FC2ブログ

Ammo→Re!!のようです

まとめだよ

最新の記事

既刊紹介 (06/14)  電子書籍版 新刊予告 (10/12)  第十章【Ammo for Reknit!!】 + Epilogue (12/05)  第九章【knitter-編む者-】 (10/01)  第八章【heroes-英雄-】 (07/19)  魔女の指先、硝子の銃爪 PV (06/29)  第七章【housebreaker-怪盗-】 (06/13)  第六章【bringer-運び手-】 (05/05)  第五章【lure-囮-】 (04/16)  第四章【monsters-化物-】 (04/16)  第三章【trigger-銃爪-】 (04/16)  第二章【departure-別れ-】 (04/16)  第一章【rider-騎手-】 (04/16)  序章【concentration-集結-】 (04/16)  第十章【Ammo for Tinker!!】 (04/16)  第九章【cameraman-カメラマン-】 (04/16)  第八章【brave-勇気-】 (04/16)  第七章【driver-ドライバー-】 (04/16)  第六章【reaction-反応-】 (04/16)  第五章【drive-ドライブ-】 (04/16)  第四章【preliminary-準備-】 (04/16)  第三章【preparedness-覚悟-】 (04/16)  第二章【集結- concentration -】 (04/16)  第一章【mover-発起人-】 (04/16)  序章【beater-勢子-】 (04/16)  Epilogue【Ammo for Reasoning!!】 (04/15)  第十章【Reasoning!!-推理-】 (04/15)  第九章【order-命令-】 (04/15)  第八章【intercept-迎撃-】 (04/15)  第七章【drifter -漂流者-】 (04/15)  第六章【resolution-決断-】 (04/15)  第五章【austerity-荘厳-】 (04/15)  第四章【murder -殺人-】 (04/15)  第三章【curse -禍-】 (04/15)  第二章【departure-出航-】 (04/15)  第一章【breeze-潮風-】 (04/15)  序章【fragrance-香り-】 (04/15)  Epilogue【Relieve!!-解放-】 (04/15)  第十章【answer-解答-】 (04/15)  第九章【rage-激情-】 (04/15)  第八章【mature-成長-】 (04/15)  第七章【predators-捕食者達-】 (04/15)  第六章【grope-手探り-】 (04/15)  第五章【starter-始動者-】 (04/15)  第四章【Teacher-先生-】 (04/15)  第三章【fire-炎-】 (04/15)  第二章【teacher~せんせい~】 (04/15)  第一章【strangers-余所者-】 (04/15)  Prologue-序章- 【Strategy-策-】 (04/15)  【???】 (04/14) 

記事一覧はこちら

第三章【fire-炎-】

  1. 名前: 歯車の都香 2017/04/15(土) 19:33:48
    第三章【fire-炎-】

    ┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

    Do not think about the witch, if you want to survive more few days.
    あの魔女のことを考えるな、もう数日でも生きたければ。

    Do not approach, if you want to survive more few hours.
    近づくな、もう数時間でも生きたければ。

    Do not look back, if you want to survive more few minutes.
    振り返るな、もう数分でも生きたければ。

    Do not stop, if you want to survive more few seconds.
    止まるな、もう数秒でも生きたければ。

    Do not fight, if you want to survive more few moments.
    戦うな、もう数瞬でも生きたければ。

    Do not forget these things, if you want to...
    忘れるな、もしもお前が――

                           A collection of saying - 【The unsung song of war】 -
                                         諺集【謳われぬ戦唄】より抜粋

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
    ┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
    Forresta ⇒ August 2nd
    【18:00】
     ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.:.:...○:.::.::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
     :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.::.:..::.:.:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
     ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::........
             ..............................    ::::::::::::::::::::::::::::::::::::..........................
                                          ,::;;;::;;::,iiiiiiii!!!i!
     ,::;;--゙゙,,;;;;;::;;;:::,,,,,;;;;,,,;;,,,....;;;;... .. .. ....;;;;;;;;;;;..,,;;... . .. ... ..;;,,,,,;;;;;::;;;:::,,;;;;;';;llllliiiiii!!liiii!!!lll;;
     illlllllliiiiiillllllllllliiiiiiiiiiliiiiiiiiliiii!!!;;;,,,,,;;;!!!iillllllliiiiii!!;;;,,,,,;;;!!!iillllll!!!iiiiiiiiiiii!!!lll▼フォレスタ 八月二日                                          
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

    夕食は、家庭菜園で育てられた新鮮なバジルとアスパラ、そしてトマトをふんだんに使ったピザだった。
    色鮮やかなピザにはこれでもかとチーズが乗せられ、蕩け、狐色に焦げたそれからは食欲を誘う香りが漂う。
    窯から出したばかりのピザは手早く切り分けられ、皿に盛られた。
    皿が全員の元に行き届くまでの間、犬の耳と尻尾を持つ少年、ブーンは柔らかなピザがナイフで手際よく切られていく様を、身を乗り出して見ていた。

    (*∪´ω`)「……おっ!」

    皺だらけの手が操るナイフは指の一部かと錯覚するほど滑らかに動き、ピザを裁断していく。
    全員の取り皿にピザが切り分けられ、続いて、新鮮な野菜を使ったサラダが皿に盛られた。
    レモンとバジルがベースとなったドレッシングから漂う香り。
    豊かな香りに満たされた部屋には、四人の人間が食卓を囲んで食事の始まりを心待ちにしている。

    ('、`*川「はい、お待たせしました」

    家の主であるペニサス・ノースフェイスは一切れのピザを乗せた皿を、ブーンの前に置いた。
    立ち上る湯気を、ブーンは心地よさそうに吸い込んだ。
    彼の丸まった可愛らしい尻尾が、元気よく振れる。

    ノハ*゚ー゚)「おおっ! こりゃあ美味そうだ!」

    感嘆の声を上げたのは、後頭部で髪を一束にしたヒート・オロラ・レッドウィングだ。
    白い割烹着を着て台所でペニサスの手伝いをしていたヒートは、芳醇な香りを放つピザと色とりどりのサラダに目を丸くして驚いた。
    鍋持ちをはめた両手が持つ耐熱ガラス皿を、木で作られた鍋敷きの上に乗せ、ヒートはブーンの隣に席を取る。

    ノパー゚)「ペニサスさん、こっちもいい具合だ」

    蓋を外すと、川魚のムニエルが顔を覗かせた。
    ニンニクとバターの香りが蒸気となって部屋に広がり、料理の完成度を伝えて回る。
    添えられた香草が、ムニエルの香りを引き立てている。

    ('、`*川「上手に焼けましたね、ヒートさん。
         お料理がお得意なのですか?」

    ノパ⊿゚)「いやぁ、単に慣れているだけですよ」

    理由は訊かないでいるが、彼女は野生の食材を使った調理に長けている。
    川魚を仕留め、川で腸を抜いて臭み消しと魚が痛むのを防ぐ野草をそこに詰めたのは、ヒートだった。

    ζ(゚ー゚*ζ「あら、いい香り。
          お風呂だけど、夕食後にはいい温度になっているはずよ」

    波打つ金髪を頭頂部で髪を結んだうら若い女性が、扉を開けると同時に柔らかく微笑んだ。
    浴室で火を起こしていたデレシアが、大振りの鉈を鞘にしまいながら、ヒートの向かい側の席に座った。

    ('、`*川「わざわざありがとうございます、デレシアさん。
         薪まで割ってもらってしまって」

    街から離れた山奥に聳える大樹の上に静かに佇むペニサスの家に、当然ながらガスは通っていない。
    屋根に取り付けた太陽光発電設備のおかげで、井戸から水を組み上げる設備と必要最低限の電力を補っている程度だ。
    調理は全て台所に設置された窯に薪をくべて行わなければならず、老齢のペニサスにとっては厳しい生活のはずである。
    事実、ペニサスは薪を割るのにも一手間かけなければならない始末だった。

    “フォレスタの魔女”と呼ばれている老女、ペニサスの声には申し訳なさよりも、悔しげな響きの方が強い。

    ζ(゚ー゚*ζ「いいのよ、これぐらい。
          これぐらいでペニの美味しいピザが食べられるなら、安い物。
          そうそう、残った薪は倉庫にしまっておいたけど、後一年は薪を割らなくて済むはずよ」

    先ほどまでデレシアが作業を行っていた風呂場の隣に、薪を蓄えておくための倉庫がある。
    デレシア一行が到着するまで、その倉庫には薪用の材木が僅かにしか残っておらず、また、そのほとんどが手付かずの状態だった。
    今では倉庫一杯の薪がそこに並べられ、その上大きさごとに並び替えられてもいた。
    これまでのような生活を維持していくのであれば、デレシアの言う通り、少なくとも後一年以上は薪割をしないで済む量だ。

    ('、`*川「本当に助かります。
         ……薪を割るにも一手間かかってしまうとは、まったく情けない」

    ζ(゚ー゚*ζ「仕方ないわよ、歳をとるって云うのはそういう事なのよ」

    老いを嘆くペニサスに、デレシアは優しく声をかけた。

    ζ(゚ー゚*ζ「人はね、何かを失っても――」

    ('、`*川「――代わりに何かを得る生き物、でしたよね」

    ζ(^ー^*ζ「正解、流石ペニサス先生ね」

    (∪´ω`)「せんせー?」

    食べ物に意識を取られていたブーンだが、デレシアとペニサスの会話中に出てきた言葉に反応し、そちらに意識を切り替えた。
    そこに知らない言葉があれば、それをすぐに知ろうと意欲を見せるのが、数時間授業の末に導き出されたブーンの強みだ。
    純粋な好奇心の塊。
    半世紀以上も教育者として生きてきた老女は、そう結論を導き出した。

    ('、`*川「せ、ん、せ、い。 先生。
        誰かに何かを教える人のことを、そう呼ぶの」

    (*∪´ω`)「ペニおばーちゃん、せんせい……」

    何より、ブーンの素晴らしいところは好奇心が強いというだけではない。
    それを素早く吸収し、自分のものとする点だ。
    それは、幼く無知だからと結論付けるには、あまりにも高い吸収能力と応用力だった。
    一つの才能と言ってもいい。

    (*∪´ω`)「ペニサスせんせい?」

    老女はなるほど、と思った。
    デレシアほどの人物が何故、ブーンを連れているのかを。
    この少年には、特別な才能がもう一つある。
    ペニサスのような、そして、ヒートのような人間にしか分からない才能。

    ('、`*川「そう。 おばーちゃんと、せんせいは一緒に使わない方がいいの。
         よく分かったわね」

    (*∪´ω`)「お……」

    ノパー゚)「偉いじゃないか、ブーン!
        これでまた一つ賢くなったぞ!」

    わしゃわしゃと勢いよくブーンの髪を撫でるヒート。
    くすぐったそうに目を細め、ブーンはそれを大人しく受け入れた。

    ζ(゚ー゚*ζ「それじゃあ、せっかくのご馳走が冷めない内に食べちゃいましょう」

    そして、家の中に久しぶりの団欒と温もりが返ってきたのであった。

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
    Forresta ⇒ August 2nd
    【18:50】
    ;ヾ゙;:ゞ;;:ミヾ:;|.:ij;:l;,i|.  |;. .;;':;;, ::;;:|.:;;;| |lij;|,;';,:'ゞ;, :ミ|;.|: :;|:.  .: .:;|; ;|.,.;;'
    ノj;i:;i:l;i⌒ゞ|:l:j;,l;:i;|.  |;; ,;| ;; ::;;;:| :; | |li|l|"゙'^!;li゙'`|;:|: :,| ;i.  :| .:l; .;|:'゙
    .:|:;i:;,l;|:.   |;j;.i,;j.l;|:. |;,: ,;i ;; :;;;,:l ;;',|; .|li;l|;:;;、;|vl. |;.|:.  :;|:  :| .;i :| :|
    :|;i;l;:l;|;.   |,.j;l:j,;j,|;, |;, y' : ,-、:; ;; ;|ヾ|l;il|:;:;ミ;!;li} |;:|:.  ;;|:. .:}:..;|: .;|:.;|
    |;lj:;i;i|:.   |;.j;i:j,;j,|ヾ;;|, ;' ;;;: !r:}.;;;:.; | |lil;i|;r゙"| ;i} |:;,: .;;N:. : ,j;. .;  l :.|
    ;i;l.;;l;|;.   |.j:;j,;j.j;|;;ゞ| ;;!:;;, ';`イ:;;;: :;| lli;l!|   | il}. |:|: ;. .;| .:i,:  :|;: .;|.:.;|
    ;:l:;j;;|゙  |:lj.;j:,j.i;|  | ;:|:,;;:,..:;;i.:;;;.:;;:| |i州   | li}.|;|: ,;};. .: :;|;,. .:|; :| : | ▼フォレスタ 八月二日
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

    鬱蒼と茂るフォレスタの木々は、巨大な月の柔らかな明かりを遮り、森に深い闇を落としている。
    木々の間から差し込む光はあまりにも頼りなく、絹のような月光は影に不気味さを与え、非力な者の侵入を拒んでいた。
    真に暗き時間。
    それは、人の持つ臆病さを心から引きずり出す、優しい時間。

    月光を遮る暗い森の中を、十八人の男達が跫音を殺して行進していた。
    ただし、その十八人は六人編成の三グループに分かれ、決められた場所、決められた時間に異なる道からフォレスタへ足を踏み入れた。
    踝を覆う長さのワークブーツ。
    まだ仄かに昼の熱を持った風の中、彼らは全員長袖長ズボンと云う格好をしていた。

    そして、全員が一つの目的のために武装していた。
    ショットガン、ライフル、拳銃、そして第三世代強化外骨格――通称棺桶――を、用いて彼らが求めるのは、偏に奪還であった。
    理不尽によって、クロジングから引き剥がされたフォレスタと云う土地を自らの手で奪い返すことを目的とし、彼らは夜の森を進んでいた。
    提供された暗視ゴーグルは、彼らに緑と黒の荒い画像の視界を提供し、暗闇の恐怖を和らげていた。

    三つに分かれたグループの内、南からフォレスタの奥地を目指すサミュエル・リリスキー率いる熟練の猟師達は、方位磁石と地図を頼りに森を歩いていた。
    幾ら暗視ゴーグルの助力があるとは言っても、夜の森の中を歩いて正確に目的地に到達するのは、よほどこの森に精通していない限り不可能だ。
    見渡す限り一面の木々は、人間の方向感覚を狂わせ、あらぬ方向へと導いて森の養分とする。
    サミュエルは地図を持ったまま先頭を歩きながらも、己の準備不足を呪った。

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
          !              r'´ヽ `':,
          /              l !__i |   ',
         ノ               i   .i, ,  ヽ
        /               ノ   i/    `',
      <,. -─‐-- 、,,   ,. --─- 、,/    !     i
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

    全てのグループでは共通の地図と方位磁石を使用しているが、地図に書き込まれた情報までは共有していなかった。
    つまるところ、サミュエルは目的地の座標をメモしたものの、それを地図上に記入するのを忘れてしまったのだ。
    六桁の数字は完璧に覚えている。
    だが、荒い画像で表示される地図を読み取ることは困難で、そこから座標地点を割り出すのは至難の業――不可能と言い換えてもいい――だった。

    猟師長のサミュエルは、人一倍プライドを重んじる性格をしており、断じて己の失態を周りに知られまいとしていた。
    覚えているのは、森の中心のやや北東よりの場所、ということだけ。
    悔やんでももう遅い。
    それに、そのことを伝達しなかった他の人間にも非があることだ。

    サミュエルは肩に掛けた愛用のレミントンM700を担ぎ直し、立ち止まった。

    「どうしました?」

    「ブラウニー、少し、休もう。
    魔女に会った時に疲れていたら、まともに殺りあえんかもしれないからな」

    あまりにも苦しい言い訳だったが、猟師長の言葉に意見できる者がいるはずもなく、猟師一行は一先ず木陰に腰を下ろし、水筒のコーヒーを口にした。
    気を落ち着かせるため、サミュエルは腰を下ろして樹に寄りかかり、煙草を一本だけ吸うことにした。
    狩りの際に喫煙は厳禁だが、それは相手が獣の場合だ。
    本格的な狩りに赴くとなれば、彼ら狩人は無臭石鹸で体臭を消し、香りの強いコーヒーや匂いの残るタバコは持ち歩かない。

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
             ./ /     .,-‐、 l _ _ }
             ; /     ∠,,,,,.」 -‐、  !
              !;_,, -‐''"", .-‐'⌒ヽT  l
              ゞ-‐''"/   __ノ l   !
                γ   / !      ',
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

    だが、今回の相手はあくまでも人間。
    ならば、匂いに気を使う必要はない。
    気を付けるのは、魔女の家を発見してからでも遅くはない。
    発見した後は、愛銃がこれまで通り彼の獲物を貫く様子をスコープ越しに眺めるだけ。

    休憩と称した座標の割り出しは、約五分の時間を要した。
    彼は特定を諦めた。
    自分の記憶していた座標の精度が、急に不安になったのである。
    数字が一つ前後するだけで、地図上の位置は大きく変わる。

    兎に角、彼が記憶している中で確かなのは北東と云うこと。
    後の計画は、全て配布された計画書――自宅に忘れてきた――に書いてある。
    煙草を携帯灰皿にしまい、サミュエルは重い腰を上げた。

    「行くぞ」

    そちらの方角に向かえば、目印ぐらいは見つかるだろうと考えたのだ。
    そこから、無言の行進が続いた。
    サミュエルにとって幸運だったのは、彼がチームの誰にも具体的な目的地を伝えていなかったことだ。
    誰も迷っているとは考えず、ただ、ヒヨコのようにサミュエルについてくるだけ。

    理由など、後でどうとでもできる。
    地図の精度が悪かった、方位磁石が壊れていた、言い訳の種はいくらでもある。
    いずれにしても彼らにとって必要なのは、スマートな使命の全うではなく、悲願の成就なのだ。
    狩りとは、獲物を仕留めたか否かが重要なのであって、この際、過程はどうでもいい。

    ――“フォレスタの魔女”を殺す事こそが、彼らにとっての成功なのだから。

    木の根が天然の障害物として彼らの行進速度を遅め、それを避けて歩くたびに方角が狂って行った。
    苛立ちは積るばかりだった。
    どうしてか、彼らの行動はいつも何かしらに阻害されてしまうのだ。
    早朝に現れた余所者がいい例だ。

    街にとっての害悪である余所者の店を潰そうと、せっかく招き入れた強盗団達が殺され、計画が台無しにされた。
    更に、どこからかやってきた警察組織の人間によって保安官は重傷を負い、一人は行方不明と云う有様だ。
    先に足元の雑草を刈り取って、士気高揚を狙ったのに、それが失敗に終わったことは士気に関わることだ。
    彼らにとっての聖戦を前にした前座的な作戦は、全て失敗した。

    今日から全てが変わるはずだった。
    だが、それは諦めよう。
    今やらなければならないのは雑草狩りでも迷子の保安官探しでもない。
    “フォレスタの魔女”を殺すことだ。

    ジワリと滲む汗。
    木製の銃把が、汗を吸って湿り気を帯びる。
    行進は果てしなく続く巡礼にも思えた。
    それは尊く、決して欠かすことの出来ない義務でもあるのだ。

    枝を踏み折る音が気にならなくなってから、どれだけの時間が経過しただろうか。

    「……見つけたぞ」

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
    : ; ; . . .:;, : :... ...   ;,/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/l三.ヨヽ .;;、:: ; : ;; .:;,'''::: ..;;';、
    "゙''::;'':;,,'  ;; :: : . . ;ニ∠ニニム三三三三|; l l;|:: .. .;;、: .. . :: :;., . ;. . ;,
    ; :. , : ; .."':,,;,,..;; ''' .;,三|田田| l三三三三;|; l l;|、 , . ;;、 :..::: .. ..:;, .;':: . .;,
    ; ; : ., .,  :.  :._  ';三|田田|_l三三三三;|エエエィ ,,,;;;;:::'''':::;;;;  ;, ,; : :. . .;,
    ;; :. .. .". ..  ゙ ,, " ;.;ェェェェェェェェェェェ,,,;;::::'''::;;'''::ll|;,;;;::.';.:: .  '':;; ,; :: . : . ;,
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

    暗視装置を外しながら、サミュエルは思わず口に出してそれを仲間に伝えた。
    それは、小さな灯だった。
    小さな灯だったが、彼らにとっては希望の灯でもあった。
    素早くライフルのスコープカバーを外し、十五倍に拡大されたその灯を見る。

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
                                               _ ,,..-!
                                        ,r===く^ヌ=ヾ' ソ´ヽ}
                                       { f´  ! | l_,j,rト、_ノ
                                       弋_ゝ-'ノ_/_,.≠]、_j
                                    /^`ー' ̄_,.―、 .≠ ̄`ソ
                                  ./ '´ ̄≠ ̄ヽ  __,,..-‐
                                _/,.ュ- ― ̄  `!__.,〉='
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

    トリガーガードに指をかけ、一先ずはその光の正体を見定める。
    ――間違いない。
    人工の灯。
    人家の灯だ。

    このフォレスタにある人家は即ち、彼らの敵の巣。
    殲滅し、排除すべき対象。
    スコープから目を離し、サミュエルは宣言した。

    「さぁ、行くぞ……
    魔女狩りの始まりだ」

    六人の表情は獣を前にした狩人のそれになり、跫音を殺して素早く散開した。
    その瞬間は、サミュエル・リリスキーは四十五年にもなる狩人生活の中で、最も緊張し、最も心躍った時間となった。
    狙撃に適した場所を見つけ、そこに片膝を突いて待機する。
    木に寄りかかった体勢のサミュエルは、左目を瞑り、スコープを覗き込んだ。

    ――狩りの時間が、始まった。

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
    ┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳
    Forresta ⇒August 2nd
    【19:31】
    ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::γ'"~~"'丶::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
    ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::,i' ::::    ';:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
    :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::! :::: :::.....   l::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::;;;,-~""";;;'''-;;;;__::::::::::::::::::::::
    :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ、:::: ::  ,ノ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::(,.,;.,~-ー''''~ ̄:::::::::::::::::::::::::
    :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::`ーー'"::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
    ''''-,,、__:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::,,,,:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
    -ー'""::::::::::::::::::::::::::::::::::::,;´""'';,, ,,,`,-;;ー,,,,,__,;:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
                             Ammo→Re!!のようです~Ammo for Relieve!!編~
    ┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

    ギコ・ブローガンは、皿に残った夕食のビーフシチューをパンで拭い、それを食べようと口を開けた瞬間に、その動きを止めた。
    首の後ろ、項の毛が逆立つ感覚。
    場数だけが育み、経験だけがその成長を促し、覚悟の量だけがそれを我が物とさせる。
    これから起こる、異変の察知。

    場数の少ない人間はそもそも気付かず、経験の浅い人間は焦る必要はないと鼻で笑い、覚悟のない人間は行動できない。
    その点、ギコは場数も経験も覚悟も、全て非の打ちどころのない理想的な状態を持った、理想のイルトリア人であった。
    まず彼が行ったのは、それがどのような種類の異変であるかを考えるところだった。
    巻き込まれる形なのか、それとも、自分が異変の中心点なのか、それが大切だ。

    異変の中心点である可能性は、即座に切り捨てた。
    彼はもう退役した身。
    今更彼に用のある人間はいない。
    となれば、可能性があるのなら巻き込まれる形だ。

    ――朝方の強盗を思い出す。

    今、クロジングは異常な状態にある。
    ならば、隣接するフォレスタに住むギコが巻き込まれたとしてもなんら不思議ではない。
    スーパーマーケットで起こった騒動には、少なからずギコも関わっていた。
    生き残った強盗団の報復と云う可能性も、十二分にあり得る。

    だが、どうしてここが分かったのか?
    それに、この時間になるまでわざわざ復讐の機会を待たずとも、フォレスタの中なら人目を気にする必要はない。
    何かが腑に落ちない。
    手慣れた強盗団の仕業にしては、いささか無計画ではないだろうか。

    理由の考察を済ませたギコは、手に持っていたパンを口に入れ、机上に置いていたグロック・カスタムを手に取る。
    弾倉を外し、遊底を引いて薬室の弾薬を取り出す。
    装填されている弾の種類が九ミリ口径のパラベラム弾であることを確認し、姿勢を低くして寝室に向かった。
    明かりもつけずに、ギコはタンスの中から目的のギアボックスを取り出す。

    実包を上に向けて保管されていた弾薬は、小口径の棺桶用の徹甲弾だ。
    Aクラスの棺桶の装甲なら、この弾でダメージを与えられる。
    と言っても、防弾チョッキの上から撃たれる程度のダメージだが。
    無いよりかはマシだ。

    予備のマガジンをハンガーにかけられていた防弾ベストにしまい、それに袖を通す。
    同じく、タンスの中からギコが取り出したのは、イングラム短機関銃だった。
    各機構の動作を確認し、サプレッサーを装着してから弾倉を挿入し、コッキングハンドルを引いた。
    イングラムの予備弾倉を防弾ベストに収め、ギコはグロックをヒップホルスターに収め、イングラムを構えた。

    相手がAクラスの棺桶、“キーボーイ”で襲ってきても、これだけの装備があれば“抵抗”は出来る。
    “対抗”となると、相手の数と実力がポイントとなる。
    もしもBクラスの棺桶――例えばジョン・ドゥ――が来た場合、この装備では太刀打ちできない。
    しかし、男一人にBクラスの棺桶を持ち出すとは考えにくい。

    考えにくいが、それでも考慮しておく必要は十二分にある。
    模様替えをしておいた効果が、さっそく現れるかもしれない。

    (,,゚Д゚)「……ん?!」

    ギコが呻いたのは、二つの物音を聞き取ったからだった。
    一つは跫音。
    もう一つは、金属が切断される音だ。
    それが耳に届いた瞬間、ギコの家から全ての明かりが消えた。

    ――家全体を揺るがす爆音と衝撃が響き渡った時、ギコの全身は既に戦闘態勢に入っていた。

    理由はどうあれ、ノックの代わりに壁を破壊して訪問してくる人間に対して、ギコは歓迎の意を示す必要がある。
    決して呼吸を乱さず、冷静さを欠かさず、慌てることなくギコは取るべき行動をとった。
    月光を浴びて玄関に仁王立つのは、十字に並んだ六つの高性能カメラの輝きを放つ、異形の巨人。
    機動性と凡庸性を犠牲に得た装甲と腕力が特徴の、Bクラスの“名持ちの”棺桶。

    ――“トゥエンティー・フォー”。

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
           __l┗  ノ ゝ   `´      (´ ̄ ̄ `ヽ、
         _r'-- 、 ヽ |r"          `l´ /^l`lヽノ
        r'     ヽ ,'━、  r`──‐'\ ━し (ノノ
        レ´,'^lヽ、  |    |       l,,,,..,.,,,.,<
        | l l,-| ヽノ;;;;;;;:;:;:;:;;:;      ;;:;;;;:;:;;;;:;;;:;
        ヽノ~^ し' ;:;;;:;;:;:;:;;:;;;:;;,,     ;;:;;;:;:;;:;;;:;;:;;;;
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

    棺桶の特性を理解している人間なら、相手の目的が何であれ、この場にその棺桶が相応しくないことぐらいは分かる。
    トゥエンティー・フォーは、近接戦闘を前提に作られた物ではない。
    要所の防衛、緊急時に身を守るために使われ、強襲作戦で使用するような棺桶ではないのだ。
    だが、幾ら相応しくないからと言って問題がないわけではない。

    堅牢な装甲は、ジョン・ドゥの比ではない。
    最前線で自身の生命を二十四時間守る、と云う目的に特化した棺桶だ。

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
                   ;;:;;:/:::::         ヽ
             ;;;; :;;;;; :;:;;;;;::::             丶.. ;;:;;;;:;;; ;;:;
        イ ̄|丶;;;;:;:;;;;:;;;;:;;;;;:;;;;:;:;::::          ●   |;;:;;;;:;:;;;;;:;;;;:;:;;/|ヽ
       イ::::::::::| ヾ;;:;:;;;;:;;;;:;:;;;;;:;;;;;;;:;:;:              |;:;;;;:;:;;;;:;;;;:;:;;;| | |
       イ::::::::::::::| |;;;;:;:;;;;;:;:;;;;;;;;:;:;;;;:;:     ●●    ●●|;;:;;;;:;:;;;;;:;;;;:;;| | |
      |::::::::::::::::::::| ヾ;;;;:;:;;;;;:;:≡;;;;:;;;;;         ●    |;;:;;;;:;:;≡;;;;:;;;| | |
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

    〔::‥:‥〕『出てこい、魔女!!』

    どうやら会話能力に難がある人間が棺桶の中にいるらしい。
    木片を踏みつけて歩み寄るトゥエンティー・フォーの前に姿を晒す愚行を、ギコは犯さなかった。
    あの六つのカメラは、熱探知、暗視、近接用のホログラフなどの各種機能を自動で切り替えて戦闘を有利に進める機能が搭載されている。
    姿を見せれば、たちどころに捕捉され、近くに控えている仲間に知れ渡ってしまう。

    かと言って、このままここに隠れている訳にもいかない。
    相手が郵便配達員のように大人しく引き下がるわけがない。
    この家に明かりが灯っている事を確認し、人がここにいることを知った上で襲撃しているのだ。
    しびれを切らせて木製の家に火を放たれれば、一時間と経たずにギコはローストされてしまう。

    まだ、動いてはいけない。
    今動けば、どうしようもなくなる。
    ここは待つべきなのだ。
    指先で床を軽く叩き、更には指の腹で床を擦って音を出し、トゥエンティー・フォーの注意を引く。

    高性能マイクなら、この音を聞きつけるはずだ。

    〔::‥:‥〕『……ん?』

    跫音が近づいてくる。
    その巨体が寝室に入ってくるまで、ギコは耐えなければならない。
    一フィートはある巨大な足が寝室の床を踏み、もう一歩踏み込んだその瞬間。
    ギコは電光石火の速度で動いた。

    イングラムの銃口を下から向け、散発的に銃弾を放った。
    突然の衝撃に、トゥエンティー・フォーがたたらを踏んだ。

    〔::‥:‥〕『うぉっ?!』

    間の抜けた声。
    ギコは確信した。
    間違いない。
    相手は、素人だ。

    反応の遅さと、不十分な武装がその証明だ。

    (,,゚Д゚)「……っと」

    しかし、素人相手でも、相手はBクラスの中でも堅牢な装甲で有名な棺桶。
    名持ちの棺桶は、一つの例外もなく相手をするのに手古摺る何かを持っている。
    それ故の“名持ち”だ。
    最弱と言われるAクラスの“マハトマ”も、使い様によっては凶悪な兵器となり得る。

    トゥエンティー・フォーの癖とは、それ専用の武装がなく、重機関銃や軽機関銃を使用することによって攻撃の手段を補わなければならない点だ。
    武器を選ばないと云う利点でもあり、逆に、それがトゥエンティー・フォーの欠点でもある。
    本来ならばそれを補うために重武装をして運用するのだが、訪問者はあろうことかポンプアクション式のショットガンを構えていた。
    発砲の度に装填を余儀なくされるショットガンをあの図体で使用するなど、愚の骨頂だ。

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
                   | __
                   |i'::;)_..|_)
                     ̄ ̄i|
                           |
                  i
                  |i  ゙l|
                 、ー'i . ,, il| |  へ
                U   ::iil| |i,. ..:/
                 `~ ^' i:| U/f=:、|    i
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

    弾幕によって視界を一瞬だけ奪ったギコは、予測していた次の展開に備えて動き始めていた。
    走った先は、後ろではなく、前。
    即ち、トゥエンティー・フォーに向かって、ギコは全力で走り出したのだ。
    ギコにとっては自殺行為ではなく、自殺行為に“等しい”行動だった。

    それでもギコには勝算があった。
    相手が素人であることと、その素人が動かす棺桶が癖の強いトゥエンティー・フォーであること。
    この二点が揃えば、ギコの行動は自殺行為ではないのだ。
    使用する棺桶の耐久力を実戦現場で知らなければ、人間は反射的に顔を両腕で覆い隠す。

    どれだけ装甲が頑丈だと言われても、撃たれた経験がなければ、その言葉を信じることは出来ない。
    棺桶持ちのなんたるかを知っているギコは、目の前の棺桶持ちが実戦経験の全くない素人であると見抜いていた。
    跫音が違うのだ。
    棺桶の性能を十分に知らず、そして、過信した跫音だったのだ。

    猛然と走り出したギコは、トゥエンティー・フォーの脇を通り抜け、その背後に回り込むことに成功した。
    一瞬遅れて、先ほどまでギコが隠れていた部屋の壁を突き破って、もう一機のトゥエンティー・フォーが現れた。
    挟撃に失敗したもう一機のトゥエンティー・フォーの存在は、最初から予想できたことだった。
    正面から一機だけで攻め入るのは、ただのバカだ。

    夜まで待ってギコを襲うほど用心深い相手なら、棺桶を一機以上用意していて当然だ。
    他にもまだ敵はいるだろうが、屋外に出なければ襲われる可能性は低くなる。
    敵が一斉に攻めて来る可能性を考慮しないのは、やはり、相手の用心深さを信頼しているからだ。
    臆病な人間ほど、目的達成のための最短距離を恐れる。

    警戒心は時として、致命的な隙となる。
    弾倉を交換して背中に向けて牽制射撃を加え、トゥエンティー・フォーの追撃を妨害する。
    トゥエンティー・フォーが怯んでいる隙に体勢を立て直して走り出そうとした時、ギコの細胞がそれを途中で止めさせた。
    その刹那、銃声と共にガラスが割れて、目の前を高速で何かが通り過ぎたのを確かに見て取った。

    ――狙撃。

    後もう一歩でも動いていれば、壁の代わりにギコの米神に大穴が空いていた事だろう。
    伏せるのと同時に、第二射。
    今度はギコの前髪を掠め飛び、壁に二つ目の穴を空けた。
    一発ごとの間隔から、ギコは相手の得物がボルトアクションライフルであることを見抜く。

    これでは、下手に体を動かすことが出来ない。
    銃弾の飛んできた方向は把握出来るが、狙撃手の数を把握することは出来ない。
    既に二発の弾を放った射手はその位置を変えているだろう。
    室内に釘付けにされることは初めてではないが、そこにトゥエンティー・フォーが二体と云う状況は初めてだ。

    付け加えるなら、相手にはまだ駒がいるように思える。
    動きの鈍いトゥエンティー・フォーと狙撃手だけでは、奇襲とは呼べない。
    明確な殺意と敵意を持ってギコを殺しに来ているのだから、数は五人以上。
    控えている襲撃者が参戦して事態が悪化する前に、ギコは先んじて動くことに決めた。

    ベストから閃光手榴弾を取って、トゥエンティー・フォー達の足元に投げ入れる。
    トゥエンティー・フォーに、閃光手榴弾は意味がないことは重々承知している。
    狙いは、別にあった。
    数秒後、強烈な光が部屋から溢れだし、そこに昼の太陽を生み出す。

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
                  `ヽ、` 、     .、 !  V ./
                         `丶.、`丶、_,ヾ    "',,
                       ` ヽ       `--―¬ ̄`¬― _ --―
          ―‐=ニニニ二二二二二ニ゙       、――---- ‐ ´ ̄
                        ´"' ;,    、ヾ``、`丶、
                         / ∧.  i     `丶、` 、
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

    ギコが狙ったのは、外に控えている敵――狙撃手――への牽制だった。
    狙撃手は夜間での狙撃を強いられるため、否が応でもスコープを覗き込まなければならない。
    こちらの動きに応じて狙撃を加えてくる狙撃手ならば、ギコのことを注意深く見ているはずだ。
    ならば、閃光によってその目を奪えば、少しだけだがその狙撃を阻止することが出来る。

    素早く弾倉を交換したギコは、すっかり様変わりしてしまった玄関に向けて発砲。
    僅かに残っていたガラスが砕け、壁には無数の穴が開いた。
    壁の向こうで突入の機会を窺っていた敵が、悲鳴を上げて倒れた音が抑えられた銃声の下から聞こえた。
    背後から、重々しい跫音。

    〔::‥:‥〕『だらぁっ!!』

    玄関を背に咄嗟にイングラムを腰だめに発砲するも、敵は怯まずに襲い掛かってきた。
    広い肩が壁にぶつかって動きが一瞬だけ止まるが、次の一歩を踏み出した時には壁を破壊してその身をギコに近づけた。

    〔::‥:‥〕『魔女はどこにいる!!』

    巨椀にへばりついた弾丸を振り落としながら、その棺桶持ちはようやく目的を口にした。
    だが、ギコはそれに答えない。
    一人暮らしの男に、魔女はどこだと訊く方が間違っている。
    トゥエンティー・フォーは、鉄槌を振り回すようにその拳を横に薙いだ。

    二歩下がってそれを回避したギコは、そろそろ狙撃手の視力が回復している頃合いだということを考えた。

    〔::‥:‥〕『答えろ!!』

    ギコにはこの場を切り抜けるための策と方針があった。
    相手にしている時間はない。

    〔::‥:‥〕『逃がさんぞ、魔女の手下!!』

    先ほど寝室の壁を破壊して現れたトゥエンティー・フォーが、重い跫音を鳴らしながらもう一機の横に並んだ。
    二機のトゥエンティー・フォーが並ぶその図は、巨大な楯が並んでいるよう。
    ただし、今し方ギコの寝室から出てきたトゥエンティー・フォーは、その手に奇妙な筒を持っている。
    まるで、巨大な銃弾、否、砲弾だ。

    〔::‥:‥〕『言え、魔女はどこに隠れた!!』

    二度目の問い。
    何度問われても、ギコの返答は無言と決まっている。
    無駄な会話に参加している時間が惜しい。
    物置へと全速力で駆け、扉を閉めた。

    活路は、そこにあるのだから――

    〔::‥:‥〕『……やれ、ブラウニー!』

    ――自信に満ちたその掛け声と同時に、ギコの家は爆炎に包まれた。

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
    Forresta ⇒ August 2nd
    【19:39】
          .゙'、 `x、   l゙    .l, .'k  │ .「     l .,! ',i, /     /       /
    . 、,     .\ ゙'!i、 │    .l .l,   | 、     _   ,i"" ./  ._,,、._..  -  ._,i|ゝ
      .`''''゙Ni、   l‐..\      l, . l, .| .!  .,. 、 .ll′/  //´ ‘゛     `゛   ゙゙゙'ー''''''''゙,゙
     `''ー ,,,  `''‐ ゙ヽ. .\      .l  l   ′.'" `゙゙' /                  _iyrij⊇―
    . ,,. .. --'┴.  v-ミi、 `''‐`‐   l            l゙     .,..;;彡'ツ         _.. -''゙´
      `、       \. ..`''-,,,,,,,,,,..、 ″        ‘   . / . ~./     ,,-'"゙.,,, ー'"ニ....、〟
    ー ..,,,゙゙'''ー 、″   ゛       .゛            /           ,..;;彡‐''"      .'!―
         `゙>-''''    .,..-'"     、       /
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

    * * *
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
    Forresta ⇒ August 2nd
    【18:20】
        __
         \  ̄ `ヽ|
          , `―― ⊥ ̄"'  、
        / /⌒)        \
       /  し/          i
       | O              l
       i               l
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

    デレシアは、食後に出されたリンゴがブーンの好物であることを瞬時に見抜いた。
    いや、デレシアだけに限った事ではない。
    その場に居合わせた人間全員が、ブーンはリンゴが大好物であることを察した。
    黄金色に透き通った蜜が詰まったリンゴを一口食べた瞬間の、その笑顔。

    あまりにも可愛らしく、愛おしい笑顔に、全員の頬は例外なく緩んだ。
    夕食を十分に食べたにも関わらず、ブーンはリンゴを一人で二玉分食べ、それでもまだ足りない様子だった。
    しかし、ブーンは出された以上のリンゴを自分から要求しようとはしなかった。
    嬉しそうに感想だけを口にするブーンに、デレシアは胸を締め付けられるような思いだった。

    (*∪´ω`)「りんご……おいしい……です……お」

    カルヴァドスを飲みながら、正面に座るブーンの様子を窺っていたデレシアに、彼が興味深そうな目を向けていることに彼女は気付いた。

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
     _______
     |i:¨ ̄ ,、    ̄¨.: i
     |i: /ヘ:\     :i|
     .|i:〈`_、/´_`>.、  :i|
      |ii~~'、;'´`,'~,;~~~~:i|
      |i`::;:':::::;::;:'::::::::::;.:i|
      |i::::::;:':::::::::::::::::::::::i|
    ─|`ー=====一 |
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

    (∪´ω`)「お?」

    ζ(゚ー゚*ζ「んふふ、ブーンちゃん、どうしたのかしら?」

    (∪´ω`)「お…… デレシアさんの……のんでるそれ、りんごの……においします?」

    流石はブーンだ。
    その優れた嗅覚は、ペニサスが作ったカルヴァドスからリンゴの香りを嗅ぎ取った。
    アルコールと樽の匂いに惑わされることなく、嗅ぎ分けたその芸当は、ブーンだからこそ出来る芸当だ。

    ζ(゚ー゚*ζ「そうよ、これはリンゴのお酒なの。
           ペニおばあちゃんが作ったのよ」

    (∪´ω`)「おさけ?」

    ノパー゚)「前にブーンがあたしの家で飲んで、すぐに寝ちゃったやつのことさ。
        喉とお腹が熱くなったのを覚えてるか?」

    デレシアと同じく、カルヴァドスのロックを飲んでいたヒートが、隣に座るブーンの頭に手を乗せて尋ねた。
    ほんのりと頬を朱に染めるヒートは、アルコールの楽しみ方を知っている。
    それに身を委ねることも、心の緊張を解すことも知っている。
    しかし、彼女はアルコールを制する方法もまた、知っていた。

    (∪´ω`)゛

    ノパー゚)「それが酒だ。
        だけど、酒にはたくさんの種類がある。
        これは、カルヴァドスって言う酒だ。
        前に飲んだ酒とは、味も種類も違う」

    (∪´ω`)「おいしいん……ですか?」

    氷の浮かぶ琥珀色の液体に興味を持ったのか、ブーンはそう尋ねる。
    以前ブーンが酒を飲んだ時、その体質故にすぐに酔いが回って眠りに落ちてしまった。
    それが不快な思い出として記憶されていれば、ブーンはこのように興味を持つことはなかっただろう。
    あの時のブーンは緊張しており、アルコールがその緊張の糸を緩めたことによって、嫌だと記憶するよりも先に眠りに落ちてしまったのだ。

    ノパー゚)「全部の酒――カルヴァドスも含めて――が美味しい、とは限らない。
        結局、好みの問題だからな。
        だけど、このカルヴァドスはあたしが飲んできた中で一番美味い酒だよ」

    グラスを傾けると、氷がガラスにぶつかる涼しげな音が鳴った。

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
     _______
     |i:¨ ̄     ̄¨.: i
     |i:         :i|
     .|i:       、  :i|
      |i /ヘ:\    :i|
      |:〈`_、/´_`>    i|
      |ii~~'、;'´`,'~,;'~,;:~,i|
      |`ー=====一 |
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

    ノハ^ー^)「ブーンが大人になったら、その時はあたしと一緒に飲もうな」

    (*∪´ω`)゛

    ('、`*川「ブーンちゃん、リンゴのお代わり、食べるかしら?」

    鮮やかな赤リンゴは、ペニサスの手の平に収まりきらないほど大きい。
    ブーンは既に一人でそれと同じ大きさのリンゴを二玉も胃袋に収めており、これ以上、その小さな体のどこに入るのかとも思う。
    だが、育ち盛り食べ盛りのブーンの胃袋は、まだリンゴを欲していた。

    (*∪´ω`)゛「たべます……たべたい……たべたいです……」

    ブーンの返事を受けて、ペニサスは華麗なナイフ捌きでリンゴを一口大に切り分ける。
    皮を残して芯だけを切り落としたその果肉の断面は瑞々しく、透き通った黄金色の蜜がぬらりと輝いている。

    ('、`*川「どうぞ、ブーンちゃん」

    (*∪´ω`)「ありがとう……ございます……」

    モミジのような小さな手で持つにはそのリンゴは少しだけ大きく、ブーンは両手でリンゴを持った。
    じゃくり、と小さな口で大きなリンゴに齧り付いたブーンは、すぐに顔を輝かせる。
    尻尾はせわしなく服の下で揺れ動き、母性本能をくすぐる薄幸そうな笑みが浮かぶ。

    ζ(゚ー゚*ζ「美味しい?」

    (*∪´ω`)゛「しゃきしゃきで、あまくて、おいしい……です」

    このよく育ったリンゴは、その甘さもさることながら歯応えも十分にある。
    恐らく、ブーンはその両方が気に入っているのだろう。
    元々、人間よりも顎の力が強いブーンにとって、ピザやサラダは噛み応えのない食べ物だ。
    本能的に歯応えのある固い食べ物を好むのだろうと、デレシアは推察した。

    ζ(゚ー゚*ζ「ペニ、ちょっとナイフを貸してくれるかしら?」

    ('、`*川「えぇ、もちろんですよ、デレシアさん」

    木の柄のナイフを受け取り、デレシアは皮の付いたリンゴを一つ手に取った。

    ζ(゚ー゚*ζ「ブーンちゃん、料理っていうのは、食べるだけじゃないのよ」

    (∪´ω`)「お?」

    ζ(゚ー゚*ζ「見ても楽しめるのが料理。
          食べ物と料理の違いは、そこにあるの」

    ナイフを数回だけ動かし、デレシアはリンゴの皮に飾り切りを施す。
    親指で皮を押してやると、切れ込みに合わせてリンゴが動いた。
    木の葉切りは、最も簡単なリンゴの飾り切りだ。
    それを目の前で見ていたブーンは、何が起きたのか、分からない様子だった。

    しかし、これまでブーンが認識していたリンゴの形から変形したそれは、彼にとって興味深い物であることに変わりはない。
    魔法か何かを目の当たりにしたように、ブーンは目を輝かせ、デレシアの手元にある雫型のリンゴと彼女の顔を交互に見る。

    ζ(゚ー゚*ζ「ね?」

    リンゴを差し出すと、ブーンは嬉しそうにそれを受け取った。

    (*∪´ω`)「お!」

    ブーンは雫の先端から、先ほどよりも時間をかけてそのリンゴを食べた。

    ノパー゚)「どれ、あたしも一つもらおうかな。
        デレシア、ナイフを貸してくれ」

    ζ(゚ー゚*ζ「はい、どうぞ」

    ナイフを受け取ったヒートは、皿に乗っていたリンゴを手に取り、デレシアとは違う動きでリンゴを切ってゆく。
    剥いた皮を自分で食べて、仕上がったリンゴを皿に戻した。

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
                  ,.:!       ,..:'/
               ,.:':::i.      ,..:'゙::::/
              ,.':::::::l ,... -ァ:'゙:::::::::/、
               , '::::::::::!'´ ,..:'゙::::::::::::://i
            /::::::::::::::l/:::::::::::::::::/'   !
    .        /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::/  ./
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

    ノパー゚)「ウサギだ!」

    (*∪´ω`)「おっ!」

    見事。
    ヒートはリンゴをウサギ型に加工してみせた。
    先ほどよりも感動を顔に浮かべ、ブーンはそのリンゴに手を伸ばす。

    (∪´ω`)「お……」

    不意に、ブーンはその手を止めて困ったような表情を浮かべ、他の三人を上目遣いで見た。

    ノパ⊿゚)「ん? どうした?」

    (∪´ω`)「……ぼく……ばっかり、りんご……たべてて……なんだか……その……」

    その一言で、デレシアはブーンを抱きしめたい強い衝動に駆られた。
    虐げられ、奴隷として育ち、生きてきた少年、ブーン。
    彼は痛みを知り、愛を知らず、だが、悲しいほどに優しい心を持っている。
    その儚さ、その存在の全てがデレシアにとって愛おしかった。

    ζ(゚ー゚*ζ「優しいのね、ブーンちゃん。
          でも、ほら、私はもうリンゴを飲んでいるから、ブーンちゃんが食べていいわよ」

    ('、`*川「私はブーンちゃんが美味しそうに食べているのを見ているだけで十分。
         ありがとう、ブーンちゃん」

    二人に勧められるが、ブーンはまだ気まずそうな表情を浮かべたままだ。
    まだ幼いのに、ブーンは周囲に気を遣いすぎてしまう癖がある。
    そんなブーンに助け舟を出したのは、やはり、彼のことを愛しているヒートだった。

    ノハ*^ー^)「なんなら、あたしと半分こするか?」

    (*∪´ω`)゛「はい……です……」

    気遣いには気遣いを。
    相手は周囲の感情の変化に敏感な上に、これまでに人の顔色を窺って生きてきたブーンだ。
    気遣いが無下にされると、自分が必要とされていないのではと感じてしまうに違いない。
    ヒートの助け舟は、ブーンがデレシア以外にも受け入れられているという証拠になる。

    兎に角、ブーンに知ってもらいたいのは、世界には彼の敵以外の存在もいるということだ。
    少なくとも、この場にいる全員がブーンの味方だ。
    その証明が、今は必要なのだ。

    ノハ*^ー^)「よぅし、じゃあ、半分こだ」

    (∪´ω`)「お」

    ヒートはリンゴの一端を咥え、もう一端をブーンに向ける。

    ノハ^ー^)「ほぇ」

    (∪´ω`)「おー」

    身を乗り出してリンゴに齧り付く。

    (*∪´ω`)「お」

    心なしか、遠慮気味にリンゴを齧ったブーンだが、ヒートは彼が口に咥えた時に身を乗り出していた。
    唇と唇が触れるギリギリのところでブーンがリンゴを噛み切り、ヒートの行動に驚いて少しだけ身を引いた。

    (∪´ω`)「お?」

    ヒートの意図が分からないのか、ブーンは咀嚼しながら小首を傾げている。
    その仕草もまた可愛らしい。

    ノハ*^ー^)「あぁ、もうっ!
         ブーンは本当に可愛いなぁ、もうっ!」

    ブーンの唇を狙っていたヒートは、当初の狙いを諦め、ブーンをその胸に抱きしめることで諦めた。
    豊かな乳房に顔を埋めたブーンは苦しそうに眉を寄せながらも、嫌がる素振りを見せない。
    若干、ヒートは愛情表現が過ぎる部分もあるようだが、それもまた良し、だ。
    ブーンには過剰なぐらい愛情を注いでもいい。

    ノハ*^ー^)「よし、後であたしと一緒に風呂に入ろう、そうしよう!」

    斯くして、今夜の一番風呂はヒートとブーンが入ることとなったのであった。

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
    Forresta ⇒ August 2nd
    【19:30】
    WWiiレ'Www;;;;;::::::き  :::::::;;;;;......  :::::≧
    |lii:: i|/リリW-'`"^" ;;;;iiiiiiiiWWww;;;;;:::....>:::::;ゝ         ,r''''''ミ,,,,,,,,,
    |lii:: i|  、....   `^'-WWlii:ノノリリk'`"^" ::;ィ'ヾ/レ''"     ミ;;;;;;;;;;k;;;;;;;ミ
    |lii:: i| ろ::::::....  ..:::k |lii: i|;;;;:::::::;;;;;;;;;;:: :≧.// 〃_ ,-':':':'k  ///;;;;;;;;k
    |lii:: i| ラ:::::::::;;;;;;;;;;;;;;:::;;ゝ|lii: i|;;;;Wiwノノ;;::::::ゝ/==" ̄ミ;;;;;;;;;;;;k .///,,,,,,,,,,, 
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

    ヒート・オロラ・レッドウィングは、脱衣所に向かう前に、デレシアにどうしても伝えたいことがあった。
    きっと、彼女も気付いているだろうが、それでも確認は必要だと考えた。
    危惧していた通り、敵意ある何者かが近付いてきている。
    それは理屈ではなく、彼女の勘と云うやつが告げていることだ。

    感受性豊かで勘の働くブーンにこの事を悟られないよう、ブーンの傍から離れたくはなかった。
    少なくとも胸の中にブーンを抱きしめている間は、彼に脅威の存在は伝わらないだろう。
    食器を洗っているデレシアにその事を小声で伝えると、彼女は表情を変えることなく答えた。

    ζ(゚ー゚*ζ「大丈夫。 この家には一歩も入れさせないし、ブーンちゃんに近づけさせもしないわ」

    ノパ⊿゚)「あぁ、頼む。 あたしはブーンの傍で、あの子を守るよ」

    ζ(゚ー゚*ζ「お願いね、ヒート」

    ノパー゚)「任せな、デレシア」

    脱衣所に向かう。
    丁度、ブーンが入り口に背を向けて上着を脱いでいるところだった。
    シャツの下から現れたブーンの背中には、夥しい量の傷があった。
    そして、首には首輪の跡がくっきりと残っている。

    それは彼が奴隷として虐げられてきたことを物語る、消えない証拠でもある。
    ヒートは断じて偽善者でも聖職者でもない。
    復讐の成就のために大勢の人間を殺してきた、元殺し屋だ。
    人の傷つけ方、壊し方、殺し方を熟知している。

    だが、それでも、ブーンの儚さを前にしては彼を背中から抱きしめたくなる衝動を抑えることはどうしてもできない。

    (∪´ω`)゛「んしょ……しょっ」

    ノパ⊿゚)「……」

    ヒートは無言でブーンを背中から抱く。

    (∪´ω`)「お?」

    ブーンは他の子供とは違う。
    耳付きだからと云う訳ではない。
    そういう単純な問題ではないのだ。
    惹かれて止まない魅力が、ブーンにはある。

    胸に感じるブーンの鼓動、温もり、確かな存在。
    ヒートは一人密かに決意する。
    この無垢な存在は、命を懸けて必ず守り通すと。
    我知らずに腕に力がこもり、ブーンが心配そうな顔をしてヒートを見上げた。

    (∪´ω`)「ヒートさん、だいじょうぶ……ですか?」

    どうしてこうも、ブーンは優しいのだろうか。
    優しさを知らずに育ってきたのに。
    痛みと苦しみの多い人生だったのに。
    それなのに、どうして、こんなにも優しいのだろうか。

    ノハ^ー^)「あぁ、大丈夫だよ。
         ブーンが可愛くて、ついな」

    一瞬で表情を変えたヒートは、名残惜しげにブーンを腕から解放した。

    ノパー゚)「さーて、ちゃっちゃと服を脱いで、風呂に入ろう。
        今日は沢山動いて沢山食べたからな。
        風呂に入ってさっぱりしよう」

    上着に手をかけ、ヒートは一息で脱いだ。
    体には先日負った傷がまだ残っている。
    出来るだけ、ヒートはそれをブーンに見られたくなかった。
    恥ずかしさではなく、この傷を見て責任を感じてほしくないからだ。

    ブーンは自分が傷つくことよりも、自分のせいで誰かが傷つくことを嫌がるタイプだ。
    だから、ヒートは傷を全く気にする様子を見せずに立ち振る舞うことにした。
    昼間のリハビリのおかげで、それも難しくはない。

    (∪´ω`)゛

    ヒートが上着を脱いだ時、ブーンの可愛らしく丸まった尻尾が目に入った。
    好奇心からそれを触りたくなったが、それは今ではないと自制した。

    ノパ⊿゚)「っしょっと」

    一糸纏わぬ姿となったヒートは、ブーンの手を握った。
    ブーンはそれを拒まず、自然と握り返してきた。
    手を繋いだまま、二人は浴室へ向かう。
    横開きの木の扉の向こうには、檜の香りがする浴室があった。

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
      / //          ( )   ~     ( )    ~~   / /u
    / //   ~~~~     ~~     ~( )~~  ~~  / /
    _//          ~~                     / /ij
     ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ /
    []| ̄|'lj | ̄| ̄| u'| ̄| ̄| ̄| ̄|!j' | ̄| ̄| ̄| ̄|U''| ̄| ̄| ̄| ̄|[]||
    []|  |  |  |  |  |  |  |  |  |  |  |  |  |  |  |  |  |  |  |[]||
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

    浴槽も床も、壁も天井も湯桶も風呂椅子も全てが木製だ。
    木で蓋をされた浴槽からは湯気が上っている。

    (*∪´ω`)「いい……におい……です」

    ノパー゚)「これは檜って木の匂いだ」

    (*∪´ω`)「ひのき……?
           ひのきのにおい……すき……です」

    ノパー゚)「あたしも好きさ。
        さ、風呂に入る前には体を洗わないとな」

    浴槽の蓋を外すと、檜の強い香りが立ち上った。
    湯桶で湯を掬い取り、手で温度を見る。
    適温だ。
    安全を確認してから、ヒートは頭から湯を被った。

    ノパー゚)「ぷはっ」

    顔にかかった前髪を後ろに流す。

    ノパー゚)「よし、ブーン、眼を瞑りな」

    (∪>ω<)

    今度は、ブーンの頭から湯を浴びせかけた。
    顔にかかった水をヒートが拭ってやり、前髪も後ろに流してやる。

    ノパー゚)「よしっ、眼を開けていいぞ」

    (*∪´ω`)「お」

    くりくりとした瞳が、ヒートを見つめ返す。
    このまま抱きしめたいところだが、それは我慢した。
    酒を飲んでいるとはいえ、理性は失わない。

    ノパー゚)「ほれ、ブーン。
        背中ながしっこをしよう」

    ブーンを椅子に座らせ、湯桶いっぱいに湯を汲んだヒートはその後ろで膝立ちになる。
    ボディタオルで石鹸を泡立たせ、小さな背中を洗い始める。

    (*∪´ω`)「……お」

    ノパー゚)「……」

    背中をタオルが擦るたびに、ブーンの尻尾が嬉しそうに揺れた。
    揺れる尻尾をタオルで優しく掴むと、ブーンは身を震わせた。

    (;∪´ω`)「お?」

    ノパー゚)「尻尾も洗わないとな」

    手の中の尻尾は思ったよりも固く、毛並みは柔らかかった。
    丸まった尻尾を扱くように洗う内、ブーンの緊張は解れていった。
    尻尾からも硬さがなくなり、ヒートにされるがままとなった。
    結局、ヒートはブーンへの愛しさが抑えきれずに背中だけでなく、頭からつま先まで、全身をくまなく洗ってしまった。

    やってしまったことは仕方がないと、ヒートはきっぱりと諦め、反省はしなかった。
    湯桶でブーンの全身を洗ったタオルを濯ぐと、人間とは違う毛が水面に浮かんだ。

    ノパー゚)「じゃあ、次はあたしの背中を頼む」

    (*∪´ω`)「はい……です」

    不器用ながらも、ブーンは一生懸命にヒートの背中を洗った。
    小さな体を必死に使う姿は、背中越しでも容易に想像ができる。
    少しこそばゆいが、心地いい。
    ブーンがヒートの背中を洗い終えるまでには、ヒートの倍の時間がかかってしまった。

    それだけブーンが丁寧に背中を洗ってくれたことが、ヒートには嬉しかった。
    きっと、背中に負った深い傷のことを心配してくれたのだろう。
    決して癒えぬ、復讐の証。
    今となっては、痛みも何もないただの傷跡、彼女の一部でしかない。

    ノパー゚)「ありがとう、ブーン。
        後は自分で洗うから、冷めない内に、先に風呂に入りな」

    タオルを受け取り、ヒートは自分の体を洗い始める。
    しかし、いつまで経ってもブーンが風呂に入る気配がしない。

    ノパ⊿゚)「どうしたんだ?」

    (∪´ω`)「だって……ヒートさん、まだ……あたま、あらいおわってない……ないです」

    どこまでもお人好し。
    底抜けの優しさ。
    それがいつの日か、ブーン自身を滅ぼしてしまうのではと思うほどに。

    ノパー゚)「……なら、頼もうかな」

    見様見真似なのだろう。
    先ほどよりも一層不慣れな手つきで、ブーンがヒートの髪に触れる。
    だが、優しい手つきだった。
    それがヒートには心地よく、嬉しくもある。

    (∪´ω`)「っしょ……しょ……」

    ブーンが髪を洗っている間、ヒートは体を洗う手を止め、背中に感じる温もりを甘受していた。
    最終的にブーンは、髪を濯ぐことまでやってくれた。
    全てが不慣れで、全てが不器用で、全てが優しかった。
    心安らぐ洗髪も終わり、ヒートはブーンを抱き上げ、抱えたまま湯船に身を沈めた。

    淵一杯にまで溜められていた湯が、贅沢な音を立てて溢れる。

    ノハ´⊿`)「ほー」

    (*∪´ω`)「おー」

    二人揃って、満足の息を吐く。
    熱い湯が、体の芯から疲れを取り除いていくようだ。
    子宮の真上の位置にあるブーンの尻尾が、ゆっくりと揺れ、腹を撫でる。
    途端に、子宮が締め付けられるような感覚に陥り、ヒートは乳房の形が変わるほど強く、ブーンを抱き寄せる。

    下らぬ理性など、ブーンの前ではあまりにも無力だった。
    思うのは、胸の中で何も知らずに和んでいるブーンの幸せのこと。
    ブーンが幸せになるのなら。
    幸せな人生を歩めるのなら。

    再びこの身を危険に晒し、命を懸けても惜しくはないと、改めて決意する。
    小窓の向こうに見える銀色の月が、いつもと変わらない様子で全てを見下ろしている。
    上空に浮かぶ薄い雲が月にかかりかけた時、ブーンが何かに気付いたように、その顔を小窓に向けた。
    いや、正確には違う。

    小窓の向こう側にある何かに、ブーンは視線を向けたのだ。

    ノパ⊿゚)「……どうした?」

    (;∪´ω`)「……おとが」

    音?
    木々のざわめきと虫と獣の鳴き声。
    それ以外に、ブーンの耳は別の音を聞いたというのか。

    ノパ⊿゚)「どんな音だ?」

    何の音とは訊かなかった。
    音と名詞が結びつくには、知識が必要だからだ。

    (;∪´ω`)「ばんっ、って……
           したのほう……から……」

    それは間違いなく、争いを意味する音だった。
    ブーンが怯えださないように、ヒートはより一層強く胸に抱き寄せた。
    思ったよりも遅いが予想通りやって来た。
    しかし、対策は既にデレシアと共に考えてあるため、何の心配もいらない。

    ――ヒートにとって、次に聞こえてきた爆発音よりも、ブーンの鼓動の方が大切だった。

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
    Forresta ⇒ August 2nd
    【19:39】
    ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; /.            ....:::.;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
    ;;;;;;;;;:;:;::;;;;;;;;;;;;;:;:;:;:;:;:;:;;;;;;;;;;;;;;;;;:;:;;;;;:;;;;:;;;;:;:;;;:;::;:;::;::;;:;:;: |.              |;;;;;;;;;;;;;;;:;:;;;
    ;;:;:::::;::;::;::::;::::;:::;::;::;:::;:::;::;:::;:::;::;::;:;::;::;::;:::;::;::;::;::;:::;:::;::;:;::::::..............       ...;::;::;:::;::;:;::;::;::;:::;::
                                ヽ            /
                                 \        /
                                   `   ー ─ '
    ~`゙゙''--、.__,,;;  ,,,,__.、--─--、_____  ,,,,,,,,,,,,,,,,;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;__.、--─--,,,
    ~`y、___ ___ ̄______...,,-‐‐''~       ~` -、....__ ,,,,, ,..............................,,,,-‐‐''~       ~` -、.._
         ̄  ̄   ̄~^‐-‐''''"~~~`‐-‐''~^ヘ.-‐‐~`‐‐‐-、__.....--‐‐""~ ̄ ゙̄w"" ,,,,,,:::::::::::::::::::::::
    ,,;;;;,,,,;;;;,;;;;,;;,,,,;;;;;,,,;;;.,,,,,,,,,,..;;;;;;;;;;;;;;;;;..,,;;;;,,,,,;;;;;::;;;:::,,,,,;;;;,,,;;,,,,,,;;;:::::::::;;;;,,,,r-、,.,..,,.,,::;;--゙゙
    illlllllliiiiiillllllllllliiiiiiiiiiliiiiiiiiliiii!!!;;;,,,,,;;;!!!iillllllliiiiii!!;;;,,,,,;;;!!!iillllll!!!iiiiiiiiiiii!!!lll;;;;;;;;;::::::: :::: ;;;;;;iiiiii!!!;;;;
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

    浴室でブーンが聞いた音の後に、普通の人間の耳にもはっきりと聞こえる大きな爆発音が夜の森の静寂を破り去った。
    爆発音を聞いてもなお、ブーンのための服を用意していたデレシア、そしてペニサスの両名の反応は冷静そのものだ。
    近づいてくる敵意を持った集団の存在も確かに感じ取っているが、慌てた様子を見せない。
    そこまで危惧する相手でもないし、そうする必要もないと分かっているからだ。

    ('、`*川「……まぁ、随分と大勢来ますね。
         ボーイスカウトの方が、まだ、上手にハイキングをしますけど」

    窓の外に広がる森に目を向け、ペニサスは呆れた風に呟いた。
    しかし、そこにあるのは闇と森。
    人影など、見えはしない。
    少なくとも、並の人間には。

    ある種の特殊な訓練と地獄が養護施設と思える極限状態の状況下、そして発狂を通り越すほどの場数を積めば、彼女が見る世界の片鱗が分かるかもしれない。

    ζ(゚、゚*ζ「フォレスタに、ペニ以外の家があるの?」

    爆発音は、この家よりもクロジング寄りの場所から音は聞こえてきた。
    早とちりで爆破したと云うことはあるまい。
    それならば、別の家をペニサスの家と誤認したか、両方の家を狙って襲った二つの可能性が考えられる。
    そうでなければ、こちらに近づいてくる集団がいるはずがないからだ。

    どちらにしても、ブーンを一瞬でも怯えさせた輩を生かしておく道理はない。
    彼らに与える道は一つだけ。
    ヒートと一致した意見は、皆殺しだ。

    ('、`*川「えぇ、一軒だけあります。
         “教え子”の家が、一軒だけ」

    ペニサスの教え子なら、助力は不要だろう。
    こちらに向かって来ている連中だけを皆殺しにすれば、それで一先ずは片が付く。
    手間が省けるのならば、その方がいい。
    銃弾の節約になる。

    ζ(゚ー゚*ζ「……なら、そっちの方には手を貸さなくていいわね?」

    カーキ色のローブを身に纏いながら、デレシアは念のため、ペニサスに確認した。
    自慢げな表情と誇らしげな口調で、ペニサスは答えた。

    ('、`*川「私の教え子ですからね。
         目つきが悪くて口下手で、奥手だから人付き合いが苦手だけど、優しい子なんですよ。
         困った顔と笑顔が可愛くて、よくからかったものです」

    教え子を語るペニサスは、大丈夫、とは口にしなかった。
    その必要がないからだ。

    ζ(゚ー゚*ζ「そう……
          それなら、強い子なのね」

    玄関でデザートブーツを履き、デレシアは扉を開く。
    仄かに温い夜風が、デレシアの金髪とローブの裾を棚引かせた。

    ζ(゚ー゚*ζ「ちなみに、だけど」

    ('、`*川「はい?」

    ζ(゚ー゚*ζ「その子、ギコって名前じゃないかしら?」

    * * *
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
    Forresta ⇒ August 2nd
    【19:39】
                   ;;:;;:/:::::         ヽ
             ;;;; :;;;;; :;:;;;;;::::             丶.. ;;:;;;;:;;; ;;:;
        イ ̄|丶;;;;:;:;;;;:;;;;:;;;;;:;;;;:;:;::::          ●   |;;:;;;;:;:;;;;;:;;;;:;:;;/|ヽ
       イ::::::::::| ヾ;;:;:;;;;:;;;;:;:;;;;;:;;;;;;;:;:;:              |;:;;;;:;:;;;;:;;;;:;:;;;| | |
       イ::::::::::::::| |;;;;:;:;;;;;:;:;;;;;;;;:;:;;;;:;:     ●●    ●●|;;:;;;;:;:;;;;;:;;;;:;;| | |
      |::::::::::::::::::::| ヾ;;;;:;:;;;;;:;:≡;;;;:;;;;;         ●    |;;:;;;;:;:;≡;;;;:;;;| | |
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

    〔::‥:‥〕『……やれ、ブラウニー!』

    その声を、トゥエンティー・フォーを身に纏ったブラウニー・ブランケットは待っていた。
    ナパーム弾を床に叩きつけ、その恐るべき破壊力を解き放った。
    眩い閃光。
    そして、衝撃。

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
        .\ \  .ヽ  . __./ ヽ ヽ''゙′ .l .l゙i,!     l !│  .,i゙ゞ    , ‐''" .''"゛ ./゛
          .゙'、 `x、   l゙    .l, .'k  │ .「     l .,! ',i, /     /       /
    . 、,     .\ ゙'!i、 │    .l .l,   | 、     _   ,i"" ./  ._,,、._..  -  ._,i|ゝ
      .`''''゙Ni、   l‐..\      l, . l, .| .!  .,. 、 .ll′/  //´ ‘゛     `゛   ゙゙゙'ー''''''''゙,゙
     `''ー ,,,  `''‐ ゙ヽ. .\      .l  l   ′.'" `゙゙' /                  _iyrij⊇―
    . ,,. .. --'┴.  v-ミi、 `''‐`‐   l            l゙     .,..;;彡'ツ         _.. -''゙´
      `、       \. ..`''-,,,,,,,,,,..、 ″        ‘   . / . ~./     ,,-'"゙.,,, ー'"ニ....、〟
    ー ..,,,゙゙'''ー 、″   ゛       .゛            /           ,..;;彡‐''"      .'!―
         `゙>-''''    .,..-'"     、       /
     xrニ./ ''"       ゙ア'"__   `ー  ,,+    ...       : ー‐ー.---.____
    -―     _,,....、 --―''''''゛^`,            /   
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

    炎は建物を瞬く間に包み込み、爆発の衝撃は周囲の木々をなぎ倒す。
    爆心地となった床は地面深くまで抉り取られ、その中心には装甲が焦げて傷ついたトゥエンティー・フォーが膝を突いていた。
    その身に纏わりつく炎の熱さは感じず、強固な装甲が彼らの身を爆発と炎から完璧に守っている。
    暗く、冷ややかだった家は今や明るく暖かな場所へと変化していた。

    炎。
    紅蓮の炎。
    煉獄の炎。
    魔女を焼き尽くす、浄化の炎。

    壁を舐めるように燃え盛る炎は、そこにある全てを等しく燃やす。
    木が爆ぜる音が、彼らには大義達成に対する先祖達の拍手喝采に聞こえていた。

    〔::‥:‥〕『やった……やったぞ!!
          はははっ、これだけの炎と爆発なら、魔女がどこに隠れていても終わりだ!!
          俺達は勝ったんだ!!』

    辺りに見えるのは、鮮やかに燃える炎だけ。
    後は消し炭になって、崩れて、そして消える。

    ――その、はずだった。

    〔::‥:‥〕『……あ? なんだ、あれ』

    ブラウニーには見えていた。
    彼の視界にある、“それ”が。
    天井近くまである黒塗りの正方形の箱が、周囲の明かりを拒むような禍々しい黒塗りの箱が。
    それはまるで――

    〔::‥:‥〕『棺桶……?』

    そう。
    骸を収め、死者を葬るための桶、棺桶に酷似している。
    しかし。
    しかし。

    だが、しかし――!

    劫火に焼かれてもなお健在の棺桶が実在するか。
    爆風に殴られてもなお健在の棺桶が実在するか。
    否。
    答えは、どちらも否!

    それは。
    男の眼前に佇むそれは――

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
                 _r-------ヵ、_
               //       .∧',
               //,       ∧',
                //         ∧ム
    .          //,'           .∧;ム
             /./,            ∧;ム
              /./,'              ∧iム
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

    棺桶に似た運搬用コンテナが床の上に落ち、倒れる。
    そして男は目にする。
    棺桶の、否、“棺桶”の正体を。

    〔::‥:‥〕『ば、馬鹿なっ……!!』

    『……ったく、人ン家をなんだと思ってやがるんだ。
    何時から俺の家が花火大会の会場になったんだ、なぁ?』

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
    : : : : : : : : : : :,, '": : : : :.              ;;;;;:' .,;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;, ';;;;; 
    : : : : : : : : : : : 、.              ,;;;;;, .;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;. .;;:;;;,.... :-、:: . ⌒
    : : :':⌒ : : : : : : . . . ':.             '':;,゙ .;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;  '".....'": : : . . .: : :~"'
    : : : : : : : :  : : : : ⌒                ;;;;;;;;;;:;;;;;;;;;;...... ~へ: :ノ ⌒: : .
     : : : : : . .: : : :,.~ '~                 ';;;;;;;;;.';;;;;;;:,; :" : .  y: : : : .y'" . ..
    : :  . . : ~'~ソ: :,. y'                `;.;;;;;;;;.;:;;;;;;; ,:' :~ { : . : : : ::: :): : .
         y. : : : : : :):y'"~)                  .:~'; :~''”~: ..、. . : : : : : : . .. :ノ ⌒:
    .     : : : : : : : : : : :⌒ソ      ,. : -ー'"~"'"⌒ . ... :ノ ⌒: : . . {,,... :
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

    それは、“棺桶”の名で呼ばれる第三世代軍強化外骨格から発せられた言葉であった。
    それは、イルトリア人特有の激憤を内包した妙に優しい声色だった。
    それは、単一の目的に特化して製造された“コンセプト・シリーズ”の背中だった。
    それは、炎に照らされたCクラスの大型棺桶、“マン・オン・ファイヤ”の背中だった。

    棺桶とは別に左右の肩にそれぞれ背負った黒く、縦に長い巨大な六角錐。
    丸みを帯びた重厚な装甲は黒く、灰燼の色をしている。
    不気味な姿をした棺桶がゆっくりと振り向き、煉獄を髣髴とさせる色の両眼が彼らを睨んだ。

    ム..<::_|.>ゝ『……灰(ash)になる準備はいいか、この尻穴野郎(asshole)共が!』

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
    ┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳
    Forresta ⇒August 2nd
    【19:41】
                  八                      。  ゚  _゚____/γ´
                  ム               。  __゚,-―'´ ̄ ̄二三三/ {       _, -‐ '´
                八          。 ゚, -― '´      _,ィrrr―‐〈  廴___,-‐'´
                 弋       -‐       __,ィt‐テアミ}  | | |ミ/(:::廴____      ,
                  ヘ   /      __,-‐ニニヘミ彡'´、 _j_j_j込、:ヽ、___二ニ=‐'´
                   >x、     ,イ⊆ミj ,      ̄   Yミ/ュュュ圭込>'´ ̄
                      ` ̄ ̄ ̄ ̄ ̄i ',        ||::} } } }>'´
                     , '   /: :/:::::::::} i fi  fi fi fi ||::>'¨´   
                             Ammo→Re!!のようです~Ammo for Relieve!!編~
                                              第三章 【fire-炎-】
    ┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

    ギコ・ブローガンは久方ぶりに激怒し、激昂し、激憤していた。
    金銭が目的で襲ってきた間抜けな強盗なら、まだいい。
    命が目的で襲ってきた暗殺者の類なら、まだいい。
    苦労して建てた家を破壊することに生きがいを感じる愉快犯なら、まだいい。

    しかし、ナパーム弾を使ってギコの家で花火を打ち上げただけでなく、彼が大切にしている品物を吹き飛ばしたとなれば、話は別だ。
    ベッドも、床板も、何もかもが跡形もなく吹き飛んだ寝室を見て、ギコは憤怒していた。
    完全にキレていた。

    〔::‥:‥〕『それがどうした!』

    焼け焦げた床を蹴り、トゥエンティー・フォーが肉薄する。
    ギコは腰を落とし、右腕を振り被った。

    ム..<::_|.>ゝ『バンカーバスター!!』

    兵器の使用許可コードの入力が確認されると、背中の武装コンテナが右腕に接続され、同時に背中との接続が解除される。
    この間、僅か一秒にも満たない。
    ギコは携行式六連装発射装置の接続された腕をトゥエンティー・フォーに向けて突き出した。
    そして、ギコが口にした兵器がその恐るべき力を解放した。

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
        ̄ ̄ ̄ ____  二
    ───────────────=≡三`、\N\
    ──────────────────→  ..::;;;(三(二(三⊃
     ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄7 /7/
                ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

    ――第三世代軍用強化外骨格、通称“棺桶”の話をしよう。
    棺桶の最大の特徴は、兵器を武器として使用できるその凡庸性の高さにある。
    “バンカーバスター”は、地中深くに設置された施設などを破壊するために開発された爆弾だ。
    基本的には上空から投下し、高度を利用して地層を貫通して地中の施設に攻撃を加える物で、地上で使うことはしない。

    しかし、何事にも例外はある。

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
           / /::::::lノ  ___>、_)>': : ::.::: : :::::::.. : : : ::..::.:..::.::.. ;     ...:.::-=ソ:ノ:=:::.・. :.::三ミ:、
    ─ = 二  ー'──'  ̄      . . : : : : : : : : : ::::::: : : : : ::..:::.:..    ・ .:.:-=彡;’=-  ..:.:-=彡、
           ̄ ̄__ ̄ ̄_ ≡=─     /\:::.:.. : :..:::゙:、::;;.:.. .   ..:.::-=彡'=-  : ..:.:-=彡
    =二 __ ̄ ̄           ・    /  __>、: :..:,: :..:ミ=:.. :._.:-::=彡'::ミ=-:.._ ..:.:::-=彡;
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

    例えば、 “要塞攻略用棺桶”があるとしたら、バンカーバスターの使用用途も変わってくる。
    小型化と運用性を求めて再設計されたバンカーバスターは、専用の携行式六連装発射装置との併用によって、高度の問題を解決した。
    指向性に特化した爆薬の配列は、ある意味で、従来よりも強力なものとなったことは、言うまでもない。
    そして、“要塞攻略用棺桶”は実在する。

    自らが用いる強力な兵器から身を守る堅牢な装甲。
    長時間活動可能な大容量バッテリーの搭載。
    兵器を武器として使うための、強力な動作補助装置。
    それら全てを支えるために設計された、頑丈さと機動性を兼ね備えた脚部。

    右の武装コンテナを兼ねた携行式六連装発射装置“ヘックス”は、連続して六発のバンカーバスターを一か所に発射することで、高度を必要とせずに地下への攻撃を可能とした。
    地中深くまで到達するその破壊力を地上で行使すればどうなるか。
    相手が堅牢な装甲を誇る棺桶相手ならどうなるか。
    全ての答えは、ギコの右腕の先に広がる殺風景な景色が物語っていた。

    ――家の半分と百ヤード先まで木々が木っ端微塵に吹き飛び、膝から上を失ったトゥエンティー・フォーの足が残されている。

    ム..<::_|.>ゝ『……どうした?』

    〔::‥:‥〕『ひっ……ひぃっ!!
          あひいいい!!』

    恐慌状態に陥ったもう一機が、背を向けて逃げ出す。
    ギコは右腕をその背中に向けて、もう一発、バンカーバスターを発射した。
    そして、トゥエンティー・フォーは指一本を残してギコの視界から消滅し、家の壁と木々も姿を消した。
    悠然と佇むマン・オン・ファイヤは、炭になった床を踏み抜きながら移動を開始した。

    屋外で一度立ち止まり、ギコは周囲を見回す。
    狙撃手と残党がまだ隠れ潜んでいるはずだ。
    残党を皆殺しにするために、ギコはマン・オン・ファイヤのカメラを切り替えた。
    約五百ヤードの位置、木の傍に一人。

    そこから左に六十ヤード、走って逃げる人間が二人。
    合計三人の不届き者の位置関係では、バンカーバスターで対処できない。
    一方向の限られた範囲――距離百ヤード、半径1.5フィートの筒状――に攻撃が出来るそれでは、どちらかを取り逃がしてしまう。
    だが、別の兵器を使えば問題は解決する。

    ム..<::_|.>ゝ『……テルミットバリック』

    使用コードを受け付けた左肩のコンテナが左腕に接続され、発射装置に変わる。

    ム..<::_|.>ゝ『花火ってのはこうやるんだよ!』

    左の武装コンテナには、周囲の全てを焼き尽くす特殊焼夷弾“テルミットバリック”が詰まっている。
    無数の小型特殊焼夷弾は、一発で周囲百ヤードに存在する全てを六千度の炎で焼く。
    酸素も、人も、銃も、棺桶も、全てを灰にするための兵器。
    武器を手にしたギコ・ブローガンは決して躊躇わない。

    レーザー照射による照準補助装置を作動させ、狙った位置に弾を落とすための最適な角度を割り出す。
    六角錐の頂点を上に向け、テルミットバリックがその先端から一発発射された。
    一秒後、爆音とともに森が白く発光し、強風が木々を揺らした。
    悲鳴も命乞いの声も、ギコには届かない。

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
            ’、.・”;  ’           ’、′‘ ・. . ・ ‘
          ∵”      、′‘ ・. . ・ ‘        ’、′‘   ・”;  ” ;  ’  ・  .
                             ト、 ’ 、.・
                            ノ (
                     、   ,    `Y   |   ∵”
                   ,ノ)        |   人
            ,      `Y´(    '     ,/    く、
             ヽ、    |  ) 、    /       }      丿)               、
    .        __,ノ ) ' / (_,ノ)  (::::::::::::::::::::::  \ノ!   / (     ノ!        ,ノ)
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

    テルミットバリックの効果範囲の全ては焼尽し、不届き者達は灰となった。

    ム..<::_|.>ゝ『……ペニサス先生』

    フォレスタに住む恩師の名を呼び、ギコは燃える我が家を振り返ることなく走り出した。
    “魔女”の渾名を持つペニサス・ノースフェイスに危機が迫っている。
    ギコが走り出すには、十分な理由だった。

    * * *
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
    Forresta ⇒August 2nd
    【19:43】
       ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/       \::::::::::::::::::::::::::::
       :::::::::::::::::::::::::::::::::::/         :::::::::::::::::::::::::::::::::
       :::::::::::::::::...... ....::::::|            |::::::::::::.. ...: ::::::::
       :. .::::::::........ . .:::::::::::::::::::         | ........... ..:::::
       :: :::::::::... . .... .. . ヽ          / . . . ... ..::::: . .. .
                  \      /
                     -ー


      .^''ー-、...,_ ._,,,、,_    _‐'¨'''''''^¨⌒¨^'‐.......,    ._.、,/¨^'ー-'ーv.,_
           . ̄  ¨^'ー=ニ           ¨''ーニニ_         ¨^
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

    チームの最後尾を歩くガジーナ・ヤングマンは、最後尾と言うにはあまりにも離れた位置を歩いていた。
    三百ヤードは優に離れている。
    怖気づいて遅れている訳ではない。
    予定外の事態が発生し、それの対処を任されたのだ。

    彼にしか出来ないその事態とは、リリーナ・デジャビュがガジーナ達を追って来てしまったことだ。
    ガジーナは迂闊な嘘を吐いてしまったことの申し訳なさと、彼女に再び会えたことの喜び。
    この二つの感情に板挟みに合い、ガジーナは仕方なく、こうして離れた位置で嘘を真実に変える作業を行っていた。
    つまり、天体観測だ。

    どこからか聞こえてきた爆音は、フォレスタではよくあることだと誤魔化しておいた。

    「ごめんね、ガジーナ……」

    ガジーナの服の裾を掴みながら、リリーナは申し訳なさそうに言った。

    「いいんだよ、別に。
    さっきの人たちも言ってたろ?
    “気にすることはない、若い者同士でゆっくりとすればいい”って」

    それは、魔女狩りにガジーナが参加できないことを意味していた。
    とても悲しいことで、とても悔しいことだ。
    しかし、リリーナと天体観測ができることを考えると、悪い気はしない。
    歴史が変わる瞬間に立ち会えないのは残念だが、歴史が変わるのであればそれでいいだろう。

    「うん……
    ねぇ、ガジーナ」

    「ん?」

    「私に、何か隠し事、してない?」

    「ははっ、誰にでも隠し事ぐらいあるだろ」

    例えば、幼い頃からの好意だとか。

    「……私、ね」

    裾を掴んでいた手が、ガジーナの腕に絡められる。
    心臓が跳ね上がる思いだった。
    切なげな声。
    暗闇でよく見えないが、きっと、可愛らしい顔をしているのだろう。

    「私、ガジーナに隠し事してるんだ……
    ……ずっと、昔から」

    「な、なんだよ……
    隠し事、って」

    思わず立ち止まる。

    「……知りたい?」

    「あ、あぁ、そりゃあもちろん……」

    「じゃあ、ちょっと目を閉じて、少し屈んでくれる?
    あっ、私がいいって言うまで、絶対に目を開けちゃだめだからね!」

    期待を込めて、ガジーナは言われた通りにした。
    もしかしたら。
    もしかしたら、幼少期から続いているガジーナの夢は。
    想いもよらない形で、実現するのかもしれないと、ガジーナは期待した。

    湿った何かが爆ぜるような音が目の前から聞こえたが、眼を開けなかった。
    ゆっくりと、何かがガジーナに寄りかかった。
    そして、生暖かい液体が、ガジーナの唇に触れた。
    それが、夢の成就を意味していることは、深く考えるまでもない。

    ――確かに、それは夢であるには違いなかった。

    「……え」

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
               !r爻{liレゞ、{{!,.ィ-、r{,イ´!ヽヽ.レ´ィく
               }'イィ´)!イrヘ{:し'=イ{:j lil!} !i !{く、!
    _        ,.r イ 1イ(( ハ,.イヾ二ノイ! il{ !l !:)、ヽヘ       _
       ̄ ̄ `ヾ´ / l  }ハハr' レY⌒Y}`ヽ、{ハヽ,ノハハ ゝ< ̄ ̄
            `、! ,ィ 「 ̄ ム}ミ{个,--{/ ,.イミ、 ̄ ̄} 1 イ
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

    上顎から上を失ったリリーナがガジーナに倒れ掛かり、残された下唇が彼の唇に触れている光景は、一般的に悪夢と言う。
    悲鳴が喉までせり上がり、ガジーナが現実を拒絶しようとした時、彼は現実から永遠に離れることとなった。
    亜音速で飛来した弾丸は後頭部から下顎まで貫通し、頭部を体から離脱させたのだ。
    悪夢が終わり、彼の短い生涯も終わった時には、先行して歩いていた五人の仲間達も、死者の列に加わっていた。

    ――彼らの人生に終止符を打ったのは、遥か二マイル先にあるツリーハウスから放たれた魔弾だった。

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
    ┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳
    Forresta ⇒August 2nd
    【19:43】
                  _, .= - イミ、          ゙、:. . `ヽ:.、
                ィ:7 イ壬ソィ=-ミ、_          ヾ:.、: : .、:}、
                /i ! ゙弋辷彡ニ=ミ、`ヽ         `ヽ:、 :i:l:、
                /ο{ 、..:::ヾ.煙乂大ヾ.ヾ:.゙.          ヾ:、. ゙:.、.
           /゚    、:::、::ー-:::7´  ヾ:.ハ:.i:}          j } .}:i:!     To be continued...
    ┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
    スポンサーサイト

    コメントを書き込む コメントを読む(0) [Ammo for Relieve!!]

コメント

コメントの投稿(コメント本文以外は省略可能)





管理者にだけ表示を許可する

テンプレート: 2ちゃんねるスタイル Designed by FC2blog無料テンプレート素材 / 素材サイト: 無料テンプレート素材.com / インスパイヤ元:2ch.net

ページのおしまいだよ。。と