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第七章【predators-捕食者達-】

  1. 名前: 歯車の都香 2017/04/15(土) 19:36:17
    第七章【predators-捕食者達-】

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    During journey, the map is unnecessary.
    旅に地図は不要。

    Only necessary thing is the stance to progress.
    必要なのは、前に進む姿勢だけである。

                                                  Nameless one
                                                    名 無 し

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    灰色の世界に雪のように降り注ぐ、細かなコンクリートの粉塵。
    それは栄光と成功の名残。
    今は、壊滅と崩壊の象徴だ。
    広大な空間に作られた、仄暗く、そして虚無に満ちた場所。

    天井と呼べるものは遥か頭上にあり、地面と呼べるものは遥か眼下の暗闇。
    二千フィートの差があるその空間には、二百フィート毎に一本の連絡通路が通っていた。
    既に爆発の衝撃で崩れかけている通路もある。
    本来は従業員だけが使用する場所だけに、手摺は簡素な鋼鉄製でリノリウムの床は所々が黒ずみ、細かな傷が刻み込まれている。

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    その汚れは長年の間、掃除と使用を繰り返して重ねられた一つの層だ。
    声もなく、眼もなく、耳もなく。
    汚れと傷はニクラメンの歴史の一部として今日まで存在していた証。
    これから一日と経たずにその歴史に幕が下ろされるとしても、汚れたちは物静かに全てを見届け、受け入れる。

    不安定な雰囲気が漂う空間は、常人の平衡感覚すら狂わせるほど。
    それもそのはず。
    この空間は、これから数十時間の内に海底に沈み、栄枯盛衰の象徴として歴史の一部となる予定なのだから。
    まともな思考力を持つ生物なら、そこに長いしようとは思わない。

    所詮は心のない物体。
    灌漑や悲観など、彼らには存在しない。
    しかし、矜持と呼べるものはあった。
    長年の歴史に裏打ちされた、確かな矜持が。

    それは、この日まで壊れることなく、不具合を起こすことなく在り続けたという矜持だ。
    誇らずとも、それが彼らの矜持であることは揺るがない。
    物静かな道具。
    彼らは今、最後の仕事を前にしてもこれまでと一切変わりなく、そこに在った。

    最期の時を待つ連絡通路は、長さ三十ヤード幅六フィート。
    暗闇の中にしんしんと降るのは、雪ではなく細かな粒子。
    粒子が降り積もる音以外に聞こえるのは、そこにいる人間の呼吸音と、小さな跫音。
    そして、継続して鳴り響く、遥か地の底から響いてくる軋んだ鋼鉄の唸り声と風の音。

    今、そこを歩む者がいる。
    躊躇なく歩む者が、一人だけいる。
    小さな歩みでも、しっかりと前に進む者達がいる。
    歩むのは一人の少年。

    進むのは、一人の少年と一人の少女。

    (∪´ω`)

    垂れた犬の耳と、丸まった犬の尻尾を持つ少年。
    垂れ目の奥に伺える深海色の瞳の色は、この空間が存在すると場所と同じ色。
    小さな体が秘めた力と才能は、どちらも並の人間よりも遥かに優れていた。
    耳付きの少年の名前は、ブーンという。

    ブーンは、自分の倍近くの歳の少女を背負いながら、連絡通路を歩む。
    恐れはない。
    虞も、ない。
    それは、理想を越えた憧れを追い求める少年の意志が、眼前の恐怖を打破したからだ。

    究極的な憧れは、彼に人生と前に進む力を与えた。
    憧れを前にしては、現実的な恐怖など、臆するに値しないのだ。
    ブーンの背には、異形の――人間としてのバランスが大きく崩れた体型の――少女がいた。

    ミセ*'ー`)リ

    背負われているのは盲目の少女、ミセリ。
    四肢のない彼女の背丈はブーンとほぼ同じだが、彼がいなくては歩くことも見ることも出来ない。
    しかし彼女がブーンの足手纏いになることは、絶対にない。
    何故なら。

    何故なら、ミセリを背負って進んでいるのは、ブーンが自分の意志で選択したこと。
    その選択が間違っているとは思わなかったし、後悔もない。
    つまり、ブーンにとって今その小さな背中が背負っているのは、彼の決意の表れ。
    それが揺るがない限り、ミセリは決して彼の足手纏いにはならない。

    何より、ブーンは人を足手纏いと思うことを知らなかった。
    奴隷として生きてきた彼にとって、足手纏いと云う概念はないのだ。
    彼にとってのミセリは、自分のことを虐めたり蔑んだりしない少女。
    それでいて、多くの知識を与えてくれる存在。

    (;∪´ω`)「お」

    一歩毎に、不安定な形に崩れかけていた足場が揺れる。
    それは微動。
    背中越しに感じるミセリの心臓の鼓動よりも遥かに小さな、小さな振動だ。
    その動きを、ブーンの敏感な体は逐一把握していた。

    耳は亀裂が走る微細な音を拾い、ブーツの底が二人分の体重をかけて床を踏みしめ、耳元で規則正しく甘い香りを漂わせる呼吸音を感じ取る。
    鼻は潮の香りを嗅ぎ分け、死臭と血潮が流れ出す新鮮な香り、甘く柔らかな少女の体臭を甘受する。

    ミセ*'ー`)リ「お?」

    ブーンの口癖を、ミセリが真似する。
    悪意のない、可愛らしい鈴が転がるような声。

    (∪´ω`)「お?」

    また、口癖が出た。
    困った時や、感情に動かされて何かを喋ろうとする時に出る、口癖。
    それが口癖と呼ばれるものであることは、ミセリが教えてくれた。
    彼女は、自分が教えたがり屋であることも同時に教え、ブーンに新たな知識を与えた。

    生涯最初の恩師、ペニサス・ノースフェイス。
    彼女が教えきれなかったことを、ミセリは教えてくれる。
    言葉の意味、単語の持つ歴史、世界に広がる常識と呼ばれる掟。
    背中越しの会話だけで、ブーンの知識は深まり、知恵は増えた。

    それまで続いていた崩壊の跫音が、その音色を変える。
    亀裂の走る音が速まる。
    徐々に、徐々に。
    ブーンの後ろから、音が追いかけるように走る。

    原因は多くの音が混然一体となっているために分からないが、何度も連続して響く爆発音を認識することは出来た。
    幾重にも反響するその音は、遥か上から響き、それが空間全体を震わせている。
    自重を支えきれなくなった小指の爪ほどのコンクリートが、足場にしている通路から眼下の暗闇に落ちた音が聞こえた。
    小さな音だが、確かに意味するものがある。

    それは崩壊。
    それは破滅。
    それは倒壊の合図。
    刹那、ブーンは思考せずに駆けた。

    ――耳付き、と呼ばれる人種は従来の人類と比べて、あらゆる能力が秀でている。
    例えば心肺機能。
    例えば五感の感度。
    例えば、その身体機能。

    ワークブーツは彼の脚力を最大限に発揮し、連絡通路に最後の仕事を与えた。
    崩落する前に、確かな足場として彼の力を受け止めるという、大義を。

    (;∪´ω`)「お!」

    半瞬の内にブーンは最高速に達し、一瞬の内にその体を安全な場所にまで運ぶ。
    一秒後、彼の背後で全ての連絡通路が連鎖的に崩落を始めた。
    道は、前にだけ続いていた。
    脚は、ひとりでに動いていた。

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    Ammo→Re!!のようです
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     .′  .‐   ,i´  、.|   .゙,,l゙  「ひ゜    .,/     ゙l.-
    : ` _,,,,,,--,_ .゙l、 'ソ′      ″    .〈`   ., ,‐
    : ,,r'"   / `ヽ..ヽr'′   .、ー''"゙'ヘ、,、  ,、,y ゙l  .,l「 .,i" ,、
                                               Ammo for Relieve!!編
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    男は人混みの中、鋭い眼光を周囲に向け、事態の把握に努めていた。
    つい五分前までは恐慌状態にあった群衆は、今は落ち着きを取り戻し、ニクラメンの警備員の指示に従って緊急避難通路を歩いている。
    幅の広い通路を歩む彼らの行進は、決して速くはない。
    混乱で負傷した人間や老人がいることを考慮し、更には混乱を煽らないための策だ。

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    ,..!..j_i_l・,‐‐‐_o‐‐‐‐‐`-,--'‐o,_,゚--------‐|_i
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    ニクラメンの警備員の質は極めて高く、誠実なことで知られていた。
    先頭集団が走ることを引き留めつつ、全体の速度を調節する五人の警備員。
    タキシード姿の彼らが持つのは、フォアグリップ付きUMP短機関銃のカービンモデルだ。
    安価ながらもその性能と安定性は群を抜き、水の近くで行動することの多い彼らには最適な銃と言える。

    銃の力を知る人間は、それに逆らえるだけの力がない限り、それを持つ人間に逆らうことはまずしない。
    黒いアタッシュケースを持つ男もまた、それに逆らおうとはしなかった。
    今の状況で逆らうのは馬鹿だけだ。
    彼らに従って、安全な道を進むのが賢明というもの。

    流れに身を任せる男の溜息は、雑踏の中に消えていく。
    時間が惜しい。
    早く、速く。
    一秒でも一分でも一時間でも速く、次の展開が知りたかった。

    突如として発生した爆発。
    ニクラメンの要である橋を狙った爆破は、明らかに大事になることを目的とした、大規模な作戦の始まりを意味する。
    男は興奮していた。
    その興奮は機関車が蒸気を吐き出すように、熱い溜息となって男の口から洩れた。

    思わぬ副収入か、それともこれが本題なのか。
    男には分からない。
    分かるのはただ、絶頂を覚えんばかりの興奮が男に約束されているということだけだ。
    既に男は先走るのを抑えきれずに、片手が愛銃であるベレッタM8000の銃把を愛撫していた。

    しかし、急いて事を仕損じる愚行はしない。
    群衆の中央からやや後ろの安全な位置を確保し、事態の流れを見守る。
    必ず、この先に何かが待っている。
    このトラギコ・マウンテンライトを絶頂させるに足るだけの、魅力的な何かが。

    (=゚д゚)「……ちっ」

    そんな彼に、今、一つの不満があった。
    経費で購入した高級なスーツは、彼の体を縛り付ける鎖のように動きを鈍らせている。
    世界で最もドレスコードに厳しい祭典――オープン・ウォーター――に出席するには、いい素材で作られたいい服が必要だった。
    その条件を満たすスーツをすぐに揃えるためには、被服で有名なクロジングの服が適していた。

    時間と距離、そして入手の容易さで言ってもトラギコの選択は間違っていない。
    それでも、彼にとってはクロジングで作られた一万五千ドルのスーツは不評だった。
    慣れれば動きやすいのかもしれないが、彼が慣れるにはもう半世紀着なければならないだろう。
    それでは仕事にならない。

    白いネクタイを緩め、トラギコは首の骨を鳴らした。
    その時である。
    若い女の甘い笑い声が聞こえたのは。

    「うふっ、うふふっ……」

    狂気のエッセンスを混ぜた、妖艶な笑い声。
    耳障りな金切声よりも聞くに堪えない、毒された娼婦の嬌声だ。
    トラギコが異常を察して止まるのと、先頭を行く警備員達が立ち止まるのは同じだった。

    「ご婦人、ご安心ください。
    我々が、安全な場所までご案内させていただきます」

    その台詞は、少なくとも銃を構えながら言う言葉ではなかった。
    UMPの銃口がその声の方向に向けられているのは、明らかだった。
    言葉こそ丁寧だったが、その声に込められた警戒の色は拭えない。
    トラギコは一人高揚した。

    来た。
    来た、来た。
    来た、来た、来た。
    来た、来た、来た、来た!

    トラギコは確信した。
    トラギコは歓喜した。
    待ち望んでいた物の第一幕。
    序章が、今まさに来たのだ。

    群衆の脇をすり抜け、トラギコは壁沿いに移動した。
    壁の窪みを掴み、警備員達が畏怖する存在を視認する。

    「本当に……本当に、安全な場所なんてあるの……?」

    赤い斑模様の、白いドレスを着た茶髪の若い女性が蹲っている。
    否。
    あれは斑模様に非ず。
    あれは――

    (;=゚д゚)「……血か」

    問題なのは、それが誰の血であるかだ。
    だからこそ警備員達は発砲せず、銃を構えているだけなのだ。
    しかし。
    トラギコには見えていた。

    その背後に転がる、無数の屍を。
    女性の背中にある、禍々しい色の物体も。

    「えぇ、この先に緊急避難用の通路が三本あります。 だから――」

    警備員の声を遮り、女性は言った。
    鳶色の瞳には純粋な狂気が宿り、声には単純な殺意がこもっている。
    生まれながらの殺人狂のそれ。

    从'ー'从「――私がいるのに?」

    次の瞬間、トラギコは群衆の中に戻り、ゆっくりと後退った。

    从'ー'从『さぁ、坊や。
         さぁ、さぁ、よい子の坊や。
         さぁ、さぁ、さぁ、眠ろうか』

    そして、黒衣の第三世代軍用強化外骨格“プレイグロード”が姿を現した。

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                          /`つゝ入
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         ∨ヘヘ////// ノハ´ ヘ !,> /  |:::::::::::|: :| l
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    /、゚買゚〉『命の音、聞かせて頂戴』

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    警備員の一人、バッバ・パンツァーはその場に居合わせて最も早く銃爪を引いた人間だった。
    肩付けに構えたUMPは.45口径の鉛弾を驚異的な速度で射出し、銃口の先にいた女性に弾雨を浴びせる。
    不意打ち的に銃撃を加えたことに対して、罪悪感はなかった。
    女性が口にした単語の羅列は、紛れもなく棺桶の起動に用いるコード群で、それを阻止する必要があったからだ。

    棺桶持ちをただの銃で殺すには、いくつかの方法があるが、最も確実かつ簡単なのが、棺桶を装備する前の段階で射殺することだ。
    全ての棺桶はその頑丈さ故に使用者の背を守ることが出来るが、正面を守ることは出来ない。
    その為、出来るだけ早く銃弾を使用者に撃ち込むことで、無用な戦闘と危険に晒される危険性を省くことが出来る。
    棺桶の装着速度を考えれば、コード入力完了後二秒以内にケリをつけなければ、勝ち目はなくなる。

    バッバは、棺桶持ちを七年続けてきた経歴を持つ男だ。
    棺桶持ちの弱点や、棺桶の種類について良く知っていると自負できるほどには、経験があった。
    だが、目の前に現れた棺桶を、彼は知らなかった。
    やけに人間じみたその容姿、右手が持つ先端が朱に染まった三角錐の鉄塊、左手の鉤爪。

    全てが、初見初耳の存在。

    /、゚買゚〉『さぁ、話して』

    鉄塊を片手で振るい、その棺桶持ちは銃弾の中、悠然と歩み寄る。
    恐怖が。
    恐怖が、心の底から湧き上がった。
    ただの兵器が、彼の三十四年にも及ぶ人生を終わらせようとしているという事実。

    これまでに、棺桶相手にこれ程まで怯えたことはなかった。
    異形の棺桶や、戦闘経験のない棺桶との交戦経験は何度もある。
    その経験をもってしても、眼前の敵が危険極まりないことを体が理解し、屈してしまっていた。
    得物の問題とか、そういった次元の問題ではなかった。

    無知に対する、原初的な恐怖。
    知っていれば、まだ正しい畏れ方と正しい対処が浮かんだかもしれない。
    雑学と考え、それを我が物としようとしなかった自分のミス。
    バッバは、銃を前にした赤ん坊と同じだった。

    頼みの綱の棺桶についての知識がニクラメン随一と言われた禿頭の警備隊長、最古参の猛者パール・ヘッド・ジャックは、マリアナトンネルにいる。
    正直、バッバはパールのことを変人だと思っていたし、周囲も彼のことを“棺桶異常愛好家”と認識していた。
    棺桶に対する執着心は、棺桶の研究者よりも強く、多くの文献を読み漁ってその歴史について異常なまで調べ上げていた。
    誰も彼の言葉を真面目に聞いてはおらず、棺桶と呼ばれる兵器の歴史についても、その正式名称――彼はあえて棺桶登場当時の呼び方を好んで使った――についても気にしなかった。

    詳しいことを記憶している同僚など、誰もいない。
    所詮は数字の問題で、彼らにとって名称の所以など、別にどうでもいい問題だ。
    その考え方は、今でも変わらない。
    しかし、それでも、それでも、と思う。

    パールは多くの棺桶を知っていた。
    “ソルダット”が優れた棺桶であること。
    “ジョン・ドゥ”と“ジェーン・ドゥ”の性能の違いと、その特性の違い。
    彼は、暇を見てはその知識を同僚に教えたがる癖があった。

    この正体不明の棺桶を前にするまでは、彼のことを疎んでさえいた。
    今にして思えば、彼は頼もしく信頼に足る上官だった。
    対棺桶用の戦闘方法について訊いておけばよかった。
    もっと知識に貪欲になっておけば、この状況を打破できたかもしれない。

    全てはありえなかった可能性の話。
    彼は助けに来てくれない。
    この場を守り、故郷を守るのは彼ら五人の警備員の仕事だ。
    それだけは、パールの更に前任の警備員から代々受け継がれてきた信念だった。

    「くっ!」

    バッバを含めた五人の警備員達は、背後の客達を守るため、後退と云う考えを捨て去った。
    やることは単純だ。
    分かりきっている。
    静して、制して、征する。

    全員の思考が一つとなり、一斉に銃爪に指をかけて引き絞る。
    しかし。
    それを遮る糖蜜の声。

    /、゚買゚〉『ふぅん……
         それで終わり、か』

    バッバの隣で響いていた銃声が、肉を穿つ湿った音で途切れた。
    パトリック・ジョージ、三十一歳は頭蓋骨を一撃で破壊した凶器の正体を知ることなく、その命を失った。
    一本のワイヤーが、鉄塊の先端からジョージの頭部にまで繋がっている。
    半分に割れた頭部から、脳髄が垂れ落ちた。

    生前、彼はよく誕生したばかりの娘の話をしていた。
    肌身離さず写真を持ち歩き、それを自慢していた。
    もう、その声を聞くことも、娘の成長話を聞くこともない。
    娘と妻を考える脳も、言葉にする口も、彼にはなかったのだから。

    彼の手元から銃声が止むのと、彼の命が終わるのは、果たしてどちらが速かったのだろうか。

    「……そったれぇ!!」

    弾倉を外し、バッバはワイヤーに弾を浴びせる。
    当たりはしたが、ワイヤーが切れる気配はない。
    悪寒に従って咄嗟に頭をひっこめると、頭上を刃が高速で通り過ぎた。

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    「しまっ……!!」

    その一閃は彼の命を奪い損ねたが、彼の後ろにいた三人の客の命を容易く奪った。
    三者三様の斬られ方だったが、勢いよく血を吹き出して死んだことだけは共通していた。
    絶叫に近い悲鳴が、客たちの間から響き上がった。

    /、゚買゚〉『嗚呼……
         それ、それが聞きたかったぁ……
         いい、いい、さぁいっこう!!』

    手元の鉄塊を振り回し、ワイヤーの先端に取りついた朱色の刃を生き物のように動かす。
    刃に触れずとも、高速で蠢くワイヤーは十分凶器足り得る。
    不運なのは、刃で急所を破壊された人間よりもワイヤーで体の一部を削り取られた人間だった。
    肉が落ち、目玉が舞い、服が散った。

    目の前で解体された人間の肉が頬に張り付いた女性が、必死に命乞いをする。

    「助けて、誰か助けてぇ!!」

    バッバは、恐怖で声が出せなかった。
    目の前の死体の山や迫り来る死が怖いのではない。
    恐ろしいのは、嬌声を上げながら死を振り撒く女の存在だった。
    快楽を求める殺人狂。

    それは、何をしても決して止むことを知らない狂気の使者。

    /、゚買゚〉『ダメ、だめ、だぁめ!!』

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    「あ゛ぶ……!」

    ワイヤーを勢いよく引き寄せ、命乞いをしていた哀れな女性の顔半分を削り取ってから、切っ先を鉄塊に戻す。

    /、゚買゚〉『教えてよ、貴方たちのことを!!
        どんな風に生きて、どんなことに幸せを感じて、そしてここでつまらなく肉片になる気持ちはどぉ?!』

    巨体が疾駆した。
    肉薄する棺桶に銃弾を浴びせても、鉛弾は地に落ちるだけ。
    ピーコック・バリマンが、その突進で弾き飛ばされ、壁に叩きつけられて死んだ。
    先々週に恋人が出来たばかりの、勇敢な若者だった。

    /、゚買゚〉『ははっ、死んだ、死んだぁ!!』

    左手の爪でバリマンの亡骸を掴み、高々と掲げて握り潰す。
    臓物が穴と云う穴から噴出した。
    それを見ていたボーマン・スティーリングは意識を失い、頭を踏み潰された。
    臆病故に細かな部分に気を遣って仕事をこなしてきた、尊敬に足る立派な同僚だった。

    /、゚買゚〉『はぁ……はぁ、たまらない、たまらないよぉ!!
         命って、どうしてこうもたまらなくそそるのぉ!!』

    甲斐悦に浸る女の姿は、禍々しかった。
    だが、どうしてか妖艶だった。

    「く……ぁぁぁああああああ!!」

    バッバは腹の底から息を吐き出し、UMPをフルオートで放った。

    /、゚買゚〉『いいねぇ、その気概ぃ!!
         もっと教えてぇ!!』

    眼前に迫った棺桶は、血の付いた爪でバッバを掴んだ。
    彼は最後まで銃爪を引き絞り、弾が切れても銃把から手を離さなかった。
    仕事に誇りを持ち、そして、その重要性を知っている彼は抵抗を止めない。
    上には、ニクラメンには、彼の妻子がいるのだ。

    美しい妻と、可愛い娘。
    その二人に危害が及ぶことを考えれば、諦めることなど、出来ない。
    娘が名を呼ぶ声が聞こえる。
    妻が名を呼ぶ声が聞こえる。

    二人の名を、心の中で強く呼ぶ。
    声は届かないというのに。

    「ひぐっ……!?」

    痛いが、まだ死にたくない。
    苦しいが、まだ死にたくない。
    何があっても、まだ、死にたくない。

    /、゚買゚〉『教えてったらぁ』

    「ぺっ……!!」

    血の混じった唾を吐きつけ、それを返答とした。
    それに対して、女は腕に力を込めるだけで十分だった。
    腕の骨が折れ、背骨が折れ、肋骨が折れて肺に突き刺さり、心臓に穴を空けた。
    視界が血に染まり、バッバの意識は一瞬で死に近づく。

    死に体のバッバを投げ捨て、棺桶持ちの女は逃げ惑う客達に視線を投げる。
    まだ、遊び足りないとばかりに。
    気絶するまで絶頂し続けなければ満足しない、快楽狂いの毒婦のように。
    そして、彼の命が消える刹那――

    /、゚買゚〉『つまらない男だなぁ。
         さぁて、もっと――』

    (=゚д゚)「――つまんねぇラギな、手前は」

    ――“虎”と呼ばれる一人の男が、死を振り撒く災厄の象徴と対峙した。

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    Ammo→Re!!のようです
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                                               Ammo for Relieve!!編
                                        第七章【predators-捕食者達-】
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    トラギコ・マウンテンライトは、呆れ果てていた。
    人気レストランで提供された食事が、高級レトルト食品だと分かったぐらいがっかりだ。
    お楽しみの第一陣が、ただの快楽殺人者だとは。
    この程度の輩なら、別の都で嫌と言うほど見てきた。

    おまけに、プレイグロードとの戦闘も初めてではない。
    これで二度目だ。
    とことん面白くない。
    心底期待外れだ。

    /、゚買゚〉『あれれぇ?
         誰がつまらないって、言ったのぉ?』

    (=゚д゚)「手前のことラギ、阿婆擦れ」

    /、゚買゚〉『あぁん?!』

    振り下ろされた鉄塊がトラギコに到達する前に、彼はその場から半歩横に動いた。
    当たり損ねた鉄塊は死体を叩き潰し、粉々に斬り潰した。
    彼はその一撃を避けつつM8000を抜いて、黒衣の向こうに浮かぶ黄昏色のカメラに向けて立て続けに発砲。
    直撃を免れるために体勢をわざと崩した棺桶は僅かにたたらを踏んだが、怯みはしない。

    それで、十分だった。
    大きく後退し、十分に距離を空けるには。
    女はまだ気付いていない。
    トラギコが持つ黒いアタッシュケースに。

    (=゚д゚)「そこに転がってる奴の名前なんて知らねぇが、だがな、手前よりもイカした野郎だってことは分かるラギよ」

    /、゚買゚〉『うるっさいなぁ、役立たず!!』

    実際、UMPを最期まで離さずに戦った男の名前もその人生も知らない。
    知るはずがない。
    顔も見ていないし、声もろくに聴いていない。
    だが分かる。

    警備員は、その男の天職だったのだ。
    そこに妙な共通点を見つけたに過ぎない。
    そこに妙な羨望を覚えたに過ぎない。

    (=゚д゚)「黙れ、雌豚」

    /、゚買゚〉『っ!?』

    恫喝。
    女が追撃をためらった、その一瞬の隙。

    (=゚д゚)『これは俺の天職なんだよ』

    アタッシュケース型の第三世代軍用強化外骨格。
    特定の目的に特化して設計された、Aクラスのコンセプト・シリーズ。
    機械籠手と連動した小型高周波刀を持ち、緊急時の近接戦闘に特化した棺桶。
    その名は、“ブリッツ”。

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    反り返った丸みを帯びた切っ先は青龍刀を髣髴とさせるがその幅は小さく、刀身は鉈ほどの長さしかない。
    重みは二十二ポンド。
    片手で振るうには重いが、機械籠手がそれを容易く実現する。
    ブリッツの強みはそれだけ。

    主力武器である高周波刀は、他の棺桶も装備している白兵戦の切り札的存在だ。
    しかし、それこそがブリッツの特徴だ。
    棺桶を倒し得る武器を携帯し、人間が取り扱える最小の大きさに収まった棺桶。
    故に、その名の通り電撃作戦や緊急時にその力を発揮する。

    /、゚買゚〉『ふっ!!』

    プレイグロードの棺桶持ちの反応は、速かったが鈍かった。
    飛来した切っ先を切り払い、トラギコは刀を肩に担ぐようにして構えながら深く踏み込み、駆ける。
    ワイヤー誘導の武器は、例外なくその動きが事前に相手に伝わる仕組みになっている。
    攻撃は遅延して行われるため、手元の動きさえ見ていれば、防ぐことは容易だ。

    引き寄せられた切っ先を容易く回避し、その隙に更に接近する。
    以前プレイグロードと戦った時と同じ展開だ。
    このままワイヤーを切断し、左手の鉤爪を切り落として首を刎ねれば、トラギコの勝ちだ。

    /、゚買゚〉『……なぁんてね』

    (=゚д゚)「あ?」

    鉄塊を手放したプレイグロードは、左手を何もない空間に向けて振った。
    咄嗟に、トラギコは刀を振るう。
    分離して飛来した鉤爪を両断した時、一瞬ではあるが彼の視界はその爪に覆い隠された。
    黒衣の棺桶が肉薄してくるのは、その跫音が物語る。

    ならば十分。
    攻撃手段は肉弾戦しかないはずだ。
    ぬるり、とトラギコはその足捌きで絶妙な距離を後退し、刀を斬り上げた。
    手応えは、僅か。

    布を切った感触だけだ。
    戻った視界に映るのは、胸元まで防弾衣を切り裂かれたプレイグロード。
    あの一瞬で避け遂せたとは、なかなかどうして楽しめる。
    トラギコは彼女に対する評価を改めることにした。

    いい玩具が手に入った。
    少しばかり錆びた牙を研ぐのには、丁度いい相手だ。
    刀を左手に持ち替え、懐のM8000を抜く。
    顔に集中して銃弾を浴びせ、後退を促す。

    薬莢の音と、敵の後退、トラギコの前進する跫音は同調した。
    決して楽観できる状況ではない。
    それでも、トラギコは笑みを抑えきれない。
    この女に対する評価を撤回しよう。

    鳶色の瞳を持つこの女、トラギコの人生におけるいい食前酒となるだろう。
    この女には分かるはずだ。
    トラギコの意図が。
    彼が感じ、彼が求める物が。

    目的は違うが、両者には共通点がある。
    満たされたことが、これまでに一度もないという点だ。
    常に渇き、渇望し、追い求めてきた。
    その欲望を満たすための長い旅路を阻む、障害の一つ。

    弾倉を捨て、M8000を天井寸前まで放る。
    刹那の間に懐から強装弾が装填された弾倉を取出し、掌に乗せた。
    宙を舞っていたベレッタが、図った通りに掌に落ちる。
    弾倉を見事に取り込んだ銃は自重でバランスを崩し、正面から倒れる。

    その際にトリガーガードに人差し指をひっかけ、一回転させてそれを掌に収めた。
    一秒にも満たない時間で装填作業を終えたトラギコは、再びプレイグロードの急所に銃弾を撃ち込んで行く。
    的確な銃撃に対し、女は適切な防御で応じる。
    プレイグロードに残された防弾衣で銃弾の威力を落としてから、失っても大して問題のない右手――この時、女が左利きであることが推測された――で防いだ。

    強装弾でも、二重の暴挙を前にしては大きな傷を与えられない。
    驕らず、棺桶の性能を理解している証だ。
    ただの殺人狂ではない。
    理性のある、異常快楽者だ。

    互いに三歩下がり、安全な立ち位置へと移動する。

    /、゚買゚〉『……へぇ、やるじゃない』

    (=゚д゚)「手前も……だがっ!!」

    再び、刀を肩に乗せて疾駆。
    プレイグロードの棺桶持ちは、足元の鉄塊を手にして走駆。

    (=゚д゚)「足りねぇ、足りねぇラギ!!」

    金髪碧眼の女にはあった、あの強かさ。
    赤髪碧眼の女にはあった、あの力強さ。
    黒髪碧眼の少年にはあった、あの魅力。
    ありとあらゆる要素が、対峙する女には欠けている。

    力が全てを変えるこの世界で、この女の力は非力。
    トラギコの関心を引くのであれば、あの三人のような力が必要だ。
    もっとも、この女にそれが可能であるかと言えば、不可能だろう。
    この女にはなんの力もない。

    あるのは狂気。
    狂気は力になり得ない。
    所詮は狂気。
    人を殺すことで快楽を得る性倒錯者など、残飯漁りの野良犬と同じだ。

    鉄塊と刀がぶつかり合い、金切声が上げる。
    破壊力で言えば、トラギコに分がある。
    棺桶の装甲を切り裂ける高周波刀なら、プレイグロードの主要兵装“ファイレクシア”を破壊できる。
    あれを使われる前に破壊できれば、プレイグロードはジョン・ドゥ以下の存在になる。

    しかしこのままでは、単純な腕力差でトラギコが押し潰される。
    鉄塊が先か、トラギコが先か。

    /、゚買゚〉『はんっ!!』

    (;=゚д゚)「なぁに勝ち誇ってるラギ?!」

    /、゚買゚〉『いい、あなたすごく良い!!』

    (;=゚д゚)「そらどうも!」

    /、゚買゚〉『はぁ……はぁ……!!』

    この女。
    トラギコが思っている以上に、狂っている。

    /、゚買゚〉『ねぇ、ねぇ、ねぇ!!
         私と一緒にもっと、もっと気持ちよくなりましょう!!』

    殺し合いの最中に、本気で発情している。
    性交狂いの娼婦が絶頂を迎えるのと同じ様に、この女は命を奪う時に絶頂するのだろう。
    股間に招き入れる様に、切断されるのも構わずに鉄塊を押し込んでくる。
    正しい判断だ。

    主要兵装を失っても、勝てればいいのだ。

    (;=゚д゚)「ぬぐっ……!!」

    狂っていながらも、この女の判断は常に正しい。
    狂気の中の正常な部分。
    驚くほど澄み渡った刃と同じ。
    見くびりすぎていた。

    生来の快楽殺人者は、殺し方を知恵ではなく体で理解しているのだ。
    これまでにトラギコが見てきたどの快楽殺人者よりも強く、そして洗練されている。

    /、゚買゚〉『ねぇ、お話しましょう!!
         ねぇ、ねえ、あなたのことを教えてよ!!
         ねぇ、ねぇ、ねぇ、あなたの命を教えてよ!!』

    (;=゚д゚)「撤回してやるラギ……手前は……」

    /、゚買゚〉『ん?』

    喜ばしい。 悦ばしい。 実に、素晴らしい。
    それも、これで終わり。

    (=゚д゚)「手前は!!」

    刀を持つ両手から力を抜いて、プレイグロードのバランスを崩させる。
    行き場をなくした鉄塊は地面に振り下ろさせ、プレイグロードはその無防備な姿をトラギコにさらした。
    眉間にM8000を向け、銃爪を引くのと同時にトラギコは告げる。

    (=゚д゚)「おもしれえ奴だったラギ!!」

    銃声と共に、プレイグロードの頭が大きく仰け反った。

    * * *
    ――――――――――――――――――――

    少女は、その小さな背中から伝わる心臓の鼓動に、耳を傾けていた。
    心地よい肌触りの生地で作られた服――恐らくはローブ――は、少年には大きい。
    身長は自分と頭一つ分だけしか変わらず、跫音から判別する体重は彼女に近い。
    落ちないように体を支えてくれている掌は驚くほど小さく、声変りしていない中性的な声はか細い。

    とても、小さな少年だった。
    年齢は恐らく自分の半分か、それ以下。
    彼の腰から時折感じる奇妙な感触は、少年が耳付きであることを如実に物語る獣の尻尾だ。
    更に、さらさらとした髪の毛と垂れ下がった耳が、少年の可愛らしい容姿を想像させる。

    ここまでの情報で分かるのは、少年が耳付きの、まだとても幼い子供だということ。
    そして、とても優しい少年であるということ。
    少女は思う。
    今の時代において、これほど珍しい少年はそういないだろうと。

    大多数の人間に虐げられる耳付きは、その生涯を奴隷として過ごすことがほとんどだ。
    極一部、例外的な存在はいるが、それは彼らが特殊な環境下に生まれ育ったから。
    少女の知る環境以外で、このような耳付きは聞いたことがない。
    首輪もなく、飼い主も近くにいない。

    自分と少年は、とても似ていると少女は思う。
    七年前に四肢と視力を失ってから、世界の全てが障害に思えた時期があった。
    それまで見ていた物が見えないだけで、何もかもが怖いと感じるようになった。
    この暗闇に慣れるのには、一年の歳月を要した。

    慣れるまでに、恐怖のあまり何度も泣いた。
    学校でも、家でも。
    どこに何があり、何が今自分の周囲にあるのか。
    考えれば考えるだけ恐ろしくなり、自室のベッドの上から動くことも嫌だった。

    ベッドの上なら、少なくとも危害を加える存在と遭遇する心配はないからだ。
    だが、その頃は自力でベッドの上から動くことは不可能だった。
    動こうとしても、芋虫のように蠢くだけ。
    寝返りを打つのにも、相当苦労した。

    親の教育方針に従って、学校を休むことはなかった。
    それまで楽しみにしていた学校生活は、悪夢のような時間でしかなかった。
    見えなくとも分かる好奇と同情の目線が、苦痛で仕方がなかった。
    教室の外から塞ぎようのない耳に聞こえてくる、自分の容姿に対する心無い言葉。

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    芋虫。
    達磨。
    足手纏い。
    見世物。

    子供には残酷な面が多くあることを知ったのは、小学校に入って間もない頃。
    文房具を隠され、口に咥えたペンでノートを取ることも出来なかったことがあった。
    その事件は実行者の入院によって即日解決したが、心に負った傷が和らぐことはなかった。
    それ以来、死にたいと唐突に思うことが何度もあった。

    とは言え、死ぬには精々舌を噛み切るぐらいしか方法がなく、それで死ねるとは限らないと教えられた。
    誰かの補助なしでは、人気のないところに逃げることも出来ず、常に傷つきながら生きる毎日。
    笑い方を忘れ、次第に感情が凍りついていくのが実感できた。
    気が付けば、感情を表に出すことが出来なくなっていた。

    記憶も曖昧になり、口数も減り、何も喋らない日が一年続いた。
    クラスメイトが昼休みに校庭で遊ぶ中、少女は校舎の裏にある池の前で人間から遠ざかって過ごした。
    それが、せめてこれ以上心が壊れないようにするための手段だったからだ。
    何も感じず、何も考えない日々が続いた。

    ――少女を救ったのは、一人の男性だった。

    昼休みをいつもの場所で過ごしていた少女の前に、一人の男性が現れた。
    その男性を、少女は知っていた。
    その男性の声を、匂いを、少女は知っていた。
    その男性が、少女を再び救ってくれたのだ。

    『……なんだ、その面は』

    ぶっきらぼうで、少し掠れた声。
    寂れた鉄の様で、だけど、人の温もりが感じ取れる声色。

    『せっかくの可愛い顔がもったいないぞ』

    乱暴に頭を撫でる、ごつごつとした大きな掌。
    掌から伝わった、確かな優しさ。
    少女は、枯れ果てたと信じていた涙が込み上げるのを抑えられなかった。
    忘れていたはずの泣き声を、その男性の胸の中で上げた。

    男性は、ただただ優しく抱きしめてくれた。
    少女の涙は男性の服に吸い込まれ、声はその体が受け止める。
    温かかった。
    雄弁だった。

    何も言わなくても、男性の体が語っている。
    少女が欲しがっていた、ただ一つの言葉。
    たった一つの、救済の言葉を。
    独りで戦わなくてもいいのだ、と。

    休み時間の終わりを告げる鐘の音など、もう、聞こえていなかった。
    耐えてきた痛み。
    堪えてきた痛み。
    忘れていた痛み。

    その痛みが和らぐ頃には、肌に感じる風は冷たくなり、人の声が虫の鳴き声に変わっていた。
    空は深紅に近いオレンジ色に染まり、雲は影のように空に張り付き、星々が影の近くから浮かび上がる。
    漂う空気から分かったのは、夏の黄昏の気配。
    人の気配は周囲から消え失せ、いるのは自分とその男性だけ。

    自然と、少女は自分が感じてきた孤独と痛みについて、その男性に話していた。
    男性は少女の言葉を遮ることなく、全てを聞き入れた。
    話し終わる頃にはもう、黄昏は夜へとその姿を変えていた。
    そして、男性が口にした言葉を、少女は忘れない。

    『何かを変えたいと望むなら、力で変えろ。
    それが、この世界のルールだ』

    それから、少女は力を手に入れるためにその男性から多くを学ぶことになる。
    二カ月足らずで、少女は嫌がらせに屈せず、手に入れた力で報復を果たせるまでに至った。
    少女は、力によって自分の世界を変えたのだ。
    ほどなく、周囲の人間から少女は渾名を付けられることとなる。

    ――“鋼鉄の乙女”、ミセリ・エクスプローラーと。

    * * *
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    そこは、海底街――ニクラメンの海底に建造された居住区――と呼ばれる場所だった。
    海底の斜面に沿って建物が並び、オープン・ウォーターが開催された場所とは別の区画として建造されたニクラメンが誇る海底の街だ。
    嵐や津波に見舞われた際、海上街の住民たちは真っ先にこの海底街に避難する。
    商店街は平らになった頂にあり、海上と繋がる道はそこを含めて三か所にある。

    商店街と家屋のある第一区画、中腹の傾斜に第二区画、そして麓に第三区画。
    それぞれの区画に大きな柱状のエレベータと螺旋階段があり、それが海上に通じている。
    ニクラメン海兵隊の本部は海上と第三区画に設けられ、どちらの安全も常に万全の状態で守られていた。
    少なくとも、今日までは。

    ニクラメン海兵隊は、決して精鋭揃いの集団ではない。
    イルトリアにも、ジュスティアにも劣った軍隊だ。
    しかし、個々人が持つ故郷を守るという気概に関して言えば、世界屈指の軍隊である。
    突然の襲撃者に対して、海底街の住民の避難を最優先に行動しているのも、その気概があってこそだ。

    商店街から離れた第三区画では、銃声が絶えず鳴り響いていた。
    銃声の発生源は、海兵隊本部手前の十字路だ。

    「ケニー!! ミハイルが脚をやられた!!
    援護を!!」

    乗り捨てられていた乗用車を遮蔽物に後方支援を行っていたケニーに、建物の影からジミーが叫ぶ。

    「了解!! スモーク!!」

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    ダットサイトを装着したヴェクター短機関銃が車の影から出され、襲撃者に放たれる。
    更に、弾幕の合間に放り投げられたスモークグレネード。
    濛々と煙幕が立ち上り、敵の視界を妨害する。
    その隙に、ジミーは道路の中央に倒れているミハイルを救いに走る。

    「くそっ、脚が……俺の脚がっ!!」

    「ミハイル、今助けるぞ!!」

    片側一車線の道路の真ん中に仁王立ちになっていた襲撃者は、片腕で銃撃を防ぎながら、そのカメラでジミーを睨んでいた。
    たった一機のCクラスの棺桶の背後には、十機以上の棺桶が残骸となって転がっていた。
    全て、あの棺桶の仕業。
    巨椀の先に付いた三本の巨大な鉤爪に握り潰され、青白い光を放つ光学兵器によって切断されたのだ。

    歯が立たなかった。
    RPG-7を撃ちこんでも、光学兵器がそれを撃墜し、射手であるジョン・ドゥの装甲を撃ち抜いて使用者を負傷させた。
    軽機関銃で武装したジェーン・ドゥは、拳の一撃で壁に埋まった。
    ニクラメンの棺桶持ち達が、まるで人形のように蹴散らされる様子は、悪夢そのもの。

    煙幕が消えない内に戦友を助けようとしたジミーの目に、煙を纏う黒曜石の色をした棺桶が映った。
    このタイミングで、攻め込んできた。
    様子を見ることなく、ただ一つの目的だけを見た行動。
    二つの標的が一か所に集まることを、わざわざ待っていたのだ。

    「おお!!」

    拳を形成した鉤爪がジミーの頭に迫る。
    徹甲弾が装填されたヴェクターをフルオートで発砲し、牽制する。

    「くっ、来るな!!」

    [,.゚゚::|::゚゚.,]『粉っ!!』

    ジミーの頭は、血煙となって飛び散った。
    助けに来た友人の凄惨な最期を見たミハイルが、焼き切られた足の痛みを忘れて悲鳴を上げる。

    「ジミー!!」

    [,.゚゚::|::゚゚.,]『破っ!!』

    もう片方の腕が、ミハイルの胸を叩き潰した。
    血の涙が目から吹き出し、彼を即死させた。

    「くそっ、HQ、HQ!!
    応答――」

    [,.゚゚::|::゚゚.,]『……礎となるがいい』

    無線機を耳に当てたケニーの頭部が、音を立てて踏み潰された。

    * * *
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                                               ヽ、,l~ヾl::::::::::l|
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    ブーンが足を踏み入れた空間は、それまでと打って変わって、明るく物に溢れていた。
    小さな商店街が、そこにはあった。
    ただ、人は誰もおらず、無人と化した空間には空しく音楽が鳴っているだけ。
    それは、人だけが消えた商店街。

    店によっては壁に亀裂が入り、傾いている物のあるが、基本的には地上に溢れている商店街と大差はない。
    天井は低く、そこには紛い物の空が描かれている。
    偽りの鳥の声と、本物の風の音。
    ブーンは、足の疲労感に思わず立ち止まった。

    この場所に来るまでに、ブーンは暗闇の中を走り、飛び、登った。
    まだ六歳だが、自重とほぼ同じ人間を背負いながらも、彼が走破した道の険しさと距離は、一流のランナーでも真似できるかどうか。
    流石に体力的に人間よりも勝っている耳付きといえども、一時間も動けば、休みたくもなる。

    (;∪´ω`)「お……」

    ミセ*'ー`)リ「少し、休みませんか?」

    (;∪´ω`)「……でも、じかんが……」

    重要なのは、どれだけ速くこの場所から地上に逃げられるかだった。
    避けられぬ崩壊を前に、ブーンは焦っていた。

    ミセ*'ー`)リ「大丈夫ですよ」

    (;∪´ω`)「お……」

    ミセ*'ー`)リ「少し休んで、その分走れば、遅れは取り戻せますよ」

    難しいことはよく分からない。
    単純に、今ここで進んでおいた方が、結果的には速く着くとブーンは考えている。
    しかし、ミセリの言葉も納得できる部分がある。
    今このまま進んでも、その速さは先ほどよりも格段に落ちる。

    ここで休んで、体力を回復させておけば、移動速度はある程度の水準まで回復できるかもしれない。
    判断に迷うところだった。
    だが、十秒ほど考えてブーンが選んだのは、ミセリの案だった。
    一度立ち止まってしまった足には、もう一度駆けるだけの力が残されていない。

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    店頭に色とりどりの果物の並ぶ店に向かったのは、どうせ休むのなら、いい香りのする場所が良かったからだ。

    ミセ*'ー`)リ「あら? 果物屋さんですか?」

    (∪´ω`)「くだものやさん?」

    ミセ*'ー`)リ「果物を沢山売っているお店のことですよ」

    (*∪´ω`)゛「くだものやさん」

    見ていて興味をそそる果物の傍に、ブーンはミセリを降ろし、その隣に腰を下ろした。
    ブーンの肩に寄りかかるようにしてバランスを取るミセリからは、果物とは違う甘い香りが漂ってきた。
    ふと、ブーンの目に留まったのは、手の届く位置の高さにある透明の容器の中に積まれた、カットフルーツの山。
    そこに書かれていた文字を、ブーンは前にも見たことがあるが、意味は知らなかった。

    (∪´ω`)「し……し、しょく?」

    ミセ*'ー`)リ「試食ですか? それは、試しに食べてみて、気に入ったら買ってみてくださいね、ってことです。
          だから、お金を払わないでもその食べ物を食べることが出来るんですよ」

    (*∪´ω`)「おかねがなくても……たべられるんですか……?」

    尻尾がわさわさと揺れた。

    ミセ*'ー`)リ「はい、本当ですよ。
          でも、そう書かれていない果物はお金を払わないといけないですからね」

    (*∪´ω`)゛「お!」

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    早速、ブーンは容器の蓋を開けてそこから鮮やかな赤色をした果物を取った。
    見た感じはオレンジに似ているが、どこなく違う。

    (∪´ω`)「ミセリさん……食べますか?」

    口元に差し出した果物の香りを嗅いで、ミセリは口元に笑みを浮かべた。

    ミセ*'ー`)リ「あら、ピンクグレープフルーツですね。
          私、これ大好きなんです」

    (*∪´ω`)゛「お!」

    ミセ*'ー`)リ「あの……ブーンさん。
          食べさせて、くれませんか?」

    (∪´ω`)「お」

    皮を剥いて、赤い果肉をミセリの口に運んだ。
    小さな唇が果肉に触れると、彼女はそれを口に咥え、舌先を使って器用に皮から外した。
    美味しそうに咀嚼して嚥下し、最後に口の端に付いた果汁を舐め取る。

    ミセ*'ー`)リ「美味しいです」

    もう一つピンクグレープフルーツを取って、ブーンもミセリと同じように食べた。
    果肉の粒を噛み潰すたびに甘酸っぱく、独特の風味が口の中に広がる。
    味は濃く、瑞々しいためにこれだけで喉が潤う。

    (*∪´ω`)「おいしいです……」

    それから、二人は何も喋らずにそのままでいた。
    静かな崩壊の音と、二人分の呼吸音と鼓動だけがブーンには聞こえている。
    その瞬間、ほんの少し。
    風に巻き上げられた砂が奏でる音よりも、少しだけ。

    少しだけ、ブーンは寂しい気持ちになった。
    デレシアもヒートも生きてる。
    そう信じていても、二人の温もりを感じられない。
    前は、一人でいることが当たり前だったのに。

    自分は、どうなりたいのか。
    自分は、どうしたいのか。
    何も、分からない。
    今は、まだ。

    知識が増え、未知が既知へと変わっても。
    知らないこと、分からないことは世界中に溢れている。
    それを知ることが出来たのは、デレシアがいたからだ。
    デレシアと出会って、ブーンの世界は激変した。

    孤独と痛みだけの世界に、温もりと優しさが生まれた。
    そして、ブーンは選ぶことで世界を、自分を変えることが出来る事を知った。
    それは彼の人生の中で大きな進展だった。
    進展は、自覚できる成長へと連鎖的に変化を起こし、彼自身に変化をもたらした。

    受け入れていた痛みに抗い。
    隣り合わせにあった死に逆らい。
    その先にある生を選んだ。
    だからこそ、今、こうして人の温もりを感じていながらも、彼女達に会えないことに寂しさを感じてしまう。

    これが成長過程で避けては通れない痛みであることを、ブーンは知らない。
    知らないからこそ、ブーンはこの異質な感情に困惑していた。
    知らないことは、それだけではなかった。
    ミセリと話していて感じる、初めての感情。

    その正体も、まだ、分からない。
    決して不快な感情ではない。
    デレシアやヒート、ペニサスやギコに感じたそれとも違う。

    ミセ*'ー`)リ「……こんな時に言うのもあれなんですけど」

    (∪´ω`)「お?」

    ミセ*'ー`)リ「ブーン、って呼んでもいいですか?」

    (∪´ω`)゛「いいです……お……」

    ミセ*'ー`)リ「その代り、私のこともミセリ、って呼んでくれますか?」

    その質問の意味が、ブーンにはよく分からなかった。
    どうして、呼び捨てで呼んで貰いたがるのだろうか。
    いや。
    少しだけ、分かるような気がする。

    ヒートに名前を呼んでもらう時。
    今、ミセリが名前を呼んでくれた時。
    そこには、何か、言葉に言い表せない何かがこもっている。
    口にするとむず痒く、耳にすると心地いい何かが。

    (*∪´ω`)゛「み、ミセリ……………………………………………………さん」

    やっぱり、恥ずかしい。
    年上の人に対して呼び捨てにするのは、若干の抵抗がある。

    ミセ*'ー`)リ「あれ? ブーン、“さん”がついてるよ?」

    (*∪´ω`)「なんか、ちょっと、その……
           ……はずかしい……です……」

    親しげに名前を呼ぶミセリは、どうしてか嬉しそうだ。
    ほんの一時間前に会った時よりも、二人の距離は近づいている。

    ミセ*'ー`)リ「友達はね、年齢だって立場だって何だって関係ないんだよ?
          だから、“さん”ってほしくないなー」

    (∪´ω`)「とも……だち……?」

    また、知らない言葉だ。

    ミセ*'ー`)リ「友達。 私と、ブーンみたいな関係のことだよ」

    (∪´ω`)「お?」

    二人の関係と同じ。
    随分と難しい関係だと、ブーンは思った。
    だが。
    この関係は、いやではない。

    それを友達と呼ぶのなら、ブーンはこの関係が気に入っている。
    むしろ、好きな部類だ。

    (*∪´ω`)゛「ともだち……」

    ミセ*'ー`)リ「だから、ミセリ、って呼んでくれる?」

    そして、ブーンは――

    (*∪´ω`)「……………………ミセリ?」

    ミセ*'ー`)リ「なーに、ブーン?」

    ――初めての友達が、出来たのであった。

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    Ammo→Re!!のようです
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       {:/:::::ヽ _      |:ハ:ト:::::|、::lハ::l!ヽ::lノ
       ヾヽ从:``´       l′j ヾl_.ヽ リ  リ
             、_.. -、  ヽゝ''彡' ∧                    Ammo for Relieve!!編
                >< /´   /∧               第七章【predators-捕食者達-】
               ./{/:∨     // ¨ \                   To be continued...
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