:01 ━━…‥
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    涼しげな風が浜辺に吹き付け、細かな砂とサンゴが混じったそれを巻き上げている。
    数千、数億年の歴史の中で作られてきたそれらは、いとも容易く舞い上がった。
    水面は穏やかに揺れ、太陽と空の色を反射して煌めいている。
    風と波の音以外に聞こえるのは、どこからか聞こえてくる木々のざわめき。

    人の息遣いは、どうにか五人分――その内二人は寝息――が聞こえる。
    女性四人と少年一人が、クロジングから離れた砂浜にいた。
    砂埃とも何とも云い難い物が足元を白ませ、水平線の向こうを紅蓮に染め上げる太陽に照らされる、風変わりな二組。
    向かい合う二人の女性は、それぞれの背中に小さな子供を背負っている。

    (゚、゚トソン「では、イルトリアでお待ちしております」

    再会の約束を最初に取り付けたのは、トソンだった。
    背中の少女は、まだ、眠っている。

    ζ(゚ー゚*ζ「分かったわ。
          遅かれ早かれ、イルトリアには必ず寄るつもりだったし。
          ミセリちゃんをよろしくね」

    (゚、゚トソン「勿論です」

    ノパ⊿゚)「トソン・エディ・バウアー……だったな。
        また会おう」

    夜明けを迎える直前、ヒートの背中には耳付きの少年、ブーンの姿があった。
    ブーンは昨日の疲れもあってか、起きる気配がない。
    すやすやと寝息を立てる二人に配慮して、彼女達は声を潜めながら会話を続けた。

    (゚、゚トソン「えぇ、ヒート・オロラ・レッドウィング様。
        では、またお会いしましょう」

    その言葉と共に、それぞれ別の道を歩き出す。
    ヒートとデレシアはポートエレンを目指し、北上する。
    トソンは南へと向かう。
    東に見えていたはずのニクラメンは海底に沈み、太陽が世界を明るく染め上げる。

    追い風が、南から北に向かって勢いよく吹き付ける。
    空に浮かぶ夏の雲が、風に流されてゆっくりと北に向かう。
    足取りは軽い。
    デレシアも、そしてヒートも、この先に平穏が待ち受けていないことを知っていた。

    それでも、この旅は終わらない。
    旅に終わりが来るとしたら、この命が止まる時だけ。
    生きている間に是非ともブーンの成長を見届けたいというのが、デレシアとヒートの共通の望みだ。
    そしてデレシアは、彼なら必ず、彼女が目指すものに到達できると確信している。

    これまでの間、ブーンは本当の意味で枷から解き放たれてはいなかった。
    それは誰かに習い、誰かに従って成長する、依存と云う枷に守られたか弱い存在。
    しかし、自分自身の意志で行動し、それを己の強さとした。
    それは彼の自立の一歩を意味していた。

    彼は、枷から解き放たれたのだ。
    誰でもない、自分自身の力でそれを果たしたのだ。
    後は彼の両足で好きな場所に歩き、思うままに行動し、成長する。
    デレシア達の元を旅立つ日も、そう遠くないかもしれない。

    太陽に横顔を照らされる旅人達の行く先には黒雲が浮かび、視界の果ての空は灰色に滲んでいた。
    空は鈍色で、雲は墨色だ。
    海の果てに見えるのは墨汁のような濃厚な夜の残滓。
    一瞬、その雲の隙間、空の向こうに何かが煌めいたように浮かぶが、意識するよりも速く消える。

    ――だが、その遥か彼方に浮かぶ最果ての都の姿に気付いた人間が、一人だけいた。

    果てしない旅を続けるデレシアだけなのであった。

    Ammo for Relieve!! 編 The End
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