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第八章【mature-成長-】

  1. 名前: 歯車の都香 2017/04/15(土) 19:36:56
    第八章【mature-成長-】

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    Perhaps.
    例え。

    Perhaps his shortly life finished here, this journey will not lose that meaning.
    例えその短い人生がここで終わったとしても、この旅から意味がなくなることはない。

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    ┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻

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    ‥…━━August 3rd PM 14:22━━…‥
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    ベレッタM8000。
    通称、クーガーと呼ばれるモデルの自動拳銃は、トラギコ・マウンテンライトがそれを愛銃として使い始めて、もう二十六年が経つ。
    警察官になったその日に支給された、思い出深い一品だ。
    使い続ける理由は幾つも浮かぶが、今更それを変える理由は一つも浮かばない。

    棺桶の装甲に多少なりとも効果をもたらす徹甲弾を発砲できるように改造が施され、銃把も彼好みの形に削れている。
    口の悪い彼に口答えすることなく長い間付き合ってくれている、ただ一つの相棒だ。
    トラギコは愛銃に絶大な信頼を置いていたし、銃は常にそれに応えてきた。
    ――八月三日の今日、この瞬間までは。

    必殺を確信して引いた銃爪。
    排出された薬莢が地面を叩いて転がり、硝煙が紫煙のように漂う中。
    強化外骨格の装甲を切り裂くことの出来る携帯用高周波刀、“ブリッツ”が地面に突き立ち、悲鳴じみた音を立てる中。
    快楽殺人者が装着する強化外骨格“プレイグロード”の頭部が大きく仰け反り、殺し合いの終わりを幻視した、その瞬間までは。

    /、゚買゚〉『……あまぁい、あまぁい、あまいなぁ!!』

    (;=゚д゚)「なっ!?」

    トラギコが咄嗟にできたのは、プレイグロードの拳を両腕の機械籠手でどうにか防御するだけ。
    回避運動すらままならず、彼の体が呆気なく宙を舞い、積み重なった死体の上に落下する。
    思わず手離したM8000が、地面を滑って壁にぶつかる。
    痛みに顔を顰めながらも、どうにか立ち上がる。

    /、゚買゚〉『体の動かしすぎで、お頭がバタァみたいに蕩けてるんじゃあないの?!』

    (;=゚д゚)「くそっ……!!」

    Bクラスの頭部装甲を撃ち抜くまでとは言わないが、使用者の脊椎を破壊できると睨んでいたのだが、この女、トラギコの予想を上回る運動神経を持っていた。
    着弾時に自ら首を回転させて威力を受け流しただけでなく、側頭部の丸みを利用して跳弾を誘発したのだ。
    反応速度が化け物じみている。
    行動、反応、対応、全てが疾い。

    いや、これも全て本能の成している技だと考えるのが自然だ。
    理性で動いているようには見えない。
    理性ならば、発砲から反応までの速度が明らかにおかしい。
    こうなることを知っていて、こうなることを予想していて、この行動があったのだ。

    /、゚買゚〉『だけど……私を楽しませてくれたお礼をして、あ・げ・るっ!!』

    プレイグロードが、鉄塊にしか見えない三角錐の主兵装――“ファイレクシア”――を小脇に抱えるように構えた。
    その構えの意味を、トラギコは知っていた。
    ――主兵装ファイレクシアの使用。

    (;=゚д゚)「のっ!?」

    /、゚買゚〉『さ、三……いいえ、五秒待ってあげるからぁ!!
         だから、だから見せてよぉ!!
         これまでの人生の終点が、無様に腐って終わっていく様を!!
         貴方の人生終わらせてぇ、私を悦ばせてぇ!!』

    ファイレクシアの一撃があれば、五秒でトラギコと彼をおいて逃げ出したオープン・ウォーター参加者達を殺すことが出来るだろう。
    室内、それも、空気が適度に循環する場所はファイレクシアが最も威力を発揮する。
    そして、この場所が正にそれに当てはまる。

    /、゚買゚〉『ほら、早く動かないとぉ……!!』

    言われるまでもなく、トラギコ動くつもりだ。
    こんな狭い場所でプレイグロードの主兵装が使用されれば、まず生きのびることは出来ない。
    トラギコが足止めをしている間に来た道を戻っている人間達も、例外ではない。
    先端が朱に染まったファイレクシアは元来、打撃・斬撃用の鉄塊ではなく、化学兵器射出装置。

    それこそが、プレイグロードの名の由来。
    別段、強化外骨格自体に優れた運動性能や特徴があるわけでもなく、有毒物質に対する秀でた防護性能だけ。
    自身が使用する協力無比な化学兵器から身を守るための、強化外骨格。
    それこそが、プレイグロードの強化外骨格の意味でもあった。

    ファイレクシアの先端部から発射される化学兵器弾頭――Desined VXガス――は、皮膚に触れるだけで患部を瞬時に泡のように爛れさせ、肉体を崩壊へと導く。
    衝撃や爆発で暴発しないが、先端の朱色の部分が一度発射されれば、DVXガスを撒き散らしながら音速で飛んで周囲を死の世界に変える。
    死を望む苦痛以外をもたらさないそれは、明らかに戦争協定違反の不の存在。
    非業の死を撒き散らす“疫病王”――プレイグロード――という名が付けられたのも、あまりにも当然だった。

    防御も対抗も出来ない。
    出来るとしたら、化学兵器に対する高い防護能力を有するプレイグロードぐらいだ。
    一度この場に猛毒ガスが充満すれば、トラギコに勝機は皆無だ。
    トラギコは、覚悟を決めた。

    退いて得るのは死。
    進んで得るのは、生か死か。
    硬直が始まった死体を踏み潰し、トラギコは疾走した。

    /、゚買゚〉『ごぉ――、よぉ―――ん』

    (=゚д゚)「無礼てんじゃぁねぇラギ!!」

    左手はジャケットの襟へ、右手は適度に開く。
    そして、目線は地面に突き刺さった高周波刀へ。

    /、゚買゚〉『さぁ――――ん』

    トラギコには確信があった。
    この手の快楽殺人者は、自ら定めた独自の規定。
    即ち、快楽を得る手段に定めた己の規定を、決して破らない。
    今の状況で言うなら、五秒の無抵抗を約束した時間。

    これが、トラギコに与えられた絶対の時間だ。
    相手にとっては優位性の象徴であるが、トラギコにとっては逆転に必要な時間だった。
    賭けにでるには、十分な時間でもあった。
    狙うは主兵装、ファイレクシア。

    打撃、もしくは斬撃によってその機能を奪えば、プレイグロードは恐れるような存在ではない。
    上着を脱いだ段階で、残すのは三歩。

    /、゚買゚〉『にぃ―――――い』

    トラギコはこの状況下で、どうしても止められないことが二つあった。
    一つは、嗤うこと。
    もう一つは、滾りを抑えることだ。
    彼の陰茎はそそり立ち、興奮状態を隠せないでいる。

    この感覚は久しい。
    あの金髪碧眼の女以外に、彼を楽しませる存在と間を置かずに出会えるとは、何たる僥倖。
    どうやら世界は、彼にとって都合のいいように動き始めているようだ。
    素晴らしい。

    実に、素晴らしい。

    (=゚д゚)「せぇあああああ!!」

    一万五千ドルのジャケットをプレイグロード目掛けて投げ、視界をコンマ数秒間だけ奪う。
    そして、流れるような動作で高周波刀の柄を掴み、トラギコはそれを肩に担ぐように右手で構えた。
    脚の動きは完璧だった。
    一歩一歩に無駄はなく、無精髭の生えた口元は笑みが張り付いている。

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                r― ミY´ ̄`Y { ̄ ̄}. ` ̄ |   ,.ィ´ //  _|       /  /   ,;': 〃
               /´ ̄i|    |     }/∧._∧   ‘=≦ {. / ノ   ノ.リ     ./  /  ';;''  〃
             .|    i|    .l   Y⌒ヽ、///}   /    '`¨ヽヽ._//_ノ     /  /  ,.;:;:';  〃
     - ‐… ニ三∧  _,人_,ノ、  ',   \__ ̄ ̄ ヽ   :∧  ヽ_/~´     ./  /  ,';';:'  〃
               ̄      `ー'^ヽ     }     |    :|   :|:\       / ./  ';;''   〃
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    /、゚買゚〉『いぃ――――――ちぃ!!』

    (=゚д゚)「うラぁぁぁ!!」

    ――勝敗を、否、生死を決するこの一瞬。

    トラギコは、その一瞬で自分自身にその人生を問い質した。
    満足のいく人生だったか? 答えは否。
    最悪の人生だったか? 答えは否。
    では、そこそこの人生だったか? 答えは、否。

    まだ、トラギコは満足していないし不満だらけの人生でも、平凡な人生でもなかった。
    そのような糞のような人生など、最初から望んでいない。
    彼が望んでいるのは、常に変動と変異。
    それがないのであれば、それは生ではなく死だと考えていた。

    彼は、まだ死にたくはなかった。
    無能な上司、無駄な部下。
    全てが気に入らなかった。
    だからせめて、自分だけは満足のいく人生を歩んで意味のある人生にしようと心がけ続けた。

    ならば今は、充足した時間を送れているか? 答えは是。
    ならば今は、妥協無き人生を歩んでいるか? 答えは是。
    ならば今は、後悔無き選択を続けているか? 答えは是。
    ならば今は、意味のある瞬間に立ち会っているか? 答えは、是。

    この生死を賭けた一瞬。
    相手の背景にとてつもない何かを感じながらの一戦。
    全てを決定する一閃。
    トラギコの人生の全てが詰まった濃密な時間。

    /、゚買゚〉『ぜぇぇぇぇぇ――――――――――ろぉぉぉぉぉぉおおおおお!!』

    (=゚д゚)「小娘がぁぁぁぁああああああああああああああああああ!!」

    もう間もなく、“ブリッツ”と“プレイグロード”が、文字通り激突する。
    散るのは、血飛沫か、それとも猛毒か。
    刹那の競り合い。
    それを征したのは――

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
                          )ヽ/  ヽ、ノ|ノ´
              ------- ―== ニ ニ二       二ニ ニ ==― --------
                           )     (
                                              August 3rd PM 14:23
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

    /、゚買゚〉『?!』

    (;=゚д゚)『?!』

    ――どちらでもない、第三者だった。

    (#=゚д゚)「手前ぇ……!!」

    /、゚買゚〉『何の権利があって……!!』

    それは。
    それは、一人の凛とした、スラックスに身を包んだ長身痩躯の女性だった。
    僅かに目尻が吊り上がった冬の空と同じ色をした瞳と、後ろで束ねた鉄のような灰色の髪の毛。
    鋼鉄の意志をそのまま削り出して作ったような、真一文に結ばれた口と無感情な表情。

    単身で二人の攻撃を同時に受け止めている、黒鋼の化身。

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
                           /∧|!:.i|      '   /l|:.:.i:!
                         //:.::.i:|!:l|\    ̄  / |!.:i:!
                          /∨.:ノ',|!:|!ー 、` - :iヽ、 l!.:!i
                   ,,、、,,..__,、-ー"i;;;;;',;|!',:::::::::>v′::iヘ.|!/_
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    (゚、゚トソン「……お取込み中失礼します。
        ここで“それ”を使われると、非常に困るので」

    よく見れば、斬撃と発射を止めているのはたった二本の高周波ナイフ。
    ジョン・ドゥに標準装備されている、小型高周波ナイフだ。
    ブリッツよりも小型だが、性能は確かだ。
    高周波刀と高周波ナイフ、その最大の違いは棺桶を切り伏せられるか否かにある。

    単なる高周波武器ならば、ブリッツはわざわざ強化外骨格として設計された必要がない。
    しかし、ブリッツは人間が使用して棺桶を確実に倒せる小型の武器という一点に力が注がれており、高周波ナイフとは目的が違う。
    高周波ナイフは、あくまでも緊急時の近接用の武器であり、誰が使用しても棺桶を確実に倒せる確証はない。
    Cクラスが相手ともなれば出力が足りず、刃はその装甲を貫いて装着者を殺傷することが出来ない可能性もある。

    正直、それを生身の人間が装備して棺桶と対峙するのは、かなりの度量がいる行為だ。
    にも関わらず、気配も跫音もなくこの間合いに踏み込んだ技量と度量は、トラギコの想像を超えた領域にある。
    快楽殺人者が狂気の力なら、この女は丹念に洗練され、磨き上げられた宝石のような力。
    一目でそれが分かるほどの圧倒的な存在に、トラギコの煮え滾っていた思考が急速に冷めた。

    今日は、トラギコにとって最高の一日だ。
    一度ならず、二度までもこのような存在に会えるとは。
    だから人生は止められない。

    /、゚買゚〉『邪魔しないでよぉ!!』

    (゚、゚トソン「……」

    力押しで攻め込むプレイグロードに対し、女は眉一つ動かさない。
    左の細腕はプレイグロードの全力の押しに屈することなく、その状態を維持。
    優位性は、灰色髪の女にあった。
    硬度で劣るファイレクシアが高周波ナイフでじりじりと切断され、プレイグロードは自ら主兵装を壊しに行っているような物だった。

    /、゚買゚〉『……スカしてんじゃないわよ、こんの女ぁああああ!!』

    それに気付いたプレイグロードが、無用な戦闘の一切を終わらせるべく、ファイレクシアの力を解放しようと動く。
    大きく一歩退き、ファイレクシアを肩より上に構え直そうと試みる。
    この近距離で使用すれば、トラギコも灰色髪の女も毒による即死は必至。

    (゚、゚トソン「困る、と申し上げましたが。
         言語理解能力が欠損しているのですか?」

    ブリッツと刃鳴散らしていたナイフを引き抜いて、女はそれをプレイグロードに投擲する。
    バランスを崩したトラギコは、女の狙いを見届け、驚愕した。

    /、゚買゚〉『あぁっ?!』

    (゚、゚トソン「邪魔をするつもりはありません。
         さぁどうぞ、お好きなだけじゃれ合っていて下さい」

    ――ナイフは、柄の近くに備わった発射機構に正確に突き刺さり、毒ガスの発射を不可能にしていた。
    化学兵器の使用には、細心の注意と最新の防護能力が必要とされる。
    それ以前に必要なのが、事故による誤作動を如何に防ぐか、である。
    ファイレクシアの場合、DVXを有効にするために幾つかの必要なプロセスを用意し、衝撃や爆発でガスが流出しない工夫がされていた。

    発射機構は、その内の一つだった。

    /、゚買゚〉『……ざっけんじゃないわよぉ!!』

    お気に入りの玩具を壊された子供のような声で、女はファイレクシアの構えを一瞬で打撃用のそれに変える。
    それは、DVXの使用が不可能になったことを一瞬で理解し受け入れたことを意味していた。
    ――振り上げ、そして振り下ろす。
    灰色髪の女はそれを最小の動作で回避し、目標を失った鉄塊がトラギコの頭上に迫る。

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
     . \\
       ,. \\从/
    .     そ   て
         ゝ,    そ
         "`/'^r  \
            .    \\
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

    (;=゚д゚)「ちょうぉおお!?」

    ブリッツを掲げてそれを防ごうとするが、それは杞憂に終わった。

    /、゚買゚〉『ちっがう!!』

    寸前で攻撃を止め、横薙ぎの一閃に転じさせた。
    叩きつけるような凄まじい風圧が、トラギコの髪を撫でる。
    流石は天性の殺人狂、定めた目標への執着心が尋常ではない。
    そのおかげで、トラギコは命を繋ぎとめることが出来た。

    しかし、当然のように灰色髪の女はその一閃を涼しげな顔で避ける。
    どこからか取り出した自動拳銃をプレイグロードの顔に容赦なく浴びせ、視界を奪い取る余裕さえ見せた。
    弾倉を一つ使い切っての射撃に、たまらずプレイグロードは防御を強いられる。
    それが幸いして、射撃の合間に投擲された最後のナイフは眉間ではなくその腕に刺さるだけに止まった。

    もし、対弾性能を過信して防護していなければ、その一撃で殺人狂は地に伏していたはずだ。
    トラギコの予想が確かなら、ナイフは頭部で最も脆いカメラを狙って投擲されていたからである。
    激しい憤りの声が、プレイグロードのマイクから響き渡った。

    /、゚買゚〉『っなぁあああっ!!』

    二者の争いの真ん中で、トラギコは場違いなことを考える自分を笑った。
    時代柄か、凶悪かつ凶暴な女が増えてきているようでトラギコは嬉しかったのだ。
    やはり、強い女性は魅力的だ。

    (゚、゚トソン「では、失礼します。
         続きはお好きなだけどうぞ」

    そう言い残して、灰色髪の女はトラギコが来た道を旋風のように駆け抜け、姿を消した。
    プレイグロードは動きを止め、怒りに肩を震わせる。
    さて、この場合、トラギコはどうなるのだろうか。
    殺し合いの続きか、それとも休戦か。

    一度場が仕切り直しされ、脅威であったファイレクシアも使用が出来ない状態。
    全ては、プレイグロードの棺桶持ち次第だ。

    /、゚買゚〉『……』

    無言で、プレイグロードの棺桶持ちは強化外骨格を解除、運搬用コンテナに収納した。
    鎧の下に現れた汗で滲む肌は艶めかしく、しっとりとして肌に張り付く茶髪は激しい事後を想起させる。
    そして、鳶色の円らな瞳と魅力的な体つき。
    こうして見れば、モデルか女優の類だとしか思えないが、人を見かけで判断してはいけない。

    背負ったBクラスの棺桶が、その証拠。
    先ほどまでの興奮が、その証拠。

    从'-'从「……」

    顔には笑顔はなく、何か感情が欠落しているような、淡白な表情だ。
    絶頂しそびれた娼婦がベッドの上で浮かべる表情だと、トラギコはすぐに思い当った。

    (=゚д゚)「……」

    灰色髪の女が去った方角からトラギコへと視線を変え、女は柔らかく微笑んだ。

    从'ー'从「……ワタナベ・ビルケンシュトック。
         貴方を殺す女の名前よ」

    (=゚д゚)「トラギコ・マウンテンライト。
        手前が殺しそびれた男の名前ラギ」

    ビルケンシュトックという名字は、ジャーゲンで事件を担当した時に聞いた記憶がある。
    と言うことは、ジャーゲンの出身者と考えられる。
    あの地帯は強い酒と強い人間が大勢おり、軍事都市イルトリアも一目置いているほどだという。
    それに、ジャーゲンには何かと思い入れがある。

    頬の傷が、疼くように少し痛んだ。

    从'ー'从「ねぇ、折角だし、今、ここで一発ヤラない?
         血と汗の匂いがいっぱいで、私、発情しちゃったぁ」

    (=゚д゚)「お断りラギ、色情魔」

    もしも、このワタナベが正常な思考の持ち主で性倒錯の快楽殺人者でなければ、その誘いに乗っただろう。
    何せ、控えめに見ても美人の部類だし、トラギコは美人が好きだ。
    美人に加えて強いとなれば、それはもう完璧に好みだった。
    まだまだ彼は性欲が衰えておらず、誘いを断るほど無粋でもない。

    世の中、全てが上手くいかないということを、トラギコは改めて実感した。

    从'ー'从「残念」

    (=゚д゚)「あらゆる意味で俺も残念ラギ」

    ブリッツの電源を切り、振動を止めた高周波刀を降ろす。
    ワタナベに個人的な恨みはない。
    それに、そもそも戦い始めた理由はつまらない存在がトラギコの前に現れたからであって、今やそれが変わった以上、ここで戦う理由はない。
    この女は、まだ泳がせておいていい。

    もっと大きな何かをもたらしてくれると、トラギコは確信した。
    オセアンで起こった事件を追い始めて以来、彼は満足過ぎるほどの時間を送ることが出来ている。
    となれば、このワタナベ・ビルケンシュトック。
    あの事件にどこかでつながっている可能性があった。

    無論、それはトラギコの勘でしかない。
    しかし、自身の勘ほどあてになる物はない。
    この女とは、何か妙な縁があるように思えた。
    だから、今この段階で殺すことはしない。

    今は、まだ。

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
    ‥…━━August 3rd PM 14:27━━…‥
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

    从'ー'从「じゃあ、死ぬ前に気が変わったら言ってねぇ。
         そうしたら、情けの一発ぐらいはヤラせてあげるわぁ」

    (=゚д゚)「手前が更生したら、考えてやってもいいラギ」

    从'ー'从「それはもう無理ねぇ」

    両者は、それぞれ別の方向に進みだした。
    すれ違う際、ワタナベは一言だけ、言い足した。

    从'ー'从「運が良ければまた会いましょうね、刑事さん」

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     (          ⌒ヽ                                (          ゝ
     (            )                               (   />  />
     ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ il朋、  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄Ammo for Relieve!! 編
    .....:::::::... .....:::::::....... .....:::::::...  .....:::::::...  ..:   ..::::.   ...::::::.. ..:::::::      第八章
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                 ,イ_,ry=、_r一'y
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             .  ___¨Ε三三入_,rォ ,r============y∠ l:|
    .fニニ}=========y┘ニニニニ〔_,二二二二冂l¨l¨l¨l¨l¨l¨l¨l¨l¨lHll亜|ニニニヒリニニニl〕二}
    .ト、 ─ ‐ ‐ ‐ ‐:├ト======={二二}{二}!Нー┴:.┴:.┴:.┴=ニニニニンAugust 3rd PM 14:29
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    HK416カービンライフルは、非常に優秀な銃だ。
    威力の高い弾丸の採用、状況に応じて素早く各種アタッチメントを付け替えて対応できる汎用性、そして耐久性と信頼性。
    このアサルトライフルをニクラメン海兵隊は正式採用し、実際に配備されている数だけで実に千丁。
    第三区画に設けられた海兵隊基地には、四百五十丁のライフルがあった。

    ニクラメンの要である第三区画を守る海兵隊は、合計で百二十六名、住民の避難やその他の業務で外している者を引けば、六十四人。
    それに対し、配備された棺桶は七十三機、その内十七機は第三区画交差点で全滅。
    差引、六十六機。
    人数を考えれば、一人に一機の棺桶が割り当てられる計算だ。

    緊急事態の発生に伴い、五十五名の海兵隊達は兵站庫に集結し、武装していた。

    〔Ⅲ゚[::|::]゚〕『どこのどいつだか知らないが、野郎ども、やることは分かってるな?!』

    軽機関銃HK21に八十連ドラムマガジンを装着し、棹桿を叩くようにして元の位置に戻す。
    重々しい起動音を唸らせて立ち上がったのは、指揮官用に黒にカラーリングされた強化外骨格“ジョン・ドゥ”。

    〔Ⅱ゚[::|::]゚〕『Sir, yes sir!!』

    呼応したのは、HK416に百連ドラムマガジンを装着した五十四機の“ジェーン・ドゥ”。

    〔Ⅲ゚[::|::]゚〕『偵察班からの報告で、敵は光学兵器を使用するCクラスの棺桶であることが分かっている。
          近距離に対する打撃力、防御力は絶大だ。
          遠距離から数で押すしかない。
          モラレス、RPG-7とパンツァーファウストの在庫処分の準備は?』

    〔Ⅱ゚[::|::]゚〕『Sir、在庫一掃セールの準備は整っています、Sir!!』

    〔Ⅲ゚[::|::]゚〕『いいだろう、全品決算大処分価格でぶちかましてやれ。
          目にしたら殺せ、気配を感じたら殺せ、相対したら殺せ!!
          奴をこれ以上先に進めるな!!
          海兵隊の諸君、俺達の持て成しとは何だ?!』

    装備を終えた全ての海兵隊――ジェーン・ドゥ――が、機械の拳を掲げる。

    〔Ⅱ゚[::|::]゚〕|::]゚〕『Good Kill, Better Kill, Best Kill(殺せ、屠れ、葬れ)!!』

    〔Ⅲ゚[::|::]゚〕『海兵隊の諸君、ニクラメンに喧嘩を撃ってきた糞共に相応しいプレゼントは何だ?!』

    〔Ⅱ゚[::|::]゚〕|::]゚〕『Good Death, Better Death, Best Death(死を、破滅を、終焉を)!!』

    〔Ⅲ゚[::|::]゚〕『ニクラメン第三区画海兵隊、俺達はこれから何をする?!』

    〔Ⅱ゚[::|::]゚〕|::]゚〕『Trample, Trample, Trample(踏み荒らせ、踏み散らせ、踏み砕け)!!』

    そう。
    愚かな考えを踏み荒らすのだ。
    愚かな希望を踏み散らすのだ。
    愚劣な命を踏み砕くのだ。

    基地正面入り口から、猛烈な銃声が響き、爆発音が連続して轟いた。
    とうとう、攻め込んできた。
    ニクラメンを滅ぼそうと考える害虫が。
    第三区画海兵隊隊長、カレッジ・ステイサムは、最後の号令を発した。

    〔Ⅲ゚[::|::]゚〕『銃弾の飴で出迎え、爆薬のクラッカーで喝采を浴びせ、血みどろの祝福を与えてやれ!!』

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    怒号に近い返答と共に、強化外骨格を身に纏った五十五名の海兵隊達が、兵站庫を飛び出していった。
    先ほどから聞こえている銃声と爆音の間隔の狭さが、既に戦闘が激化していることを意味していた。
    こちらには力がある。
    戦車隊とも戦えるだけの、十分な力が。

    それが、この強化外骨格なのだ。
    鉛弾ならある程度防げる装甲。
    運動能力を向上させ、最高で時速百マイルで駆ける脚力を持ち主に与える強化外骨格、ジョン・ドゥとその軽量型ジェーン・ドゥ。
    整備は怠らず、訓練は欠かさなかった。

    その成果が、今ここに現れる。

    〔Ⅱ゚[::|::]゚〕『撃てッ!!』

    ハンヴィーを楯に榴弾発射機から発射された榴弾が、基地の入り口を塞ぐ鉄柵を飛び越え、放物線を描いて落ちる。
    少し間を開けて、爆音。
    鉄柵の両脇に設けられた高台から放たれる曳光弾の軌跡も、その鉄柵の向こうにいる何かを必死に防ごうとしている。
    部下達は一か所に固まらず、分散して集中的に攻撃を浴びせていた。

    敵は、すぐそこに来ている。

    〔Ⅲ゚[::|::]゚〕『奴を正面の道路に釘付けにしろ!!
          ザナック、奴に強攻偵察班の言っていた光学兵器を使わせるな!!』

    カレッジは最前線に向かうため、ジョン・ドゥの最高速度で駆け出した。
    風を切って走る感覚が気持ちいい反面、迫り来る襲撃者に恐怖を感じる。
    単身で海兵隊基地に攻め入るのは、技量に対する絶大な自信か、無謀の二者しかいない。
    光学兵器が使用可能な棺桶を駆使しているとなると、紛れもなく前者だ。

    こんな時に惜しいと感じてしまうのは、パール・ヘッド・ジャックの不在だ。
    きっと、海兵隊の全員が同じことを思っているだろう。
    敵が棺桶を使ってくるのなら、その正体と弱点を知っていた方が優位性は上がる。
    しかし、量産型のならばまだしも、コンセプト・シリーズの棺桶となると、よほど棺桶に精通した人間でなければその詳細は分からない。

    単一の目的で開発され、量産はされなかったと言われるコンセプト・シリーズ。
    パールなら、今攻め入ってきているコンセプト・シリーズの正体が分かったかもしれない。

    〔Ⅲ゚[::|::]゚〕『今だ、ザナック、グレネードをありったけ撃ち込め!!』

    回転式榴弾発射機を構えたザナック・フリードマンが、榴弾を六発連続で放った。
    光学兵器が主兵装なら、光を弱める状況を作ればいい。
    放たれた榴弾に合わせて、基地のあちらこちらから、一斉に榴弾が発射された。
    猛烈な爆煙と衝撃。

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    濛々と漂う爆煙が、その先にある全ての景色を塗り潰した。
    海兵隊達は一斉に、三つある機械仕掛けの目を熱源探知モードに切り替え、敵の姿を白煙の向こうに見出す。
    如何にCクラスの棺桶とは言っても、これだけの対戦車弾頭と徹甲弾の弾雨にさらされれば、ひとたまりもない。
    敵の姿を高性能カメラで確認した偵察型ジェーン・ドゥが、敵に与えた損傷報告を行う。

    〔Ⅱ◎[::|::]゚〕『こちらレイヴン・アイ。
           奴は、奴は……!!』

    白煙の向こうに浮かぶのは――

    〔Ⅱ◎[::|::]゚〕『奴は、壁にいます!!』

    猛禽類のような三本の鉤爪。
    それを使ってビルの壁に張り付き、爆発と銃弾の嵐をやり過ごしたのだ。
    殺意が風となって押し寄せ、次の一瞬。
    全ての海兵隊が、一斉に銃爪を引いた。

    激しい弾雨に、形を保っているのがやっとといった鉄柵が、とうとう通り側に向かって倒れた。

    〔Ⅲ゚[::|::]゚〕『レイヴン・アイ、敵は!!』

    〔Ⅱ◎[::|::]゚〕『地上に降下し、健在!!』

    そして、不幸が重なった。
    排除を焦るあまり行った一斉射撃。
    その代償は、僅かな再装填の時間。
    それだけで、彼らが驚愕し恐怖し慄くには十分だった。

    [,.゚゚::|::゚゚.,]

    アスファルトの大地を踏み砕く疾走。
    鉄柵を越え、とうとう、その棺桶は基地への侵入を実現した。
    全ては一瞬のこと。
    敵地のど真ん中に単身で現れた棺桶は、その巨椀を素早く広げた。

    肉食獣の顎が開くように、三本の鉤爪が展開。
    くるりと華麗にその場で一回転。
    青白い残像を残した光が一閃。
    十四の命が、その一閃で一瞬の内に散った。

    高出力の光学兵器の正体は、戦術高エネルギーレーザー。
    物体を焼き切るその兵器は、イルトリアが実戦配備していることで有名だが、それが搭載された棺桶など、誰も考えたことはない。
    ジェーン・ドゥの装甲ごと体を焼き切られた海兵隊達が、呻き声一つ立てずに二分され、崩れ落ちる。
    圧倒的な威力と、現実離れした破壊力。

    悪夢の具現でしかなかった。

    [,.゚゚::|::゚゚.,]

    皆が呆然自失となる中、その棺桶使いは、容赦がなかった。
    薬莢のような筒状の物体が腕から排出され、鈍い音を立てて地面に転がる。
    続けての二撃目は、背中から羽ばたくような動きで放たれた。
    高台が二分され、そこにいた四人の海兵隊が瓦礫の下敷きとなった。

    再び筒状の物体が両腕から排出され、地面を叩いた。
    巨椀の肘近くの部分から白い蒸気が勢いよく吹き出し、左腕を地面に突いて、その棺桶は動きを止める。
    高エネルギーを使用したことによる冷却行為か。
    その隙を見逃さず、カレッジは叫んだ。

    〔Ⅲ゚[::|::]゚〕『撃て!!』

    装填作業を終えた海兵隊から、我先にと武器を構える。
    次の瞬間には、全員が銃爪を引いて銃弾と榴弾を叩きこむことだろう。
    薬莢が落ちる音が重なり、 薬物中毒者が一心不乱に奏でる鉄琴の連打による不協和音を思わせるまで、後一刹那の時間。
    彼らが守るべき物の一つが、崩落を開始した。

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           _,、-‐ ─‐-t‐r‐-、 _,ィ  イ     iユ    /:;/:;:;ゞ  -‐''"´7 ,r‐7 ,、ノノ
    _,、-‐'' "´:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;,!イl  ji三彳   ,      /i ,/:;/:;:;.;;::;:;:;:;三彡// ,/ /
    二ゞ:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;,!イl  ,!l´ ̄     ゙´   l/ i':;/:;:;:;:;:;:;:;:;: August 3rd PM 14:35
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    ――すなわち、地上へと繋がる三本の柱の一つ、第一区画のそれが瞬く間に土煙に飲み込まれていったのだ。

    そこにはまだ避難民がいた。
    そこにはまだ親子がいた。
    そこにはまだ子供がいた。
    そこにはまだ、命があったのだ。

    [,.゚゚::|::゚゚.,]『軽率だぞ、海兵隊!!』

    時限式の爆弾か何かだろうかと誰もが考え、驚愕を憤怒に瞬時に変換する。
    全員の注意が削がれたその一瞬が、銃爪を引くのを一刹那遅らせていた。
    第三射目は、周囲一帯を取り囲む海兵隊十五名の命を刈り取った。
    ただ一人、カレッジを除いて。

    〔Ⅲ゚[::|::]゚〕『くうっ!!』

    彼は幸運だった。
    レーザーの出力が弱まる地点に立っていたがために、その攻撃で命を落とすことはなかったのだ。
    代わりに、胸部装甲に大きな切れ目が入り、その内側にある胸筋の一部を焼いた。
    痛みを怒りで上塗りし、カレッジは叫ぶ。

    〔Ⅲ゚[::|::]゚〕『ここは墜とさせんぞ!!』

    生き残った三十三機の海兵隊達は、それぞれの判断で独自の攻撃を仕掛けることはしなかった。
    それぞれが安全な位置に動き、レーザー攻撃の標的にされまいと動き続ける。
    主兵装さえなければ、後に残るのはやや丈夫な装甲だけだ。
    強力な銃火器で攻撃を続ければ、必ず生死の天秤はこちらに傾く。

    [,.゚゚::|::゚゚.,]『私を撃てば!!』

    全員の意識が、その言葉を無視しようとする。

    [,.゚゚::|::゚゚.,]『第三、第二区画の橋も落ちるぞ。
         賢明な諸君なら、第二区画の橋がもつ重要性を知っているはずだ。
         私は、定められた殺生しか行わない』

    カレッジ他、全ての海兵隊が発砲を中断した。
    怒りに身を任せてこの侵入者を殺せば、大勢の市民が犠牲になる。
    一の勝利で百以上の犠牲は、あまりにも割に合わない。

    [,.゚゚::|::゚゚.,]『私の使命を邪魔しないのなら、私はこれ以上不要な殺生を行わない。
         このクックル・タンカーブーツ、確かに誓おう』

    信用ならない。
    誓いなど、所詮は口約束でしかない。
    ここまでニクラメンを滅茶苦茶に荒らしておきながら、何を今更誓おう、だ。
    冗談ではない。

    海兵隊の誰一人として、銃口を下げようとも銃爪から指を離そうともしなかった。

    〔Ⅲ゚[::|::]゚〕『何が誓いだ、侵入者!!
           何が狙いだ、侵略者!!』

    [,.゚゚::|::゚゚.,]『……“ニューソク”、ただそれだけ!!』

    三十三の銃口を前に、男は、傲然とした口調で妄言に等しい言葉を言い放った。
    それは永久の戦いを受け入れ、悪と呼ばれる存在全てを屠ると誓いを立てた勇者のような、あまりにも大胆不敵で、あまりにも愚かな宣言だった。
    男は、ニクラメンの核――“ニューソク”――を奪うと言っているのだ。
    核を失ったニクラメンは、当然ながらその存続が不可能になる。

    全てのエネルギー。
    全ての発展。
    それら全てを賄うニクラメンの命、ニューソク。
    どちらに転んでも、この男はニクラメンを滅ぼす存在。

    〔Ⅲ゚[::|::]゚〕『痴れ者が!! 愚か者が!! 蒙昧ごとを並べてご満悦か!!
          脳外科か心療内科がご所望なら、ここは場違いだ!!』

    [,.゚゚::|::゚゚.,]『私の使命を邪魔するのだな、海兵隊。
         いいだろう、ならばその覚悟、ここで断ち切る!!』

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    第二区画の橋が、天井に繋がる根元から爆破された。
    細かな粒――その正体が人間であることを、ジョン・ドゥのカメラは容赦なく見せつけた――が、絶望的な高さから落ちてゆく。
    無数の命が、一瞬で瓦礫と共に姿を消す。

    [,.゚゚::|::゚゚.,]『さぁ、どうした!!』

    残すは、第三区画の橋。
    即ち、彼らの基地のすぐ正面にある橋。
    今まさに大勢の市民が安全を求めて海上を目指し、進んでいる橋だけ。

    〔Ⅲ゚[::|::]゚〕『このっ……!!』

    戦力差ではない。
    実力差でもない。
    三十三機の棺桶に身を守られ、武装した海兵隊達がこの男に劣っている部分は、ただ一つ。
    払う犠牲の多さ、それに尽きた。

    未だに避難が完了していない住民を合わせると、三百人以上の人間がこの男の気分次第で海底に沈むことになる。
    ニクラメンの要と、住民の命。
    天秤にかけてしまうのは、彼らが軍人であるが故の性。
    心中で思う言葉は、ただ一つ。

    卑劣。
    この、クックル・タンカーブーツと名乗った男。
    どこまでも、下劣。

    [,.゚゚::|::゚゚.,]『あと一つ落とせば、いずれにしても君達は何も守れなかったことになる。
         だが、ニューソクさえ明け渡すのであれば私はあの橋を落とさない。
         どうする、海兵隊?』

    〔Ⅲ゚[::|::]゚〕『……』

    ニクラメン海兵隊にだけ伝わるハンドサインで、カレッジは静かに、だが確かに命令を部下達に伝えた。
    百か、一か。
    簡単な話だ。

    [,.゚゚::|::゚゚.,]『どうす……』

    背後から発射されたRPG-7が、その答えだった。
    いずれ殺される百人か、その百人以上をこれから殺そうと試み、更にはニクラメンの滅亡を望む一人か。
    例え百人を殺されても、屠るべきは一人だけ。
    排除こそが、彼の選択だった。

    発射音に驚き振り返る棺桶持ち。
    四つの目が弾頭を視認した時、それは回避運動が不可能な位置にまで迫りつつあった。

    [,.゚゚::|::゚゚.,]『るっ?!』

    爆音がその声を掻き消し、爆煙がその姿を包み込んだ。

    〔Ⅲ゚[::|::]゚〕『斉射!!』

    〔Ⅱ゚[::|::]゚〕『Sir!!』

    機関銃が。
    突撃銃が。
    対戦車砲が。
    あらゆる攻撃が、一斉に爆煙の中心部に向かって発射された。

    射手は移動しながら射撃を加え、砲手は身を低くして砲撃した。
    鮮やかな火線を描きながら空中を飛ぶ銃弾、そして砲弾。
    今度こそ、海兵隊達は勝利を確信した。

    〔Ⅱ゚[::|::]゚〕『……やったか?』

    爆煙の中では、熱源探知は出来ない。
    徹甲弾と対戦車用弾頭の嵐を生き延びる棺桶など、例えCクラスの棺桶でも不可能だ。
    銃身から煙が上がるライフルの弾倉を交換しながら、偵察型ジェーン・ドゥの棺桶持ちがカメラに登録した敵の姿を爆煙の中から探し出す。

    〔Ⅱ◎[::|::]゚〕『あ、あいつっ――』

    ――その報告は、青白い光に口を射抜かれ、最後までされることはなかった。

    [,.゚゚::|::゚゚.,]『……その程度の正義、その程度の意地、その程度の使命感では、私は倒せん!!』

    剥がれ落ちる、黒曜石色の装甲。
    その下から見える、純白の光沢を放つ眩い装甲。
    道理で生き延びたはずだ。
    道理で耐えきったはずだ。

    ――追加装甲。

    強化外骨格に施す改造の一つで、先ほど顔を焼き切られた偵察型ジェーン・ドゥもその処置を受けていた。
    だが、それは発掘当初の姿がそうなっていただけであって、彼らの手で偵察型にしたというわけではない。
    棺桶開発・研究の最前線を行くイルトリアが近年ようやく運用実験段階に着手し始めた、復旧中の技術だ。
    欠点は、棺桶の重量が元よりも遥かに増え、コンテナの大きさもそれに比例して大きくなり、長距離の運搬の際は強化外骨格を別の方法を使って運ばなければならない点だ。

    パール・ヘッド・ジャックが新聞のゴシップ記事を読むような気軽さで口にしていたその言葉の重みを、カレッジは今知った。
    自分も含め、この場に居合わせた海兵隊がその言葉を記憶していれば。
    このような事態は間違いなく避けられた。
    更に言えば、オープン・ウォーター開催に伴って警備体制の弱体化を強いた上層部に対して、もっと抵抗すべきだった。

    外部の人間を雇い入れるなど言語道断だったのだ。
    不穏分子が紛れ込んだ際の責任と対応への姿勢が違うし、何より外部の人間にニクラメンを任せたくはなかった。
    上層部の決定だから、と諦めていたことが過ち。
    これだけの大型の兵器を見逃すことは、ニクラメンの警備上絶対にありえないはずだった。

    つまり、オープン・ウォーターに乗じてあらかじめここに運び入れた何者かがいたのだ。
    用意周到に。
    舌なめずりをして、この時を待っていたに違いない。
    そこまでしてでも、ニューソクが欲しいのだろう。

    その為の準備。
    その為の兵器。
    惜しげもなく最新の技術が使われた棺桶を駆使する、情け容赦のない性格と力量。
    このクックルと名乗った男の考えと行動は、反吐が出るほど正しい物だ。

    今は、力が世界を支える時代。
    今は、力が世界を動かす時代。
    今は、力が世界を変える時代。
    力こそが、この世界の全てなのだから。

    連続して放たれる高エネルギーレーザー。
    成す術なく焼き切られる海兵隊。

    〔Ⅲ゚[::|::]゚〕『う、うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!』

    腹から声を出してカレッジは腰だめに軽機関銃をフルオートで斉射した。
    それに続いて、残り四人となってしまった部下達が。
    追加装甲がなくなった今こそが、最初で最後のチャンス。

    [,.゚゚::|::゚゚.,]『我らの礎となって、永久を生きろ!! 勇敢な海兵隊!!』

    巨椀を楯に疾走。
    狙いは、弾倉を外して再装填作業を行っているポリステル・エスペラントが駆るジェーン・ドゥ。
    右の巨大な三本の鉤爪で、慌てて逃げ出そうとしたジェーン・ドゥを捕らえ、持ち上げた。

    〔Ⅱ゚[::|::]゚〕『た、たいち゛ょうううぇああああああああああああ!?』

    [,.゚゚::|::゚゚.,]『墳っ!!』

    赤黒い鮮血が、ジェーン・ドゥの隙間から吹き上がった。
    ひしゃげたジェーン・ドゥは、クリクル・バルジャックのジェーン・ドゥに向けて投げ捨てられ、間髪入れずに発射されたレーザーが二体の棺桶を貫いた。
    左腕のレーザーが、薙ぎ払うような仕草で発射され、咄嗟に構えたカレッジの両腕とクランキー・マアムの上半身を切り落とした。

    〔Ⅲ゚[::|::]゚〕『ぬぁああああああ!!』

    苦悶の叫びではない。
    無力さへの叫びだ。
    失ったのは腕と銃、そして勝機。
    対して残されたのは、感覚を失い始めた両足。

    竦み上がった体。
    焼き塞がれた両腕の傷。

    〔Ⅲ゚[::|::]゚〕『俺の腕を、俺の部下を、俺の故郷を!!』

    [,.゚゚::|::゚゚.,]『……』

    傲然と歩み寄る純白の棺桶。
    金色の大樹が肩に描かれたそれは、まるで物語に出てくる聖騎士の様に気色が悪かった。

    〔Ⅲ゚[::|::]゚〕『返せえぇぇぇぇ!!』

    叫びながら、カレッジは突進した。
    時速百マイルに迫る突進。
    残された最後の武器を使った彼に対して、純白の棺桶はただ右腕を構えるだけ。

    [,.゚゚::|::゚゚.,]『見事だ、海兵隊の長よ!!』

    青白い光が横切ったと思ったら、カレッジは転倒して転がっていた。
    両足が焼き切られたのだと、すぐには分からなかった。
    痛覚の麻痺ではなく、単純に痛覚が追いつかなかっただけだ。

    〔Ⅲ゚[::|::]゚〕『くっ、くそがあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!』

    [,.゚゚::|::゚゚.,]『勇猛な貴様には、特等席で見せてやろう』

    顔に足をかけて蹴り起こされたカレッジの視界に映るのは、純白の棺桶と偽物の青空、そして――

    [,.゚゚::|::゚゚.,]『故郷の終わりを、そして新世界の第二歩を』

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    、         '      '¨  ,.‐(  ..::  ,ノ,l l      //:;/ /:;:;:;:;/二/´ ̄:;:;:;:;:;:;,イ ) :`
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    二ゞ:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;,!イl  ,!l´ ̄     ゙´   l/ i':;/:;:;:;:;:;:;:;:;: August 3rd PM 14:50
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    ――第三区画の橋が、爆音と共にゆっくりと倒れ始めた。

    〔Ⅲ゚[::|::]゚〕『あ……あっあ……!!』

    [,.゚゚::|::゚゚.,]『安心しろ。
         海上に通じる全ての出入り口は、貴様らの作ったシステムで厳重に封鎖されている。
         橋も落とし、海上から地上へ戻る道も全て封鎖してある。
         これで全員、故郷の土となることができる。

         安心して、安らかに眠れ』

    そして、その棺桶持ちはそれ以上彼に構うことなく目的を果たしに移動を開始した。
    遠ざかる跫音。
    崩落の音。
    今となっては、虚しさの象徴である偽りの故郷の空。

    カレッジは、涙も流せなかった。
    悔しさを越え、憤りを越え。
    今や、全ての感情が死んだ状態だった。
    矜持も、ささやかな夢さえも。

    家族。
    先月に恋人が出来たと喜び、報告してきたハイスクールの娘。
    妻と共に真っ先に避難させ、安心していたのに。
    瓦礫と共に地面に落ち、叩きつけられ、瓦礫に潰されたのだろう。

    痛かっただろう、苦しかっただろう、悔しかっただろう。
    父であるカレッジは何もできなかった。
    助けてやることも、逃がしてやることも。
    父親としての義務を果たせず、海兵隊の隊長としての義務さえも果たせなかった。

    無力。
    無念。
    無常。
    無情。

    全ては一瞬で終わり、全ては一瞬で変貌した。
    たった一人の。
    たった一つの意志が。
    全てを、狂わせた。

    こんな形でニクラメンが終わる。
    こんな、こんな結末など、信じられるはずがない。
    何故。
    どうして、こんなことになったのだろう。

    どこで歯車が狂い、どこで彼らはそれを直し損ねたのだろう。
    どの段階でなら、間に合ったのだろう。
    いや、むしろ間に合ったのか?
    ここまで周到に準備されたニクラメン崩壊のシナリオ。

    誰が止められる。
    誰が防げる。
    抗える者など、この街にもこの世界にもいないだろう。
    このシナリオは、誰にも書き換えられない。

    ――強いて、強いて例外を上げるとしたら。

    誰よりも疾く。
    誰よりも強く。
    誰よりも賢く。
    そして誰にも付き従わない存在。

    そんな、絵に描いたような人間から離れた人間でなければ、このシナリオを書き換えることは出来ない。

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    ‥…━━August 3rd PM 15:00━━…‥
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    〔Ⅲ゚[::|::]゚〕『……こちら、ニクラメン第三区画海兵隊隊長カレッジ・ステイサム。
          誰でも、誰でもいい……
          この無線を聞いている誰かがいたら、聞いてほしい……』

    カレッジは、ジョン・ドゥに搭載されている無線機を起動させ、オープンチャンネルに呼びかけた。
    それは、最後の足掻きだった。
    絶望はしたが、諦めてはいなかった。
    ここは彼の故郷で、彼が護ろうとした街。

    最期の瞬間に見届けるだけなど、彼には我慢できない。

    〔Ⅲ゚[::|::]゚〕『……生き延びてくれ!!
          地上への道は、まだ……残されている!!』

    彼の呼びかけに応じる声は、一つもなかった。

    * * *
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    ‥…━━August 3rd PM 14:15━━…‥
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    軍用第七世代強化外骨格――もしくは第七世代軍用強化外骨格――“カスケット”。 通称、“棺桶”。
    その開発は、高性能な鎧の軽量化と小型化、そして耐衝撃機構の開発の歴史でもあった。
    開発当初――つまり第一世代の強化外骨格――は、戦闘ではなく物資の運搬や機材の搬入といった作業を補助する、パワーアシストが主だった。
    現在のような小型大容量バッテリーによる駆動ではなく、有線式であったために、使用可能な範囲は常に限られ続けてきた。

    しかし、その存在目的は僅かだが変わり始めた。
    これまでは戦線を陰で支える役割しか担ってこなかった強化外骨格が、前線で登場するようになったのだ。
    重量のある重機関銃などの兵器の運搬、頑丈な鎧を纏った機関銃手として、徐々に活躍を見せることとなる。
    そして、訪れた転機と共に強化外骨格は急成長を遂げることとなる。

    第二世代強化外骨格“ポチョムキン”の登場である。
    これを機に、軍需産業は革新的な発明と開発を繰り返し、世界を終わらせる兵器の誕生へと順調に近づいて行った。
    度重なる進化の過程の中で、やはりどうしても克服を余儀なくされたのが、衝撃に対する抵抗力だった。
    全身が高性能な機器の塊である以上、衝撃は天敵だ。

    着地に失敗した衝撃で電子機器が破損し、活動停止に陥った強化外骨格の例は第七世代に至ってからも数多く挙げられている。
    夥しい実験を重ね、電子機器の保護技術は飛躍的に進歩した。
    改良に改良を重ねていても、終ぞ完成形が世に広まることはなかった。
    それを物語る代表的な強化外骨格が、今でも発掘されることがある。

    カリメア合衆国空挺部隊が使用した、“エアベンダー”。
    装甲と引き換えに、着地の際に発生する衝撃に対抗するための緩衝材が各関節部に搭載され、高度30フィートからの着地を成功させた。
    しかし、脚部からの着地が前提となる設計の上に脆弱な装甲が拍車をかけ、著しく破損した状態で発見されることがほとんどであるため、発掘業者からは“ハズレ”呼ばわりされている。
    大型であるCクラスの強化外骨格には緩衝剤を搭載する余裕があり、最終的に、その技術開発はCクラスを主軸に進められることとなった。

    結果、最先端の耐衝撃技術は常に大型の物に搭載され、小型のAクラスにはほとんど搭載されなくなった。
    Aクラスに耐衝撃技術を搭載する必要性は正直な所あまりなく、需要もあまりなかった。
    脚部装着型の強化外骨格でさえ、その機構は重量を増やすだけの不要な技術であると拒まれ続け、遂には搭載されなかった。
    何故なら、小型な物になるにつれてより高い耐衝撃技術が求められ、それが実現した機体は費用面と技術面から考えて量産には向いていないからだ。

    特別な機体。
    例えば、宗教色の強い“レリジョン・シリーズ”。
    例えば、各国の政府が監修、開発した“ガバメント・シリーズ”。
    そして、単一の目的に特化して設計された“コンセプト・シリーズ”。

    これらのほぼ全ての強化外骨格が、極めて高い耐衝撃機構を備えていた。
    無論、量産型とはいっても“ジョン・ドゥ”や“ソルダット”のような代表的な棺桶は、上記の強化外骨格ほどではないにしても高い耐衝撃力を持っている。
    軽量化と小型化を目的に設計されたAクラスの棺桶でも、“名持ち”と呼ばれる類の棺桶であれば、耐衝撃能力は非常に高い。
    ――高所からであっても、車両の上に着地することが出来れば、Aクラスの棺桶でも無傷で済むことがある。

    ノハ<、:::|::,》「……いっ……ててて」

    瓦礫と死体、そして車両が高く積み上がって作り出した頂で声を上げたのは、赤茶色の髪を持つ女性。
    女性の名は、ヒート・オロラ・レッドウィング。
    “レオン”の名で恐れられた元殺し屋で、“レオン”の名を持つコンセプト・シリーズの棺桶を操る女性でもある。
    一千フィートの高さから一台でサラリーマンの平均年収の三倍以上はする高級車の上に足から着地し、事なきを得ることに成功した。

    水色の点となって遥か頭上に見える空以外、その場に光と呼べるものはなかった。

    ζ(゚ー゚*ζ「怪我は?」

    乱れた金髪を整えながら立ち上がったのは、蒼穹色の碧眼を持つ女性。
    デレシアと名乗る、一人の旅人である。
    二人はオセアンで知り合い、それから旅と修羅場を共にしている関係だ。
    互いの深いところまではまだ触れていないが、それも時間の問題だろう。

    ノハ<、 |::,》「いや、軽い打撲ぐらいだが……」

    二人の目的には、共通した部分があるのだ。
    その目的とは、一人の少年の成長を見届けること。

    ノハ<、 |::,》「バッテリー切れだ」

    小型の棺桶であるAクラスでありながら、ヒートの使うレオンはBクラスに近い設計をしている。
    高性能な小型大容量バッテリーを搭載しているとは言っても、Aクラスの大きさに収めるためにその稼働時間は短い。
    更に、レオンは両腕の兵装を使用する際に、駆動用の電力を使う。
    落下中、より安全に着地するためにデレシアは何度か杭打機を使用させ、落下速度を落とさせた。

    その為、レオンの駆動用電力が底を突き、強制的にその鎧がヒートの体から外れることとなった。

    ζ(゚ー゚*ζ「まぁ、使えなくても問題ないわ」

    そう。
    大した問題ではないのである。
    どのようにして沈みゆくニクラメンから脱し、地上に戻るかでさえ、問題ではないのだ。
    デレシアには脱出のための道のりが幾つか用意されており、問題視する必要はない。

    最重要事項は、彼女達が愛してやまない一人の少年。
    ブーンと名付けた耳付きの少年の生存と成長、そして合流こそが重要な問題だ。
    一先ずあの場から逃がすことは出来たが、その次に起こった崩落に巻き込まれていた場合、生存率は低くなる。
    もしも、ブーンが初心である生きることを選択してそれに従って行動していれば、どこかで会えるだろう。

    きっと、ブーンなら大丈夫だ。
    何せ、彼はこの長い旅の果てにようやく見出した逸材。
    ここで終わるような人間ではない。
    それだけは、絶対にありえない。

    運搬用コンテナにレオンをしまい、ヒートはそれを軽々と背負った。

    ノハ;゚⊿゚)「で、どう動く?」

    ヒートは道を失ったと思い、焦っている。
    焦る気持ちも分かるが、焦っても事態が改善の方向に進むことはない。
    まだまだ青い。

    ζ(゚ー゚*ζ「焦らないの、ヒート」

    少し硬めのヒートの髪を撫で、気を落ち着かせる。
    突然子ども扱いされたことに驚くヒートだが、デレシアは構わずに撫で続けた。
    徐々に肩から力が抜けていき、表情も自然と柔らかくなる。

    ζ(゚ー゚*ζ「落ち着いた?」

    ノハ^ー^)「……あぁ、かなり」

    ζ(゚ー゚*ζ「じゃあ、本題。
          この様子だと、海上に通じる道の全てが封鎖されているわ。
          ニクラメンの街も安全とは言えないし、船は全部潰されていると考えておきましょう。
          それでも、道に関しては心配しないでいいわ」

    ニクラメンはこれまでに何度も訪れたことがある。
    ここの街がどれだけの努力の末にここまで発展したのかも、発展の裏舞台も、何もかもを知っている。

    ζ(゚、゚*ζ「変わり者の知り合いがここの警備を担当しているんだけど、こうなっている以上、生きているかどうかは怪しいわね。
          ただ、道は一つだけあるの」

    警備員の中で最もベテランの禿頭の男、パール・ヘッド・ジャック。
    棺桶に対する愛情が尋常ではなく、デレシアがニクラメンを訪れた時に彼女の持つ知識に惹かれ、酒場で知り合った。
    彼はニクラメンと棺桶を心から愛しており、ここを訪れるたび、デレシアは彼に棺桶のことを教えた。
    同時に、彼はデレシアにニクラメンの情勢や、世界で起こっている情勢についての情報を伝え、意見を求めた。

    最後に会ったのは九年前の秋。
    棺桶持ちとしての腕前はまだまだだったが、独自のルートで手に入れた棺桶に関する書籍で、彼は更に知識を深めていた。
    棺桶の正式名称も、彼は現代的な使い方ではなくデレシアのそれに合わせていたのには、思わず笑ってしまった。
    最古参の警備責任者として彼が担当していたのは――

    ζ(゚ー゚*ζ「マリアナ・トンネルって、聞いたことはある?」

    ノハ;゚⊿゚)「あぁ、そりゃああるさ。
        ニクラメンの観光パンフにはいつだって書かれてる。
        謎多き扉ってな」

    二世紀前に使用可能となったマリアナ・トンネル。
    その目的や詳細は一切公にされず、そこへの入り口とされている一枚の巨大な鋼鉄の扉だけが話題を呼び、観光名所として知られている。
    それを口にしたヒートの表情は、どこか怪訝そうな色を浮かべていた。

    ノパ⊿゚)「前に見たことあるが、ありゃあ観光向けの偽物だろ?」

    流石、ヒートだ。
    彼女の言う通り、実際はその扉はニクラメンの外壁の一部で、マリアナ・トンネルとは逆方向に位置している。
    より詳しく言うのなら、観光向けにマリアナ・トンネルへの入り口と名付けられた別の目的を持つ扉である。

    ζ(゚ー゚*ζ「そうよ、あれは偽物。
          だから、本物のマリアナ・トンネルを使うの」

    ノハ;゚⊿゚)「本物?」

    ζ(゚ー゚*ζ「海底街第三区画の奥、海兵隊基地に入り口があるの」

    ノパ⊿゚)「じゃあ、一旦居住区に移らなきゃならねぇのか」

    二人が落ちた場所は、居住区とは反対の区画になる。
    異なる目的で作られた二つの区画を結ぶ連絡通路を通らなければ、海底街のある居住区まで進むことは出来ない。

    ζ(゚ー゚*ζ「そうね。幸い、ここは一番底だから、向こうに渡るのはそんなに難しくないわ」

    例え連絡通路を落とされたとしても、瓦礫を蹴散らした後、踏み越えればいいだけの話だ。

    ノハ;゚⊿゚)「でもよ、この暗さじゃあ道が……」

    ζ(゚ー゚*ζ「大丈夫よ」

    デレシアは断言した。
    闇に目が慣れるまでには時間がかかるだろうが、デレシアにはその必要がない。
    棺桶を背負ったヒートを抱きかかえ、デレシアは車の上から飛び降りた。

    ζ(゚ー゚*ζ「よっと」

    ノハ;゚⊿゚)「うぉ」

    あまりにも突然のことに、ヒートは声を上げて驚く。
    死体の上に着地したデレシアは、彼女をそっと地面に降ろした。

    ζ(゚ー゚*ζ「歩けるかしら?」

    デレシアに合わせて数歩進み、ヒートは足の具合を確かめた。

    ノハ;゚⊿゚)「あ、あぁ。
         だけど、あたしは乙女じゃないんだ、わざわざ抱きかかえなくても……」

    予想外のヒートの反応に、デレシアは少し悪戯心を働かせることにした。
    どのような状況であっても、何事も楽しめる余裕が必要だ。
    手ごろな所で、ヒートがそれに該当した。

    ζ(゚ー゚*ζ「あら、そうだったの?
          てっきり年相応の乙女だと思ってたわ」

    ノハ;゚⊿゚)「どこの世界にこんな乙女がいるんだよ」

    ζ(゚ー゚*ζ「ここにいるじゃない。 私の目の前に」

    ノハ;゚⊿゚)「ぉ……」

    想像以上に、ヒートは感情を素直に表に出すようだ。
    ただ、それはデレシアに心を許しているからであって、殺し屋として名を馳せていた頃にはあり得なかった反応だろう。
    この素直な少女が殺し屋になった経緯に、デレシアは少し興味を持った。

    ζ(゚ー゚*ζ「さ、行きましょう。
           時間はあまりないわ」

    未だ目が慣れていないヒートの手を取って、デレシアは死体と瓦礫を踏み越え、正しい進路を取る。
    時折躓くヒートに合わせて、デレシアはその歩調を変え、時間の浪費を最小限に抑えた。

    ノパ⊿゚)「すげぇな。
         森の中で育ったのか?」

    ζ(゚ー゚*ζ「えぇ、ビルの森と人の海の中でね」

    瓦礫を文字通り蹴散らし、デレシアは通路を確保していく。
    これまでそうしてきたのと同じ。
    旅路を阻む一切合財を退け、踏み砕く。
    ただ一つ、己の目的のためだけに。

    ノパ⊿゚)「なぁ、デレシアは旅をしてどれくらいなんだ?」

    ζ(゚ー゚*ζ「さぁ? 数えたこともないわ」

    本来の“旅”とは数える事でも記す事でもない。
    当然ながら、何かを成すために世界を歩くのなら、それは目的達成の“手段”でしかない。
    デレシアは純粋に旅をしているだけなのだ。
    旅の過程で起こる全ての出来事をデレシアは受け止め、そして記憶している。

    旅の始まりの日も。
    出会い、そして別れた多くの人々も。
    一つ残らず、デレシアは記憶している。

    ノパ⊿゚)「……この際だから訊きたいんだが、デレシア、あんた――」

    ζ(゚ー゚*ζ「――それよりも」

    訊かれる前に、デレシアはヒートの質問を遮った。
    それはまだ知る時ではないし、今は知る必要がない。
    今ヒートが知らなければならないのは、彼女達の旅を妨害する連中についてだ。

    ζ(゚ー゚*ζ「この事件の裏側にいる内藤財団について、ヒート、貴女なにか知っている?」

    ノパ⊿゚)「あ、いや、これといっては知らないな。
        あたしが旅してた時に聞いたのは、慈善事業やら途上都市への支援やらだな。
        後は色んな事業に手を出してるってことぐらいだけど。
        そういえば、新聞やラジオでよく出てたな」

    デレシアの知っている以上の情報を、ヒートは知らないようだ。
    ここまで隠匿して、その勢力を拡大する手口。
    まるで大樹が根を張るかのような、その動き。
    前回の秘密結社的な動きに比べると、随分とそれらしいものに変わっていた。

    ζ(゚、゚*ζ「今回の敵は内藤財団と言うよりも、別の組織よ」

    ノパ⊿゚)「組織?」

    ζ(゚、゚*ζ「出し惜しみしても意味がないから言うけど、組織の名前は“ティンバーランド”よ」

    ノパ⊿゚)「森林地?」

    やはり、ヒートは知らないようだ。
    それもそうだろう。
    ティンバーランドは、黄金の大樹をシンボルマークにする組織だ。
    デレシアが二度滅ぼし、今回三度目の再戦を図る愚かな組織。

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                 > `‐` l/,ィ V / 〉 〃 ,ニ孑
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                 │k_/`z_/> ,、    ,、 xへ戈!│
                | l      ̄ | f^´  ̄    !│
                ヽ`ー--、____| |      / /
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    ζ(゚、゚*ζ「クロジングで強盗がキー・ボーイとジョン・ドゥを使ってるのを見たわよね?
          あの金色の樹が、彼らのシンボルなの。 目的はね……」

    それから、デレシアはティンバーランドについてヒートに語り始めた。
    その始まり、思想、目的。
    不明なのは現在の規模で、根本的な部分は変わっていないだろうというのがデレシアの見解だった。
    ティンバーランドについて聞き終えたヒートの口から出たのは、率直な感想だった。

    ノハ;゚⊿゚)「……なぁ、そいつらは馬鹿なのか?」

    誰もがそう思い、考える答えだ。
    少なくとも、絶望的な平和主義者でもない限り。
    しかし、その絶望的な平和主義者、もしくは理想主義者達が集まって組織されたティンバーランドは、少数でもかなりの力がある。
    理想は恐怖を紛らわせ、思想が彼らを鬼にも悪魔にもする。

    ζ(゚ー゚*ζ「えぇ、骨の髄まで馬鹿よ」

    ノハ;゚⊿゚)「だが分からねぇのは、どうしてオセアンやクロジングにそいつらがいるんだ?
         そんな糞思想を広めるんなら、もっと都会の方がいいだろ」

    アメリア・ブルックリン・C・マートは対都市攻略用強化外骨格“ハート・ロッカー”を手に入れ、あわよくば“レオン”も強奪しようとしていた。
    だが、それは大々的に奪おうと思えばできた話だ。
    その方が組織の名も知れ渡り、思想も広まる。
    あえて秘密裏に行おうとした理由が、手元にある情報だけでは分からない。

    言えるのは、何かを待っている、ということだ。

    ζ(゚、゚*ζ「そうなのよ、反吐思想を広めるにはどれも手段が弱いし中途半端。
          思想を大々的に広めている気配がないから、私は少し出方を見るつもりよ。
          今すぐに叩き潰そうにも、内藤財団の本社までかなり距離があるし、本人がそこにいるとは限らない」

    旅の途中の暇潰し、もしくは、ブーンの教育の一環としてティンバーランドは潰しておきたいところだ。
    根絶やしにしなければ、デレシアとしてもあまり良い気がしない。
    これまでに二度潰し、三度向かってきたそのしぶとさは驚くに値するが、無論容赦は不要。

    ζ(゚ー゚*ζ「まぁ、遠からずその時期が来るわ」

    駐車場を通り抜け、デレシアは連絡通路前に到着した。
    扉は向こう側からの力で変形し、とても押し開きそうになかった。
    棺桶があればすぐにでも扉を破壊できるが、生憎レオンはバッテリー切れだ。

    ノパ⊿゚)「あかんな」

    ζ(゚ー゚*ζ「開くわよ」

    押して駄目なら引くだけだった。
    デレシアはノブを掴んで力任せに引っ張り、扉を蝶番ごと引き剥がした。
    壊れた扉を通路に投げ捨て、ヒートに微笑みかける。

    ζ(゚ー゚*ζ「ほらね」

    ノハ;゚⊿゚)「……えええええ」

    扉の向こうに現れたのは、太い鉄骨が横たわり、積み重なる空間だった。
    そろそろ目が慣れてきたのか、それを見たヒートがぽつりと漏らす。

    ノハ;゚⊿゚)「やっぱり駄目だ、これじゃ通れねぇよ」

    ζ(゚ー゚*ζ「大丈夫よ」

    二百フィート間隔で設置されている連絡通路は、単純な構造をしており、殆どが鉄骨で作られている。
    それが十近く積み重なっても、鳥の巣のように隙間が生まれる。
    その隙間を正しく素早く潜り抜ければ、居住区側に移動することが出来る。
    右手にデザートイーグルを持ち、もう片方の手でヒートの手を引いたまま、デレシアはその空間を突き進んだ。

    案の定、人が二人通れるだけの隙間は十分にあった。
    鉄骨が軋みを上げている以外、これといった問題はない。
    腰を屈めて進む中、軋む音に合わせてヒートは声を上げた。

    ノハ;゚⊿゚)「おおお」

    ζ(゚ー゚*ζ「大丈夫、まだ崩れないわ。
           あら」

    デザートイーグルの銃口を鉄柵に向け、二発。
    鉄柵のつなぎ目が二か所砕けた。

    ノハ;゚⊿゚)「うおおおい!!
        撃つならそう言ってくれよ!!
        耳と心臓に悪い」

    ζ(゚ー゚*ζ「撃ったわよ」

    ノハ;゚⊿゚)「……」

    壊した鉄柵を蹴って向こう側に曲げ、人が通れるようにする。
    デレシアが先に出て、後からヒートが外に出る。
    やや遅れて、彼女の棺桶がずるりと出た。

    ζ(゚ー゚*ζ「ね? 大丈夫だったでしょ?」

    そこは、積み重なった橋の外側の世界。
    柔らかな光が差し込み、瓦礫の山を見上げられる幻想的な場所だ。
    遥か上に見える青空が、改めてこの場所の深さを物語る。

    ノパー゚)「……あぁ」

    ζ(゚ー゚*ζ「さ、行きましょう」

    二人はそのまま、居住区の壁まで歩く。
    連絡用の扉は、どうにか原形を留めていた。

    ζ(゚ー゚*ζ「撃つわよ」

    ノパ⊿゚)「よしこい!!」

    水平二連式のソウド・オフ・ショットガンが、火を噴いた。
    扉のノブが吹き飛び、そこに大きな穴が開いた。
    加えてデレシアの後ろ回し蹴りによって、扉は勢いよく吹き飛んだ。
    施錠されていた場合を考えたのだが、この程度の強度なら不要だったか。

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    ‥…━━August 3rd PM 14:30━━…‥
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    ζ(゚ー゚*ζ「もう大丈夫?」

    ノパー゚)「大分目も慣れたし、耳も心臓も準備が出来てるよ」

    ζ(^ー^*ζ「そう、それはよかった。
           次は鼻が利かなくならないように気を付けないとね」

    笑顔で冗談を交わし、二人は扉の向こうに進んだ。

    ζ(゚ー゚*ζ「さぁ、ブーンちゃんを探しましょう。
           いい子にしてたら、アイスでも買ってあげましょうか」

    ノパー゚)「そりゃあいいな。
        果肉入りのオレンジアイスなんかいいんじゃないか?」

    ζ(^ー^*ζ「えぇ、そうね。
           あの子、オレンジが好きだからきっと喜ぶわ」

    ノハ;゚⊿゚)「あ! そういえば、リンゴも好きだったよな」

    リンゴと云うよりも、歯応えのある物全般が好きなのだろう。
    耳付きと呼ばれる彼らの歯は犬のそれよりも遥かに固く、常識外れに力強い。
    子供とは言え、人間の腕を骨ごと噛み千切れる力がブーンにはあるのだ。
    柔らかい食べ物ばかりでは物足りないのだ。

    ζ(゚ー^*ζ「じゃあ、ダブルにしてあげましょう」

    二段アイスを前に浮かべるブーンの無邪気な笑顔を想像して、デレシアは笑みを抑えられなかった。
    逸れてしまった愛しい存在との再会を待ち切れず、二人は同時に走り出した。

    * * *
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    ‥…━━August 3rd PM 14:20━━…‥
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    肩を寄せ合って言葉遊びをする二人の少年と少女。
    二人は、ニクラメン海底街第一区画商店街にある果物専門店の前に座り込んでいた。
    商店街と同様、少し離れた位置にある住宅街にも人気がまるでない。
    だから、いつもは好奇と軽蔑の目で見られる二人が感じる視線は一つもなかった。

    (∪´ω`)「おれんじじゅーす」

    ミセ*'ー`)リ「スイカ。 ウォーターメロン、なんて呼び方もあるんだよ。
          この季節の食べ物で、甘くて美味しいんだ」

    (∪´ω`)゛「すいか……う、うぉーたあーめろん。
           か、かぼちゃ」

    垂れた犬の耳と丸まった犬の尻尾を持つ少年。
    世に言う耳付きの少年の名は、ブーンという。
    人間離れした力と感覚器官を持つ彼が背負うのは、彼とほぼ同じ背丈の少女。
    ただし、歳はひと回りほど離れている。

    四肢はなく、また、その瞼は深く閉じられていた。
    少女の名は、ミセリ。
    二人は数奇な出会いを果たし、つい三分ほど前に友人になったばかりの関係だった。

    ミセ*'ー`)リ「八百屋」

    (∪´ω`)「やおや?」

    ミセ*'ー`)リ「果物屋さんと違って、果物以外に野菜も売っているお店のこと」

    (∪´ω`)゛「やお……や……
           や、や、……やさい」

    その時、ブーンの腹から小さく空腹を訴える音が鳴った。
    頬を赤らめ、ブーンは自らの腹を軽く押さえる。

    (*∪´ω`)「……お」

    ミセ*'ー`)リ「まだ、橋は空いてないよね?」

    (∪´ω`)゛「お」

    ミセ*'ー`)リ「どうしよっか、ブーン?」

    二人は、天井と地面を繋ぐ橋と呼ばれる通路が空くのを待っていたが、一向にその気配がない。
    ミセリは、ニクラメンのことについて詳しかった。
    自分達が今いる場所が海底街と呼ばれる、ニクラメンの居住区――人の住んでいる場所という意味だと教わった――だということ。
    橋と呼ばれる通路が海上に通じる出口であるということも、ミセリは知っていた。

    (∪´ω`)「もうすこし……しりとり……しよう?」

    ミセ*'ー`)リ「でも、お腹減ったんだよね?」

    (∪´ω`)「お……」

    その通りだった。
    ペニサスの死後、ブーンはあまり食事のことを覚えていない。
    とりあえず噛み、とりあえず飲んだぐらいだ。
    ミセリと一緒に食べたピンクグレープフルーツから、今日の食事を思い出せるほどだった。

    しかし、試食品はもう全て平らげてしまった。
    それに金は持っていない。
    ミセリも持っていないそうだ。
    ピンクグレープフルーツで喉も潤い、腹も若干膨れたはずなのだが、如何せん、この小さな体にはまだまだ食物が必要だった。

    とりあえず、何もしていないと腹が減っていることを思い出してしまうので、しりとりを再開することにした。

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    ‥…━━August 3rd PM 14:34━━…‥
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    最初に気付いたのは、ブーンだった。
    硬く細い何かがアスファルトを叩く音。
    確か、ハイヒールと呼ばれる――ヒートが教えてくれた――靴の音だと、ブーンは考えた。
    その跫音は商店街の奥から近づいてきていて、音の間隔と重さから、何かを背負った割と小柄な女性だということが分かった。

    髪は短めで、服は緩め。
    年齢は若い。
    息遣いは荒く、やや疲れている様子だ。
    それらは全て、ブーンが聞き取った音の情報が組み合わさって作り出した仮の姿。

    これは、ブーンの持つ一つの能力だった。
    音、匂い、その他五感が感じ取る全ての情報が独りでに繋がり、おぼろげな白黒の形を成すことがある。
    偶発的に起こるこの現象は、デレシアやヒートと一緒にいる時には起こったことはない。
    オセアンの“持ち主”に死ぬほど暴力を振るわれた時以来だ。

    ミセ*'ー`)リ「パイナップル。
          たぶん、今ブーンの後ろにあるちょっととげとげした果物のこと」

    (∪´ω`)「……? だれか、きます?」

    ブーンの言葉で次に気付いたのはミセリだった。
    跫音の方向に見えない目を向け、首を傾げる。

    「……あらぁ?
    逃げずにこんなところでたむろするなんて、変わった子達ねぇ」

    建物の間から姿を現したのは、栗色の髪をした若い女性。
    赤黒い斑模様の白いドレスという格好で、その背中には黒く、大きな物体を背負っていた。

    从'ー'从「こんにちは、こんなところで何してるのかしらぁ?」

    その鳶色の瞳を見た瞬間、ブーンは思わずミセリの体に抱きついていた。
    何か、嫌な気配が、嫌な匂いがした気がしたのだ。

    ;(;∪´ω`);

    从'ー'从「あらあらぁ。 私、そんなに怖いかしらぁ?
         あぁ、そうか、君、耳付きだ――」

    (∪;ω;)

    从'-'从「……っ!!」

    彼女から漂う匂いの正体は死臭と、濃厚な血の匂い。
    その匂いは血を流す死体のすぐ傍にいたことを、何よりも物語っている。
    ドレスの柄も、それが赤黒く酸化した血痕であることは一目瞭然だ。
    ブーンが僅かに涙を浮かべた途端、その女性の様子が一変した。

    从'ー'从「……いい」

    (∪;ω;)「お?」

    从'ー'从「君、すごくいいねぇ。
         その顔、私すごく気に入ったわぁ。
         ね、何か食べたいものあるぅ?」

    何を突然言い出したのか、ブーンには理解が追いつかなかった。
    それは自分が愚かだからなのか、それとも彼女の言っていることが意味不明なのか。
    それを判断できるほど、ブーンはまだ成長していなかった。
    だが、一つ言えることがある。

    何故かは分からないが、この女性はブーンとミセリに対して、全く敵意を抱いていないということだ。

    从'ー'从「お腹減ってない?
         ねぇ、ねぇ、ねぇ?」

    (;∪´ω`)「お……」

    どうして、この女性はデレシアやヒート、ペニサスやギコと同じように、敵意とは異なる感情をこちらに向けてくるのだろうか。
    女性はブーンの返事も待たずに、百ドル金貨を店の中に放り投げ、店頭に置いてあったオレンジを手に取り、それを剥き始めた。

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    从'ー'从「オレンジ好きぃ?
         こうやって、こうして食べると面白いよぉ」

    剥いた一房の果肉を、女性は頭上高くに放り投げた。
    それはアーチ状のアーケード近くまで上昇した後、一直線に落下する。
    当然のことだ。
    では、それをどうするのだろうか?

    突然オレンジを一房放り投げて、それから――

    从'ー'从「あむぅっ」

    ――口で、見事にそれを捕らえた。

    (*∪´ω`)「お!」

    ミセ*'ー`)リ「ブーン、どうしたの?」

    (*∪´ω`)「おれんじを……ぽーんって、して、たべた!」

    感動をそのままミセリに伝えるブーンに目掛けて、その女性は何も言わずに、素早く果肉を投げつけた。
    その速度は時速百二十マイルにも迫るもので、普通の人間なら、果肉を頬で受け止めていただろう。
    だが、ブーンは普通ではない。
    少なくとも、世間一般で言うところの普通の人間ではない。

    彼は、従来の人類を凌駕する運動神経と感覚器官を持つ人間なのだ。

    (*∪´ω`)゛「んむ」

    一瞬の出来事だったが、座ったままの状態でも、ブーンには普段通りの行動でそれを受けることが出来た。
    もっと言葉を短絡的に言い換えるなら、有り余る余裕と共に口で捕らえられた。

    从'ー'从「すごぉい! 君、すごいねぇ!」

    素直な感想の言葉。
    何か難しいことを考えた末の言葉でも、裏のある言葉でもない。
    死と血の匂いをさせる女性は、何がしたいのだろうか。

    从'ー'从「そんなすごい君には、このオレンジをあげよう。
         そっちの女の子と仲良く分けるんだよぉ」

    軽く投げ渡された真新しいオレンジを受け取ったブーンは、女性の目的がまるで分からなかった。
    金ではなく、命でもない。
    では、何をブーンから得ようとしているのか。

    (∪´ω`)「あ、ありがとう……ございます……
          あの……えと……」

    从'ー'从「目的が気になるのぉ?
         でもねぇ、そんなの、私も知らないのぉ」

    何を言っているのか分からない。
    自分の行動の理由を分かっていないことがあるのだろうか。
    いや、きっとあるのだろう。
    ブーンも覚えがある。

    だが、この女性の年齢でそのようなことがあるとは、少し驚きだ。

    从'ー'从「君、可愛いからねぇ。
         それに、とっても面白そうな匂いがするから、お姉さん気に入っちゃったのかもねぇ。
         あぁ、そうそう。
         ここにいない方がいいわよぉ」

    女性の言葉を肯定するように、次の瞬間、爆音と共に商店街中のガラスが砕け散った。

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    ‥…━━August 3rd PM 14:35━━…‥
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    偽物の空――天井――に繋がっていた、大木のような柱がゆっくりと傾ぎ、倒れる。
    まるで夢。
    まるで悪夢。
    まるで白昼夢のような、非現実的な光景。

    更に、ブーンの耳には届いてしまっていた。
    落ち行く人の叫び声が。
    死に行く人の悲鳴が。
    絶望した人の泣き声が。

    ;(;∪´ω`);「お……!」

    急いでこの場から逃げなければ。
    だが、どこへ?
    道も分からず、場所も分からない。
    唯一の避難経路と思われた柱は崩れ、失われた。

    どこへ逃げればいいのか、ブーンには分からない。

    从'ー'从「ねぇ? 言ったでしょう?
         ちょっと待っててねぇ」

    あの光景を目の当たりにしても、女性は全く驚いた様子を見せない。
    ブーンに寄り添って離れないミセリは、先ほどからこんなにも怯えているというのに。
    女性は店の片隅に駐車してあった白い軽トラックの荷台に背負っていた黒い物を乗せてから乗り込み、エンジンをかけた。

    从'ー'从「後ろに乗るかしらぁ?
         一応、安全な場所までは連れて行ってあげるけど、そこから先は自分でどうにかしてねぇ」

    これを逃せば、ブーンは自力で安全な場所と正しい道を探さなければならない。
    それだけは、直ぐに分かった。
    だからブーンは、もらったばかりのオレンジを懐にしまって、ミセリを背負った。

    (;∪´ω`)「……お」

    ミセ*'ー`)リ「……大丈夫、ブーンが一緒だもん」

    言葉の通り、ミセリは怯えている様子がない。
    そこまでブーンのことを信用してくれているのか、それとも彼女が持つ強さ故なのか。
    それはまだ、ブーンには分からない。
    今は進むしかないことだけは、ハッキリと分かる。

    从'ー'从「ほらぁ、急がないとぉ」

    続いて、少し離れた場所からも爆音が響く。
    地面が細かく振動し、アーケードが大きく揺れる。
    ブーンは急いで軽トラックの荷台に乗り込み、腰を下ろした。
    抱えるようにしてミセリを胸に抱くと、バックミラー越しにそれを見ていた女性が声を出してアクセルを踏んだ。

    从'ー'从「それじゃあ、出発ぅ!!」

    トラックが勢いよく商店街から飛び出し、ブーンは改めてニクラメン海底街の現状を見ることになる。
    小さなひびが走る、青空が描かれた天井。
    巻き上がる土煙の中、朽ち果てた倒木のように横たわる巨大な柱が二本。
    悲鳴とサイレンが響き渡り、遠くからは、銃声のようなものが微かに聞こえていた。

    風を切って走るトラックの荷台から見る景色に、ブーンは胸が痛んだ。
    どうしてか分からない。
    この街に思い入れがあるわけでも、思い出があるわけでもない。
    それでも、耳に届く破滅の音は彼の胸を抉るように痛めつける。

    そして、トラックが二本目の柱の残骸の隣を通り過ぎた時、最後の一本の柱も崩れ落ちた。

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                         y(、,,'''ノ(、/ \~~~``ー--ゥ'~ ,.;;-‐''~~ |, :-|   |
                            ミ彡 /::::::::`>  ,.-''~.‐'~~-‐''~~.| .|  |    |
    工___                       ミミ|彡ム-''~~ーv'~ ~:::::;;;::   i-‐i |~~|  |   |
    \===|                 ミ-‐''~:::::_,.ィ''~~|~  ~~`|~   |T | |~I.|  |   |
      \==|======i__          ミ>,-|~~`i'~I |   |     |   August 3rd PM 14:50
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    なだらかな下り坂を猛スピードで走っていたトラックは、残された最後の柱の脇を通り過ぎ、その先に向かった。
    舞い上がる粉塵に車が突っ込む前に、ブーンは自分とミセリをローブで覆った。
    細かな瓦礫の破片がぱらぱらと、雨のように降り注ぐ中、トラックは速度を緩めることなく、より一層加速した。
    通り過ぎる時、幾つもの消え行く声がブーンの耳に届いていた。

    先ほどまで聞こえていた爆音や銃声らしきものは、その頃にはもう、聞こえていなかった。
    下り坂を終え、平地に変わったのを感じてから、ブーンはローブから顔を出した。
    黒煙と瓦礫の転がり、地面は大きく穿たれ、ビルの壁も一部が崩落していた。
    至る所に弾痕が残されていて、激しい戦闘――銃を使った戦闘――が行われていた事を示している。

    先ほどの音は聞き間違いではなかったのだ。
    ここで殺し合いがあったのだと、ブーンは確信した。
    それからトラックは、目の前に広がる巨大な施設の敷地に入った。
    そこには、夥しい数の棺桶が、道端の石ころのように無造作に転がっていた。

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    上半身がない物や、顔がない物まで、様々だ。
    しかしその割には血があまり流れていないのが、不思議だった。
    今、自分とミセリが来ているのは、殺し合いがあった現場だ。
    ここは控えめに考えても、安全とは程遠い場所のはずだ。

    何故ここに――

    (;∪´ω`)「……」

    ――騙されたのだろうか。
    馬鹿正直についてきたばかりに、ミセリを危険に晒してしまったのだろうか。
    それは果たして、デレシアやヒート、ペニサスに胸を張って自慢できる行動だったのだろうか。
    自分の背中を褒めてくれた友達に対する行動だったのだろうか。

    ぐるぐると胸の中で後悔に近い考えが巡る中、トラックは敷地の奥に停まった。

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
    ‥…━━August 3rd PM 15:03━━…‥
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

    从'ー'从「はい、ここで降りてぇ」

    ;(;∪´ω`);「お……」

    从'ー'从「あぁ、あの死体なら気にしないでぇ。
         ほらぁ、早く降りて早く逃げないとぉ」

    ミセリには見せられない。
    ここが地獄に近い場所だということを知られてはいけない。
    自分は、取り返しのつかないことをしてしまったのかもしれないと云う考えが、ブーンの体をその場に止まらせた。

    从'ー'从「あらぁ、怖いのぉ?
         しかたないわねぇ」

    荷台に乗り込み、女性はブーンとミセリをまとめて抱え上げた。

    (∪;ω;)「お……」

    体は動かなかった。
    抵抗することが出来なかった。
    シィに羽交い絞めにされた時は動けたのに。
    まるで動けない。

    ミセリを助けることが出来ない。
    その悔しさに、ブーンは涙を流した。

    从'ー'从「別にとって食べるわけじゃないのにぃ」

    そうは言っても、やはり恐ろしい物は恐ろしいのだ。
    ブーンに出来るのは、ミセリが落ちないように抱きかかえ続けること。
    されるがまま、二人はトラックの荷台から地面に降ろされた。

    从'ー'从「はい、じゃあ後は、頑張ってねぇ」

    (∪;ω;)「……お」

    从'ー'从「別に後ろから襲ったりしないわよぉ」

    動くなら、今しかない。
    そう思ったブーンは、ミセリを一旦地面に降ろしから背負い直す。
    彼女は、不安げな様子も怯えた様子も見せていない。

    ;(;∪´ω`);「あ、ありが……とう……ございまし……た」

    从'ー'从「どういたしましてぇ。
         じゃあ、また――」

    ( ゚∋゚)「何をしている、“厄病女神”?」

    背後からかけられたその声は、野太く、巨大なエンジン様な重々しい響きをしていた。
    感情はなく、冷徹な、一つの発声装置として喋っているだけの機械のような声。
    振り返ると、隆々しい肉体を持つ大男が立っていた。
    身を包むグレーの迷彩服はところどころが汗ばんでおり、先ほどまで激しく動き回っていたことを示している。

    ここで動き回るということは、それが意味するのは一つ。
    殺しまわっていた、ということ。

    ( ゚∋゚)「生存者は一人も残さないと、同志ツンディエレから言われたのを忘れたのか?」

    从'-'从「うるっさいなぁ。
         いいじゃない、子供の一人や二人ぐらい」

    ( ゚∋゚)「我々の大義の前には年齢など無意味だ。
        よもや、そのような劣等種ごときに情を移したのではないだろうな?」

    从'-'从「べっつにぃ。 ただ、わざわざ殺さなくてもいいんじゃないのって思っただけよぉ?」

    ( ゚∋゚)「手間を惜しむな」

    男は虫を手で追い払うように、その丸太のように太い足でブーンの腹を蹴り上げた。
    小さな体が、冗談のように宙を舞う。
    人生最大の痛みと衝撃に、ブーンは何もできなかった。
    破裂した内臓から逆流した血が口から吐き出され、背負ったミセリを庇うことさえもできず、地面に顔から叩きつけられた。

    懐から、もらったオレンジが転がり落ちた。
    視界の端で、男がそれを踏み潰したのが見えた。

    (∪;ω;)「けうっ……!?」

    呼吸はおろか、息をしようと考えることさえもできない。
    思考を支配するのは、痛み、痛み、痛み。
    そして、ミセリの安否。

    (∪;ω;)「けほっ……!!」

    再び吐血。
    赤黒い血が、目の前の地面に広がる。
    口いっぱいに広がる血の味。
    鼻腔の奥底まで広がる血の匂い。

    (∪;ω;)「お……」

    防衛本能に従って体を丸めるよりも先に、ブーンはミセリのために動いた。
    受け身も何もできないミセリは無事なのか。
    自分の怪我よりも、そちらの方が大切だった。

    (∪;ω;)「ミセリ……だい……じょうぶ?」

    ミセ;'-`)リ「う、うん……」

    (∪;ω;)「よかった……」

    本当によかった。
    見たところ、深い傷はなさそうだ。

    ( ゚∋゚)「劣等種の癖にしぶといな」

    上から聞こえた声。
    ミセリに覆いかぶさり、ブーンは覚悟を決めた。
    更なる痛みに対する、更なる覚悟を。

    ( ゚∋゚)「ふん!」

    鉄で殴られるような衝撃と痛みが、背中を襲った。
    覚悟を上回る痛み。
    覚悟を上回る衝撃。

    (∪;ω;)「あぐっ?!」

    下にいるミセリが押し潰されないように、ブーンは己の四肢で体を支え、衝撃を受け止めた。

    ミセ;'-`)リ「ブーン?!」

    (∪;ω;)「お……」

    ( ゚∋゚)「人間の真似をするな、駄犬が!!」

    再び、鉄塊に似た強烈な一撃が浴びせられる。
    続けて、二度、三度と同じ攻撃をその背で受け止める。

    (∪;ω;)「ひぎっ、あぎっ……!!」

    ミセ;'-`)リ「ねぇ、ブーン、どうしたの?!」

    (∪;ω;)「えぅ……」

    ぼろぼろと溢れ出る大粒の涙が、ミセリの顔に落ちる。
    口の端に、ブーンの口から滴り落ちた血が付着していた。
    この痛みを全て自分が受け止めれば、ミセリが傷つかなくて済むのなら。
    この痛みでミセリを守れるのなら。

    ならば、ブーンは “この程度の男” の “この程度の攻撃” で倒れてやるわけにはいかなかった。
    倒れたら、デレシアはもちろん、ヒートやペニサスにも申し訳がない。
    自分は、非力なまま一生を終えたくはない。
    成長した証を胸に、生きたいのだ。

    (∪;ω;)「ミセリ、こんなの……こんなの……
          こんなの……ぜんぜんいたくないから!!」

    ( ゚∋゚)「ちいっ!!」

    下から掬い上げるような、強烈な蹴りがブーンの腹部を容赦なく襲った。
    一瞬だけ体が宙に浮き上がり、大量の血が込み上げる。
    耐えようとするも、体が言うことを聞かない。
    吐き出した血がミセリの服を赤に染めたが、悲鳴は上げなかった。

    ( ゚∋゚)「調子に乗るな!!」

    次の一撃を、この体は耐えられるか。
    耐えなければならないのだが、ブーンには自信がない。
    こんな経験、人生で初めてだからだ。
    誰かのために身を挺するなど、考えたこともなかった。

    しかし、予期した一撃は、いつまで経ってもブーンを襲わない。

    从'-'从「……ったく、何熱くなっちゃってるのぉ?」

    ( ゚∋゚)「何故邪魔をする」

    从'-'从「邪魔するつもりはないけど、別に蹴り殺す必要はないでしょ?
         銃でいいじゃない。
         時間、ないんじゃないのぉ」

    ( ゚∋゚)「……それもそうだな」

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
              |  !      `ヽ
            r /      ヽ  ヽ===iiiiiiii=、_, -‐' ¨´
        、    /´ \     \ \_j--==ir。-tb(
         ` ー     ⌒ー、ヽ ヽ__j´゙~))。キ:::::キr''´ ヽ
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

    ゆっくりと首だけを動かしたブーンが見たのは、女性が男に筒の付いた黒い拳銃を手渡し、それが自分に向けられる光景。
    先ほどの女性が大男をブーンから少しだけ遠ざけさせているが、距離は十分近い。
    銃口が自分の顔に向けられているのが認識できるほどの至近距離。
    太い指は銃爪にかけられ、それがゆっくりと引き絞られる。

    ( ゚∋゚)「今、その痛みと苦しみから解放してやる」

    全ては一瞬の事だった。
    刹那の状況を細かく理解し、観察できた。
    これまで味わったことのない、不思議な感覚だった。
    発砲炎が銃口から吹き出す瞬間まで、子細に見て取れる。

    炎と共に吹き出したのは、銅色の弾頭。
    ほぼ同時に聞こえる、小さな爆発のような銃声。
    硝煙を後に引き連れて飛来する銃弾。
    薬莢が回転しながら宙を舞う。

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
    ‥…━━August 3rd PM 15:09━━…‥
                ィ:7 イ壬ソィ=-ミ、_          ヾ:.、: : .、:}、
                /i ! ゙弋辷彡ニ=ミ、`ヽ         `ヽ:、 :i:l:、
                /ο{ 、..:::ヾ.煙乂大ヾ.ヾ:.゙.          ヾ:、. ゙:.、.
           /゚    、:::、::ー-:::7´  ヾ:.ハ:.i:}          j } .}:i:!
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

    ゆっくりと、それまで以上に速度を落として世界が進む。
    風は張り付くような感触に変わり、音は耳鳴りのように止まらない。
    その世界の中を進む銃弾は、狙い通りブーンの顔へと迫り――

    (∪ ω )

    ――銃弾を正面から食らったブーンの体が少し浮かび、そのままミセリの体の上に力なく倒れこんだ。
    倒れたブーンの背中に向かって、三発の銃弾が浴びせられる。
    着弾の度に、彼の四肢が痙攣のように小さく動いた。
    その四肢はもう、先ほどのように攻撃を受け止め、体を支えることはない。

    どろりとしたブーンの血が、ミセリの傍らに血溜まりを作り始めていた。

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    Ammo→Re!!のようです::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヾ
          丿:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::}
         {:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ノ
       _廴::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ノ
    ( ̄:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::`ー- 、
    ..`ー、::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::と_
       ゝ ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: Ammo for Relieve!!編
       {.:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::第八章【mature-成長-】
        ` ̄ ̄ ¨´ ゚゜  ̄ 廴:::::::::::::::::::::::::::::ー'''''':::::::::::::::::::::::: ̄::::::::::::::::::::::To be continued...
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