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第四章【Teacher-先生-】

  1. 名前: 歯車の都香 2017/04/15(土) 19:34:15
    第四章【Teacher-先生-】

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    Gone with leaving meaningful something, that is the best end of life.
    意味ある何かを残して死ぬことは、最上の死である。

    Dearest someone attending your deathbed is the sweetest death.
    親愛なる者に看取られることは最も甘美な死である。

                                                   イルトリアの諺
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    高性能光学照準器によって七十倍に拡大された世界には、黄緑色の十字線と黄緑色の小さな――1ミリにも満たない――シルエットが浮かんでいた。
    それはどのような暗闇であったとしても、熱を感知してそれを視覚化すると云う装置。
    光学照準器は狙撃に特化したコンセプト・シリーズの棺桶、“シューター”の象徴であるチェイタック・カスタムの上に装着されていた。
    ボルトアクション式でありながら、扱いによってはフルオート射撃にも匹敵する連射力を発揮するライフルの傍には、七発の薬莢が転がっている。

    五秒の内に撃ち殺した人間は、七人。
    撃ち漏らしはなく、全てが一撃で急所を破壊していた。
    ただの一人も、狙撃に気付いたものはいなかった。
    完璧な狙撃だった。

    最も離れた距離に発見した敵性勢力の全滅を確認したペニサス・ノースフェイスは、それでも照準器から目を離さなかった。
    弾倉に十発、薬室に一発が装填されていたチェイタックの銃爪には指が掛けられたままで、照準器に映る標的との距離、風向き、風の強さを確認する。
    距離は約二マイル、北から南に抜ける弱い風が吹いている。
    丁度、ペニサスの背中からの追い風と云う形での狙撃だ。

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      ェ†          ⊂l二l。二二二二二二l二l二| ̄|| /』      _ョ________
    《))目二二二二二二l二): ̄:)ヾ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|: | ̄\\―┰┰|:  _/_/_/)  )ニv~
    V~~            』┛~ ̄ヾ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄└┤~| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄_(⊆)ιニ。、_l⌒|V^
                ___ハ   ヾ            (( ̄ー、━(//)=)_ ̄B\\)ーl yノ
               <'、ハ^\ ヾ            || <'、┗|||―-┛    ̄  |  ノ
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

    チェイタック・カスタムの有効射程は理論値で二マイル。
    ペニサスが過去に成功させた最長記録は三マイルだ。
    その射程内にいる物は全て、必殺の銃弾を浴びることになる。
    当然のことだが、遥か離れた場所から飛来する銃弾は銃声を聞いてからでは回避出来ない。

    撃たれた者にとって、それは正に魔法の仕業としか思えない。
    故に、ペニサスは“魔女”の名で知られ、恐れられたのだ。
    今となっては懐かしいだけ。
    嘗ては戦友のために振るった力は、友人と小さな教え子のために行使されていた。

    長い隠居生活を挟んではいるが、狙撃の腕が衰えていなかったのが幸いだ。
    狙撃に必要な情報の全てを自動で処理することで観測手を必要としないシューターではあるが、使うのは人間だ。
    銃爪を引くのも、狙点の調節も、全て人が行う作業。
    体はやはり、覚えているものだ。

    巨大な銃声が、森で轟いた。
    小さなシルエットが慌ただしく動き、連続した銃声がそれに続く。
    何が起きているのか、ペニサスにはすぐに分かった。
    デレシアが遠距離から気配を頼りに発砲し、その誘いに敵がかかったのだ。

    減音器が付いているとはいえ、チェイタックの銃声は浴室にいるブーンの耳には騒音だし、そこに素の銃声が重なれば耳障り極まりないだろう。
    デレシアが襲い掛かった集団から少し東に離れた場所に、もう一チームを発見した。
    銃声の方角に向けて、ゆっくりと進み始めている。
    ペニサスはそのチームに向けて発砲しようかどうか考え、遮蔽物である樹の多さから、それを諦めた。

    デレシアの手間を省くのならば、助力はここまででいいだろう。
    彼女の強さはイルトリアの“戦争王”以上だ。
    ペニサスはゆっくりと照準器から目を外す。

    ('、`*川「……」

    射撃安定用の機械籠手を外す。
    普段は薪割のために使っていたが、本来はこうして銃を安定させ、運用を軽々と行うための物。
    足りない筋力を補うのが棺桶本来の目的であり、使用用途はあながち間違っているとは言えない。
    だが、やはり戦いの場においてこそ棺桶はその真価を発揮できる。

    ライフルケース型のコンテナに全てをしまって、ペニサスはそれをダイニングテーブルの下に置いた。
    風呂上がり用のリンゴジュースを作ろうと、ペニサスは台所に向かう。
    リンゴを手に取り皮を剥き、芯を取り出す。
    すりおろし器でそれを丁寧にすりおろし、まずは濃厚な果汁を絞り出す。

    その後、別のリンゴを小さくサイコロ状に切り、それを果汁の中に転がした。
    後は水で果汁を割って、飲みやすい薄さにしてやれば完成だ。
    氷がないのが残念だが、水そのものが冷たいので、風呂上がりの体には最高の飲料であることに変わりはない。
    四つのグラスにそれを均等に注ぐと、風呂場の戸が開いて人が出てくる気配がした。

    今頃、脱衣所で体を拭いていることだろう。
    彼女たちが風呂から上がるのとペニサスが飲み物を作り終えたのは偶然ではなく、音を聞いていたからだ。
    それぐらいの注意力がなければ、狙撃手としては務まらない。
    ――それに。

    それに、教え子のことに注意を払うのは当然のことなのだから。

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

                         Ammo→Re!!のようです
                                             ~Ammo for Relieve編~

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    突如として飛来した銃弾は、先頭で緩やかな斜面を登っていたフィリップ・アジャーニの左脳をごっそりと吹き飛ばした。
    続けて二発目の銃弾はフィリップの心臓を血煙に変え、三発目の銃弾でフィリップは顔を失った。
    それを目の当たりにしたナッツァ・ライアは、神の名を呼ぶかのように、背負った棺桶の起動コードを入力した。

    (;-,ナ-)「夢と希望が我らの糧。我ら、正義と平和の大樹也!!」

    Bクラスの傑作棺桶“ジョン・ドゥ”が、ナッツァの身を包む。
    四発目の銃弾は、彼の隣にあった樹に大穴を空けた。
    バランスを失った樹がゆっくりと倒れ、彼の仲間達も続けて起動コードを入力し、その身を棺桶で包んだ。
    五体のジョン・ドゥは、それぞれが武器を手に持ち、練習した通りにカメラを切り替え、索敵行動を行った。

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
                rーーー---串--.「l---ー'''''" ̄|
                └ーー'./../~~~~~l ヽ~``'ー─ー' ____________,ィ__
       _,,.---------、_,.--rl~l^^l二二l^^ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄日─────────'
    .rn'"              ィ-、┬ィ-------ーー''''''""""""
    .|.l l      ,..-ーヽ / 
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

    しかし、敵の影は見当たらない。
    ナッツァはレミントンライフルを構え、狩人の勘を働かせて敵の位置を探った。
    銃弾の飛んできた方向に銃口を向け、熱を視覚化するカメラに映る赤い影――温度の高い何か――に一発撃った。
    撃った後で気づいたのは、その影は動物のそれで、人間ではなかった。

    〔Ⅲ゚[::|::]゚〕『くそっ、魔女の襲撃だ!!』

    狼狽の声を上げながら、コルトカービンライフルをフルオートで乱射する。
    着弾した場所が熱を持って赤く映り、ナッツァは急いでそれを止めさせようとした。
    このままでは敵を探すどころか、こちらの位置と数を相手に教えているような物。
    他の仲間達まで危険にさらすわけにはいかないと、ナッツァが声を出そうとした、その時である。

    〔Ⅲ゚[::|::]゚〕『い、いたぞ!! 一時の方角!!
          ……は、はぁっし!?』

    声の通りに一時の方角に目を向け、ナッツァもそれを見た。
    弱い熱を持った人型の何かが、信じがたい速度でこちらに接近している。
    カメラの示すそれとの距離は、三百ヤード。
    狙いを合わせ、ナッツァは銃爪を引いた。

    しかし、弾が出ない。

    〔Ⅲ゚[::|::]゚〕『く、くそっ!!』

    前の弾が排莢されていない。
    焦るあまり、排莢を忘れてしまったのだ。
    ボルトアクションで排莢し、次弾を薬室に送り込む。
    その僅かな間に、人型の影は無数の銃弾を避けようともせず、まっすぐに接近してくる。

    残りは、既に百ヤードを切っていた。
    今度こそ狙いを定め、ナッツァの右手人差し指は銃爪を引き絞った。
    いつもは感じる反動もなく、銃弾はまっすぐに飛んで行った。
    銃弾は影に吸い込まれるが、それだけだった。

    当たったはずだ。
    なのに、怯むことも止まることも、よろめくこともない。
    残り五十ヤードとなった時、ナッツァの手の中でライフルが銃把を残して粉々に砕けた。
    驚くよりも先に、ナッツァはその場に伏せた。

    それは正しい選択だった。
    隣で乱射していた仲間は心臓を押さえて倒れ、その後ろにいた者は糸の切れた人形のように倒れた。
    巨大な銃声は二つ。
    チームの中で肝っ玉が最も据わっていると豪語していたゴーダム・フーテンが、それを発揮した。

    〔Ⅲ゚[::|::]゚〕『うわおおおお雄々っ!!』

    ショットガンを棍棒のように振り上げ、インチの距離にまで来ていた敵に向け、それを振り下ろした。
    小柄な影だと、ナッツァはその時初めて気づいた。
    軽い身のこなしで銃床を回避し、影は蹴り一発でショットガンを破壊した。
    折れたショットガンを投げ捨て、ゴーダムが左の鉤打ちを放つ。

    上体を逸らしてそれを避けた影は、その勢いを利用して巨椀に向かってムーンサルトを見舞う。
    腕が奇妙な方向を向き、ゴーダムの絶叫が森に響いた。

    〔Ⅲ゚[::|::]゚〕『がうああああっ、おおあああ!?』

    再び、耳を弄する巨大な銃声が轟く。
    それきり、ゴーダムは二度と声を出さなかった。
    棺桶が人間相手に後れを取り、翻弄されている。
    棺桶とは無敵ではなかったのかと、ナッツァは呼吸を乱しながら思考する。

    生身の人間を一機で制するはずの棺桶に身を守られながら、ナッツァは身動き一つとれない。
    何故か、悔しさはなかった。
    あれを前にしては、丸裸で獣に挑むようなものだと、本能が分かってしまっているのだ。
    もしも分厚い棺桶の鎧がなければ、全身が小鹿のように震えていることが分かってしまっていただろう。

    死体を装うナッツァは、仲間の最期を特等席で見ることとなる。
    ゴーダムの次の犠牲者は、三歳の娘を持つピラデルピアだった。
    白兵戦を決意できず、彼はドラムマガジンを装着したAK-47を乱射し、接近を拒んだ。
    生き残ったもう二人、ギンガナムとブリッジストーンは樹を楯にショットガンでそれを援護する。

    影の足運びは舐めるように柔らかで、飛び交う銃弾の雨を全て避ける。
    しかし後退はしなかった。
    より近く、より人間が恐怖する距離。
    パーソナルスペースへ武器を手にした敵勢力が踏み入れれば、人間は例え鋼鉄の鎧で身を守ったとしても、後退してしまう。

    ピラデルピアの失敗は、後先考えずに銃爪を引き続けたことにあった。
    装弾数を確保するドラムマガジンを装填していたとしても、アサルトライフルの連射率は思ったよりも早い。
    約七秒で五十発を撃ち尽くしただけでなく、カラシニコフの銃身から火が上がった。

    〔Ⅲ゚[::|::]゚〕『くっそ、くそ!!』

    新たなマガジンを手で探る。
    その背後に、影が姿を現しているとも知らずに。
    一体いつからそこにいたのだろう。
    ナッツァはずっと見ていた。

    瞬きも忘れて、影を追っていた。
    見失ってなどいない。
    しかし、その影はピラデルピアの前から一瞬の内にその背後に回り込んだのだ。
    危機が迫っていることを口にしたかったが、それは出来なかった。

    既にそれが無意味であることを一瞬で理解し、更には恐怖で声帯を震わせることも出来なかったからだ。
    背中から侵入した銃弾は胸部から抜け、鮮やかな花を咲かせた。
    ポンプアクションが仇となり、二人はピラデルピアを救えなかった。
    影に当てるはずの散弾は死体となったピラデルピアに浴びせられ、それが倒れた時には影はどこにもいなかった。

    〔Ⅲ゚[::|::]゚〕『どこだ、どこに行きやがった!!』

    影は、狼狽するギンガナムの頭上に現れた。
    体重を感じさせぬ動きで彼の肩に乗った影は、装甲の薄い頭頂部に銃を向け、そして彼の人生を終わらせた。
    最期の言葉はなかった。
    ギンガナムが最後に感じたのは、影の体重だったに違いない。

    その悪魔じみた動きを目の当たりにしたブリッジストーンは恐慌をきたし、言葉ですらない、命そのものの声を出した。

    〔Ⅲ゚[::|::]゚〕『ぬほっわあああうほわわああ!!』

    ショットガンの銃爪を引く。
    しかし、弾は出ない。
    制圧射撃をショットガンで行うという愚。
    恐怖の中で戦闘を強いられていないナッツァは、驚くほど冷静に敗因を分析することが出来た。

    慢心。
    そして、無力。
    もっと注意するべきだった。
    もっと警戒すべきだった。

    どれだけ考え、細かな原因が分かったとしても、もう何の意味もない。
    ギンガナムの胸に空いた穴から三発。
    ブリッジストーンは腹と足を失い、そして眉間を穿たれ、当然のように倒れ伏す。
    全滅は必然だった。

    ナッツァに背を向けていた影はゆっくりと、悠然と、優雅に振り返った。
    表情は分からなかったが、声でそれが女であることが分かった。

    「私の友人に手を出そうとしたことと、あの子を怖がらせたこと。
    死に値する行いで、死体ごっこをしているような身分じゃないことは、分かっているかしら?」

    そして、ナッツァが最期に見たのは赤い光だった。

    * * *
    ――――――――――――――――――――

    考えれば考えるほど、奇妙な展開だった。
    朝の強盗に始まり、田舎者全員が棺桶を持っているという状況。
    クロジングはいつからイルトリアに憧れるようになったのだろうか。
    転がっているジョン・ドゥを見ると、背中に例のエンブレムが描かれていた。

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                     ,-┐ ∧ヾ V7 rァ
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                    ィx \マ ィ、 〈 | 、V rァ r‐┘
                 > `‐` l/,ィ V / 〉 〃 ,ニ孑
                f´tァ 厶フ ヽ! fj |/厶7厶-‐¬
                 │k_/`z_/> ,、    ,、 xへ戈!│
                | l      ̄ | f^´  ̄    !│
                ヽ`ー--、____| |      / /
                 \       __ ̄二ニ='/
                  `<ニ二、_____/
                        ``ー----─ '´
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    金色の木。
    これが何を意味しているのか、デレシアは知っていた。
    そして、その名前も。
    しかし、この時代に見るべき物ではないはずだ。

    ζ(゚、゚*ζ「……」

    この棺桶は強盗団が使用し、その強盗団を手引きした人間も同じエンブレムが描かれた物を使用していた。
    単なる偶然の一致ではない。
    強盗団と田舎者を結びつけるのは、金色の木。
    金色の木をエンブレムとして掲げる集団が中途半端な存在ではないことは、目の前に揃っている物証から明らかだ。

    棺桶の起動コードの書き換えは、ダットを最低でも十台は使わなければならない。
    だが実際に書き換えが行われているということは、ダットを十台以上所有していることを意味している。
    潤沢な資金と、惜しみのない武器・兵器の提供。
    笑って見過ごすには、いささか危険な匂いがする。

    想像以上に大きなことに発展しそうなのは歓迎すべきことだが、それに知人が巻き込まれるのは歓迎できない。
    万が一、金色の木の集団が現存するのなら、事態の大きさは間違いなく世界規模だ。
    だとすると、ペニサスが金色の木の集団に狙われる理由が、デレシアには分からない。
    どこかで目的が変わって、残っているのがシンボルマークだけなら、幾らでも理由は考え付く。

    いつの時代でも、それはよくあることだ。
    誰かが守ろうとするものは、同時に、誰かが変えようとするものでもあるのだ。
    そしていつの間にか本質が変異したものは、元々の目的とすり替わる。
    すり替わった物が正しく新しい存在として君臨し、元々のそれは古く間違ったものとして認知される。

    デレシアは思考を切り替える。
    相手が誰であれ、やるべきことをやるだけだ。

    ζ(゚、゚*ζ「……ねぇ、私、急いでるの。
          お茶に誘いたいなら、まずは三人じゃなくて一人で来ることね。
          マナーからやりなおしよ」

    殺意を視線に込め、デレシアは闇の向こうに目を向けた。
    生い茂る林と背の高い茂みが作り出す闇の向こう。
    星明りも月光も差し込まない闇の向こう。
    そこから、駆動音を響かせて棺桶が一機。

    Cクラス強化外骨格“ガーディナ”。
    夜間で視認されにくい特殊迷彩を施した十五フィートの機体が、ゆっくりとデレシアに歩み寄る。
    流線型の輪郭、そして肩に背負った十五フィートの刀が闇夜に浮かぶ。

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
              / ̄ \
           |    (⌒\
            代   〃Y⌒:\
            \{{ く| Y⌒:\
              \| く| Y⌒:\
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    /ⅰ《゚::|::゚》)『……驚いた、夜間迷彩をこの中で見破るなんて。
            すげぇ女もいるもんだ』

    反対側の茂みから、新たに一機。

    /ⅰ《゚::|::゚》)『ジョン・ドゥを一人でぶちのめす女だ、何があっても不思議じゃない』

    最後に、デレシアの背後からもう一機。

    /ⅰ《゚::|::゚》)『しかし妙だな。 “魔女”はもう一世紀半近く生きてるんだろ?
            それにしちゃあ若いな』

    合計三機のガーディナが、デレシアを取り囲みながら姿を現した。
    軽口を叩きながらも、男達の指は柄を掴み、抜刀の準備を整えている。
    距離も近づきすぎず、必殺の間合いを保ったまま、すり足でデレシアの周囲を移動する。

    /ⅰ《゚::|::゚》)『そいつの銃に気を付けろ。
            ……油断したら、金玉をもがれるぞ』

    飛び道具こそ持っていないが、あの刀は投げることも出来る。
    一見して、生い茂る木々の間での白兵戦はデレシアに利があるように思えるが、それは過ちだ。
    ガーディナの一振りなら、木々は障害物と考えなくていい。
    両陣に関係するのは、視界が狭まった中での戦闘が強いられることだ。

    /ⅰ《゚::|::゚》)『惜しいな、美人なのに』

    /ⅰ《゚::|::゚》)『殺した後で楽しめ』

    戦端を開いたのは、デレシアの背後に回り込んだガーディナだった。
    土と落ち葉を舞い上げ、死角から一瞬で接近。
    わざわざ振り向かなくとも、選んだ攻撃が袈裟斬りの一線であることは分かる。
    他の二機が斬り上げと横薙ぎによって、デレシアの退路を一瞬で塞いでいることからそれは明らかだ。

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                     ! .!            __,,,,,.........---ーーー'''冖'''''''"゙゙゙゙゙゙゙゙ ̄ ̄ ̄ ̄
                      l_,,ヽ -―'''''''"゙ ̄´      .__,,,,,,,.......... ---――¬¨¨¨ヽ¨¨¨¨
                 _,,,.. -ー''''"´       ._,,,,.... -―'''''''゙フ ̄/                  ヽ
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    思考はコンマ一秒にも満たない、雷電的速度と刹那の時間で行われた。
    逃げ場はなく、全ての攻撃を回避することは出来ない。
    全てが一撃で人間を絶命させる威力を秘めており、慢心も過信もない太刀筋をしている。
    必殺の陣形に、必殺の攻撃。

    見事だ。
    骨のある棺桶持ちの登場は喜ばしい物だが、今の状況では迷惑なだけだ。
    デレシアは方針を定めた。
    敵の攻撃でデレシアが敗北する前提としては、その刃がデレシアに届くというものがある。

    それを覆せば、この状況は突破できる。

    /ⅰ《゚::|::゚》)『ぬっ?!』

    二発の銃弾と回し蹴りの一つでデレシアに到達する前に三本の刃を破壊し、デレシアは状況を覆した。
    逆に、デレシアによって攻撃が無効化された三人は無防備な姿を晒すこととなる。
    内一機は、その状況に即応できずに、デレシアの標的となった。

    ζ(゚、゚*ζ「邪魔よ」

    弱点である顔面に向けて一発。
    カメラを砕いてその中にある柔らかい肉を破壊し、数を減らす。
    左手のデザートイーグルの遊底が後退したまま固定され、残弾がなくなったことを知らせる。
    残るは右手に二発。

    /ⅰ《゚::|::゚》)『豪っ!!』

    /ⅰ《゚::|::゚》)『応っ!!』

    この隙を逃さず、二機は更にもう一歩踏み込んだ。
    格闘戦に切り替えたその潔さは彼らの優秀さを物語る。
    加えて、土を蹴り上げてデレシアの視界を奪おうとしたそのしたたかさも見事だ。
    しかし、したたかさで言うなら、デレシアの方が彼らよりも遥かに上だった。

    土を蹴ってくることはある程度考えられた展開だ。
    姿勢を限界まで低くして、デレシアは片足立ちとなったガーディナの軸足の関節部に向けて二発撃ち込んだ。
    衝撃でバランスを崩した巨体は仰向けに倒れ、斜面を転げ落ちて攻撃は失敗に終わる。
    残された一機の拳は、デレシアを仕留めそこなって宙を切る。

    巨体ほど低い場所への攻撃が困難となるのは、常識だ。
    だからこそ、視界を奪おうとしたのだ。
    考えが手に取るように分かる。
    相手の技量と目的さえ分かれば、戦術は自ずと限られる。

    姿勢を整えたデレシアはデザートイーグルの弾倉を排出し、両手を降ろす。
    新たな弾倉が袖から飛び出し、デザートイーグルに収まる。
    ストッパーを外して遊底を解放すると同時に初弾を薬室に送り込み、デレシアは転倒した一機に襲い掛かる。
    うつ伏せになっていたガーディナの背に飛び乗り、背中のある一点を目掛けて、斜め下から左のデザートイーグルの弾を全て撃った。

    バッテリーを破壊されたガーディナは、デレシアの目論見通り動きを止める。
    デレシアを追って落下してきたガーディナの飛び蹴りを回避するため、デレシアは大きく一歩前に踏み込んだ。
    ガーディナの足が、頭上スレスレを通過した。
    バッテリーが破壊されたガーディナの近くに着地したそれは、顔を片手で庇いながら素早く体の向きを変え、デレシアと向き合う。

    /ⅰ《゚::|::゚》)『……恐ろしい女だ。
            生身で棺桶相手に一歩も引かないどころか、潰しに来るとは……
            それも、Cクラス相手に……』

    返事をするのも面倒だと感じているデレシアは、デザートイーグルで答えた。
    つまり、黙れ、という明確なメッセージを込めた一発だ。

    ζ(゚、゚*ζ「……」

    /ⅰ《゚::|::゚》)『お前、何者だ?
            お前が魔女なのか?』

    それでもなお質問を続けるガーディナの棺桶持ち。
    問答をするつもりはないと、何故分からないのか。
    三発連続でガーディナの肩関節を狙い撃つが、肩をこちらに向けてそれを防がれた。

    /ⅰ《゚::|::゚》)『……どうやら、俺一人では勝てそうにないな』

    実力差が分かった上で、その大口。
    そして、含んだ口調の言葉の答えは、慌ただしく接近する跫音。
    このタイミングで、増援。
    現れたのは、六機のジョン・ドゥ。

    〔Ⅲ゚[::|::]゚〕『フィリップ、ブリッジ!! 無事か?!
           銃声がしたんで、助けに来たぞ!!
           さぁ、魔女を……
           ……あぁ……おおっ、この魔女が!! 』

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              ]\_______」0____ _____\________
    巨三]二二二二==-------------ヽ[=≡]::::::::::::::::::::::::::::::: ______ ┌─┐¶
            =]三∥∥__=====\ =≡ __  __ノ      \\  | |
               //ヾ ◎└───┘| =≡」|\了 /          \\」 |
               // ヾ           |  ̄ ̄ │ ヽ-ヽ    
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    ミニミ軽機関銃を腰だめに撃とうとするが、それをガーディナの棺桶持ちが手で制した。

    /ⅰ《゚::|::゚》)『やめろ!! この女、相当に強い!!
            銃はこの女には通用しない、撃つな、居場所を教えるだけだ!!
            白兵戦だ、覚悟を決めろ、男だろ!!』

    その言葉に従ったのは、僅かに二人だけだった。
    それ以外のジョン・ドゥは、警告を無視して手に持った重火器を発砲、発砲炎によってその居場所をデレシアに教えた。
    離れた安全な場所にいたにもかかわらず、安全だからと決めつけ、安全な場所からデレシアを殺そうとしたのだ。
    この状況で最も愚かしい判断だった。

    /ⅰ《゚::|::゚》)『よせ、馬鹿!!』

    四発の銃声がその場に轟き、発砲した四機のジョン・ドゥはガーディナの棺桶持ちが危惧した通り、デレシアに射殺された。
    両手のデザートイーグルが、弾切れを知らせる。
    袖に仕込んだ弾倉を装填している時間は、与えられそうにもない。
    両脇の皮製のホルスターにそれを収めた時、ガーディナの棺桶持ちは声を張り上げた。

    /ⅰ《゚::|::゚》)『今だ!! 行けぇ!!』

    その声に鼓舞された二機のジョン・ドゥが木々の間をすり抜けてデレシアに肉薄する。
    両脇にやっていた手を後ろ腰に回し、そこから水平二連式ソウド・オフ・ショットガンを二挺抜き放ち、スラッグ弾を二発ずつ愚蒙の胸に撃ち込んだ。
    後二歩のところで息絶えたジョン・ドゥ達を押しのけるようにして、ガーディナが。

    /ⅰ《゚::|::゚》)『駄らぁっ!!』

    なるほど。
    嗾けたのは、このためだったのだ。
    デレシアの視界を奪い、楯として活用するための白兵戦。
    いつの間にか、腰に差している高周波ブレードを左の逆手に構えている。

    拳による打撃と道具を使った斬撃でデレシアを追い詰め、殺す腹積もりなのだ。
    銃がなければCクラスの棺桶を殺せないと思っているのだろう。
    それこそが慢心。
    常識に囚われた愚かな判断。

    深い溜息を吐き、ショットガンを手放したデレシアは丹田に力を込めた。
    明確な死の気配を纏った左拳を掌で上に受け流し、次に放たれた右足のローキックが技として成す前に、膝関節を狙って蹴りを見舞った。
    金属が砕ける音から、右膝関節が破壊されたことをデレシアは聞き取った。
    受け流された左拳が、今度は上からデレシアを押し潰しに来た。

    /ⅰ《゚::|::゚》)『潰れろ、この魔女が!!』

    手首を返して刃をデレシアに向けるが、デレシアは肘関節に添えた右手一つでそれを止めている。
    何も持たぬ右拳が、動きを止めたデレシアの息の根を止めようと風を切って迫る。
    それを見ることなく、デレシアは左ストレートでそれを受け止めた。

    /ⅰ《゚::|::゚》)『なにっ?!』

    普通、Cクラスの棺桶の打撃を素手の人間が止められるとは思わない。
    デレシア相手に接近戦を挑んだのが運の尽き。
    もっと用心深く、道具を揃えて準備しておかなければ白兵戦でデレシアには勝てない。
    棺桶の強固な装甲を、デレシアの拳は文字通り打ち抜いた。

    /ⅰ《゚::|::゚》)『なぁっ、はあぁぁぁっ?!』

    鎧が砕け、それに守られていた男の腕が露出する。
    デレシアの拳は止まらなかった。
    男の腕は折れ曲がり、砕けた骨が肉を突き破って体外に露出。
    神経と血管は千切れ、男は激痛に悲鳴を上げ、その巨体が大きく一歩後退る。

    /ⅰ《゚::|::゚》)『ぬっ、がああああ!?
           こ、こいつ……こいつはっ!!』

    男は最後まで怒りに満ちた言葉を続けることなく、ガーディナの装甲を分離した。
    それと同時に、装甲の継ぎ目から白いガスが勢いよく噴射された。
    身軽になったガーディナは厄介だ。
    戦場からの緊急離脱を目的としたその機能は、使い方を変えれば対峙した相手を一撃で倒すための技にもなる。

    催涙ガスによって視界を奪った一瞬で勝負をつけにくる。
    デレシアは高く跳躍し、ガスの中で飛び後ろ蹴りを放った。
    次の瞬間、金属が折れ、肉が千切れる湿った音がデザートブーツの先からした。
    ガスが晴れると、そこには首が半回転したガーディナが転がっていた。

    ζ(゚、゚*ζ「……ったく、もう」

    地面のショットガンを拾い上げ、腰のホルスターに戻す。
    両脇のデザートイーグルの弾倉を交換してから、デレシアは生かしておいたガーディナに歩み寄る。

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            、 \ O       `斗
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    /ⅰ《゚::|::゚》)『……狙いはなんだ?』

    ζ(゚、゚*ζ「質問するのは私。
          首謀者は誰?」

    /ⅰ《゚::|::゚》)『はっ! 俺達は上の命令で動いただけだ。
           上だって、依頼を受けたから俺達に命令したに過ぎない。
           分かるだろ?』

    依頼人の名前を末端の人間が知っているはずがない。
    末端の人間はあくまでも駒。
    駒は命令通りに動くだけでいいのだ。

    ζ(゚、゚*ζ「どこの会社?」

    /ⅰ《゚::|::゚》)『……』

    銃口を膝関節に向け、銃爪を引く。
    関節から先が壊れるが、そこに人間の足はない。
    Cクラスの棺桶にもなると、棺桶を纏う人間は棺桶の上半身に入ることとなる。
    それ故に、脚部が破壊されるとCクラスの棺桶は身動きが取れなくなってしまう。

    /ⅰ《゚::|::゚》)『……ふ、フィンガー・ファイブ社だ』

    デレシアの苛立ちが伝わったのか、男はその名を口にした。
    世界的な大企業の内藤財団が所有する傭兵派遣会社。
    依頼主を突き止めるには、直接本社に向かうしかなさそうだ。

    ζ(゚、゚*ζ「で、作戦内容は?
          この後どうするつもりだったの?」

    /ⅰ《゚::|::゚》)『おいおい、それも喋らなきゃ……』

    ζ(゚、゚*ζ「餓死するのって、相当苦しいらしいわよ」

    電源供給が停止した棺桶は、自力で外す方法がない。
    棺桶は通称ではなく、死体を収めるための本物の棺桶になり得るのだ。
    その場合の死因は餓死か衰弱死。
    苦しみと孤独の中で死ぬことを考えれば、今何が必要なことか、男には分かっているはずだ。

    /ⅰ《゚::|::゚》)『……“魔女”殺害後、明日、ニクラメンで他のチームと合流する予定だった。
            ついでに言っておくが、俺達のチームは全部で六人一班を三グループ、合計で十八人だ』

    ζ(゚、゚*ζ「他のチーム?」

    /ⅰ《゚::|::゚》)『おいおいおいおい、待った、いいか、言っておくが、俺は向こうのチームの目的は知らないからな!
            俺が知ってるのはこれぐらいだよ!』

    確かに、この男がこれ以上嘘を吐いても利点がない。
    しかし、一点だけ気になる部分があった。

    ζ(゚、゚*ζ「フィンガー・ファイブなら、後の二人は……」

    /ⅰ《゚::|::゚》)『……れた』

    ζ(゚、゚*ζ「は?」

    /ⅰ《゚::|::゚》)『途中で逸れちまったんだよ!!
           あの馬鹿兄弟、勝手にどこかに行っちまったんだ!』

    逸れた、と云う幼稚な言葉を傭兵が使うとは思ってもみなかった。
    脱走、敵前逃亡なら分かるが、まさか逸れた、とは。
    だがそれが意味するのは、男にとっても完全に予想外の出来事であったということだ。

    ζ(゚、゚*ζ「……その兄弟、装備は?」

    デレシアは久しぶりに、嫌な予感がしていた。
    棺桶の保有と提供に長けた金色の木の集団がペニサスの命を狙っているのなら、使用する棺桶によっては最悪の事態に発展しかねない。
    声が孕んだ憤激の色を感じ取ったのか、男は怯えた声で答えた。

    /ⅰ《゚::|::゚》)『お、俺達と同じだ、俺達と同じガーディナだよ!!』

    ζ(゚、゚*ζ「そう」

    首の付け根に一発撃ち込み、デレシアは男を殺した。
    情報は十分だ。
    だが、その情報を聞いてもデレシアの不安は一向に薄れない。
    何かが起こる前に、それを防ぐ必要がある。

    ――来た道を全力で駆け上る途中で、デレシアは不安の正体を目撃した。

    * * *
    ――――――――――――――――――――

    腰に手を当てて、グラスを満たしている薄めたリンゴの果汁を、喉を鳴らして飲む。
    乾いた体に甘く芳醇な果汁が染み渡る。
    細かな果肉は果汁を吸い込んでいて、噛み潰すと普通以上の果汁がそこから染み出た。
    風呂上がりに果汁を飲むヒート・オロラ・レッドウィングは、自分の隣で彼女の真似をして喉を鳴らすブーンを見て、頬を緩ませずにはいられなかった。

    ――微かな硝煙の匂いが、この家からしていた。
    風呂場で聞いた減音器によって抑えられた七発の銃声も、この家が発生源だ。
    それは間違いなくペニサスが銃を撃ったということで、撃つだけの理由があったということだ。
    近距離、中距離であれば減音器によって軽減した銃声は比較的控えめなものになる。

    だが、風呂場で聞いた銃声は控えめとは言い難かった。
    肉の塊を床に叩きつけるような音だ。
    それはつまり、大口径の銃を使用したということ。
    加えて、この状況で大口径の銃を使用するということは、遠距離への狙撃ということ。

    “魔女”の正体は、狙撃手。
    そこまでは風呂場でヒートが推理したことだが、それが真実かは分からない。
    手に入ったピースを合わせて導いた憶測に過ぎないのだ。
    しかし、そんなことは問題ではなかった。

    風呂から上がってこうしてくつろいでいても、ヒートの項の毛は逆立ったままだ。
    ブーンも何かに怯えているようで、少し落ち着きがなく、ヒートの傍から離れようとしない。
    ペニサスの表情からは何も窺えないが、気付いているのだろうか。

    ('、`*川「そうだ、ヒートさんにブーンちゃん。
         デレシアさんに頼まれていた物をお渡ししますね」

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    ペニサスは机の上に綺麗に折り畳まれていた、カーキ色の布を広げて見せる。
    それは、デレシアが普段身に纏っているローブと同じものだった。
    いち早く気づき、反応したのはブーンだった。

    (∪´ω`)「デレシアさんと……おなじ……ですか?」

    ('、`*川「えぇ、そう。
         同じ素材で、同じ形のローブよ」

    ノパ⊿゚)「あたしの分まで作ってくれたんですか?」

    ('、`*川「勿論ですよ。
         これからの旅に、必ず役立ちますよ」

    ノパー゚)「ありがとうございます、ペニサスさん」

    ヒートはこの布の性能を知っている。
    鉛弾を止め、ナイフを止める優れた繊維だ。
    軽く、触った感じでは保温や防寒、防水の機能も備わっていそうだ。
    受け取ってすぐに、ヒートはそれを身に纏った。

    グラスを持ったままのブーンに、ペニサスはそれを羽織らせた。
    ローブの裾は地面に着くか着かないかの位置までの長さで、フードはやや大きめに作られていた。

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               く:.ヘ、:.:.:.:ヽ (   `>-イ, ':.:.:.:.ヽ}
              ノ´:.:.:.:.:ヘ、:.:.:.ヘ、   { ノ:_>ーく´
               /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:>:.:、:.>ソ:.:.'´:.:.:.:.:.:.:ハ
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    ('、`*川「ブーンちゃんが大きくなっても、簡単に大きさを調節できるようにしてあるの。
         気に入ってくれたかしら?」

    (*∪´ω`)゛

    元気よくブーンは頷いた。

    (*∪´ω`)「あ、ありが――」

    ――ブーンの顔が一瞬で青ざめた次の瞬間、家の屋根が爆発した。

    ノハ;゚⊿゚)「なにっ?!」

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    木片から顔を庇ったヒートは、屋根に空いた穴から外を見た。
    白銀の月を背に浮かぶ、巨大な翼。
    刹那の時間で、ヒートはそれが敵であると同時に、危険極まりない存在であることを理解した。

    ノハ;゚⊿゚)「二人とも奥に!!」

    ヒートは壁に向かって駆けより、Aクラスの強化外骨格を手に取る。

    ノパ⊿゚)『あたしが欲しいのは愛か死か、それだけだ!!』

    コンセプト・シリーズ、対強化外骨格用強化外骨格“レオン”を装着し、ヒートは改めて敵を見上げた。
    ヘッドマウントディスプレイで、空に浮かぶ襲撃者の姿を拡大する。
    人型のシルエットに、三角形の巨大な羽。

    ノハ<、:::|::,》「棺桶……だと?」

    飛行機能を有する棺桶の存在を、ヒートは耳にしたことがある。
    ただし、その数は非常に少ない上に、ほとんどの棺桶をイルトリアが所有していると聞いた。
    それほど貴重な棺桶を、強盗団の一味が所有していることが、不可解で仕方がなかった。
    ヒートは空を飛ぶ敵と戦った経験がないだけでなく、このレオンには対空装備も遠距離攻撃用の武器もない。

    レオンのヘッドマウントディスプレイに見られていることに気付いたのか、空を飛んでいるそれが素早く上昇する。
    地上と違って三百六十度全てが敵の逃げ道、そして攻撃位置となる。
    迎撃することは考えず、ヒートは守りに徹することにした。
    守るのは自身の命ではなく、ブーンとペニサスの命だ。

    レオンの装甲は非常に薄いが、生身の人間よりかは銃弾に対する耐性がある。
    ヒートの動きは疾く、そして判断は正しかった。
    直後、反対の屋根を突き破って、無数の銃弾が降り注いできた。

    ノハ<、:::|::,》「ちぃっ!!」

    ブーンの上に乗って彼を銃弾から守りつつ、ヒートは巨大な左手で倒れたペニサスの体を守る。
    射撃は長く行われ、その間に次々と榴弾が撃ち込まれた。
    着弾点から火の手が上がり、室内は一瞬で炎に包まれる。
    木製の壁と屋根がオレンジ色に染まり、空気が熱を持つ。

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    完璧な強襲だ。
    炎で逃げ場を絞り、考えている間に銃弾の雨で仕留める。
    ヒートがかつて使ったことのある手だ。
    だが、上空からそれを行ったことはない。

    銃弾の雨が、一瞬だけ止む。

    ノハ<、 |::,》「こっちだ!!」

    ブーンとペニサスを抱えて、ヒートは洗面所に向かう。
    二人を洗面所に置いて大きめのバスタオルを手に取り、風呂場へとつながる扉を蹴破り、湯船にタオルを沈めた。
    濡らしたタオルをブーンとペニサスに被せ、ヒートは床板を左手で破壊しようとして、思い留まった。
    炎に囲まれたら、逃げ場を求めるのは誰でも考え付く。

    ヒートが二人を炎から身を守れる風呂場ではなく、その隣にある洗面所に避難させたように、相手の裏をかかなければならない。
    相手は空を飛んでいる。
    このまま下に逃げたとしても、樹に爪を立てて降りている間は直線を移動することになるため、無防備な状態を強いられる。
    狙い撃ちにされるのは目に見えていた。

    再び、銃弾が雨となって降り注ぐも、それは誰もいない浴槽を破壊する。
    二発連続して榴弾がその後に続くも、やはり、そこには誰もいない。
    ブーンと共に過ごした浴室は、ヒートの目の前で一瞬の内に無残な姿と化した。
    あそこにブーンとペニサスを避難させていたらと思うと、背中に寒気が走る。

    全く身動きが取れない。
    こうして二人を守るだけで精いっぱいだ。

    ('、`*川「ヒートさん、ダイニングの机の下のケースを取っていただけますか?」

    この場にそぐわないペニサスの落ち着いた声は、ヒートの焦る心を冷却させた。
    炎に囲まれながらも冷静さを失わないのは、彼女の胆力がヒート以上であることを雄弁に物語っている。

    ノハ<、 |::,》「あ、あぁ」

    脚部のローラーを使って素早く移動。
    ヒートの後を追って、銃弾が床を穿っていく。
    射手は、何かを頼りに撃っているようだ。
    テーブルの下のライフルケースを掴み、ヒートはそれをペニサスの方に滑らせた。

    ノハ<、:::|::,》「うおおおっ?!」

    一層激しくヒートの上から銃弾が降り、その場に釘付にされる。
    発射速度から、軽機関銃だと分かった。
    左手で弾を防ぐ中、ヒートはその言葉を聞いた。
    そして目撃する。

    “魔女”ペニサス・ノースフェイスの姿を。

    ('、`*川『切り札は、私が使う時に使う』

    ライフルケースだと思っていたそれが開き、機械籠手と巨大なライフルが姿を現す。
    それはAクラスの棺桶だと一目で分かった。
    慣れた手つきで籠手を装着し、ライフルを肩付けに構えたペニサスは、向かいの壁に向かって一発撃った。
    最初に空けられた穴からヒートが目撃したのは、棺桶が殴られたようによろめいた瞬間だった。

    ボルトアクションで装填作業を行い、ペニサスは二射、三射と次々に銃弾を放って飛行する棺桶に追撃を仕掛ける。
    それは本当にボルトアクションなのかと疑いたくなるほど疾く、滑らかな動きだった。
    既にフルオート射撃の領域に達する装填速度は、神業と言っても過言ではない。
    仲間の窮地に、もう一機が素早く反応した。

    四射目を発砲した時、機関銃の狙いをペニサスに変えたのだ。

    ノハ<、:::|::,》「やばいっ!!」

    ('、`;川「っ……!!」

    ペニサスが老体に鞭打って動いたのは、自身の身を守るためではなかった。
    それは、ヒートと同じ理由だった。

    ;(;∪´ω`);「……ひっ?!」

    ('、`;川「ブーンちゃん……大丈夫?」

    流れ弾から、ブーンを庇うためだった。
    銃弾はペニサスの足に当たっていた。
    そこから赤黒い血が流れ、ペニサスの顔から血の気が引いて行く。

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    ノハ<、:::|::,》「ペニサスさん!!」

    ヒートがその名を呼ぶのと同時、玄関の扉が文字通り吹き飛んだ。

    ζ(゚-゚ ζ「……っ!!」

    燃え盛る炎も銃弾も完全に無視して登場したデレシアは、ペニサスの姿を見て、状況を理解した。
    天井を見上げることなく、デザートイーグルで機関銃を持つ敵に向けて牽制射撃を行う。
    姿は見えない上に、当たる確証もない。
    それでも、デレシアの射撃は敵の攻撃を一時的に止まらせることに成功した。

    ヒートはその隙に、デレシアと共にペニサスの元に駆けた。

    ('、`*川「……デレシアさん」

    嬉しそうにデレシアを見るペニサス。
    その声に力はなく、木が爆ぜる音に掻き消えてしまいそうなほどか弱い。
    ペニサスの元に駆け寄り、崩れかかったその体を抱き寄せ、デレシアは言った。

    ζ(゚-゚ ζ「……ペニ、奴らの狙いは貴女。
           この場は一旦引くわよ」

    ('、`*川「いいんですよ、デレシアさん。
         この銃創、この老体には致命傷です。
         ふふ……昔なら、と思ってしまいますね。
         うふふ、本当に、悪い癖……」

    血溜まりは広がるばかりで、ペニサスの下でブーンが不安そうな顔で彼女を見上げている。

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    ζ(゚-゚ ζ「ペニ……」

    デレシアはただ、彼女の名前を呼んだ。
    情況は、ペニサスの言う通りだった。
    脚に負った銃創では、もって十分。
    体力の落ちている老体がそこまで持つとは思えない。

    それが分かってしまっているからこそ、デレシアは気休めの言葉もかけなかったのだ。

    ('、`*川「ふふっ、実を言うと、私、デレシアさんと一緒に旅をしたかったんです……
         お揃いのローブを着て、貴女の見る世界を私も見たかった……」

    目を細めて、子供のように夢を語るペニサス。
    その表情は穏やかで、苦しみを感じさせぬ口調だった。

    ('、`*川「だから代わりに、せめて、私の憧れた貴女の旅路を守らせてください。
         ……どうか、よき旅を」

    ブーンの頬を機械籠手で触れ、ペニサスは悲しそうな顔で微笑む。

    ('、`*川「ブーンちゃん……可愛い旅人さん……
         貴方の旅は……ここで終わらせない。
         絶対に……こんなところで終わらせはしないから」

    力強い言葉の後、ペニサスは一つ息を吸って言った。

    ('、`*川「ブーンちゃん……ペニおばあちゃんから、一つ宿題よ……
         私の代わりに、世界を見て、そして知って……」

    負傷した足を庇いながらライフルを杖に立ち上がり、ペニサスは明瞭な声でブーンに告げた。

    ('、`*川「愛の……その意味を」

    炎に囲まれながらに悠然と立つその姿は、凛としていて、これから死を迎える人間とは思えない気品に満ちたものだった。
    これが、ペニサス・ノースフェイスと云う人間。
    死の淵でなお失わぬ尊厳、それこそが人間だけが持つ強さ。

    ('、`*川「ヒートさん、私が注意を引いている間にデレシアさんとブーンちゃんを連れて行って下さい。
         私が狙いなら、私が生きて抵抗している限り貴女達を追いはしないはず。
         この母聖樹を伝って下に降りれば、すぐそこにバイクが停まっています」

    弾倉を取り換える仕草は熟練の達人そのもの。
    素早く、滑らかで正確。
    それが物語るのは、ペニサスはやはり孤高の狙撃手であるということだった。

    ζ(゚ー゚*ζ「……ペニ、貴女に逢えたことは私の誇り。
          貴女の友人であることは、私の自慢。
          さようなら、ペニ……」

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    そう言って、デレシアはペニサスにそっと口付けをした。
    親愛の証の接吻。
    そして、離別の接吻。

    ζ(゚、゚*ζ「……ヒート、行くわよ」

    ノハ<、:::|::,》「……あぁ」

    ヒートは左手で床板を引き剥がし、呆然としているブーンを脇に抱えた。
    デレシアはヒートの背中に乗り、そして、ヒートは爪を立てて母聖樹を伝ってその場を離脱した。

    * * *
    ――――――――――――――――――――

    ペニサスはヒート達が無事に脱出したのを見届けてから、チェイタックを構えた。
    狙うのは、天駆ける棺桶。
    天井に銃口を向け、銃爪を引く。
    手応えはないが、ペニサスがここに残っていることを伝えるにはこれで十分。

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    ――ペニサス・ノースフェイスは想いを馳せる。
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    ペニサスがここに残っていることを知った襲撃者二人は、弾の飛んできた場所――すなわち、ペニサスが立っている場所――に榴弾と銃弾を一斉に浴びせる。
    屋根が砕け、崩れ、燃える。
    ペニサスはこれを狙っていた。
    視界が開ける、この瞬間を。

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    ――ペニサス・ノースフェイスは過去を想う。
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    照準器を覗き込み、そこに敵を捉える。
    次の榴弾が放たれ、ペニサスは飛来するそれに狙いを合わせて銃爪を引く。
    爆風は発砲者のバランスを崩した。
    そこに、ペニサスは素早く二発の銃弾を撃ち込んだ。

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    ――想うのは自分の教え子たち。
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    吹き飛んだのは頭ではなく、腕だった。
    狙いが僅かにずれている。
    それは仕方がない。
    急激に衰えた視力が原因で狙撃教官を引退し、隠居したこの身では。

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    ――戦場で死んだ教え子。

    ――訓練中の事故で死んだ教え子。
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    降り注ぐ銃弾が、ペニサスの左肩を貫く。
    銃を支えられなくなった左腕のことを、ペニサスは忘れた。
    片手で狙いを変えて、素早く動く敵影に二連射。
    片方の脚が半分になったのを見て、改めて狙いを調整する。

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    ...  ...     ...:.:.             .    ...   ....:.:.:.:.::..
    ――教え子の名前は全て覚えている。

    ――教え子の表情も全て覚えている。

    ――教え子の最期も全て記憶している。
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    軽機関銃の射撃が止む。
    血を多く失ったため、ペニサスは足に力が入らず、その場に崩れ落ちてしまう。
    血の付いた膝の上にライフルを乗せ、夜空高くに逃げた棺桶を追う。
    三射、四射、五射。

    上昇速度に合わせて感覚を空けた連射は、棺桶の片翼を破壊し、それを墜落させることに成功した。
    落ちる間際に榴弾が発射されたのを、ペニサスは見た。
    撃ち落とそうにも、弾倉は既に空。
    薬室に残弾はなく、装填作業も間に合わない。

    間もなく、紅蓮の炎がペニサスの視界を包み込んだ――

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

    一世紀半。
    思えば、長い人生だった。
    振り返れば、短い人生だった。
    想い馳せれば、満ち足りた人生だった。

    “魔女”と呼ばれ、“先生”と呼ばれ。
    デレシアに出会い、世界の広さと自身の小ささを知った。
    彼女の在り方に憧れ、生き方に夢を見た。
    そして、理解した。

    憧れたからこそ、彼女の強さを知った。
    夢見たからこそ、彼女の孤独を知った。
    本音を言えば、彼女と旅をしたかった。
    だが、理解したからこそ、ペニサスはそれを自分の中にしまいこんだ。

    代わりに、ペニサスは託すことにした。
    自分が使うはずだったローブを。
    想いと夢を込めた、ペニサスの夢を。
    小さな教え子、ブーンに託したのだ。

    多くを見て、多くを知って。
    多くの意味ある物を後世に残すことが出来た。
    ならば、それで十分。
    十分に生きた。

    意味のある人生を過ごせたのならば、それで十分だった。

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

    ――どういう訳か、意識はまだ残っていた。

    ('、`*川「……」

    ゆっくりと瞼を開くと、理由はすぐに分かった。

    ('、`*川「ギコ……来てくれたの……」

    ム..<::_|.>ゝ『ペニサス先生……』

    泣き虫で、不器用で、誰よりも優しい教え子。
    棺桶に身を包んだギコ・ブローガンが庇ってくれたのだ。

    ('、`*川「……ふふ」

    ム..<::_|.>ゝ『……お世話に……なりました』

    ('、`*川「ギコ、ありがとう……」

    (∪;ω;)「ペニおばーちゃん……」

    ('、`*川「あらあら……ブーンちゃんまで……」

    ギコの隣から、涙で顔をぐしゃぐしゃにしたブーンが出てきて、ペニサスの手を強く握った。
    ギコが連れてきたのだろう。
    いや、きっと、デレシアがギコに頼んだに違いない。
    最期の瞬間に教え子を立ち会わせてくれたのだ。

    なんと嬉しいことか。
    なんと素晴らしいことか。

    (∪;ω;)「お……しんじゃ……いやです……」

    ('、`*川「……」

    (∪;ω;)「もっと……いろいろ……おしえて……ほしい……です」

    大丈夫。
    ブーンなら、きっと、ペニサスが伝えたかったことを旅の中で知ることが出来るはずだ。
    今のブーンに必要なのは、言語能力でも計算能力でもない。
    愛の意味を知ることだ。

    ('、`*川「……」

    目が霞んで、何もかもがぼやけて見える。
    全身の感覚が失われ、体に力が入らない。
    教え子の涙も拭ってやれないとは、情けない限りだ。
    声は、もう出せそうもなかった。

    出来るのは微笑むだけ。
    教え子の腕の中で最期を向かえられる幸せに、ペニサスは涙を流した。

    ム..<::_|.>ゝ『……』

    (∪;ω;)「……!!」

    声は、もう、聞こえない。
    肌に触れるギコの感触も、手を握るブーンの温もりも。
    炎の熱も、痛みも。
    全てがゆっくりと溶け合い一つになり、心地よい奇妙な感覚だけが残され、それも消える。

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    二 ニ - ‐ ‐
    三三三二 ニ - ‐ ‐
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    三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三二 ニ - ‐ ‐

    八月二日。
    フォレスタで、“魔女”と呼ばれた一人の女が最愛の人間に看取られながら、静かに息を引き取った。

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                         Ammo→Re!!のようです
                        ~Ammo for Relieve編~


                        第四章【Teacher-先生-】





                                                 To be continued...


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